吸血鬼を殺す魔法   作:Crimson Wizard

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久々の休みでした……明日からまた仕事です。是非高評価、感想等をお願いします。


第3話

 

本を読み漁っているフリーレンとフェルンを置いて、シュタルクとザインは咲夜の持って来た朝食兼昼食を食べていた。

 

「うんめぇなこれ!アイツらも食えばいいのに……冷めちまってからじゃ勿体ないぜ。」

 

「まあ、アイツらは既にご馳走を目の前にしているようなもんだからな。当分は来ないだろうさ。」

 

図書館の中にテーブルと椅子はあったが、そこで食事をすると本に匂いが着いてしまうと言われて図書館の入口付近で食事をしている2人。

 

「……ねぇフェルン。この魔法凄く便利じゃない?」

 

「確かに旅にはかなり役に立ちそうな魔法ですね。……これはどうですか?」

 

相も変わらず食事には目もくれずに本を読み漁っている師弟コンビは覚えたい魔法を厳選していた。

魔導書といっても、読むだけで魔法を覚える代物では無い。そんな本もあるにはあるが、流石に読ませては貰えないだろう。

1冊の魔導書の内容を完璧に理解するまでに大体半日は掛かる。習得するのには1日程掛かるだろう。勿論魔法の難易度にもよるが。

 

つまり簡単な魔法が記載されている魔導書を複数読むか、難易度が高い魔法を1つ覚えるか、2人は本気で悩んでいるのだ。

 

シュタルクとザインは食事を終え、退屈そうに図書館のテーブルにもたれかかっていた。

 

「私はこの魔法にするよ。」

 

遂にフリーレンが覚える魔法を決めたらしい。

 

「では……私はこれを。」

 

フェルンも迷いに迷ったようだが、1つに決めたようだ。

 

「……その本読むの、1日で終わりそうか?」

 

ザインがそう2人に声を掛けると、師弟コンビは声を揃えて言った。

 

「「無理。」です。」

 

「はぁ……吹雪の時は仕方無かったが、まさかまた引き篭る羽目になるなんてな。もう少し早く別れておくべきだったぜ。」

 

大きな溜め息を吐きながらそんな事を言うザインに気持ちは理解出来るシュタルクが声を掛ける。

 

「そんな事言うなよザイン。仮にそうなってたら、俺は話し相手も居なかったんだぜ。」

 

「そうは言ってもなぁ。まだ昼過ぎだぞ?あの2人が本を読み終えて寝るのは早くても明日の夜だ。アイツらが途中で寝るはずが無い。」

 

と、2人で愚痴を言っていると真横に突然咲夜が現れた。

 

「うおっ、相変わらず慣れねぇな。」

 

「申し訳ありません、驚かせてしまって。お2人ともかなり退屈そうなので、カードゲームを持って来ました。」

 

カードゲームと聞いて、少し気分の上がる2人。特にザインは賭けでよくやっていた。

 

「これはトランプと言って……」

 

咲夜から遊び方を説明され、実際に遊んでみるシュタルクとザイン。まあ何も無いよりは遥かにマシだろう。

そうして……2人はカードゲーム。2人は魔導書の熟読というふうに分かれ、各々2日間を紅魔館で過ごした。

 

フリーレンとフェルンは夕食の時以外は顔を出さず、図書館のテーブルに釘付けだった。

流石に2日もすれば魔導書の内容は頭に入ったようで、2人とも今は満足そうに眠っている。

 

 

 

 

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「……彼女がフリーレン。詳しくは知らないけれど、1000年以上生きているというのは本当のようね。」

 

貸し出された寝室で眠るフリーレンを水晶を通して覗いているパチュリー。

確かに膨大な魔力量だ。巧妙に隠されていて、普通に見る分には多少優れた人間の魔法使い位にしか見えないが。

 

今パチュリーは隠されている魔力を見ているが、これも魔法によるものだ。

彼女と比べると、パチュリーの魔力量の方が少ない。こればかりは生きた年月の問題だ。

 

確かにその人生の殆どを魔法に費やしてきたパチュリーの魔力量は年齢と比例しない程に多い。

だがそれでもフリーレンの6割程だろうか。これをパチュリーは特に問題視していない。

 

魔法使い本人が持っている魔力の事をオドという。大半の魔法使いはこれを利用して魔法を使う。

一方でパチュリーが使う魔法の源はマナという大気中に漂う、微弱な魔力を利用する。マナ、それは地球でないこの星であっても当然存在する。

そもそもマナを認識出来る魔法使いなど前の世界でも、この世界でも、恐らく両の手の指で数え切れる数しか居ないだろう。

 

魔力を視認出来る事が前提であり、そこから更に研鑽を積まなければならない。

魔法の才能と努力する才能、そして魔力を視認するという才能がなければどれだけ努力しても無駄だ。

これだけで通常の魔法使い相手には優位に立てるが、パチュリーは更に魔石と呼ばれる物を開発した。

 

これは某ハリポタの賢者の石の様な物であり、更にパチュリーの魔力を凝縮して限界まで石に込めてある。

この石を砕く事でパチュリーは魔力の回復を瞬時に行う事が出来る。

それに魔力を回復するポーションも開発済みだ。これのせいで、熟練の魔法使いだろうがパチュリー相手には手も足も出ないだろう。

ちなみに某ハリポタの原作と同じく石を呑み込めば不老になるという効果もレミリアの余計な一言で追加されている。

それに加えて、命の水にはならないがパチュリーの作った石は継続して呑み続ける必要が無い。

 

世界中にこれを欲する者は数え切れぬ程いるが、1度でも他人の手に渡った事は無い。

 

「……彼女の覚えている魔法、欲しいわね。」

 

パチュリーが何をコソコソしているのかというと、自分の知らない魔法を知っているフリーレンからどうにか情報を奪い取ろうとしているのだ。

素直に質問すればいいものを、レミリアから究極の陰キャという称号を与えられているのは伊達ではない。

相手と会話せずに魔法を覚えたいのだ。だが対象の魔法を奪い取る魔法や、記憶を読み取る魔法などは制限が多く、大前提として相手に触れていなければ使えない。

つまりどう頑張っても不可能なのだ。

 

勿論パチュリーはこの世界に来てから新たに幾つもの魔法を覚えた。ヴワル図書館には自動的に本を収集する機能があるので、

目新しい本を見つけては読み漁り、魔導書を見つけては睡眠も取らずに習得するまで読み続けた。……まあパチュリーに睡眠は必要無いのだが。

 

50年程はそんな生活を続けていたので、勿論メジャーな魔法は粗方習得済みだ。

 

一般攻撃魔法(ゾルトラーク)などはその筆頭だろう。

 

だが、パチュリーは自身の知らない魔法であれば幾らしょうもない魔法だろうと欲しくなる。これはもはや、魔法使いの性なのだ。

パチュリーは仕方無く最終手段を持ってフリーレンの寝室へと向かった。

 

……いや起きてる時にしろよ。

 

 

 

 

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何度もノックをするが、フリーレンは起きない。仕方なく扉を開けて中に入るパチュリー。

 

「寝相悪っ」

 

ベッドに乗っているのは足だけで上半身は全て床にはみ出している。

 

「ちょっと、起きて頂戴。」

 

「むにゃ……フェルン、あと5年だけ……」

 

「時間の感覚がおかしいし私はフェルンじゃないわよ!」

 

遂に目を覚ます魔法というこの世界で覚えた魔法をフリーレンに使用する。

 

「……今何時?……あれ、フェルンじゃない。」

 

「私は最初からフェルンでは無いわ……夜分遅くに悪いわね。少し話があって来たの。」

 

フリーレンは瞼を擦りながらパチュリーに訊ねる。

 

「話って何?」

 

「あなたの知っている魔法、出来れば全て……と言いたいけれど流石に無理だから、おすすめの魔法を複数厳選して欲しいの。」

 

「……まあ、魔導書の恩があるから、別に」

 

新しい魔法を覚えさせて貰ったし、まあそれくらいなら良いかなと返そうとするフリーレン。

 

「勿論タダでとは言わないわ。」

 

「む。」

 

「代価として、……魔石。これをあげる。」

 

「……凄い量の魔力が込められてるね。私の魔力の半分くらいあるんじゃない?……ん?今あげるって言った?」

 

「ええ。これを呑めば寿命は無くなるし、砕けば即時魔力を全回復出来るし、悪い話では無いと思うけど?」

 

物凄く複雑な顔をしているフリーレン。……何か不味い事言ったかしら。

 

「……うん。別に良いけど、でもこんなもの良いの?量産出来る物でも無いでしょ?」

 

確かに、これを創るには1つにつき約半年掛かる。だがまだストックはあるし、パチュリーからすれば知らない魔法の方が価値が高い。

 

「良いわ、それはあげる。ただし、魔法の方は任せたわよ?」

 

「任せて。」

 

これだけの物を渡されたのだ。ニヤリと笑ったフリーレンはどの魔法を纏めようか考える。

 

「じゃあ、まだ数日は滞在するでしょ?ここを出るまでに纏めておいて。」

 

「了解。おやすみ、パチュリー。」

 

「おやすみなさい、私は寝ないけどね。」

 

そう言って部屋を去るパチュリーを見送るフリーレン。

 

「……この石が、もう少し早く手に入っていれば。」

 

無論、全てを信じている訳では無い。だがパチュリーの魔力量を見れば、彼女が魔法使いとしてどれだけ優れているか分かる。

そんな彼女が、私に嘘を吐く理由もない。

 

ヒンメルに、ハイターに、これを呑ませたかった。自分と同じ時間を生きて欲しかった。

でも、それはもう叶わない。幾らパチュリーとはいえ、時間を戻す魔法なんて都合のいい魔法は知らないだろう。

それに、ヒンメルは満足して死んだんだ。ハイターも、フェルンに看取られて。

 

それを私の都合で捻じ曲げて、フェルンとシュタルクを捨ててまで執着して、果たして彼らは喜ぶのだろうか。

 

「……駄目だ。とりあえず、眠気は無いしパチュリーに渡す魔法の厳選でもしようかな。」

 

良くない方向に思考が傾くのを感じて、フリーレンは気持ちを切り替えるべく部屋に取り付けてある机に向かい合った。

 

 

 

 

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パチュリーがフリーレンの寝室に侵入してから3日後、一行は再びレミリアの居る部屋に足を運んでいた。

 

「……そう。もう此処を出るのね。」

 

「はい。色々とお世話になりました。」

 

そう言って頭を下げるフェルン。

 

「じゃあ、俺もそろそろ……な?」

 

「……ああ。またな、ザイン。」

 

元々、フリーレン一行とザインは別れる予定だったのだ。その寸前でこの館を見つけただけであって。

 

「あら、僧侶が抜けてしまうの?」

 

「うん。ザインにはザインの目的があるからね。我儘を言って彼を困らせたくない。」

 

レミリアの質問にそう答えるフリーレン。最初に会った時の様な敵対的な態度はもう無い。

フリーレンがそう答えると、レミリアは顎に手を当てて何かを考え出す。

 

「……じゃあ、あなた達の旅に私も同行して良いかしら?」

 

「え?」

 

困惑の視線を向けてくるフェルンとシュタルク、怪訝そうな顔をしているフリーレン。挨拶をしたはいいものの抜け出すタイミングを見失ったザイン。

 

「……目的は何?」

 

「目的?そうね……私はね、元々勇者パーティに入りたかったのよ。」

 

レミリアの突然の告白に目を丸くする一行。

 

「それで、娯楽小説の主人公みたいな楽しい冒険がしたかったの。でもね、フリーレン。あなたならわかってくれると思うのだけど……」

 

意味深な物言いをするレミリアに不思議そうな顔をするフリーレン。

 

「……何が?」

 

「私達長命種は時間の感覚が人間と違うでしょう?」

 

「……吸血鬼とやらの寿命は知らないけど、確かにそうだね。」

 

「気付いたら、終わってたのよ、何もかも。魔王はもう討伐されてるし、勇者はいつの間にか死んでいた。」

 

「……なるほど。旅の目的がある訳では無いんだね。」

 

「そうなの。私は楽しい冒険がしたいのよ。そして、この世界を心から満喫したいの。」

 

これは紛うことなきレミリアの本音だ。レミリアの本質は前世の人格が少し混じっているのを加味しても、多少悪寄りだ。

だがそれは吸血鬼としての本能の様なものであって、レミリアが積極的に人を害する事は無い。……少なくとも今は。

 

「昔は色々悪さしてたんだけどね、この歳になるともう落ち着いちゃって。でもやっぱり退屈なの。」

 

「……どうする?フェルン。シュタルク。」

 

「まあ……いいんじゃないでしょうか?人が増えて困る事は無いですし。」

 

「俺も別に……ザインが抜ける分穴は空くしな。」

 

「良いんだって。じゃ、行こうか。」

 

「やった!じゃあ、そうね。私は何時でもこの館に帰って来れるから、日替わりで従者を入れ替えようかしら。」

 

その発言に耳を疑うフリーレン一行。

 

「……レミリアだけじゃないの?」

 

「え、そうなの?別にそれでもいいけど、従者がいた方が何かと便利よ?咲夜が1番だけど、まあ最悪美鈴でもいいわ。」

 

「……まあ、それは置いといて、何時でも帰って来れるってどういう事なの?」

 

「あ、言ってなかったわね。私、自分だけなら転移の魔法だったり、影を移動する魔法があるから、それで紅魔館に帰って来れるの。」

 

転移の魔法となると、相当高度な魔法の筈だが。……後で教えて貰おう。そんな事を考えているフリーレンを余所にフェルンが質問する。

 

「複数人は無理なんですか?」

 

「うーん。私の魔法だと、そうね。無理かも知れないわね。あなた達人間の肉体強度だと転移魔法に耐えられないかも。」

 

やっぱり人間には覚えられないのか、と内心ガッカリしているフリーレンはさておき、話が纏まった様なので固まっていたザインが動き出す。

 

「んじゃあ、締まらねえ最後だったが、またな、お前ら。」

 

「……またね、ザイン。」

 

そうして全員でザインを見送り、話はレミリアに戻る。

 

「で、着いてくるって話だけど、その格好で行くの?」

 

「流石にこれでは行かないわよ。ちょっと外用の服に着替えて来るから、ここで待ってて頂戴。」

 

そう言って玄関付近に全員を待機させ、少し経つとレミリアが帰ってきた。

 

「……何その格好。」

 

「え?いや、何時でも戻って来れるとは言っても、やっぱり雰囲気壊れるじゃない?だから外で生活出来るように、荷物を纏めてきたの。」

 

服装は普通なのだが、レミリアは自分の身長より大きなバックパックを持って来ており、それをドスンと床に置いた。

 

「レミリア様、それは流石に目立ち過ぎます。もう少し小さいバックは無いんですか?」

 

そうフェルンがレミリアに言うと、レミリアはふふんと薄い胸を張って答えた。

 

「問題ないわ。これはね……ほら。」

 

そう言ってレミリアが荷物を触ると荷物が一瞬で消え去った。

 

「……まさか、空間を弄る類の魔法?」

 

「その通り。これは亜空間を創り出してその中に荷物を収納してるの。だから本来ならバックパックは要らないんだけどね。」

 

雰囲気よ雰囲気、と楽しそうに答えるレミリアにフリーレンとフェルンは言葉を失った。

 

「じゃ、行ってくるわよ咲夜!留守は任せるわ!」

 

「はい、行ってらっしゃいませ。」

 

レミリアが大声でそう叫ぶと、いつの間にか真後ろに咲夜が居て、お辞儀をしている。

 

「じゃあ、私達も行こっか。」

 

そう言って歩き出したフリーレンに着いて行くレミリア。

 

「あ、翼消すの忘れてた。」

 

そう言って翼を何処かへと仕舞うレミリア。

 

「それ消せたの!?」

 

驚きを隠せないシュタルク。フェルンも目を見開いている。

 

「出来る様になったのは最近だけどね。この見た目だと不便だし、身長や体重も弄った方がいいかしら。」

 

と、意味の分からない言葉を連発するレミリアを皆が目を丸くして見詰めているのだった。

 

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