テイルズオブザワールドレディアントマイソロジー ~ANOTHER MYTHOLOGY~ 作:楠富 つかさ
この世界、ランテアは世界樹を中心とする世界。八つの国が存在し、土地と利権を廻る戦争が絶えない。そんな中で世界は疲弊し、世界を満たす根源たる力《マナ》が枯渇しつつあった。それでも終わらない戦争、勃発する様々な問題。そこで世界樹はついにある決断をくだす。世界樹の守り人たる存在、ディセンダーを生み出すことを。
穏やかな海の上を進む一隻の大きな船、バンエルティア号。どの国にも所属しない自由を掲げたギルド《アドリビトム》の拠点だ。その甲板で、世界樹を眺めていた少女がいた。淡い桃色の髪を頭頂部の右脇でお団子に結っており、若葉色の双眸がパッチリとした、いかにも快活そうな少女だ。そんな彼女は、世界樹から発せられた僅かな光に気付いた。だが、その一瞬さゆえに見間違いと判断しかけたその時だった。
―――ドンッ―――
甲板になにかが叩きつけられる音に、恐る恐る少女は閉じていた目を開ける。そこには、彼女と同年代だろうと思しき少年が倒れていた。彼に駆け寄ると、意識はあるようで薄っすらと目を開けた。澄みきった碧眼が少女を捉える。
「だ、大丈夫? 私はカノンノ、カノンノ・スノーウィン。あなたは?」
カノンノと名乗った少女は、恐る恐る少年に名を尋ねる。
「僕かい? えっと……分からないや」
少年のケロッとした一言に、カノンノは驚きを隠せなかった。名前すら覚えていないことにではなく、その状況を一切悲観しないことに。起き上がった彼は、カノンノに尋ねる。
「ねぇカノンノ、僕の名前を付けてくれないかい?」
しばらく思案顔を浮かべるカノンノ、やや不安げに口を開く。
「いいのが思い浮かばなかったんだけど、ソラなんてどうかな? 安直すぎるかな?」
「ううん。いい名前だよ。僕の名前はソラ、改めてよろしく。カノンノ」
安心したカノンノが歳不相応に大きな胸を撫で下ろす。
「ん?」
「どうしたんだい?」
「今、すごくセクハラな発言が聞えたような……」
代々のカノンノは総じて電波少女である。何かの電波を受信したのか?
「また……だ。ソラは聞えない? ま、いっか。よろしくね、ソラ」
ソラとカノンノが握手を交わしていると、船内から一人の子供が姿を現した。
「あ、カノンノさん。さっきの音……というか、そちらの方は?」
「ソラです。といっても、さっきカノンノに付けてもらった名前だけど」
「ボクはチャット、このギルドでリーダーと船長を務めています」
お互いに自己紹介を済ませたところで、カノンノがチャットに事情を話す。取り敢えず、記憶喪失なのは間違いないだろう、という見解に至り、ギルドで身元を引き取ることとなった。その大きな要因として、ソラがギルドの仕事に興味を示したことが挙げられる。
「では、船内でメンバーと対面ですね」