ポケットモンスターVR 作:とうもろこし
「それじゃあ早速だけど、君はどの子と旅に出たいかな」
アララギ博士の背後にあるバスケット、その中のモンスターボールが三つ、その存在を主張するようにふるふると揺れている。新たなパートナーと旅に出るのはとてもわくわくする。最初の一匹はもう決めてるから、早くポケモンを手に入れて冒険したいという気持ちも抑えきれないくらいあるが、
「あの、一匹もらう前に三匹とも触れてみたいんですけどいいですか」
「ええいいわよ。みんな出てきて!」
ポン、ポン、ポンと投げられたモンスターボールから三匹のポケモンが飛び出してくる。
「それじゃあ、先ずは紹介からさせてもらうわね」
そう言ってアララギ博士が指をさすのは真ん中の子。オレンジ色の子豚のようなポケモン、ひくひく動くお鼻を動かしながらこちらにすり寄ってくる姿はチャーミング!
「この子は子豚ポケモンのポカブよ、ほのおタイプのポケモンで、くさタイプに強いわ」
「カブっ」
次に指さすのは、ポカブの右側にいた子。水色のラッコのようなポケモン、おなかについていたホタテを振って、ドヤ顔でアピールしているのがかわいらしい。
「この子はラッコポケモンのミジュマル、みずタイプのポケモンで、ほのおタイプに強いわ」
「ミッジュっ」
最後に紹介されたのは一番左にいた子。蛇のようなフォルムで、ちっちゃく、細い腕を組んでツンっとしているのがもう愛らしい。クールな姿がとっても良く似合っている。でもそのクールさを取っ払って、ツンデレみたいにツンってした感じで甘えてもらっても構わなくってよ。ほらほら~こっちおいで~、うへうへうへ
「最後はこの子、くさへびポケモンのツタージャ。くさタイプのポケモンで、みずタイプに強いわ」
はっ、アブナイアブナイ、あまりのかわいさに我をうしなっていた。画面でもかわいかったけど、実物はもっとかわいい。
よーしよし、かわいいなぁお前たち全員連れていきたいよ。右手にミジュマルを、左手にツタージャを、胡坐を組んだ足の上にポカブを乗せてふれあっている。あっ、ちょっと今の見た?!ポカブをなでようと左手を離した時、一瞬だけまだ撫でられ足りないよ~って感じで俺の手を引き留めようとしてたんだけど!可愛すぎかよツタージャ!ハッと自分がしたことに気付いたのか、顔を赤らめてそっぽ向いてるのもまたかわいい!くぅー、最高!ありがとうポケモン、ありがとう増田さん!こんな素敵な存在を産みだしてくれてぇー!
ふと、視界の左端に17:50という数字が目に入る。
あれ、家に帰って、データをダウンロードして、この世界にログインしたのが17時だったから…
えっ、もう50分近くここにいるってこと!やべっ、部長が言ってた集合時間って何時だっけ?18時…すぅーーー
「すみません!この子にします!」
俺の左手をいじっていたツタージャを両手でバッと持ち上げ(もちろんそっと、やさしく、包むように)アララギ博士に見せる。驚くツタージャに内心で謝りながら、後でたぁっぷり可愛がってあげるからねと思いつつ、
「え、ええ、その子にするのね。なら次はポケモン図鑑の更新をしましょう。図鑑をだしてく「はいどうぞ!」れる」
「あ、ありがとう…更新終わったわ。それじゃあ、これがツタージャのモンスターボールで、これが空のモンスターボールね」
アララギ博士も人間のように驚きながら、旅に必要なものを渡してくる。図鑑に、モンボに、キズぐすり、早く早くと思いつつ、もらったものをバックに突っ込んでいく。仕分けは後で行えばいいだろう。
「はい、私からはもう何もないわ。ただし、最後に一つだけ、君にはこれから多くの困難や試練が待ち受けているでしょう。でも、そこであきらめず、自分とポケモンを信じて前に進みなさい。」
その真剣な表情と声に、逸る心が沈み、いつの間にか腕の中にいるこの子を見つめていた。
「タジャ」
「うん、そうだね。君となら…」
君とならどこまでだって飛んでいけそうで、あの頂点にだって手が届くかもしれない。
「それじゃあ、いってきますアララギ博士。この子大切にしますので」
「ええ、楽しんでらっしゃい。君とポケモンとの冒険を!
あ、図鑑埋まったら見せに来てね~」
玄関から手を振るアララギ博士に見守られ、俺とツタージャは冒険の旅に出る。
「ツタージャ、一緒に始まりの一歩を踏み出そうか。」
「タジャ!」
「せーの」
よっ、と一番道路への道をツタージャと一緒に一歩踏み出した。これからどんなワクワクやドキドキが待っているかはわからないが、少なくとも、少し後の未来では、俺は激おこぷんぷんマルになった部長に怒られることは確かだろう。視界の端に映る18:00という数字に向かって、とほほ、とため息をつくのであった。