レプリカント   作:華麗なイモリ

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※前話同様オリキャラ注意報
 闘魚の生態捏造してます。


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 ──シーザー引き渡し時刻45分前。

 

 

 

 ひしゃげた鉄橋に脚を踏み入れた『シーザー引き渡しチーム』の5人は、橋の4割を進んだところで異様な波の音に脚を止める。

 

 元々感じていた生き物の気配におっかなびっくりしていた一行…主にシーザーとウソップの2人は海中にひしめく生き物達が此方に襲い掛かってくる気配が見受けられなかった為に少し安堵の表情を浮かべていた。しかし、その表情も耳にした波の音で一瞬にして絶望へ塗り替えられたのはご愁傷様と言う他にない。

 

 慌てて橋の下を覗き込めば、ザザザザ! と海面を猛烈な速さで波を割って近付く背鰭を確認したシーザーとウソップが闘魚だァ !! と顔を青褪めさせるが、シグマは逆に喜色満面の笑みを浮かび上がらせて瞳を輝かせており、彼女にとって知的好奇心の前では恐怖など二の次であるようだ。

 

 抱き合って悲鳴を上げる2人と残り3人の側を跳ね上がった闘魚が鉄の柵を捻じ曲げて橋に乗り上げ、慌てふためいたり冷静だったりする眼下の5人を睨み付ける。その目は完全に理性無き眼で、眼下の彼らを獲物だとしか認識していない。

 店主から多少なり聞いていたとは言え、魚とは思えぬ様相をした闘魚は巨大な2本のツノを持ち、鋭い牙に獰猛な嘶きを上げる。

 その全長は30メートルをゆうに超える巨大生物だった。

 

 

 

「 “闘魚” って、てっきり魚かと… 」

 

「魚じゃねェか」

 

「もう魚じゃねェだろアリャ !! 」

 

「海獣とかわらねェ !! 獣だ !! 」

 

「 ──【闘魚】脊椎動物亜門、硬骨魚類、トウギョ目トウギョ科の闘魚属。大きな2本ツノを生やしており、成体で体長35メートル。幼体でも5メートルは超える巨大な『魚』で、気性は極めて獰猛かつ自分より大きな物にツノを突き立てる習性を持つ。血の匂いに敏感で満腹時には群れで獲物に襲いかかり甚振って遊ぶ非常に危険な『魚』である。──…だってさ! 魚だね! 」

 

「うるせェな! だいたい、どっから持って来たそんな噓くせェ図鑑 !! 」

 

「えへへー! 買って貰ったのさ! 」

 

「シーザーの研究所からくすねた金だ、気にするな」

 

「バッ !!? て、てめェらフザケんな !! おれの金だぞ !? ただでさえ少ねェ研究費用(小遣い)が… !!! 」

 

 

 

 新世界海洋図鑑(仮)を掲げるシグマの胸倉を掴んで揺さぶるシーザーにローが呆れた顔で 「研究費用と言いながら酒と女に消えてたじゃねェか。図鑑の方が有意義な使い道だろうよ」 と吐き捨てれば、シーザーは唾を飛ばす勢いでがなり散らした。

 

 

 

「こんなクソガキに消費するより、てめェの快楽に使ったほうが有意義に決まってんだろうが! 」

 

「ふんだ! 別に甲斐性なしに何かして貰いたいなんて想ってないし! 」

 

「おいお前ら! バカやってる場合じゃねェぞ !! どうするんだよ !! 」

 

「バカはやってねェ。……大丈夫だ、お前らが何とかする」

 

「何とかするって…おれ達がかよ !! お前がやれ “七武海” !!! 」

 

「 …いや、今おれは戦えねェ」

 

 

 

 突き刺さるウソップの鼻を押しやったローに更に詰め寄ろうとするウソップだったが、迫り来る闘魚にやるしかない!と、すかさず武器を構えた。

 何度も言うようだがこの男、実に切り替えが早い。

 

 

 

「 “必殺緑星” !! 」

 

「逆からも来てる !! 」

 

「2匹同時に来たら潰されちまうーーーー !!! 」

 

「大丈夫よ。 “千紫万紅(ミル・フルール)” “巨大樹(ヒガンテスコ・マーノ)” …… !! 」

 

 

 

 ロビンの能力発動と同時に花弁が舞い上がり、ウソップはギリギリまで引き絞ったスリングショットの紐から手を離し、弾を放つ。

 

 

 

「『ドクロ爆発草』 !!! 」

 

「 “スパンク” !!! 」

 

 

 

 左右から挟み撃ちに飛んできた闘魚は、片や爆発、片や巨大な掌底で軌道を逸らされ、海に落ちていく。

 落ちてきた同胞に群がり、牙を突き立て共食いをしている隙に5人はグリーンビットへの道を駆け出した。

 

 

 

「上出来じゃねェか」

 

「バカ言え !! どんだけいると思ってんだ !!! 群れだぞ !!! 」

 

 

 

 走りながらも戦果を褒めるローに反論しながら手を止める事なく次々に襲い掛かる闘魚へ弾を撃ち続けるウソップと黙したままひたすら叩き落とすロビンだが、ウソップの言う通り数に限りが無くキリが見えない。

 

 

 

「鼻屋 !! シーザーの錠を解け !! コイツにも戦わせる !! 」

 

「何を !!? 」

 

 

 

 その言葉にウソップは飛んで逃げるぞ! とローへ叫ぶが、ローが右手に持つ心臓を掲げて下手な真似は出来ない筈だと告げれば、掲げられ心臓を目にしたシーザーが悲鳴をあげながら自身の心臓があった場所をまさぐるも、そこには正四角形の孔が空いているばかりだ。

 

 

 

「てめェ! ろくな死に方しねぇぞ !! この天才科学者をコキ使うとは…… !!! クソぉ! 覚えてやがれよ !! “ガスティーユ” !!! 」

 

 

 

 恨み辛みを垂れ流しながら海楼石の錠から解き放たれたシーザーが熱射砲で次々に飛来する闘魚を消し炭に変えていく。

 その凄まじい威力にウソップが流石は3億の犯罪者! と感心を抱いた。

 

 

 

「駆け抜けろ !!! 」

 

「ねぇ! やっぱりわたしも戦った方が、」

 

「ダメだ! 」

 

 

 

 走りながら漏らされた苦言をローが一蹴すれば、シグマの代わりにウソップがそれに異を唱えて、戦いに参加しないローへ不満を吐き出す。

 

 

 

「何でだよ! シグマもおめェもなんで戦わねェんだ !! 」

 

「おれの能力は使う程に体力を消耗する… !! それに錬金屋の能力もまだ底が知れねェ状態で使わせる訳にはいかねェんだ! コイツの能力は汎用性に優れてる、だからおれ達は “帰り道” こそ本領を出さなきゃならねェ! わかるか !? 」

 

「 ……! 」

 

「少しでも力を温存しておくんだ !!! 相手はドフラミンゴだぞ… !!! 」

 

 

 

 本気でドフラミンゴと戦う覚悟を見せるローに、シーザーは冷や汗を流しながら背後のローを盗み見た。

 見えるのは背中ばかりでどんな表情をしているのか窺い知ることは出来ないが、声音から先述通り本気である事は知り得ている。

 

 コバンザメのような事をしているシーザーだが、ドフラミンゴの強さも恐ろしさも良く理解していた。アレは並みの実力では手も足も出ない実力者だ。四皇には及ばないだろうが、それでも、今この場にいるメンツでは歯が立たないことなど容易に想像できる。

 

 何故長いものに巻かれようとしない! 何故態々逆らって危険に足を突っ込む !!

 

 シーザーは理解の出来ない苛立ちを発散するように闘魚へ八つ当たりじみた攻撃を放ち続けるのであった。

 

 

 

「おいヤベェ !! 橋が壊れてる !!! 向こう岸も霧でよく見えねェ !! 」

 

 

 

 グリーンビットへ駆ける足は、途中で道が途切れた鉄橋によって足踏みを余儀なくされる。

 逃げ場のない状況で、畳み掛けるように正面から襲ってくる闘魚に身構えた4人だが、その闘魚は何者かによって綱とモリで捕らえられると霧が濃い向こう岸へ引き摺られていき、やがて姿を消してしまった。

 消える前に何やら声が聞こえた気がしたが、グリーンビットは無人島と呼ばれており、今現在渡って来た橋を見るからにも先住民がいるとは俄かには信じがたい。

 首を傾げる4人だったが、背後で粘るシーザーにせっつかれた事で一先ず先住民(仮)は置いておき、グリーンビットへ辿り着く事を最優先に動き出す。

 その方法とは────

 

 

 

「ローてめェ !! 本当に覚えてろ !! 」

 

「グダグダぬかさず島まで飛べ」

 

「おま、フザケんな !! 人4人浮かすのにどれ程のガスエネルギーを要すると思ってやがる !! チクショウ! おれは大切な人質だぞ !! 」

 

「すごーい! 空飛んでる〰︎〰︎ !! 」

 

「初めからこうしときゃよかったな」

 

 

 

 ────全身ガス人間のシーザーをガス気球に見立てて島まで空路を辿り進むというものがローの考えついた途絶えた橋を渡る方法であった。

 勿論、そんな事はシーザーにとってはたまったものでない為色々と往生際悪くもしぶとく食い下がったのだが、ローに先日のお返しのように心臓を軽く叩かれてしまえば従わざるを得ない状況になってしまったのである。

 

 そんな「ひーひー」言いながら空を進むシーザーを他所に、シグマは飛んでいる貴重な体験に喜び、ウソップはこれまでの苦労を嘆いていて、その対照的な2人を見たロビンは声もなく微笑ましそうにしていた。

 

 

 

「ハァ…ハァ……着いた……ゼェ、ゼェ… 」

 

「まだ誰も来てないみたいね…海は闘魚にやられた船の残骸だらけだわ… 」

 

 

 

 辺りを見渡してそう言いいながらロビンは砂浜に足を踏み入れる。

 島へ到達したはいいものの、人の影は一つもなく、残骸が軋む音が細波の奏でる音に掻き消され、寂れた砂浜が広がるばかりだ。

 

 闘魚を引き摺った痕跡は残っているのだが、それも途中で途切れてしまっており先住民(仮)の足跡すらないので、ローはその途切れた痕跡を見据えながら謎の声と霧の奥に消えた闘魚はなんだったんだとイレギュラーな存在に眉根を寄せた。

 …ただでさえ、格上の相手であるドフラミンゴとやり合おうとしているさなか、不安要素ばかりが募っていく現状にローは心の内で湧き出る焦りを抑えるため歯噛みする他ない。

 

 ここでローが不安を表に出せば、作戦に乗った麦わらの一味であるウソップやロビン、それと恐れを押し殺して付いてきたシグマに不安を伝播させる事になってしまう。

 そうすればもう作戦を成功させる事は限りなく難しくなる…否、不可能になると言っても過言ではない。──それだけチームの士気や連帯感は作戦に影響を与える重大な要素なのだ。

 とは言ったものの、数々の困難を乗り越えてきた“麦わらの一味”がそう簡単に怯むことはないと思うが、念は入れておくものである。

 

 

 

「……しかし、まー…──野生丸出しの森〰︎〰︎ !!! 」

 

「すっごーーーーい !!! 此処はまさに植物の楽園だ !!! 見ろ! あのバラもスズランも本来の数千倍…それ以上に成長している !! いや! コレはもう成長ではなく肥大と言った方が適切だろう !!! ……あぁ、採取した〰︎〰︎い! あわよくば遺伝子構造把握した︎〰︎〰︎い !!! 」

 

「おーい !!! ジョーカー〰︎〰︎ !! おれだ !!! 引き取ってくれ〰︎〰︎ !!! 」

 

「はしゃぐな錬金屋! シーザーお前も喚くんじゃねェ! …心配しなくともあそこに見える “南東のビーチ” へ約束通り15時になったらお前を放り出す」

 

 

 

 ローが手に持っている刀、鬼哭で指し示されたビーチへ目を向けるシーザーだが、ウソップの逆の海岸に海軍の軍艦があると言う発言に弾かれたように背後を振り返った。

 

 そこには岸に乗り上げるなんてものではなく、島へ突っ込んだ軍艦の異様な姿があり、何をどうしたらそうなるのか一行には想像も付かない。

 双眼鏡を手に軍艦の周囲をうかがうロビンは周囲の植物の傷が真新しい物である事に気が付く。その傷口から滲み出る乾き切っていない樹液に軍艦はロー達一行がグリーンビットへ辿り着く少し前に到着したのだろうと推察する事が出来る。

 

 

 

「あの闘魚の群れの中を進んで…… !? 」

 

「海兵達がここへ辿り着くのも時間の問題ね」

 

「まさか、取り引きがバレてるのか !? それは聞いてねェぞ !!! 」

 

「しーーーーっ !!! バカ科学者、お前声でけェよ !!! 」

 

 

 

 騒ぎ立てるシーザーにウソップが人差し指を立てて静かにするよう咎めるが、そんな彼の声も十分に大きいので何も説得力もない。

 賞金首である自身を守る盾は何もないからか、シーザーは錯乱した様に声を大にしてこの取り引きは不当だとローへ詰め寄るも、不利な立場は此方も同じだとローはシーザーの言い分を一蹴した。

 

 

 

「あと15分だ。……お前ら “狙撃” と “諜報” でおれの援護を頼む…! 誰が潜んでるかわからねェ。森に異常があったらすぐに連絡を」

 

「ええ、わかったわ」

 

 

 

 ハメやがったんじゃねェだろうなァ !!! と喚くシーザーに海軍がいる事は予定外と騒ぐウソップ達を横目にローとロビンは着々と話し合い打ち合わせを行うと嫌がるウソップを連れて森に向かって歩き出す。

 その後ろをシグマが当然のような顔をして続く。

 

 

 

「巨大植物蔓延る森に潜む危険因子……その謎を解明するため、我々調査隊はグリーンビットの奥地へと向かった── ぐぇっ! 」

 

「やけに静かだと思えば…! 錬金屋、お前何処へ行こうとしてる… !! 」

 

「何処って…決まっている、グリーンビットの奥地だとも! ……目の前にこんな興味をそそられる物を差し出されて黙っていられると思っているのか君! 」

 

「バカも休み休みに言え! お前は此処でおれ達と待機だ! このバカ! 」

 

 

 

 襟首を掴まれたままズルズルと引き摺られるシグマが名残惜しいと言わんばかりに森へ両手を伸ばして 「ひどい〰︎〰︎! うわーん! 」 と泣き言を漏らすがローの手が緩む事はなくシグマはベソベソ泣きながらシーザーの側へと連れ戻されたのだった。

 

 

 

「何があるかわからない森に2人だけなんて! 自然を舐めてる! 無防備だ! 」

 

「安心しろ、外に出て数日のお前よりよっぽど世界を知ってる連中だ。何かあっても死にやしねェさ。何より海賊やってんだ、命の危機なんて今更だろう」

 

「ハンっ! そんな殊勝な事言ってもてめェが森へ行きてェだけってのはわかってんだぞこのクソガキ! おれの気も知らねェで呑気なもんだよ! 少しはエスメラルダの遺伝子に仕事をさせ…いや、あのクソ女も大概だった! やっぱりてめェ変なトコばっか似やがって! 」

 

エスメラルダハラスメント(エスハラ)撲滅剣 !! 」

 

「いだァ !? てめっその棒っきれいつ拾ってきた !! 痛ェ! 叩くな! バカ! お前剣なんて生まれて一度も手にした事なんてねェじゃねーかよ !! 」

 

「なんか夢で知らないおじさんに教わった……気がする !! 」

 

「ハァ !? 何言ってんだ !!? 」

 

「おい、遊んでないでお前らも周囲を気に掛けろ! 」

 

「誰が遊ぶか! 」

 

 

 

 ローに向かってがなり散らすシーザーを他所に、シグマは何やら不穏な物を感じ取ったのかローの袖を引いて何か変なのがいる! と訴えかけるも闘魚だろうと聞き流されてしまう。

 しかし、怯まずに絶対違う! と食い下がるも後で構ってやるから黙ってろと謎の子供扱いを受けてシグマの主張をローは聞き入れてくれない。

 

 

 

「本当に何かヤバいのが近づいて来るんだってば! もぅ !!! 信じておくれよ〰︎〰︎! 怖い〰︎〰︎ !! 」

 

「わかったわかった」

 

「全然わかってない〰︎〰︎ !! 」

 

「それより後2分だぞ…ニコ屋と鼻屋はどうした…! 」

 

 

 

 焦れたようにつけ髭とサングラスを放り投げたローの懐から伝電虫のコール音が鳴る。

 

 

 

『──おい !! ロー !! こちらサンジ !! 』

 

「黒足屋か…… “工場” は見つかったか? 」

 

『それ所じゃねェ !! よく聞け !! ──すぐにそこを離れるんだ… !!! 』

 

 

 

 サンジの鬼気迫る勢いにローは意味がわからなかったのか何言ってるんだコイツと思い、これからシーザーの引き渡しが始まると伝えれば、グリーンビットの静寂なビーチにサンジの捲し立てるような怒声が響き渡った。

 

 

 

『ドフラミンゴは “七武海” をやめてなんかいねェっ !!! シーザーを返しても何の取り引きも成立しやしねェんだ !! 』

 

 

 

 『おれ達は完全にハメられた !!! 』と言うサンジの言葉にローは狼狽した様子で理屈がわからないと言うも、説明は後でするからグリーンビットから早く逃げるよう説得するサンジにローは間近に感じる見知った気配を察知して、冷や汗を浮かべた険しい表情のまま誰に言うでもなく手遅れだと呟いた。

 

 

 

「どうしろってんだ !! 」

 

「今の連絡聞いたわ! サンジからね !? 」

 

「ニコ屋 !! 」

 

「えぇ !? 生えてきた !? なんで !? 」

 

「ウォーーーー !! なんじゃ女が半分出て来た !! 」

 

 

 

 能力で浜辺に上半身だけが突然生えて来たロビンにシグマもシーザーも共に驚きの声を上げるが、それもすぐにローの切羽詰まったような声に掻き消される。

 

 

 

「お前の本体と鼻屋は何処にいる !? 今のが事実なら交渉は不成立だ! 」

 

「不成立とはどう言う事だ、じゃあおれの引き渡しはどうなる !!? 」

 

「当然、引き渡す訳にはいかねェ! 白紙だ…! とにかくニコ屋 !! 鼻屋を呼べ !! この島からすぐに脱出するぞ !! 」

 

 

 

 シーザーの言及をいなしつつもロビンに脱出する旨を伝えるが、ロビンは険しい表情のまま今はトラブルに見舞われ地下にいるのだと言う。

 話をよく聞く為腰を下ろしたローにロビンは2人とも無事だから補助は出来ないが脱出するなら先に向かうよう伝えた。

 

 

 

「約束の港には後で必ず向かうわ」

 

「そうかわかっ… !!? 」

 

 

 

 不自然に言葉を途切らせて頭上を見上げたローは直ぐに立ち上がって警戒体制をとる。

 その姿にロビンは敵対する何者かが近付いてきたことを悟り、武運をと激励を贈った後に能力を解いてその場から消えてしまった。

 

 

 

「錬金屋! シーザーから離れるな! 最悪ソイツを盾にしてりゃあ早々に死ぬ事はねェ !! 」

 

「わわわ、わかった !! 」

 

「おいバカ、なに勝手なマネを…! 」

 

 

 

 声を張り上げるローに驚いて飛び上がったシグマが言いつけ通りにシーザーの背後へ回るとローブを両手でガッチリ握りしめる。

 盾にされる事が気に食わないシーザーは手錠を嵌められた両腕でなんとかシグマをつまみ出そうとするも、繋がったままの両手では思うようには動かせない。

 

 そんな事をしている間に、上空からピンクのファーコートを羽織った大男…ドンキホーテ・ドフラミンゴがローと十数メートルほどの距離を空けて砂浜へ降り立った。

 ドフラミンゴの余裕綽々有り余るような笑みを浮かべるその姿にシーザーは歓喜の声を上げるが背後のシグマに尻を抓られた事によってその歓声をあげる口を閉じさせられてしまう。しかし、それも森から現れた海軍大将の姿を目にした事で「ゲェー !! か…海軍 !! いや、いいのか !? 」と口を大きく開けて騒ぎ立てている。

 

 

 

「フッフッフッフッフッ… !!! お前にしちゃあ上出来じゃねェか !! まさか『海軍大将』がお出ましとはァ……おいロー !! “七武海“ をやめたおれは怖くて仕方ねェよ !! 」

 

「…… !! ウソをつけェ !!! 」

 

 

 

 ドフラミンゴの煽るような発言にローは声を荒げて噛み付いた。眉根はキツく寄せられて、三白眼気味の瞳は怒りで剣吞にギラついている。

 なにせ、あまりにも白々し過ぎるその態度は罠に嵌ったローに対して隠す気のない嘲りを含ませたモノであったからだ。

 

 

 

「『世界政府』の力を使ってわずか10人余りのおれ達をダマす為だけに… !! 世界中を欺いたってのか !!? 」

 

 

 

 それは常識的に考えて普通なら信じられない事実である。

 たった2組の海賊を欺く為だけに世界中の人間を巻き込むなどと、一体誰が考えつくだろうか…そして、そんな無茶を実現出来ると誰が思うだろう。

 そんなこと出来る筈がない。それが世間一般で言う所の常識であるのだから。

 

 ドフラミンゴは吊り上がった口角でこの大事件をさも大した事のない出来事と言わんばかりに “大きなマジックショー” などと揶揄する。

 彼にとって世界を騙す事など、その様な娯楽と同等であるのだろう。

 

 

 

「…意外に簡単な所にタネはあるもんだ、ロー」

 

「……! 」

 

「そんなバカな事をするハズがないという固定概念が人間の “盲点” を生む… !! 」

 

「っだが、お前は海賊だ !!! たとえ “七武海” であろうとそんな権限がある筈ねェ !!! 」

 

 

 

 ローとドフラミンゴの論争を盲目の海軍大将 “藤虎” はただ黙って聞いている。

 藤虎が何を思い沈黙を貫いているかはこの場の誰にも想像つかないが、彼の部下達はただ藤虎の指示を待ちながらビッグネームの海賊達が言い争う姿を固唾を飲んで見据えていた。

 片や悪のカリスマと名高いドンキホーテ・ドフラミンゴ。片や最悪の世代にしてロッキーポート事件の首謀者であるトラファルガー・ロー。

 衝突すれば周囲のどれ程の損害が出るか計り知れない。

 

 

 

「こんなバカなマネをもし出来る奴がいるとするなら… !! この世じゃ “天竜人” くらいなもんだ !! ………お前、まさか !! 」

 

「フッフッフッ !!! …もっと根深い話さ。ロー… !!! ──とにかく、お前“も”殺したかった !!! 」

 

「 !!! 」

 

「ジョーカー !! さっさとこんな奴たたん…ウゲ !! 」

 

 

 

 ヤジを飛ばすシーザーの襟巻きを引っ掴んで手繰り寄せればシーザーの喉からは締め上げられた鶏の様な声が搾り出される。

 シーザーと共に急に動かされたシグマもまた、たたらを踏んでシーザーの背から飛び出てしまった。

 

 

 

「殺したかろうがなんだろうが! コイツを返す訳にはいかなくなった… !!! 何も約束は守られてねェんだからなァ !!! ドフラミンゴ !! ──この取引は白紙に戻させて貰う !! 」

 

「ギャー !! 何言ってんだてめェ !! ここまで来て !! 」

 

「フッフッフッフ !!! それが10年以上も無沙汰にしたボスに言う言葉か !? それとお前のモノ言いじゃァそこの小娘を引き渡す気は無かったようだなァ…! 小娘諸共置いてけロー !!! ──シーザーはおれのかわいい部下だ !! 」

 

「……ジョ…… !! ジョ〰︎〰︎カ〰︎〰︎ !! 」

 

「──── !! 」

 

 

 

 懐いた犬の様にハートを飛ばすシーザーとは対照にシグマは顔を真っ青にさせてガタガタと体を震わせている。

 

 そのやり取りを見据えていた海兵の1人が藤虎へ耳打ちする様に、ローの側にいるシーザーの存在を報告すると、シーザーの隣で震えるシグマにも言及した。

 

 

 

「奴らと一緒にいる女……“数十年前”から行方がわからなくなっている “天竜人” の写真と瓜二つですイッショウさん」

 

「……毒ガス事故の科学者に行方知れずの“天竜人” に瓜二つの女性ですか……しかし、あれだ…。七武海の旦那の部下なら免除ですねェ……恩赦だ…。お嬢さんの方は…保護させて貰いやしょう」

 

 

 

 “天竜人”の警護、保護は大将の義務でもありやすからねェ。

 

 その藤虎…イッショウの呟きが離れて居ても聞こえたのか、ドフラミンゴは血管を浮き立たせながら 「保護だァ !? 」 といきり立つ。

 

 

 

「『世界徴兵』で海軍大将に特任された “藤虎” …噂はよく聞いてる… “緑牛” と共に実力は折り紙付きの化け物だとな! 」

 

「こらどうも、恐れいりやす…」

 

「フン !! とぼけた野郎だぜ… !! だが、幾ら大将とはいえ小娘を保護されちゃあおれが困る… !! 小娘からは手を引けェ! 藤虎 !! 」

 

 

 

 ドフラミンゴのシグマの対する凄まじい程の執着心にイッショウは一瞬押し黙るも、湧き出る疑問を落ち着き払った声音で率直に訊ねる。

 

 

 

「まだ軍の新参者のあたくしには、あんたの行動は理解しかねますね。…はっきりと裏は取れちゃいねェが “七武海” としてちょいとルール違反をなさってるって情報も入ってやす…」

 

 

 

 一度言葉を切ったイッショウは盲目にも関わらずシーザーがいる方へ顔を向けて、先程からそちらさんがおっしゃる “ジョーカー” という名はあだ名か何かで? と問いかけるも、それらの疑問を鼻で笑ったドフラミンゴに 「おれを調べたきゃあ…それなりの覚悟で周到に裏を取って物を言うんだな !! 」 とにべもなく一蹴されてしまう。

 そして、これ以上痛い腹を探られたくないドフラミンゴは同じく “七武海” としてルールを破ったローに話の論点をなすりつけた。

 

 

 

「フッフッ…それで? 『海軍』は今回のローの処分をどう決めた !? 」

 

「せ、せこい !! 探られたくないからって話の論点をこっちになすりつけるなんて !! 腐ったみかんと結託してるクセに! サイテー !! 」

 

「……」

 

「ひぃっ! 」

 

 

 

 サングラス越しに鋭く睨み付けられたシグマは短い悲鳴をあげてシーザーを盾にするように広い背中へ隠れた。

 頭上からびびンなら喧嘩売ってんじゃねェよバカガキ! と罵声を浴びせられるがそんな事気にならない程シグマはドフラミンゴにびびっており、普段なら噛み付くシーザーの発言も聞き流してしまう。

 

 

 

「……報じられた麦わらの一味の件、記事通り『同盟』なら “黒” !! …彼らが…ローさん、あんたの『部下』になったのなら…… “白” だ !! 」

 

 

 

 返答によって自身の仕事はローと麦わらの一味の逮捕だと刀を構えながら言い放ったイッショウにシーザーはそんなもんウソをつけば終わりじゃないかと噛み付く。

 シーザーにして見れば漸くローから解放されて自由の身になれる所を海軍大将 “藤虎” の律儀な問答で台無しにされようとしているのだからそれはもう必死にもなる。

 だが相手は海軍大将。例え七武海の部下と言えども犯罪者の喚きなど気に掛ける事などない。

 

 今ここで重要なのはトラファルガー・ロー本人の答えただ一つ。

 藤虎は相手の口から話し自身の耳で聞いた事で是耶否耶の判断を下そうとしていた。

 

 

 

「……」

 

 

 

 周囲の海兵が固唾をのんで身構える中、ローは随分と目論みが狂ったと思案する。

 本来ならば、七武海を脱退した筈のドフラミンゴに海軍を焚きつけさせて争いに乗じトンズラするつもりであった。それが今やローだけに目標を定められてしまっているなどと、誰が予想出来るだろうか。

 ──兎にも角にもこれ以上事態を悪化させない為にも、ローはグリーンビットでドフラミンゴと海軍の足止めを行い時間を稼ごうと決めたのだった。

 

 

 

「麦わらとおれに上下関係はないっ !! 記事通り “同盟” だ !!! 」

 

「な !!? 」

 

「フッフッフッ !! 不器用な男だおめェは !! 」

 

「ンッフフフフ !! 本当に不器用な方ですこと…! 」

 

 

 

 緊迫する空気に、今まで存在しなかった声が投げ掛けられる。

 全員が弾かれた様に声の掛かった方へ目を向ければ、そこには不健康の権化のような男が見目からは想像も出来ない優雅な仕草で紳士的に腰を折ってお辞儀をしていた。

 

 

 

「ご機嫌よう! 紳士淑女の皆々様! …と、言いたい所ですが、」

 

 

 

 落ち窪んで血走る眼がギョロギョロとその場の全員を値踏みする様に見渡すと、侮蔑を隠そうともしない汚物を見るような表情で男は顔をしかめる。

 

 

 

「品の無い海賊…品の無い海軍……そして、品の無い小娘… !! 」

 

「な、なに !? なんでわたし睨まれてるの !? 」

 

「…怖気が走る! 薄寒い小娘…吐き気がする !! 」

 

「初対面でこの言われよう! 一体なんなんだ !? 」

 

 

 

 そう言って泣き言を叫んだシグマの襟首を掴んで男から遠ざけたシーザーが信じられないと言わんばかりの表情で男を指差す。

 その指は動揺からか、酷く震えていた。

 

 

 

「お、お前…まさか “じゅげむ” か !!? 」

 

「え !? じゅげむ !? アレが !? 」

 

 

 

 シーザーの背から顔を覗かせていたシグマが驚きの声を上げる。

 聞いていた話と大分かけ離れた人物像のその男は、何処か惚けた態度で “じゅげむ” と呼ばれていた事を肯定した。

 

 

 

「ハイ? ……えぇ、まァ。嘗ては “じゅげむ” と名乗った事も有りますが……ですが、えぇ、ですが! 今は私 “ピグマリオン” と名乗っておりますので…」

 

「やはりそうか! 変わり過ぎて気付くのが遅れたが、その気取った気持ち悪ぃ話し方! おれは良く覚えてるぞじゅげむ !! 」

 

「ンッフ…! 」

 

「てめェが30年間何処で何をしてたか知らねェが! 今更何をしに来やがった…エスメラルダの金魚のフンめ !! 」

 

 

 

 七武海と海軍大将が揃っている場で平然とした態度のピグマリオンは暫く顎を枯れ枝の様な細長い指で撫でながら思案した後、シーザーを見据えたまま口を開く。

 

 

 

「ン〰︎〰︎フフフ…! 貴方はァ…! ………────どちら様でしたっけェ !? 」

 

 

 

 気味の悪い顔をコテンと倒して本当にわからないと言わんばかりのピグマリオンの態度にシーザーは額やこめかみに青筋を浮かべ 「ふざけるな!この天才科学者のおれを忘たってのかよォ !! 」 と噛み付くも、男はなんでもない様に 「私の知る天才科学者はベガパンク氏ただ1人だけですが…」 と至極真っ当な事を口にする。

 

 

 

「居候の分際で !! よくもまァそこまで傲慢になれたもんだぜ! じゅげむ !! てめェなんてエスメラルダが居なきゃただの凡人じゃねェかよ !! 」

 

「──ンッフフフフ… !! 何を言う…! 我が愛にして我が女神の器に『錬金術』を教えて差し上げたのは紛れもなくこの私 !! ピグマリオンに他ならないというのに !!! でェ !!! あればァ !!! ……我が愛たるガラテアに劣る貴方はァ! 凡人たる私以下の下郎という事になりますなぁ…? 」

 

「ぐ、このォ… !! って、ちゃんとおれのコト憶えてるンじゃねェかよ !! 」

 

「ンフ…。ですが、ですがですが… !! 私は貴方のことなど、どうでもで良いのです…私が真に用があるのはァ、ねぇ? ──そこの小娘ェ !! 貴様、貴様貴様ァ! 貴様はなんだ !! 我が愛と同じ顔で同じ声の貴様はなんだ !!? その器は爪先から髪の細部に至るまで私が“あの碑石”をこの手ずから丹精込めて彫り直して差し上げようとしていたのだ !!! 誰が貴様を彫った誰が貴様に命を吹き込んだ誰が誰が誰が誰がァ !!! 」

 

「ひっ…! ぅ、わ、わたしはエスメラルダじゃない!わたしはシグマ! 人間だ !! 」

 

「────ハァ? 」

 

 

 

 顔を掻きむしりながら息継ぎのない早口で捲し立てられたシグマがシーザーの背から顔を覗かせてピグマリオンにエスメラルダでは無い事を伝えれば、石像の様にピタリと微動だにしなくなった男が枯れ枝の様な指の隙間から血走った目を覗かせてシーザーを視界に捉える。

 そのおどろおどろしい形相を向けられたシーザーはビクリと身体を震わせたが、すぐに睨み返すやいなや口角を上げてニヤついた顔のまま 「そうさ! コイツはおれが造ったエスメラルダのクローンだ! 」とピグマリオンを煽り返したのだった。

 

 

 

「な、な…! そ、ん──」

 

「ん〰︎〰︎? なんだよ! おれ様の凄さに声も出ねェか !? 」

 

「なんでそんなに偉そうなの? 」

 

「黙れクソガキ !! お前はおれが造ってやったからこの世に──」

 

「──こ、の…匹夫めがァ !!! 我が愛を穢すだけでなく我が女神をも穢そうというのかこのこのこのォ…ォァアアアアア !!! 今すぐに清めなければァ !!! 我が愛が…我が女神が穢れてしまうゥ… !!! 卑しい人の身で作られた器など !!!! 神の器に非ず !!!! 贋作はァ !!!! 破壊せねばァ !!!! ああああ、エスメ…ラルダァ… !!!! 」

 

 

 

 言2人の言葉を遮ってピグマリオンは吠える。

 皮膚に食い込む爪からプツプツと赤い血の玉が溢れて顔を伝い落ち、叫び過ぎてガスガスになった喉から聞き取る事が困難な呪詛じみた言葉の羅列を吐き出すピグマリオンは亡者の様にフラリと足を踏み出す。

 

 ────瞬間。

 

 突如、男の首が結合部から滑るようにゴトリと砂浜に転がった。

 ダクダクと血潮を吹き零したまま、男の枯れた巨木の体躯は糸の切れたマリオネットみたいにぐしゃりと崩れ落ちる。

 

 

 

「…………ッッ !!! 」

 

「フッフッフッフッ! 気狂いはさっさと片付けるに限る……! 」

 

「…天夜叉さん、あんたって人は」

 

「なんだよ藤虎! フフフフ! お前だって斬るつもりだったんだろ !!? いいじゃねェか! 遅かれ早かれ、あんな気の狂いようじゃァいつか命を取られてたろうよ… !! 」

 

 

 

 咎めるような素振りのイッショウをいなしてドフラミンゴは砂浜に崩れ落ちた首のない亡骸を見て嘲笑う。

 力もない癖に、この場に乱入して来た気狂いの男のなんと無様な事か。

 

 

 

「まァいいでしょう……間が空きやしたが、ローさんの処分は… “七武海” の称号剥奪という事で…………ニュースはそれで済めばいいが…」

 

「? …おい藤虎、何をしようとしている…」

 

「ヘェ、ほんの腕試し……という奴で…」

 

 

 

 イッショウが宙へ目にも留まらぬ速さで刀を振るい納刀すると、砂を巻き上げながら空高くへ謎の波動が立ち昇っていく。

 

 

 

「 !? 」

 

「…あれって…まさか… !!! 」

 

「……ウソ、だろ… !? 」

 

 

 

 遙か上空、宙の彼方に墨汁を垂らした様に黒い点が現れて徐々に大きくなっていく──否、大きくなっているのではなく、黒い点はこのグリーンビットへ “近付いて” 来ている。

 

 雲を蹴散らし、大気に燃やされ飛来する物体……即ち『隕石』は轟々と熱を纏いながら有り得ない速度と軌道で真っ直ぐこの場に降って来ているのだ。

 

 

 

「い、隕石 !!? 」

 

「冗談じゃねェぞ、オイ… !! 」

 

「走れ〰︎〰︎〰︎〰︎ !!! 」

 

「隕石が落ちてきたァ !!! 」

 

 

 

 空を見上げて冷や汗を垂らすドフラミンゴとローにぽかんと口を開けて呆然とするシグマを他所に、イッショウ以外の海兵達や海楼石の錠に繋がれているシーザーは悲鳴を上げながら一目散に森の方へ駆け出した。

 

 

 

「オイ! バカガキ何してる! お前も来い !!! 」

 

「ま、待ってくれ! 彼が !!! 」

 

「知るかよ !!! いいから来い !!! 」

 

 

 

 呆然と空を見上げて固まっていたシグマの腕を錠で繋がれた手で掴み引き摺るように駆け出したシーザーにシグマはローを置いて逃げる事は出来ないと言うも、その主張はシーザーにうるせェと一蹴されて終わってしまう。

 掴まれた腕を外そうと抵抗していたシグマだが、シーザーの懐に抱えられて森へ飛び込んだ瞬間に巻き起こった爆風と飛び散る隕石の残骸から身を守る事で精一杯になり、ローの心配などしている余裕も無くなってしまった。

 

 やがて砂嵐が晴れて、静寂がその場を支配する。

 

 

 

「ゼェ…ゼェ…! 何だ !? 何が起きた !? あの一瞬であいつら何を… !! 」

 

 

 

 地に伏せ、全身に積もった砂を払い落としながらシーザーはかけていたサングラスをずらして砂嵐の晴れたビーチの様子を伺っていたが、庇う様に下敷きにしていたシグマが暴れ出す。

 

 

 

「おっも〰︎〰︎い !! 退いて退いて! 」

 

「ンだとこのクソガキ! 誰のおかげで五体満足でいられてると…」

 

「あ !! 見ろ! 3人の足場だけ無傷だ !!! 」

 

「話を聞けよオイ !!! 」

 

「あ !! 森の中へ入っていった !!! わたしも彼を追いかけなきゃ !!! 」

 

「だから !!! おれを無視するな !! 待てよシグマ !! オイ! 待てっつってンだろ! このクソガキぃ !!! 」

 

 

 

 ローを追って森の中へ駆け出したシグマを怒鳴り散らしながらシーザーもまた森の中へとシグマを追いかけて入っていったのである。

 

 

 

 

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