え~、右手を御覧ください。
こちらアムリッツア、こちらアムリッツアです。
宇宙規模の距離からしたら至近距離にホットジュピターと呼ばれるガス惑星を従える恒星ですね、社会科見学じゃなくて双方合わせて二十万を越える艦隊の大決戦が行われる羽目になった場所です。
呑気で失礼、私も重圧くらいは感じるし気分楽にしたいんですよ。
頭を掻いて誤魔化すじゃなくて、同盟側の指揮を取る羽目になってるヤン提督がどうしたものかとしてますわ。今はグリーンヒル大将と極秘回線で通信中です。
『ヤン中将。生存した艦隊のかなりの数を後ろに下げたようだが?』
「はい、艦がダメージを負ってるくらいならまだ良いです。完全に嵌められきったワケではないにしても焦土作戦で体力も精神もやられています。そんな兵は数に入れられません、まして【上官が不運に戦死した】艦隊から分艦隊の生き残りが多いので」
【不運】
いや【流れ弾】とか言いたい心境かも、占領地での蛮行で現地の民どころか自分の部下に撃たれたのもいるんじゃないか?ってのが多いです。まあ、それでも割り切らないと。
『しかし、数を僅かでもに少なくしたら、一気に攻められたら不利ではないか?』
「はい、ですが敵はそれはしません。消耗してる上にこの辺りに留まるだけで同盟には負担になりますから直ぐには来ないでしょう、我々はアムリッツアを拠点にしたのではなくてさせられた。まんまと先制攻撃を受けたのです」
【未知の地に留まるだけで精神的には苦痛】
まあ、この戦いは無意味ってとこですね。焦土作戦で精神をやられた者多数な軍には大迷惑です。出兵を決めた政治家達も無駄な死人減らす方が良いのに、ローエングラム伯を倒せたとしても他の貴族の艦隊があるのを頭に入れられないようですね。
『健闘を祈る』
おや、いつの間にか終了した。フレデリカさんが引っ込めたのは大正解です。姿見たら、かえって私心を優先させまいとして意固地になるでしょうしで数分して戻って来たフレデリカさんの第一声は?
「提督、お食事を取って頂けませんか?」
敢えて触れず。まあ、今はヤン提督に栄養を取らせる方が先ですし。
「いや、食欲は無い。それよりブランデーを頼む」
「お酒が過ぎると、ユリアンやティアから言われてません?」
「君達は連帯していたのか、それにしてもミズキ兵長待遇を呼び捨てとは親密な事だね」
「連携が命と最初に言って貰いました。それにローエングラム伯の部下を見てると更にそう思いますわ」
何やら苦笑してますね、確かに何連戦もしてそう思ってます。
正直、ローエングラム伯の幕僚達とやらについては、キルヒアイス提督を始めとした優秀な提督達とヤン提督と比べた場合、個々の力では対等にやり合ったらヤン提督が勝つでしょうけど、数が違います。ウランフ提督とビュコック提督と組んでも3人だけじゃ駄目だ。誰かいませんかね、何て言うかヤン提督と上手くやれて埋もれてる人材じゃなくて【人財】が・・・・と考えていた時に報告が来ました。
「敵は数が少ないね、赤い船の傭兵家が合流していないらしいけど、後ろに回る気か?」
そして、機雷をありったけ仕掛けたり資源衛星に仕掛けをしたりが当たりだったとして更に時間が過ぎた時。
『敵艦隊、前進して来ました!』
「では、生き延びたら健康に気を使おう」
戦闘配備となりました。予想より早いですがそれくらいは想定内として戦闘が開始されました。
射程内に入って、敵からも砲撃が開始された。お互いほぼ平坦な陣形と正面同士からの平凡な撃ち合いですが?
「ジャン、何やら然り気無く我々だけ狙われてないか?」
「ここに来る迄、お前にしては派手にやったからな。ローエングラム伯は【他はどうでも良いから第13艦隊だけは仕留める作戦】で来たんじゃないか?」
「いや、だとしても我々以外がそれを理解して動き次第に後方にいる者達が襲い掛かれるよう整然とした隊列だよ、皆には悪いがこのままの隊列を維持しつつ後退だ。ビュコック提督も察してるようだしね」
いやはや、キルヒアイス提督の時と似た展開ですよ。帝国側は此方が地形を使った何かをやると見なしたような動きになりましたが?
「【例の艦隊】がやや前面に出ました!」
「撃て!」
これが唯一の好機、受け身と見せ掛けてこれを待つのがヤン提督の作戦。
前線部隊を救出した際に得た情報を元に特に猪突が目立ち、やや前面に出る傾向があるとした【黒い艦隊】に同盟側の全艦隊が他を無視した形で主砲を斉射した。そう、此方も狙いを最初から決めていた。全てにおいて相手が上なら僅かな隙を全力を以て突くしか無いからです。ダメージ云々以前に予想外だったようで帝国側が動きが鈍ったり、攻撃の隙を突こうとした時。
「ウランフ提督が敵旗艦を攻撃しましたが、別の艦隊が割って入った模様!直ぐ様後退を強いられました!」
アムリッツアの重力からホットジュピターの公転エネルギーを使った加速で奇襲掛けましたが、致命傷には程遠いし部下の優秀さを見せられました。
「どうやら負けたな」
まあ、元々は数が少々負けてるだけじゃなくて内部の状態が半病人同然ばかりな同盟と戦意最高潮な万全の猛者な帝国なんて有り様じゃ勝ち目なんか無いんですよ。
敵もいつの間にか機雷原に何やら指向性ゼッフル粒子とすべき物で艦隊が通れる穴を空けて新手を到着させて殲滅を狙う形に動き始めたから?
「作戦開始!」
採掘惑星にエンジン代わりに取り付けた艦が推力全開しました。狙いは、包囲する態勢取った敵艦隊の中でやはり最初に狙った艦隊、守勢になる対応が遅れましたね。
「全艦隊!黒い艦隊だけを攻撃しつつ突破!そのままイゼルローン方面に離脱!」
真っ先に逃げ出し作戦大成功!
アスターテの時に気付いた事、ローエングラム伯は最後に完全勝利を狙いたがるとしたヤン提督の見立てが当たりました。最初の頃の集中攻撃には苦労しましたが何とか損傷は最低限です。
アムリッツアに仕込んだ砲台とかは追撃の足留めにだけ使うでした。
そして、集まった艦隊の大半が離脱は出来ました・・・・出来ましたが。
「おかしい・・・・」
「何がですか?」
「短期決戦にしたのは、後方からの部隊が本格的に参戦したら終わりだからだ。しかし、例の赤い船が未確認だ」
「て、提督!緊急通信です!アムリッツア付近の戦いに参加しなかった艦隊がオーディン方面に進撃して、赤い船を旗艦にした艦隊に壊滅させられたと!」
「何だって!?」
こ、これは予想外です。何でもイゼルローンに残った面子がアムリッツアに集中している今がチャンスとして、数だけは多少ある離脱組を進撃させた。上手く行けばローエングラム伯の後方撹乱にもなるから?
まあ、一理はあるって言えばあるけど。ヤン提督が短期決戦やるつもりだったかどうか確認してないし、ローエングラム伯の部下にそんな行き当たりばったり通用するか否かな判断が足りな過ぎです。
「温存は出来ていた補給艦隊の一部も同行してやられたようですわ」
「ロボス元帥の指示か、若しくは政治家さん達か・・・・いや、撤退だ。整然としながら撤退するんだ・・・・」
表情を抑えてますが、怒りのボルテージは上がってますな一方でグリーンヒル中尉を見ないようにしてますねヤン提督、そりゃ詳細はまだ反対意見出したかどうか含めて不明ですが、こんなの父親が関わってたかもとあってはショック極まりかねんです。
結局、アムリッツァの戦い最終決戦についてはそこだけ見れば決戦と見せかけたヤン提督の早期離脱が功を成したのか被害は最小限です。
先陣だったウランフ提督も負傷しながらも生還・・・・なのに、昼寝してりゃ良かったボケが余計な事をしていらん被害出しやがって!
最初の出陣から失われた兵力は【半数未満】ですか、焦土作戦が成功してたらもっとだったろうから・・・・虚しいですね。
しかし、これを機にイゼルローンを総攻撃でもされたらと思うと、とにかく注意しながら撤退して殿を勤めながらイゼルローンに帰還しましたが、周りは沈鬱ですねな中で私はフレデリカさんにお呼ばれしました。
「何かお茶にしては深刻ですね」
「・・・・ティア、私は父には会わなかったわ」
「良いんじゃないですか?大将閣下も慰めが欲しいワケじゃないでしょうしね」
何か、察してくれてると見られてましたか。勘当されて嬉しがってる私みたいのを相談相手に選ぶ辺り深刻です。
【晩節を汚す】
ロボス元帥同様に後世に実例として数えられかねないくらいな有り様でしたね、現場と司令部の戦いの違いとか言い出さないようになやらかしでした。司令官のお昼寝から半端な思い付き優先とは・・・・責任上でグリーンヒル大将は左遷くらいはされる。
改めて、身内としてはどうするべきなのかで私がご相談相手に指名されましたです・・・・何やら真剣ですから素直に答えます。
「私は、あの大将閣下は【引退】するべきだと思います。ロボス元帥とは違った意味で」
それしか言えない、長所が全て裏目に出てしまったと言って貰えるかどうかになった。ヤン提督とは絶対に相容れ無い、フレデリカさんは娘としてどうするか?
「ごめんなさいね、人の目を気にしない勇気が無かったの」
心配は無いと思いますが、愚を犯した者の身内がどうなるかは知っているんでしょうね。
【アーサー・リンチ】
顔を合わせた事あるでしょうし、ヤン提督が英雄となった影でリンチ少将の身内がどうなった・・・・っ!?
~~~~~~~~~~~っ!
「ティ、ティア?」
「・・・・ヤン提督のとこに行きなさい、贅沢言ってないで・・・・っ!」
「い、医者を呼んで来るから・・・・静かにしてなさい?」
何だろ、以前に見た夢みたいにおかしな光景が・・・・まあ、良いです。
その後に来た医者の言い分では、緊張感が切れて疲れたのかもらしいですね、すんごい顔色だったらしい、いきなり戦艦の主砲飛び交う場を目の当たりにしてたんだから・・・・はあ、後で受けるダメージが極端に多いのはギャグマンガだけにして欲しいです。
しかし、あのデモかなんかみたいな連中に囲まれた家は何なんですかねえ?
一眠りした後、様子見に来てくれたフレデリカさんに聞いたら・・・・ヤン提督から何か本音っぽいの聞かせてもらえて少し嬉しそうでしたとさ・・・・善きかな、善きかな。
それはともかく、後がどうなるやらです。
今回の戦いでヤン提督は大変な事になりましたよ、艦隊司令としての実力が一気に知れ渡りました。
イゼルローン任されるとかどうとかはともかく、望まずとも軍や政府にどうちょっかい出される事やら、けど私達には当面の危機を脱せるか否か、良くて嵐の前の何とやらな報せが銀河に響き渡りました。
【銀河帝国皇帝崩御】
何はともあれ、原作より被害は抑えられましたな回。