体調不良で残業どころか仕事もキツイので明日休むこと前提で書いております。
「……わ、私は悪くないからね!」
私はレミリア・スカーレット。ちょっと前世の記憶があったり能力の幅が広かったりするけれど正真正銘、クセ者揃いの紅魔館の主よ。
幼少期に前世の記憶が蘇ってからは多少ごたついたりしたけれど、今はフランの狂気も抑えられてるし吸血鬼としての弱点も克服したし正に順風満帆!
……の筈だったんだけどね。
「……まあいいわ。ここって幻想郷の何処なのかしら。美鈴、ちょっと見て来なさい。」
ついさっき、紅魔館を爆音と共に転移させるという異変を起こそうとしてフランに邪魔をされて失敗してしまったの。
本来の予定だと妖怪の山辺りに転移するつもりだったんだけど、ちょっと……いやかなり魔力を込めすぎちゃったのよね。
……下手すると幻想郷の外まで転移してる可能性があるわね。
と、そんな事を考えているとパチュリーが冷たい目で私を見ながら美鈴に指示を出している。……私悪くないのに。
「えー、私ですか?……分かりましたって、そんな目で見ないで下さい。」
嫌そうな顔をしていた美鈴だがパチェの纏っている冷たい雰囲気を察してか自ら出て行った。
それから暫くして……
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コンコン、というノックの音……など美鈴が鳴らす筈もなく、図書館の扉が蹴破られる。
「た、たたた大変です!!!」
「ちょっと美鈴、そんなに慌てる程の事なんて無いでしょ?」
美鈴のただならぬ雰囲気……などガン無視して私は軽く声を掛ける。
まあもしかしたらアメリカとか位まで転移してる可能性はあるけど……まあ多少のハプニングなら楽しんでいかなくちゃ。妖生長いんだから。
私は優雅な仕草で紅茶を口に含む。
「ここ!地球じゃありません!」
「ぶふぅ!」
私は思わず紅茶を吹き出した。今なんて……?
まさか遂にボケたか?幾ら魔力を込めすぎたからって宇宙に転移する程込めてないけど?……というかそもそもパチェがそんなミスをする筈はない。
今回転移の術式を作ったのはパチェだ。少なくとも呼吸が出来る場所に転移してるはず。まあ私は呼吸しなくても生きていけるけど。
「とりあえず、私も見に行くわ。」
よし、ここは紅魔館の主たるこの私が転移先を見極めてやろうではないか。正直、地球じゃないなんてそんな訳ないわよね。
何かの間違いというか美鈴の勘違いというのが一番説得力がある。
そうよ、そうに違いないわ。と、半ば現実逃避をしながら無駄に広い玄関ホールを通り扉を開く。
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「……うん、地球じゃないわね。」
今の地球にこんな森は無いわ。……信じたくないけど、本当に別世界のようね。
まさか本当に別世界に来てしまうなんて。……正直少しだけわくわくしている自分がいるのが悔しいわ。
と、少し黄昏ながら森を散歩していると……
「や、やめて!」
ふぅん。悪魔……?角が生えてるし、魔界の奴らかしら?何か子供を襲ってるみたいだけど……。
うん、大悪魔レベルなら話が通じるかもしれないけど、子供一人相手に襲い掛かる低級悪魔なんて会話する価値もないわね。
あの子供に恩を売ってその親から情報を得るべきね。
「そこの悪魔、その子供は私の獲物よ。たった今私が決めたわ。悪魔なら力量差くらい分かるでしょう?私にその子を譲りなさい。」
「……分かりました。」
「……え?」
えぇ……本当に譲っちゃうの?幾ら魔力で威嚇したとはいえそんな簡単に従っちゃっていいの?プライドとかないの?
なんて事を考えてるうちに推定低級悪魔は何処かに去っていった。
余りの聞き分けの良さに多少呆けてしまったがまあ好都合ではある。
「ゴホン!人間の子よ。少し話を聞かせてくれないかしら?」
「は……はい。」
子供かと思ったけどよく見ると成人してそうね?背が低いだけか。
「私はレミリア・スカーレット。吸血鬼よ。まあ事情を説明しても分からないでしょうから端的に言うとね、情報が欲しいの。」
「……情報?」
ふむふむ。やっぱりただの村娘よね。
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なるほど……あれは魔族というのか。
私は村娘から得た情報を咀嚼する。話を聞くに、ここはよくあるファンタジー小説のような世界らしい。
なんでも魔王軍とかいうコテコテのネーミングの奴らが居るらしく稀に人間から勇者と呼ばれる者達が現れては次々と魔王に敗れていくらしい。
ふむふむ。……私の知ってる作品だったりと、都合のいい事は無さそうね。
でも魔法という割となんでもアリの技術が広く知れているというのは面白そうだわ。使える者はそう多くはないみたいだけれど。
先程の村娘にはお礼と称して洗濯物を乾かす魔法が記載されているらしい魔導書を貰った。
ふざけてるのかと思ったけど何でも本当に家宝だったらしい。ちなみに私には魔導書の字が読めなかった。
ちなみにここは昔存在していた統一帝国とかいう国の流れを汲む帝国とやらのかなり辺境らしく、この森の向こう側にはその帝国とやらがあるらしい。
帝国がゲシュタルト崩壊しそうね。
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「……って事なの。パチェ、これ解読して。」
「はぁ……」
その帝国とやらの軍事力も分からないし、右も左も分からない現状、無闇に敵対勢力を作るのも避けたい。
なので隠す事に特化した結界を張って紅魔館をこの森林一帯に偽装させている。パチェが。
私はまあとりあえず、いつも通り生活している。
食糧なんかは庭で作物を育てているし地下室にも……ん?そういえば何で地下室まで別世界に転移してるのかしら?
まあいいわ。とりあえず暫くは表立った活動はせずに文字の解読や人間に偽装しての情報収集に徹する事にした。
私は人間を侮ったりしないわ。昔それで痛い目を見たからね。それに数は力だ。
魔法という概念が存在する以上、パチュリーレベルの魔法使いが居る可能性もある。
というか、パチュリーはまだ魔女としては若い部類なのだ。
最悪を想定するならパチュリー以上の魔法使いの存在も考えなくてはならない。流石に居ないだろうけど。
とりあえず、向こう50年は情報収集ね。
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「……え!魔王が倒された!?」
ちょっと引き篭ってる間に一番面白そうな場面を見逃してしまった。
魔王って結局どんな奴だったのかしら。七崩賢とかいう幹部的な奴らを従えていたというのは知ってたけど。
……かなり勿体ない事をしてしまった。勇者側に着いて魔王城に乗り込んだりしたかったのに。
逆に魔王側に着いて裏ボスムーブを噛ますのもやってみたかった。ああ、本当に勿体ない。
「……咲夜、紅茶を頂戴。」
「はい。」
私はしんみりとした気持ちで咲夜の淹れた紅茶を味わう。
ちなみにウチの咲夜は人間だけど能力の影響で歳を取らない。もう時間の感覚も私達側の存在になってしまった。
まあそれはそれとして時間には煩いけど。
「はぁ……もう文字も覚えたし情勢もある程度頭に入ってる。そろそろ行動を起こす時なのかもね。」
というか、まあ完全に行動を起こすべき時を乗り過ごした感はあるけれど。
「へー、勇者ヒンメルね。」
どうやら魔王を倒した勇者はヒンメルというらしい。ヨシヒコじゃないのか。
後で知った情報によると勇者パーティは勇者ヒンメル、僧侶ハイター、戦士アイゼン、魔法使いフリーレンという構成だったらしい。
はぁ。私もそこに名を連ねる筈だったのに。
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勇者ヒンメルの死から29年後
北側諸国・アルト森林の最奥にて。
断頭台のアウラとその配下の討伐後、フリーレン一行は北側諸国の冬の厳しさを身をもって知り、クラフトと名乗るエルフと出会う。
その後も何だかんだあり、ザインを仲間に加えたフリーレン一行は魔法都市へと向かう為、ラート地方へと向かっていた。
「なあ、フリーレン。そろそろ休まないか?もう良いだろ?違和感なんてないって!」
「俺もシュタルクに賛成だ。昨日からフリーレンの様子がおかしい。少し休むべきだと思うぞ。」
昨日からフリーレンは道中事ある毎にこの森林に違和感があると言い、それから忙しなく動き続けている。
というか落ち着きが無さすぎてフェルンに怒られていた。
「いや、もう少しだけ待って欲しい。この辺のはずなんだ。多分この辺に何かを隠す結界が……」
とグダグダ言いながらも足を動かし続けた甲斐あってか、一行はフリーレンの感じていた違和感の正体を目にした。
「……驚きました。まさか本当に結界が張ってあるだなんて。……フリーレン様?」
フェルンは親しい者にしか分からないであろう驚きの表情を浮かべながらフリーレンを呼び掛けるが返事が無い。
そこでフリーレンは片手を上げて止まれという合図を出した。
「皆、気を付けて。この結界を張った奴は普通じゃない。この魔法は私の知るどの結界魔法とも合致しない。つまり魔族の魔法の可能性がある。」
「げ!また魔族かよ!もう勘弁してくれよ〜。」
シュタルクは情けない表情を浮かべてその場に座り込んだ。
「おいおいシュタルク、お前は戦士である前に男だろ?しっかりしてくれよ。」
ザインが軽口を叩くが、フリーレンの表情は依然険しいままだ。
「……入りますか?」
フェルンが恐る恐るフリーレンに訊ねる。
「……どうしようか。貴重な魔導書の匂いがする。いやでも魔族だとしたら……」
フリーレンは何やら険しい表情だがその実魔導書を取るか身の安全を取るかを天秤に掛けていた。
1000年を生きたフリーレンの知らない魔法という時点で人類の扱う魔法の可能性はゼロに等しい。
仮に魔族だった場合、名を知られていない大魔族の可能性がある。
なんと言っても、彼女達の目の前には何故今まで気付かれなかったのか不思議な程の不気味な紅い館があったのだから。
つまりフリーレンは頭の中でパーティメンバーの命と魔導書を天秤に掛けていたのだ。
ろくでもねぇエルフだ。
「いや、やっぱり辞めておこう。今回は流石にリスクが過ぎるよ。」
散々迷ったフリーレンだが、流石にパーティメンバーの命の方が大事だ。今回は手を出すのを辞めておく事にしたらしい。
だが、少し時間をかけ過ぎたようだ。流石に不用心が過ぎたらしい。
一行が固まり、その視線は一箇所に吸い寄せられる。
フリーレンが杖を抜くと、それを合図に皆が臨戦態勢に入る。そしてゆっくりと館の扉が開いていく。
「いやぁ、咲夜さん以外の人間なんて久しぶりに見ましたよ。こんにちはー。」
中から出て来たのは南側諸国の民族衣装の様な服装をした女だった。
「はぁ……なんだよぉ、驚かせないでくれよ。」
シュタルクはその姿を目にしてまたしても座り込んでしまう。だが依然、フリーレンとフェルンは杖の先を女へと向けたまま。
「魔法ですか?私に敵対する意思は無いので、杖を下げてほしいんですが……」
女は困った様に眉を下げて両手を上げる。お手上げのポーズだ。
「……お前は、魔族か?」
「魔族……?なんかお嬢様が言ってましたけど、こっちの妖怪の事ですかね?」
女は魔族という言葉を知らないような素振りを見せる。
「……魔族を知らないなんて奴は居ない。辺境の村ですら魔族という言葉自体は通じるだろう。もう一度聞く。お前は魔族か?」
「だーかーらー!私は魔族なんて知りません!!!」
女は少し語気を荒げると腰に手を当てて怒っているポーズをする。フリーレンは怪訝な表情のままだが一先ず杖は降ろすことにした様だ。
「……ここは何?」
「ここですか?ここは偉大なる吸血鬼、レミリア・スカーレットお嬢様の御屋敷です。」
「……やはり魔族か!」
再びフリーレンが杖を抜くがその杖を後ろからシュタルクが抑える。
「まあまあ!落ち着けって!少なくとも今は町の危機って訳でも無いんだ。少しくらい話を聞いても良いじゃないか。」
「シュタルクも知ってるでしょ?魔族っていう生き物は狡猾なんだ。私達を騙して」
フリーレンの話を遮って女が会話に入ってくる。
「あの、良いですか?さっきから貴女失礼過ぎませんか?まず私はその魔族っていう生き物では無いです。そこは理解して下さい。」
「……」
「……あの、すみません。私達、ここに来るまでに魔族と色々とありまして。」
少し女の機嫌が悪くなったのを察してかフェルンが間に入る。少なくともここで事を構えるのは避けたがいいという判断だ。
そしてそれは正しい。ここは既に結界のすぐ側。女が結界内部に入るだけでフリーレン達は手を出せなくなる。
相手に敵対の意思が無いのならばここは穏便に済ませようとフェルンはフリーレンを諌める。
「なーんだ、そういう事だったんですね!でしたらウチで休んで行きませんか?お客さんなんて久しぶりなのでお嬢様が喜びますよ!」
フェルンがそう言うと女はケロッと態度を変えて最初のふわふわした雰囲気へと戻った。
「なぁ、ど、どうする?」
「……そうだね。少なくとも今敵対するのは避けた方が良さそうだ。」
シュタルクが恐る恐る聞くと、フリーレンが場の空気を読まずに余計な事を言うが赤髪の女もいい意味で空気を読まないので
先程のように雰囲気が悪くなる事は無かった。
「よし!じゃあ決まりです!私に着いてきてください!」
女は無防備に背を向けて扉と踵を返した。
「……魔族が敵対意志を見せている相手にこんな致命的な隙を晒す訳が無いか。」
というふうにフリーレンは結論付けた。
「ふふん。……魔導書読ませて貰えないかなぁ。」
先程の態度が嘘のように無邪気な表情を浮かべて女に着いていくフリーレン。
「……はぁ。行きますよ、シュタルク様。」
「へいへい。」
こうしてフリーレン一行は謎の女に連れられて謎の館へと足を踏み入れるのだった。
……そこが悪魔の館とも知らずに。
高評価多いと励みになります。