銀河英雄伝説~銀河への一石~   作:くまたいよう

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 ヤン提督が原作より戦意は高いですな結果、他からは?な回。


『人間同士の戦い』

 戦において、一番有効なのは相手より多い数で戦う。

 

 アスターテでラインハルト・フォン・ローエングラム伯は自軍が2万隻に対して同盟軍4万隻の状況でほぼ完勝と言う凄まじい戦課を遂げられました。

 

 但し、それは以前のダゴン殲滅戦のように包囲しての勝ちを狙った同盟軍に対してのものです。調べてみたら3方向から包囲を狙ってる同盟は逆に言えば戦力を3つに分散してくれてるから、帝国側は2万全てで分散した敵側の1つ1つに全力で先制攻撃を掛ける。問題は常に短期決戦を3連続で成功させなきゃだから消耗戦に持ち込まれたら不味い展開だった。

 

 それを理解していたヤン・ウェンリーは3つ目=自分のいる艦隊のとこにトドメを刺しに来た帝国軍を予め送っといたプランで上手く円環状になるよう誘導してローエングラム伯を撤退に追い込んだ。

 

 私が聞いた限りの予測で、ローエングラム伯なら予め読んでた事を気付いてる。つまり、アスターテでヤン提督が途中司令官が負傷したから引き継いだじゃなくて最初から指揮を取ってたらどうなっていたか、下手したら負けていたとまで理解してる。

 

 姉の7光りとする類いな部下が組み込まれてるとしたら拮抗していた場合は艦隊の連携が乱れるような編成が致命的になるのを含めて。まあ、その辺はヤン提督も似たり寄ったりなんですが。

 

「間も無く射程に入ります」

 

「フィッシャー准将に連絡、准将が頼みだ」

 

 まあ、艦隊運用全部任せるのはアスターテで是非に欲しがっていた御方だからですからね、シェーンコップさんの付き人みたいになってる私は退散しても良いんですが、別にやる必要は無しで射程に入る直前。

 

「撃て!」

 

 お互い同時に火線が交わる展開になりましたね、迂闊に動けないでいるのは数の利で包囲されたら負け確定だからですがと思って暫く経ちましたね。

 

「ミス・ミズキは豪胆ですな、給仕とか程度ではブリッジで火線を見るだけで腰を抜かす者もいるくらいなのですがね」

 

「私は鈍いだけですよ、撃ってきてるのは【人間】です。人間の作った兵器をね」

 

 そうです。これは『人間同士の戦い』です。私がヤン提督を信じたのはオルタンスさんの言うとこの刷り込みと言われても否定はしませんよ、けど提督は帝国の人間を政治体制が違う国に生まれた人間と見てる側で、それが重要なんですよね。

 

【しかし、それは相手も同じようだ】

 

 最初から数に押された際には【U】の字状になるような形に後退しつつ誘い込み算段でしたが、それに乗らない。ひたすら代わる代わるに交替した分艦隊は後方で補給ですか、こりゃキツい。

 

 

 

【そのハズですが】

 

 

 

「あの、これって宇宙での艦隊戦ですよね?」

 

「おや、万単位が当たり前な戦闘だからならではな見方は出来ませんか、そもそもレーダーとかで陣形が単純に見えているからで、実際よりは・・・・」

 

「違いますよ、此方の艦隊の綿密さが異常じゃないですか、宇宙での移動がミリ単位でやれてるんじゃないか?ってくらい」

 

 そう、僅かな砲撃したり回避したり、一旦は下がったりなズレを埋め合わせるのがやたら早い。コンピューターやレーダーで見ても異常ですね。

 

「【生きた航路図】フィッシャー提督のお陰でしょうな、事前の打ち合わせが念入りだからこの艦隊の本格的な初陣とは思えませんよ。ヤン提督が先読みして指示する。その通りにする迄の速度が異常なんでしょう、いやはや・・・・彼方さんは今頃は怖がってるでしょうなあ」

 

「いえ、そんなのと縁はありません。私は艦隊戦は知識しか無いですが、ラップさんの言うようにローエングラム伯の部下で最強どころか下手したらローエングラム伯より怖いかもですよ、此方にスピード負けしてる苛立ちや焦りが全くありません、素直に力関係受け入れられるって中々無いハズです」

 

「ですな、これは余程に人格からして出来杉君な指揮官です」

 

 分野違いですが、達人は向き合ったり多少やり合うだけで力量がわかると言います。シェーンコップさんも余程に肌で感じてます。後は算段通りに行くかどうか。

 

 

 

 

 ーーーーーーー。

 

 

 

 

「キ、キルヒアイス提督・・・・」

 

「ベルゲングリューン大佐、慌ててはいけません」

 

 私【ハンス・エルアルド・ベルゲングリューン】は信じられないものを見ていた。

 

【カストロプ動乱】

 

 あの動乱を瞬く間に静めた姿を目の当たりにして以来、恋する乙女のようだとまで言われても恥とは思わない程に敬愛に値するとしたジークフリード・キルヒアイス提督が4倍近い数で堅実に攻めているが、相手がまるで動じない。細かい艦隊運用術が完全にスピード負けをしているのだ。

 

「アムリッツアで目の当たりにしましたが、恐るべき手腕です。それにヤン提督はこの類いの戦いに強いようです」

 

「今のような耐久戦がですか?」

 

「違いますよ、逆の立場が鉄則と心得ているようです・・・・戦いは相手より多い数で戦うのが勝つ為の秘訣、ならば自分ならどうするか?そう考えると私のやる事が読める。そして、どうやら艦隊運用が余程に良い環境のようです。運用の早さならミッターマイヤー提督以上かもしれない」

 

【ミッターマイヤー提督】

 

 その迅速さから【疾風ウォルフ】と異名を取るローエングラム陣営屈指の名将、キルヒアイス提督をしてそう言わしめるとは・・・・周りも青ざめている。

 

「では、多少の損害を覚悟で突撃いたしますか?」

 

「いけません!それくらい考えないような相手ではありません、恐らくそろそろ疲労が出るとして次を用意しているハズです」

 

「提督、側面から接近する物体!これは衛星です!敵軍と我が方の間を通過します!」

 

「最初から下調べして戦場となる場を設定してたようですね、この辺りが辺境だから把握出来なかったのは失敗ですね」

 

 言われたように衛星群が通過して行った。この隙にどうするかだが。

 

「な、何もせずに撤退しましたね」

 

「不用意な攻勢を掛けられないと理解しているのです。流石ですよ、仮に勝負を焦ったら側面から衛星群に巻き込まれて分散され、そこを狙われていましたね。恐ろしい男です・・・・対等な条件で戦ったら勝機は薄いでしょう」

 

 キルヒアイス提督が冷や汗を流していた。やはり肌で感じたものが違っていた。だが、あのような小賢しい男等よりは・・・・。

 

「ベルゲングリューン大佐、気遣い無用です。私はアスターテでヤン提督の策を見抜けなかった時以前から己の分は弁えています。しかし、今回ヤン提督の力量を感じられたのは無駄ではありませんよ・・・・それに、大佐も皆もわかっているのでしょう・・・・これで【我々の勝ちです】」

 

 

 

 

 ーーーーーー。

 

 

 

 

 

「どうやら【負けたな】・・・・」

 

 4倍近い数の敵をああして実力では勝っていたヤン提督ですが、確かに。

 

「撤退するにして、損害は少なかったが距離が開いてしまった。その間に本隊がどうなる事やらだね」

 

「まあ、我が艦隊も再編中だからとにかくコレでも口にして落ち着いて下さい、ミズキさんと私で用意しました」

 

「・・・・っ!む、ラムレーズン入りアイスのクッキーサンドか、紅茶に合うね」

 

「戦闘前にラム酒がどうこうぼやいてた飲みたがり提督の為の精力剤か、ジェシカにも食べさせてあげたいよ」

 

「成る程!この酒の風味、戦意高揚には悪くないですな」

 

「パトリチェフ、悪ノリはよせ。しかし、見事な味ですな、何処のだね?」

 

「私の手作りで挟んだのはグリーンヒル中尉です。口に合いませんか?」

 

「いや、ご謙遜を・・・・しかし、胆力ある女王様が給仕してくれるのは頼もしい事ですよ、担当の陸戦で出番あるか不安な身には染みますな」

 

 妙な言い分に他が納得してますね、しかし結束力高いヤン艦隊の首脳陣クラスに胆力がどうとか言われましてもねえ。

 

 

 

 しかし、私達はこの後に知るのです。異端やらはみ出し者とそれに付き合える常識人には理解出来ない域こそが、今回のローエングラム伯の【勝因】だと言う事を。

 

【そして、私が内心で述べた『人間同士の戦い』云々に重大な事が含まれていたのも】




 ヤンとフィッシャーの連携は本当に怖い、味方からしても怖い。

 キルヒアイスも素直に現実を見る分怖いな回でもありました。

 次回、果たしてローエングラム伯の【勝因】とは?
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