いのち短し走れよ少女   作:夏色バレッタ

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幻想郷走者縁起(五)

河城にとり

大阪・中河内(なかかわち)地域で小さな整備工場「河城自動車」を営む河童

昭和末期から平成初期にかけて首都圏でチューニングショップ「河城スピード」を経営していたが、資金ショート等の事情が重なり西へ

得意としていたVTECチューンが評価され、大阪の地でふたたび返り咲いた──しかし、現在は一般整備の範囲に留め、ホンダの二輪・四輪をメインにそれ以外も扱っているようだ

「河城自動車」の業務の傍ら、アンダーグラウンドで違法のガンスミス業をしている

河城にとりのチューニングの本領は「空力の先のエクスタシー」と表現される、そのVTECの官能性とスピードの伸びにある

同時に、その過激すぎるチューニングはNAにも関わらず、湾岸級ハイパワーターボ以上の死者を出してもいるとのこと

これ以上ない傑作と認めたエンジンはヘッドがグリーンに塗装され、胡瓜の品種にちなんだペットネームが水色で刻印される──過去に存在が確認されたのは二基のみ、B16A「千秀1号」B16B「千秀2号」(ともに現存せず)

重度のヘビースモーカー、マイルドセブンを一日に3箱は吸う

好きなものは胡瓜とVTEC

嫌いなものは借金取りとボックスパッケージの煙草

 

 

古明地こいし

ロータリーエンジン専門のチューナー、時計技師

外界で活動していた過去を持つが、紅美鈴や河城にとりとは違い商売にはせず、プライベーターとして活動していた

古明地こいしの愛車であるSA22C型RX-7は旧式にも関わらず、平成初期の七曲りと長尾峠下りレコードタイムを更新

そのタイムは平成が二桁になった現在でも「公式には」破られていない──非公式を含めた場合、博麗霊夢と東風谷早苗の七曲り下りセクションタイムがそれを更新しているだろうとのこと(証言:八雲紫・洩矢諏訪子)

古明地こいしのチューニングスタイルは謎に包まれているが、幻想郷で唯一の古明地チューンを駆るミスティア・ローレライは「タッチ」こそがその真価と語る

「けして『絶対的に』速いわけじゃない──こころの速さに応えられる『組みの精度』」が特徴のようだ

実際、機械式時計の整備で培った繊細さを古明地こいしはチューニングに応用しているという──厳しい基準では、エンジンの組みに「マイクロミリ」単位を要求するらしい

本人の思想として「チューニングは芸術活動」といったものがある

そのため、気に入った相手とマシンなら無料でエンジンを組むし、気に入らなければいくら金を積まれても頷かないという

過去、箱根一帯のロータリー乗りの間で「古明地チューン」を求める声は数多く存在したが、古明地こいしは一切返事をすることなくフェードアウト

他人のために組んだマシンは「今のところみすちーのFDだけだね」と、古明地こいし本人が語っている

本人はあくまでエンジン専門であり、全体設計・セッティングは姉が担当しているようだ

スパイスジャンキーであり、東京・浅草の名店の七味を常に持ち歩いている

特技はチューブの練からしを一気飲みすること

好きな酒は照葉樹林、ミスティアの屋台にグリーンティーリキュールがあるのはこの人のため

 

 

ミスティア・ローレライ

屋台の女将で実業家、アーティスト

八目鰻屋台とドライブインを経営しているロータリー乗り

幻想郷における事業で最も成功した人物の一人であり、現在の「幻想郷走り屋ビジネス」のさきがけ

幽谷響子の吸排気パーツ業「幽谷不銹(ふしゅう)本舗」の経営実務も担う

ドラテクは中の上だが、「走行性能よりも贅と楽しさを優先したマシンづくり」の面で最先端であり、目のつけどころがいつも新鮮

八目鰻屋台も顧客の要望を柔軟に取り入れながら、あくまで居酒屋としての空気を壊さないたしかな商才を持つ

酔っ払い相手には聞き上手だが、音楽の方向性においては聞く耳を持たない

そのため、彼女と幽谷響子のバンド「鳥獣伎楽」の機材を積んだハイエースは人里出禁となってしまった──聖白蓮曰く「騒音も問題だが、本当のところは死人が出かねない激しさだから」とのこと

バンドの担当はギター / キーボードおよびクリーンボーカル

幽谷響子がベースおよびアンクリーン・ボーカル*1

サポートメンバー(主にドラム)はプリズムリバー三姉妹を中心に依頼しているようだが、観客の乱入も歓迎している模様──「死にたいやつはいつでもウェルカム」との談

鳥獣伎楽とセッションしたい人は、弾幕でポジションを奪い取ろう

ライブパフォーマンスの一環で、最近ドライブイン夜雀のライブステージを全焼させた(修復済み)

 

 

小野塚小町

サボり魔の死神

ミスティアの屋台の常連

三途の渡し舟を漕ぐのが面倒臭くなり、「三途のタイタニック」(自称)にマリンエンジンを自分で取り付けた

特別チューニングしたヤンマー製エンジンは三途の川最速の呼び声高く、盆の時期は指名が忙しい

「事故死の不安なくスピードのスリルを楽しめるよ。だってもう死んでるからね!」と小町の渡し舟に乗った死者からは好評

小町本人は映姫にしばかれたものの、船頭の重労働に苦しむ死神たちが団体交渉した結果、三途の渡し舟はエンジン付きが主流になりつつある

なお、職務の性質上死神に団体行動権はないため、ストライキは不可

 

──以下は是非曲直庁の依頼により追記──

是非曲直庁では現在、ヤマハとヤンマーを交互に導入しています

安定した部品供給を確保するため、納入業者を随時募集中です

死者に対するパフォーマンスとして手漕ぎによる渡河も実施していますが、追加の渡し賃が必要となりますのでご了承ください

手漕ぎのパフォーマンス料金は条例で定められた通りです

料金については管轄地域の是非曲直庁に問い合わせ、もしくは死者向けフォーラムサイト「死人に口あり!」の過去事例をご参照ください

不当な金額の追加渡し賃を請求された場合は是非曲直庁・彼岸局・死後平穏部・死出旅安全課・渡河事故係の窓口に対し、管轄死亡地域を明記した書面を添えて報告してください

なお、受付は死後七日以内に限ります

電話・FAX・Web・霊界交信・念などによる申請は受付できませんので、ご了承ください

 

*1
スクリームやシャウトの担当

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