吾輩は、猫である。
名前は、タマ・クラネル
先日から家族と共に、オラリオに越してきたばかりの、なりたてホヤホヤのシティキャットだ。
「ごめんね、今は団員募集してないんだ。ホームの部屋が空いてなくてね。」
「え、あ、あの!話だけでも・・・・・・行っちゃった。」
たった今、15件目のファミリア入団を断られたのが、吾輩の唯一の家族、ベルだ。
ギルドに行って紹介された探索系ファミリアは、今ので最後だったはずだが、神との面会まで漕ぎ着けたのは、たったの1回だ。
しかし、発言からどうも男色の気配がする神に、尻の貞操の危機を感じたベルは、悩みに悩んだ末に入団を見送った。
夢みがちなベルには少し辛いかもしれないが、これが現実なのだろう。
人間が、信仰する神を選ぶように、神もまた、眷属となる人間を選ぶのだ。
魔法に秀でたエルフや、力に覚えのある獣人とドワーフなら引く手数多だったろうが、ベルは普通のヒューマンで、身体の線も細いほうだ。
恩恵を得れば、見た目は関係ない。というが、こういうのは見つからない時は、とことん見つからないものだ。
「ナーオ」
気にすることはない。
そのうち見る目がある神が、お前のことを見つけてくれる。
気長に行こうじゃないか。
そんな意味を込めて鳴いた後、座り込んでしまったベルに寄り添う。
「ごめんね、タマ。・・・今日ファミリアが見つからなかったら、野宿するしかないのに、全然見つからないや・・・・・・」
「ニャッ!?」
前言撤回しよう。急いでファミリアを見つけてくれ!
私の髭が、今晩には一雨来ると言っているのだ。
まだ夜も寒いこの時期に、雨が降る中野宿などすれば、2人仲良く爺さんのあとを追いかねないぞ!?
「落ち込んでても、しょうがないね。こうなったら、しらみつぶしに行ってみようか!」
そう言って、再び立ち上がったのはいいが、フラフラとした足取りは変わらず、しまいには裏通りにまで入ろうとしている。
よく知らない街で裏通りに入るのは、流石に危険だ・・・金目の物は持ってないが、止めるべきだな。
そう思い、ベルの足元に行き、先に進もうとするのを止めようとすると
「おーい、そこの君ぃ。路地裏は危ないから、行かない方がいいぜ?」
私の言葉を代弁するように、後ろから声をかけられた。
正直、ずっと誰かが跡をつけているのは気づいていたし、スリや人攫いの可能性も考えて警戒していたのだが・・・・・・ベルに声をかけたのは、ベルよりも一回り小さい、幼女だった。・・・・・・いや、幼女と言うには、約一分の主張がとんでもないな。
「あ、ありがとう・・・・・・えっと、君は?こんなところに1人で、迷子なのかな?」
どうやらベルも、似たようなことを思ったようだ。
すぐに、彼女が下界に住まう、神の一柱であることを聞かされるのだが、巡り合わせとはあるところにはあるものだ。
ようやく、ベルに恩恵を授けてくれる神が見つかった。
「やあ、ヘスティアちゃん。ファミリアの勧誘だったらお断りだよ。」
「違うって!おじいさん、2階の書庫を貸してくれよ!」
「おうおう、構わんよ。本は読んだら、元の場所に戻しておいてね」
さっそく入団の儀式を始めるというヘスティアに、案内され向かったのは、老齢のヒューマンが営むみすぼらしい書店。
おそらく恩恵を刻むのだろうが、こういうのはホームとかでやるものではないだろうか?
まあ、ホームが少し遠くにあるとか、初団員を逃したくないとか、そんなところだろう・・・・・・あるいは、ただの本好きか・・・・・・もしそうなら、気が合うかもしれんな。
「ベル君、君はどうして冒険者になりたいと思ったんだい?」
「実は・・・・・・
儀式が始まると暇なので、面白そうな本がないか物色を始める。
あちらではベルの志望動機の話になっているが、爺さんの英才教育によるハーレム願望は、耳タコなので興味がない。
「君、絶対育ての親間違ったよ。」
吾輩もそう思う・・・・・・ん?この本は・・・・・・中は真っ白だが、この表紙・・・買いだな。
ベルが宿代を使い切るのを見越して、持ってきていたヘソクリがあってよかった。
ん?そのヘソクリの出所か?
ベルの爺さんが生きていた頃に、よく小さいおつかいを頼まれていたからな。
爺さんはお駄賃として、おやつ代も入れてくれていたから、それの一部をコツコツ貯金していたのだ。
一緒に貰った皮の鞄も、魔本を入れるのに大変重宝している。
あちらはまだかかりそうだし、お会計をしてくるとしよう。
「・・・・・・・・・ベル君、一緒にいた猫だけど・・・あれって、猫で合ってるよね?」
「タマのことですか?」
「うん、タマくんって言うんだね。・・・・・・見間違いじゃなかったら、鞄からお財布を出して、本を咥えて下に降りて行ったんだけど」
「タマは賢い猫ですから!祖父にもよくおつかいを頼まれて、村まで買い出しに行ってましたし」
「・・・・・・・・・・・・ベル君、ステイタス写し終わったんだけど・・・・・・いい知らせと、残念なお知らせがある。どっちから聞きたい?」
「え、なんですか、それ?なんか怖いんで、いい方からお願いします。」
「おめでとう、スキルがあるよ。」
「本当ですか?やったぁ!!・・・・・・ちなみに、悪い方は?」
「猫についての認識を、改める必要があるね。」
ふぅ、中々いい買い物ができた。
村での買い物に慣れてたせいで、爺さんを驚かせてしまったのは、少し悪いことをしたな。
「タマ!・・・・・・タマって、妖精だったの!?」
なぜバレた。
➖ベルのステイタス
ベル・クラネル Lv.1
力 :I 0
耐久:I 0
器用:I 0
敏捷:I 0
魔力:I 0
柔軟:I
《魔法》
【 】
《スキル》
【妖精猫の恩返し】
・対象の妖精猫とステイタス一部共有
・発展アビリティ[柔軟]付与
・猫に懐かれやすくなる。
・・・・・・そりゃ、バレるわ。
次回くらいに、ザケルが使えると嬉しいな。
気持ち的にまだまだプロローグ、読んでいただきありがとうございます。
ベルに誰の魔本を持たせるか、悩んでます。
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