レプリカント   作:華麗なイモリ

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何故かドレスローザ国王にも命を狙われているらしい
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 ドレスローザに向かう一行は、ローが考える四皇打倒の策を聞くため芝生を敷き詰められたサニー号の甲板に集い、各々好きな場所で腰を下ろした。

 

 シグマは作戦とは無関係だが、取り敢えずシーザーの隣りに座るとあからさまに嫌そうな顔をされたので真顔のまま養父の脛毛を摘んで勢いよく引っこ抜けば、シーザーの口から飛び出た短い悲鳴に数人がこちらの様子を伺うも、直ぐに何事もないと分かれば2人に向けられた視線は直ぐに逸らされる。

 側で治療を施していたチョッパーも怪我に直接関係しない事は黙認するようでお咎めはなく、ただシーザーだけが目に涙を浮かべてシグマを睨みつけていた。

 

 同盟を組んで四皇を倒すという無茶無謀極まりない話に、ゾロは好戦敵に乗り気ではあるが、戦闘が得意でないナミやチョッパー、ウソップの3人は顔を青ざめさせて反対の人ー!と多数決を取るも、ブルックに「反対したらどうにかなるんですか?」と至極真っ当な正論を言われてしまう。

 涙を飲んで反対を諦めたウソップは作戦以前に同盟を組んだ事すら知らない面々もいるため、まずは同盟に至った経緯を話すようルフィを促した。この男、案外切り替えの速い男なのである。

 

 

 

「ルフィ! まずは知らねェ奴らに同盟の話を」

 

「ん? よし! お前ら! ウチとトラ男の海賊団で同盟を組んだぞ !! 仲良くやろう !! ししし !! 」

 

 

 

 ウソップに説明を催促されたにも関わらず、説明のせの字も無しに事実だけを述べたルフィが満面の笑みで “トラ男” 、もといローの肩を強く叩く。

 船長のそんな言葉にクルー達の視線がローへ向けられたが、それは敵意や猜疑心なんてものではなくて、むしろ友好的な眼差しですらある。

 そんな、話の中心人物であるロー本人と言えば、口を固く結んで不機嫌そうな顔をしているものの、内心を取り繕う事が出来ておらず、こめかみには汗が浮かんでいた。

 

 海賊の常識において、ロー自身、麦わらの一味には歓迎されないと予想していただけに何故か友好的な麦わらの一味に意表を突かれてばかりだ。

 こんな能天気さで本当に作戦を遂行出来るのか、そもそも新世界でやっていけるか、少しばかり不安が募り心なしか頭が痛む気すらしてくる。

 現に今もサンジがローにルフィの考える『同盟』とローの考える『同盟』は少しズレているから気を付けるよう耳打ちをしており「なんだこのお人好し集団、正気か」とローは心の中で一味を軽く詰ったのだった。

 

 

 

「だからルフィが誘拐誘拐ってガラにもねェ事言ってたのか…この変な羊捕まえて料理してくれと言われても流石のおれも困る所だった…… ローの指示だったんだな」

 

 

 

 トレーを脇に抱えてシーザーへ指差したサンジの言葉に、シーザーは打ち震えながらもヤケクソな笑みを浮かべ「こんな事をしてただで済むと思うな… !! てめェらの愚かさを知り… !! 死ぬがいい !!! 」と大声で勢いよく捲し立てるも、すぐさまその顔面にサンジの靴底がめり込んだ。

 特徴的な悲鳴をあげてひっくり返るシーザーに怪我を悪化させたサンジへ治療中だとチョッパーは怒り、隣に座っていたシグマは苦笑いを浮かべながら養父の両腕を引っ張って胴体を起こしてやると、起こされたシーザーは大人しく萎んだ表情でチョッパーから追加の治療を受けている。

 

 

 

「パンクハザードでお前らに頼んだのはシーザーの誘拐。おれは【SAD】という薬品を作る装置を壊した…それとアイツの…… 」

 

「?」

 

 

 

 一瞬、シグマへ視線を向けたローは言いかけた言葉を飲み込んで何でもないと誤魔化すと、直ぐに新世界における海賊達の内情を説明する。

 曰く、新世界にいる大海賊達は海の何処かにナワバリをもって巨大な犯罪シンジゲートのように君臨しているという。

 その数多くの中で闇の取引…犯罪シンジゲートで最も信頼と力をもつドンキホーテ・ドフラミンゴこそ闇の仲買人 “ジョーカー” なのだと明かした。

 

 

 

「ジョーカーにとって最も巨大な取り引き相手が『四皇』 “百獣のカイドウ” 」

 

「んな !!! 」

 

「………… !!! 」

 

 

 

 『百獣のカイドウ』の名に、錦えもんとモモの助が冷や汗を顔に浮かべて過剰な反応を示した。

 錦えもんは大口を開けて、モモの助に至っては驚きすぎて竜に変身してしまっている。

 

 

 

「どうした? 」

 

「いや… !! なんでもござらん… !! 続けてくれっ!」

 

 

 

 振り返ったゾロが尋ねるも、目を泳がせながら錦えもんは気にするなと口にすると、同じく驚いているであろう横にいる息子の様子を伺おうとして、竜の姿をしたモモの助に驚き飛び退いていた。

 パンクハザードでもそうだったがどうやら錦えもんには龍やドラゴンなどの爬虫類に過剰な反応をしてしまう様である。

 

 

 

「…話を続けるぞ。おれ達が狙うのは『四皇』カイドウの首…! ──つまり、コイツの戦力をいかに減らす事が出来るかが鍵 !! …今、カイドウはジョーカーから大量の果実を買い込んでいる」

 

 

 

 その果実こそ、人造の動物系悪魔の実『SMILE』だ。

 

 そう言うローに、作業をしながら聞いていたウソップが「そんなもん作られたら際限なく能力者が増えてちまうじゃねェか !! 」と、焦り混じりに叫んだ言葉にローは首を縦に振って肯定した。

 

 

 

「そう言う事だ。…まァ、人造なだけにリスクはある様だが、そのリスクを冒してでも現に今、カイドウの海賊団には500人を超える能力者がいる」

 

「ごっ !? 500人 !!? っ辞めたい人っ !!! 」

 

「「ハイ! ハイ! ハイ! ハイ! 」」

 

「黙ってろ」

 

 

 

 顔を真っ青にして震えながら一生懸命に辞めたいと主張する3人をゾロが容赦なく一蹴すると、3人は観念したような眼差しで芝生へ視線を落とすが、挙手された腕はさがる事はなく、無言の主張はなされたままだ。

 話を遮られたローだが、500人の能力者はいるがそれ以上に増える事はないと言い切る。

 

 と言うのも、現状【SMILE】を製造する為の薬品【SAD】を作れるシーザーが人質としてこの船に乗っていて、これから説明する作戦を加味すれば、四皇『百獣海賊団』に新たな能力者が現れる事は天然物の悪魔の実が手に入らない限りないと断言出来る筈だ。

 

 さっきまで500人という数字に怯えていたチョッパーやあんまり興味を示していなかったブルックやサンジまでもが、『人造悪魔の実』の素である【SAD】を作っていたシーザーに関心を寄せれば、シーザーもシーザーで満更でもなさそうに頬を染めている。

 しかし、その興味もローのベガパンクの技術の応用だと言う発言を聞けば直ぐに手の平を返したかの様にさめざめとシーザーへの関心を失ったのだった。

 

 

 

「何だ、すげーのベガパンクか…」

 

「黙れ貴様ら! じゃあ作れんのかよォ !! アホのクセに !! ……大体なァ! ベガパンクだっててめェ1人で血統因子を発見した訳じゃねェんだ! おれと変わらねェだろうがよォ !! 」

 

「誰の功績だっていいだろうに」

 

「うるせェ! その顔と声で言われるとムカつくんだよ !! エスメラルダじゃねェ癖に! このパチモンクソガキ !! 」

 

「あーーーー! 言ってはいけない事を言った !! サイテー !! 」

 

 

 

 一味の視界の端でシーザーとシグマの殴る噛み付くの取っ組み合いが始まるが、ローはソレを視界に収める事なく我関せずと次の一手に動くためにドレスローザという国の何処かにある【SMILE製造工場】を破壊すると口にする。

 

 

 

「工場を見つけて潰すって訳か」

 

「その通り…敵は取り引きのプロだ、油断はしない」

 

「キン !! お前が行きたいのもそこか !? 」

 

「いかにも! 」

 

 

 

 ルフィに問い掛けられた錦えもんが威勢よく答えて刀をスラリと抜き、鬼気迫る表情で同志が1人捕まっているのだと言う。

 

 

 

「聞けば、そこな小娘もドレスローザへ向かうと聞き、こうしてついでに載せてもらった次第にござる! 」

 

「え? シグマ、お前もドレスローザに行きたかったのか? 」

 

「?」

 

 

 

 シーザーの手に噛みついていたシグマがルフィを振り返ると首を傾げながらドレスローザを目指している事を否定する。

 

 

 

「いいや? わたしは船が調達出来れば何処でもいいとも。あぁ、そうか! 次の島までと言ったから誤解させてしまったのか! わたしはやりたい事が…ううん、やらなきゃいけない事が出来たから、船さえ手に入れば本当に何処でもいいのさ」

 

「ふ〰︎ん。で、やらなきゃならねェ事ってなんだ? 」

 

「…まぁ、乗せてもらってるんだ、話すべきだろう……わたしは30年前にパンクハザードから持ち出されたという『賢者の石』を回収して壊したいんだ。アレは世界の理を崩しかねない危険な代物だからね」

 

「何だソレ? 」

 

 

 

 首を傾げるルフィにシグマは苦笑いを零した。コレの危険度は詳しく説明しない事には理解はできないだろう。

 

 

 

「石なんだろ? 宝石の類いとかか? …そんなに価値が高くても危険ってのは言い過ぎだろ」

 

「いや、長鼻の君。この石は恐ろしいモノなんだ。確かに内に秘められた高純度のエネルギーは何でも変換出来るし、文字通りなんだって出来る。……それこそ、人を()()()()にだってね」

 

「 !!! 」

 

 

 

 息を呑む彼らの内、ローの驚愕とした眼差しがシグマに向けられた。

 

 …不老不死、まさかこんなタイミングでそんな言葉を聞く事になるとは思いもしなかったローは人知れず奥歯を強く噛み締める。

 

 

 

「そんな凄い石を何で壊したいの? それがあればシグマだって苦労せずに暮らせていけるじゃない」

 

「まて、ナミ。…なァ、おれぁ船大工だがエネルギーにも手を出してる。だからな、おめェの言う『賢者の石』とやらが胡散臭くて仕方ねぇ…。小娘…その石、一体ナニで出来てやがる」

 

「………」

 

 

 

 ナミの言葉を遮ったフランキーの鋭い考察にシグマは押し黙って、視線を少し彷徨わせたが、意を決したように全員の顔を見渡して口を開いた。

 

 

 

「……石の材料は、()()()()()だ…。『賢者の石』とは数多くの人間の魂を凝縮させた1つの結晶体のことなのさ」

 

 

 

 その悍ましい内容に全員が顔色を変えた。

 生きた人間が材料だなんて碌でも無いものを作り出した人間を責め立てたくなるが、シグマの思い詰めた様な顔を見てしまえば誰もが何も言えなくなる。

 シグマは言う。この咎は同じ錬金術師の自分がケリをつけなければならないと。

 自身の手の平を見つめながらシグマはまるで懺悔でもするようにその手を握りしめる。

 

 

 

「ケミケミの実の能力、錬金術の奥義…いや、禁忌はそういう術なんだ。だから次代であるわたしが先代エスメラルダの過ちを正す! …だから、養父(とう)さん…ううん、シーザー。彼女の助手だった男の事を教えて欲しい」

 

 

 

 シグマの真っ直ぐな視線にシーザーは戸惑う。

 

 20年間育ててきたクローンはこんな意思を持つ目をしていただろうか? 否だ、多少の口答えや反抗が芽生えて意思の片鱗を垣間見せてはいたが、シーザーの知るクソガキは自分の核となる意思なんて持っていやしなかった。言う事を素直に聞くだけの生き人形だったのに、それが、いつの間にか数時間見ない間に『人間』になっていたのだ。

 

 

 

「お前…誰なんだよ。おれのシグマは、そんな人間みたいな事、」

 

「わたしはシグマ。ただの “Σシグマ” …人間さ。人間にしてもらったんだよ、シーザー」

 

「……。…エスメラルダの助手の事はおれも詳しくは知らねェ…MADSに勧誘されたその時からあの男は付き添ってて…名前は、そう… “じゅげむ” と名乗っていた」

 

 

 

 何処か気落ちした様子のシーザーが口にした名前にいち早く反応したのは何故か1番関係無さそうな錦えもんだった。

 彼は冷や汗をかきながら信じられないと言わんばかりの態度だ。

 

 

 

「じゅ、じゅげむ !!? 偶然でござるか… !? いや、そんな偶然は…」

 

「 !! 知っているのか、髷…… !? 」

 

「髷 !? …せ、拙者が知っているじゅげむは、もう200年も昔の人間で…不足娘の探している男とは限らぬだろう」

 

「不足娘 !? …200年前にも石が作られたなんて思いたくも無いが、石があれば…すまない、その男について君が知っている事を教えてくれ! エロ侍! 」

 

「こ、小娘っ !! 先程から聞いておれば! 拙者を蔑める言動ばかり吐きおうて! 武士に対して無礼でござる! 」

 

「無礼なのはそっちだバカ侍! 君が彼女達の胸部とわたしの胸部を見比べて『あ〰︎あ』みたいな顔してたの知ってるんだぞ! 先の発言ではっきりした! なんなんだ! 胸が無くて何が悪い !!! 」

 

 

 

 ナミやロビンを指さして喚くシグマの胸部に全員の視線が向けられた。

 確かにシグマの双丘は例の2人に対してソレはもう慎ましいものだが、なぜそんな事で怒るのか男性陣には理解が及ばず、ルフィのあいつ何に怒ってんだ? と言う言葉にゾロも首をかしげざるをえない。

 

 ただ、女性陣だけはシグマの怒りが理解できるのか困ったような笑みを浮かべ、お互いの顔を見合わせている。

 

 途轍もなく重い話をしていたのに、一気に間の抜けた空気にウソップやローなどの常識人よりの人間は出端を挫かれた心地になってしまい、疲れたように地面やマストの柱に背を預けて脱力するのだった。

 

 

 

「じゃあ錬金屋はドレスローザに着き次第おれ達とは別れるって事でいいんだな」

 

「あぁ、そこで皆んなとはさよならだ。情報はまだまだ足りないが、気長に旅をするよ。海も空も繋がっている…また何処かで会うかもね」

 

「うぉ〰︎〰︎小娘ェ〰︎〰︎ !! まだドレスローザにゃ着いてねーぞォ !! シケタこと言ってねェで、サニー号をスーパーに楽しめ !!! いいな !!? 」

 

「あの、なんで彼は号泣を? 」

 

「彼、涙脆いの」

 

 

 

 噴水のように涙を噴き出すフランキーを指さして尋ねれば、ロビンが笑みを浮かべながら情に熱い男なのだとシグマに伝えると、「ふぅん」なんてあまり興味の無さそうな返事を彼女は返したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 皆が寝静まった真夜中…とは言っても眠れずにいる者も何人かいるが、甲板でシーザーを枕に眠るシグマと寝苦しさに魘されながらストレスからくる歯軋りが響く騒がしい中、ローも壁にもたれながら浅い眠りに着いていた。

 いつ何があっても起きれるようにしていた彼だが、ほんの一瞬の気の緩みで深い眠りに落ちたのか摩訶不思議な夢を見る事となる。

 

 

 

「…──殿、ロー殿! 」

 

「…? ……おい、誰だお前ら」

 

 

 

 ぼんやりとした意識のなか、地べたに座る彼を囲むように3人の男達がローを見下ろしていた。

 警戒したローが鬼哭を握ろうにも、夢の中では持っていなかったのか、空振った手を見つめて鋭く舌を打つと、3人の男を睨みつける。

 

 全く知らない顔だ。一文字のつながった眉毛の男に丁髷出っ歯の男、それと顎のしゃくれた狐のような目をした男。

 何度でも言うが全く心当たりがない。

 

 

 

「そう睨まれるな! 」

 

「我らはお主がロロノア屋と呼ぶ男がもつ刀の精霊」

 

「でア〰︎ル」

 

「待て精霊ってなんだ、ソレ以前になんでロロノア屋の刀がおれの夢に出てくる。しかも変なオッサンの姿で」

 

「我が名は和道一文字! 」

 

「あっしは三代鬼徹! 」

 

「そして吾輩は秋水でア〰︎ル」

 

「聞けよ話を! 名前なんて聞いてねェだろ !! 」

 

 

 

 自由すぎる振る舞いに思わず怒鳴りつけたローだが、直ぐに気を落ち着かせて、早く覚めろ早く覚めろ! と心の中で念じた。

 念じたところで何が変わるかわからなかったが、何もしないよりはマシと言う考えがローの中にあったのかもしれない。

 

 

 

「ふぅむ。何やら我らに興味があるようだったのでこうして夢に馳せ参じたのだが…」

 

「あまり嬉しそうでは無い」

 

「のでア〰︎ル」

 

「興味はあったさ刀にはな! 何でオッサンの姿してんだ…クソ、早く覚めろ! 」

 

「では、ここは我等のちょっとカッコいい技を披露すればいいのでは? 」

 

「流石は和道一文字、1番頼りなる男」

 

「でア〰︎ル」

 

「もうなんでもいいから早く覚めてくれこんな夢…! 」

 

 

 

 思わず顔を覆ったローに構う事なく刀三人衆は各々に構えると息ぴったりの掛け声で技を披露する。

 切れ味の良い切先の如く鋭利な気配に思わずローは身構えた。

 

 

 

「「「三刀流……! Δデルタアタック !!! 」」」

 

「ロロノア屋の技じゃねェのかよ !!! 」

 

 

 

 何も反応しないと決めていたのにも関わらず、無駄に身を構えさせられた上に、全く違う技を出された事でローは我慢が効かずに言及してしまう。

 

 

 

「いい加減にしろよてめェら! ヒトの夢ん中で好き勝手トンチキ騒ぎしやがって! だいたい、」

 

「あれ? 君達何してるの? 」

 

「おい、なんで錬金屋まで出てくる。これ以上トンチキを増やすなおれの夢で…… !! 」

 

 

 

 1人頭を抱えて唸っている間にも、トンチキ共は変に意気投合したのか何故か真剣を片手にチャンバラごっこを始めたのだ。

 キンキン、カンカン、喧しい音にローの堪忍袋は破裂寸前である。

 

 

 

「「「「わーい、わーい! チャンバラ、チャンバラ! 」」」」

 

「お前ら…いい加減に、しろーーーー !!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

「 ──ッハ! …酷い夢を見た…! 」

 

 

 

 休んだ筈なのに全然休んだ気にならないのは夢見が悪かったせいだと、ローは取り敢えずシグマの頭を一発引っ叩く事を心に決めた。

 理不尽だろが何だろうが、決めたものは決めたのだ。

 トンチキな夢に出て来ただけで引っ叩かれるシグマも可哀想ではあるが、パンクハザードで世話を焼いた日々を想像すればまぁ、致し方なしと思えないことはない。

 恨みがましい目で睨まれていることなど、呑気に寝こけているシグマにはわからないのであった。

 

 数時間後、ブルックの弾くギターと歌声が早朝の空に響き渡ると各々が支度を整えて甲板に集まり朝刊を囲めば、そこには【ドンキホーテ・ドフラミンゴ『七武海脱退』 !!! ドレスローザの王位を放棄 !!? 】という新聞の一面を飾る大ニュースが報じられている。

 

 

 

「ほ、本当に辞めやがったァ〰︎〰︎ !!! 」

 

「お…王位って !!? 王様だったんですか !!? 」

 

「王様〰︎〰︎ !? 鳥の国か〰︎〰︎ !? 」

 

「? 鳥の国…でっかい塩湖でもあるのかな…? 」

 

 

 

 頭にタンコブをこさえたシグマが頭部を撫で摩りながらルフィの疑問に頓珍漢な言葉で便乗する。彼女の脳内ではピンク色のフラミンゴが巨大な塩湖に群れなしていた。しかし、そんな事を考えていたシグマは傍目にローの姿捉えた瞬間大人しくシーザーの側へ下がっていく。

 シグマからしてみればよくわからない理由で叩いてきた情緒不安定な男をこれ以上刺激しないようにしたのだろう。

 

 各々が様々な感想を抱く中、こんなのあっさり事が運ぶと逆に不気味だと言うフランキーにローが新聞から目を離すことなく、これでいいんだと笑みを浮かべる。

 ローはドフラミンゴに選択肢を与えはしたが、実質は一択限りであり、カイドウとの衝突を避けるためドフラミンゴには七武海を脱退し王位を放棄する他に生き延びる方法はない。

 

 

 

「ジョーカー…… !! おれの為にそこまで…! 」

 

「要はカイドウと衝突を避ける為だろう? あなたじゃなくて【SAD】の為だろうに」

 

「バ…! ううう、うるせェ! 【SAD】の為だろうが、ソレはおれしか作れねェんだからおれの為みたいなモンだろうが !! バーカ!バーーーーカ !! 」

 

「あーーーー !! バカって言った! 信じられない! バカって言った方がバカなんだぞ! このバーーーーカ! 」

 

「ハァーーーー !!? バカなのはお前の方だこのクソガキ! バカガキ! クソバカガキ !! 」

 

 

 

 争いは同レベルの間でしか起きないとは言うが、またしてもくだらない理由で取っ組み合いを始めた義理の親子2人を止めるものは誰もいなかった。

 

 ローがサニー号に備えられている電伝虫のダイヤルを慣れた手つきで回せば、焦らされるように数コール鳴った後にガチャリと受話器が取られる。

 

 

 

『おれだ…七武海をやめたぞ』

 

「出たぞ! 」

 

「出た !! 」

 

「ドフラミンゴか !! 」

 

「しーーーーっ !! しーーーーっ、お前ら声が入るだろ! 」

 

 

 

 電伝虫越しに聞こえた声に騒めく一味にウソップが小声で咎めるものの、ローが持つ受話器へ側に立っていたルフィが顔を寄せると大声を張り上げて名乗りをあげた。

 

 

 

「もしもし! おれはモンキー・D・ルフィ !! 海賊王になる男だ !!! 」

 

「お前黙ってろっつったろ !!! 」

 

 

 

 ウソップの後頭部を引っ叩かれながらもルフィは止まる事なく、眉間に皺を寄せて『ミンゴ』なんていう変わった呼び名でドフラミンゴを呼ぶ。

 ローの事をトラ男なんて呼ぶ男だ、ネーミングセンスが壊滅的である事など一味の皆が理解しているのはともかく、乗り合わせのローや錦えもんとモモの助、シーザーやシグマも薄々感じていた事なので誰も言及はしない。

 

 ルフィはパンクハザードで出会った者たちを脳裏に思い浮かべながら啖呵を切った。

 

 

 

「茶ひげや子供らやシグマをひでェ目に合わせてたアホシーザーのボスはお前かァ !!! シーザーは約束だから返すけどな、今度また同じような事しやがったら今度はお前もブッ飛ばすからな !!! 」

 

 

 

 物凄い剣幕でそう捲し立てていたルフィだが、ドフラミンゴの一言で一瞬にして目の色が変わる。

 

 ──『お前が喉から手が出る程欲しがる物』

 

 それがドフラミンゴがルフィへ言った言葉だった。

 少しの間押し黙っていたルフィはすぐさま眼をかっぴらくと、涎を垂らしながらそれはどれほどおいしいお肉なんだ…… !!! と途端に相手のペースに乗せられてしまう。

 実際、ドフラミンゴが持つルフィの欲しがる物が何か明かされていのだが、恐らく何を言ってもルフィは男の言葉に乗せられてしまうのがオチである。

 

 

 

「麦わら屋 !! 奴のペースの乗るんじゃねェ !! …ジョーカー !! 余計な話はするな !! ……──約束通りシーザーは引き渡す」

 

『そりゃあ、その方が身の為だ──ここへ来てトンズラでもすりゃあ…今度こそどう言う目にあうか、お前はよくわかってる』

 

「…………」

 

 

 

 余裕が滲むドフラミンゴの声に妙な違和感を抱きながらもローは押し黙る他なかった。

 ローのトラウマとも言える過去の記憶が男の声で顔を覗かせるが、ソレにローは黙って蓋をする。ここで噛み付いてしまえば途端にドフラミンゴのペースに持って行かれてしまうだろうと考えて。

 

 

 

『フッフッフッ !! さァ…まずはウチの大事なビジネスパートナーの無事を確認させてくれ』

 

「……」

 

「いててて! いてェ! このクソガキっ! 執念深いとこばっかエスメラルダに似やがって! 離れろっ…! お前は犬か何かか !? 」

 

「がるるる! 」

 

 

 

 未だに取っ組み合ってるシーザーへローが電伝虫の受話器を向けると、それに気が付いたシーザーが噛み付くシグマをそのままに受話器へにじり寄ると、シグマへ向けていたような粗暴な声音などなかったかのように涙声入り混じる情けない声を上げた。

 

 

 

「……っジョーカー !! すまねェおれの為にアンタ七武………! 」

 

 

 

 ローに手で制されたシーザーが言葉を途切れさせるが、一声聞いただけで満足したのかドフラミンゴは『あァ、元気そうだ』と電話口に告げる。

 ドフラミンゴが納得したところで、ローは口早に時間と場所を伝えると、つれない態度で言葉を締め括るその言動は言外に無駄話には付き合わないと言わんばかりだ。

 

 

 

「今から8時間後 !! 【ドレスローザ】の北の孤島、【グリーンビット】 “南東のビーチ” だ !! 午後3時にシーザーをそこに投げ出す。勝手に拾え──それ以上の接触はしない」

 

『フッフッフッ !! 寂しいねェ…だがロー、置いていくのはシーザーだけじゃあちと、足りやしねェか』

 

「どう言う事だ…」

 

 

 

 交渉内容はシーザー・クラウンの身柄と引き換えに七武海を脱退すると言う物で、ドフラミンゴもその条件を呑んで今に至る筈だ。

 それをシーザーの身柄だけでは足りないとイレギュラーな発言をするドフラミンゴにローは納得いかないという態度でふざけるなと要求を一蹴する。

 

 

 

「シーザーと引き換えに取引を呑んだのはお前だろう! ジョーカー! 」

 

『フフフフ! 別に無茶難題を吹っかけようって訳じゃねェさ』

 

 

 

 ペースに乗せられていると焦りを感じながらも、ローは平静を取り繕ってドフラミンゴの真意を探ろうと、慎重に聞き返す。

 

 

 

「…何が目的だ」

 

『エメラルドの目をした小娘…そいつも置いてけ、ロー! なに、仲間じゃねェんだ、問題ないだろう !? 』

 

「 !!? 」

 

 

 

 全員の視線がシグマへ向けられるが、当の本人であるシグマは何のことか理解が追い付いておらず、呑気にぽやっとした顔で首を傾げていて、危機感という物が全く機能していない。

 

 

 

「無関係の奴を巻き込む趣味はねェ…! シーザーだけで我慢しとけ、ドフラミンゴ…! 」

 

『フフフ! 無関係、ねェ…フッフッフッフッフッフッ !! ……関係大有りだ。────なにせ、おれをドン底に突き落とした女のガキだからな… !! 顔ぐれェ直接拝みたいと思うのは当然だろ… !? フフフフフフ !!! なァ、エスメラルダの……… 』

 

「切れー !! こんなもん !! 」

 

 

 

 ローの手からひったくられた受話器が電伝虫に乱暴に置かれると、ルフィを除く他全員はえもいわれぬ空気に押し黙る。

 

 …徐々に現状を理解し始めたのか、シグマの身体がブルブルと震えだすと、可哀想になるほど真っ青な顔で叫んだのだった。

 

 

 

「も、もしかして…! わ、わたし────また、命を狙われてる……ってコトぉ〰︎〰︎〰︎〰︎ !!? 」

 

 

 

 

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