いのち短し走れよ少女   作:夏色バレッタ

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登場人物のナンバープレートについては、地名だけ設定があります。
決まってるものについては、忘れてなければ今回から後書きに書いていく予定です。



首都高一年生

見まがうわけがない。

あのカラーリング──あのときC1ですれ違ったダッジ・バイパーだ。

 

霞が関ランプから一切迷いのない加速で右車線に合流したバイパーは、勢いそのまま私とその先にいた一般車をパス──アクセルをパーシャルに保ちながら、アウト・イン・アウトのライン取りで緩やかな左コーナーを立ち上がる。

 

「──咲夜!?追うの?」

 

アリスの慌てた声と──FCが右にレーンチェンジしていること、そしてバイパーが「まだ視界に入ってる」事実から、自分が無意識にアクセルを踏みこんでいたのだと、私は気づく。

 

バイパーに車線を譲ったときに落ちこんだブースト圧──それに私は内心で舌打ちをしながら、口を開く。

 

「ごめん、アリス──追わせて。こんなの、初めてかもしれない。これは本能なの──バイパーが、私を呼んで──そして──」

 

──FCがそれに、応えた気がしたの。

 

言葉は最後までは、音にならなかった。

バイパーに続き、私も霞が関トンネルを抜ける。

 

立ち上がるブーストが、FCを後輪から蹴り飛ばす。

トンネル出口で上り坂に転じたのも相まって、荷重は一気に後ろ寄りへ──フロントの接地感が一瞬消える。

 

250馬力になってから、一瞬とはいえ接地感がなくなったのは初めてだ。

ピックアップ重視で小さめのタービンをキッチリ回す仕様にした影響もでているかもしれない──C1のコーナー間の短さに対し、FCの動きがシャープすぎる。

 

つまり「踏みきれてしまう」──だから、アクシデントを受け入れるゆとりが──ない。

 

この先は、霞が関トンネルを抜けてすぐの分岐──三宅坂(みやけざか)JCT。

左が4号新宿線、右がC1本線だ。

 

私がそう思った瞬間、先行していたバイパーのブレーキランプが一瞬光る。

 

考えるより先に、身体が動く──半ば反射的に私もアクセルを抜き、ブレーキを入れる──アザーカー、あるいはアクシデント?

三宅坂の分岐でもたつく一般車がいたのかもしれない。

 

──バイパーとの距離が開く。

お互いに一瞬ブレーキを入れたはずなのに離れたってことは──おそらく左足ブレーキで「ランプを点灯させただけ」。

実際に制動はさせていない。

 

フェイントとしてブレーキランプを点灯させるテクニックは、たしかにある。

だが──ここでそれをする意味は──?

 

 

─────

 

 

「──元気のいいFCね。でもちょっと──元気が『ありすぎる』かも──」

 

バイパーのステアリングを握る女性は、そうつぶやきながら霞が関ランプより、C1本線に合流する。

 

「無意識にかわしたその判断は正しいわ──でも、それじゃあまだ首都高一年生(フレッシュマン)。どうする──どう出る──?」

 

バイパーのV10の心臓が唸り、霞が関トンネルすべての聴覚を支配する。

 

首都高C1のツギハギの路面に、品の良いV12は似合わない──それが、バイパーを駆る女性の持論だった。

 

ラグジュアリーで官能的なサウンドは、昼のサーキットにこそふさわしく──非合法な夜のサーキットには、ただの暴力性があればイイ。

それ以外のモノはいらない──見栄も格好も、小賢しい理屈(スペック)も──この首都高C1の夜には、必要ない。

 

だから、女性はバイパーを選んだ──毒蛇の名にふさわしい、地獄より地獄的な、圧倒的暴力性。

8.3L・V10の心臓はNAで500馬力を発生する*1──ステロイド無し、まじりけなしのパワーとトルク──

 

「──そうよね。それでこそセブン──それでこそロータリー──」

 

女性はバックミラー越しにクリスタルホワイトのFCを見定め、満足げに微笑んだ。

 

しかし、首都高仕様のFCにしては加速が鈍い──いいところで300──いや、250馬力か?

さっきちらりと見えた限りでは、おそらく神戸ナンバー。

遠征組だろうか?

 

バイパーの女性は人間離れした動体視力で得た情報から、FCの素性をそう推察する。

 

「でも──コーナリングと踏みっぷりを見る限り、自分の力量がわからないタコじゃないわね。クルマはツラそうだけど、ドライバーはかなり『やる』感じ──神戸なら、阪神環状か六甲山あたりの走り屋かしらん」

 

霞が関トンネルを脱出しながら呟いた女性は、すこしこのFCを引っ張ってみるかと考えたらしい。

 

三宅坂JCTにさしかかるあたりでFCに悟られない程度にアクセルを抜きながら、女性は左足でブレーキランプを点灯させる──制動はさせず、あくまでランプが光る程度に。

 

FCとの距離が開く──こちらに合わせてブレーキを入れたようだ。

 

「判断も上々──こういうところの走り方をよく知ってるわ。でも、それだけじゃ首都高は攻略できない──」

 

女性はそのまま、FCがバックミラーから消えない程度にアクセルを踏みこんでいく──

 

「ついてきなさいな、FCのボーヤ。待ち合わせまですこし暇だし、お姉さんがC1の走りを教えてあげるわ」

*1
2代目ダッジ・バイパーは2008年モデルで600馬力を発生させているが、このバイパーは2003年モデル。




幻想郷のナンバーの地域は希望制
希望がない場合、基本的には長野ナンバーか山梨ナンバーになる
外界で乗っていた者は外界のナンバー、新たに取得した者(特に妖怪)は自分の発生に縁のある土地を選ぶ傾向にあるらしい

博麗霊夢
ワンダーシビック:三重→宮城
魔理沙が「借りてきた」盗難車に最初からついていた天ぷらナンバー、元々は三重ナンバーで登録されていた
宮城ナンバーのプレート自体は元々2代目レガシィの2Lモデルのもの
三重でワンダーを盗み、宮城のレガシィからナンバープレートだけを窃盗・装着して走っていた環状族が逮捕、押収されていた証拠車両を霧雨魔理沙が「借りてきた」……という三重窃盗

霧雨魔理沙
S13:長野
32R:練馬
32Rは紅龍レーシングが取得したときのまま
美鈴が手放してからも、練馬の管内からは動いていなかったようだ
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