遅くなりました。ごめんなさい。
吾輩は、猫である。
名前は、タマ・クラネル
「フニャアアアアアアア!」
「タマ!?落ち着いて!タマ!」
「ベル様!そちらの方で構えていてください。こちら側に来たら、私が受け止めます!」
「分かった!・・・って、さっきより激しくなってない!?」
「ニャ、ニャ、ニャ、ニャニャニャニャニャ・・・」
「さっきから何回か掴んでるはずなんですけど!?何で掴めないんですか!?」
ダンジョン内でスーパーボールのように跳ね回っている猫だ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ベルが魔物の術を習得して、おおよそ10日ほどが経過した。
初めて習得した術は【マグル・ヨーヨー】、本来は腕をヨーヨーのようにして攻撃する術だが、ベル自信は腕が伸びないので、術を使用した際は何もないとかろからビクトリームの腕が出てくる・・・・・・シュールだ。
【マグルガ】や【チャーグル・イミスドン】などの術は、まだ読めないようで習得はしていないようだ。
条件があるのだろうが、吾輩も【ラシルド】を読めるようになるまで半年ほどかかっているので、気長にやって行くしかないだろう。
ベルは今でも、夢の中でビクトリームに修行をつけられているようで、Vの姿勢がどうのこうのと寝言を言っている時があるので、案外ビクトリームに認めてもらえてない。というだけのオチかもしれない。
10日もあれば、ステイタスだけでなく身の回りの変化もそれなりにあった。
まず、仲間が増えた。名前は、リリカル・・・リリルカだっけ?・・・リリでいいや。
仲間と言っても他派閥の人材なのだが、これがかなりの働きものだ。
上層であればダンジョンの知識も豊富、魔石あつめも早くて丁寧、おまけに可愛い、手癖の悪さを除けば、サポーターとしてベルにはこれ以上の人材はいない!と言い切れる。
手癖の悪さに関しても、色々あってベルの存在に助けられたらしいので、改心しているそうだ。
あの時見せた涙が偽りでなければ、今後はきっと大丈夫だろう。
むしろ問題なのは吾輩の方だ。
ここ1週間、ベルのステータスの伸びは異常そのものだった。
早朝に訓練を始めたのは知っていたが、その成果は吾輩のアビリティにも影響しており、端的に言うと身体の成長に頭がついていけないのだ。
結果、【猫は液体】の効果も発動しているので、壁にぶつかろうが何しようが、弾む弾む・・・・・・止まれない、助けて・・・
「タマ様!鞄を空けたので飛び込んでください!入った瞬間閉めるので!」
「フッ、ニャアアア!!」
リリの機転のおかげで助かった。
彼女が仲間になってくれて良かったと、心の底から思ったよ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
私が最近お世話になっている冒険者は、少し変わった人だった。
第一印象は、お人好しの世間知らず、パーティを組んでいる様子も無いので騙しやすそう・・・そんな感じだった。
初めて出会ったのは、私が騙した冒険者から襲われていた時。
なんの事情も知らないくせに、「女の子だから」という理由で助けようとしてくれたのだ。
私はその時、彼が腰につけているナイフを見て、いいカモを見つけた程度にしか思っていなかった。
実際に彼はいいカモだった。
換金したその日の成果をくすねても気付かず、お金は完全に折半だ。
本命のナイフが不発に終わっても十分に旨みがある。
むしろ継続して契約してもらえるなら、真面目に働くのもありだと思っていた。
でも周りがそれを許さなかった。
結局、最後は裏切って、裏切られて・・・因果応報というやつだろう。
モンスターに囲まれて絶対絶命の中、遠くからは彼が私を呼ぶ声が聞こえる。
本当にどこまでお人好しなのか・・・ここまで来ると、むしろ心配になってくる。
「ベル様、申し訳ありませんでした。」
助けに来てくれるとは思わなかったが、間に合わないだろう。
それほどまでにモンスターが集まりすぎたのだ。
彼が使う魔法もこの数のモンスターを一瞬でどうこうできるものではない。
「・・・さようなら。」
どうか悔やまないで欲しい。
あなたは何も悪くないのだから・・・・・・
「ニャンッ!!」
・・・・・・・・・・・・あれ?私、まだ死んでない?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「はあー、リリが全面的に悪いのですが・・・あの時のリリの覚悟はなんだったのでしょう?」
「あはは、ゴメンね。リリ」
「ナーッ!!」
「いえ、助けていただいたのは、感謝しかないんですよ!」
そう、ベル様も間に合わない窮地から、リリを助け出したのは、我が物顔で私の頭に乗っている猫だ。
あの時、死を覚悟して目を瞑っていたのだが、来るはずの痛みも衝撃も一向に来なかった。
訝しんで目を開くと、私の周りだけ綺麗にモンスターが片付けられていた。
(まさか、間に合ったのですか!?)
そう口にしようとした時、私の目の前に居たのは一匹の猫・・・ベル様は、まだモンスターの群れでできた壁の向こう側だ。
どうやって、助かったのか?その疑問より先に、なぜか最近よく聞くようになった噂話を思い出した。
『猫を連れた冒険者に注意しろ!喧嘩を売るな!・・・・・・ああ?ヤベエのは冒険者の方じゃねぇよ!猫だ!』
『最近、有名な猫?・・・ああ、ロキんとこの幹部を吹っ飛ばしたっていうやつだろ?』
『最近、夜な夜な変な声が聞こえるんだよ・・・ベリーメロン、ベリーメロンって・・・・・・闇派閥の儀式とかじゃなければいいが・・・・・・』
多分、噂になっている猫で間違いないはずだ。
なぜって?電撃を使う猫など、リリは見たことありません!
「ニャンッ(【ザケル】)!!」
とんでもない人に喧嘩を売っていた。
間違いなく、これだけは言えると思いました。
◆◆◆◆◆おまけ◆◆◆◆◆
「タマ様が助けてくれたのは分かったのですが、どうやって来たのですか?」
「ナ?」
「最初から、近くに居たわけでないですよね?」
「リリ!タマ!何してるの?」
「いえ実は・・・かくかく猫猫・・・というわけで、どうやって間に合ったのか気になりまして・・・リリは目を閉じちゃってたので・・・・・・」
「ああ、あれはね・・・・・・見てて」
ーーーギュムッ
「ニャ?」
「スゥーーー、唸れ!タマストラーーーイク!!」
「フニャアアアアアアア・・・
その後、予想以上に跳ね回り、冒頭へと続く・・・・・・
許すまじ、ベルよ。
スマホデビューですかね?お気に入りやら増えてて驚きました。
のんびり書いてので、のんびり読んでいただけたら嬉しいです。
読んでくれて、ありがとうございました。