ザ・シェイプ・オブ・ニンジャ・トゥ・カム・イン・ゲンソウキョウ 作:毛糸ー
アセイルド・ゲンソウキョウ#1
「今日の議題は……幻想入りしたニンジャ共について、ですわね」
幻想郷の賢者、スキマ妖怪の八雲紫が会議の口火を切る。この場にいる者達は、この幻想郷の有力者達。問題が起きた時、彼ら彼女らは集まって話し合い、解決策を練るのだ。
「異なことを」「終わった話だろう」「…………」「何故また?」
しかし、今回紫が挙げた議題への他の有力者達の反応は鈍かった。先の異変におけるコンヴァージなるニンジャとそれを使役していた新地獄の支配者、日白残無への制裁は終わったことのはずだからだ。それに、ニンジャの件は全て奴らに任せることにしたはず……。
「……彼のニンジャらが、ストラグル・オブ・カリュドーンの代理戦士だとしても?」
だが、八雲の言葉で、彼女らに狼狽が広がる。ストラグル・オブ・カリュドーン。通称カリュドーンの儀。それは、ダークカラテエンパイアのニンジャ達が繰り広げる邪悪遊戯。
……かつてカツ・ワンソーが生まれ、この世にニンジャが生まれた時、妖怪や神は著しくその勢力を減じた。妖怪が必要とする畏れや、神の力の根源である信仰をニンジャに奪われたためである。やがてカツ・ワンソーは己の弟子の一人、ハトリ・ニンジャに反旗を翻され*1、滅びた*2。
だが、その後、平安時代になっても妖怪や神の勢力は減じたままだった。カツ・ワンソーとの一騎打ちで死んだハトリ・ニンジャの後継者に収まったソガ・ニンジャやその配下らが、日本全土をニンジャのカラテで支配したからである。
事ここに至って、当時八雲紫を代表とした妖怪やその他ニンジャに存在を脅かされし超常存在らは、隠れ里『幻想郷』を作り上げ、妖怪や神がニンジャのカラテに脅かされぬ理想郷を作り上げたのだ*3。
……ダークカラテエンパイアとはニンジャ大戦時にカツ・ワンソーに味方したリアルニンジャ*4達とその配下によって構成された集団であり、カツ・ワンソーの復活とニンジャ大戦以前へ世界を回帰させる事を企んでいる。
その彼らが執り行うのがカリュドーンの儀。その基本的なルールは、「狩人の印」を刻んだ「獣」をリアルニンジャらが派遣した「狩人」が追い詰め、最初に獲物の心臓を引きずり出して血を飲んだ者が勝者となるというものだ。勝者となった「狩人」の主に与えられるは、絶対の承認……!
そしてこのカリュドーンの儀が執り行われるということは、現代社会にダークカラテエンパイアのニンジャが甦り、そして世界を併呑しようとしていることを意味する……!
「だ、誰が執り行っている!?」「……!!」「いやそもそも何故奴らは幻想入りしたの!?」
紫は狼狽のさなかにいる有力者達を冷めた目で見る。彼女らを落ち着かせるため、咳こむ紫。有力者達の注目を集めた紫は、ゆっくりと話し出す。
「かろうじて得た情報によると、今回の『獣』はニンジャスレイヤー。参加者は主催のセトを合わせて7人。場所はネオサイタマ」
黙って先を促す有力者達のアトモスフィアを感じ取り、紫は先を続ける。突如リアルニンジャの元尖兵共が幻想入りしたことへの仮説を添えて。
「……狩人共が幻想入りしたのは、ニンジャスレイヤーが狩人を爆発四散させた時に生じたオリガミに関係があると考えているわ。幻想郷を覆う博麗大結界は正常。今までニンジャの侵入を阻んできた結界に綻びがないなら、ニンジャスレイヤーの方が何かした、と考える方が自然でしょう?」
八雲紫の仮説を聞き、幻想郷の有力者達は唸る。またぞろ、ニンジャスレイヤーか。十年前に月を破壊し、幻想郷の危機の引き金*5となったあの忌々しい怨霊の塊が、また幻想郷に仇なすというのか*6?
「や、やはり奴らは始末しておくべきだ!ダークカラテエンパイアの尖兵など、幻想郷に仇なすに決まっておる!」
妖怪の山を統べる天狗の長、天魔が
天狗は実際プライドの高い妖怪であり、妖怪の山にて排他的・閉鎖的コミュニティを形作っている。その彼らにとって、ぽっと出のニンジャに妖怪の山を荒らされたのは恐怖と屈辱を相当に掻き立てられたらしい。
紫本人としては、コンヴァージについてはそこまで警戒していない。確かに性格は狂暴で一定の不安要素はあるが、残無は奴をよく御していると言うべきだろう。奴が先の異変で大暴れした際も、天狗達が蹴散らされ、妖怪の山の一角が禿げあがった
紫が見るに、コンヴァージのジツは死体も瓦礫も泥も一緒くたに身に纏い操ることができる。にもかかわらず奴はやられた天狗を潰し、ジツの影響下に収めることをしなかった。女子供の遊びである『弾幕ごっこ』にもまぁ……概ね従っていた。
それ故、紫ともう一人の賢者にとって、コンヴァージは排除すべき存在ではない。
「ダークカラテエンパイアの中心ニンジャ共がこの幻想郷を見つけ出すかもしれないのだから、即刻奴らは処分すべきだ!そうだろう!?」
だが、天魔がニンジャの処分を扇動しようとしたその時!円卓の中央に前兆もなく胡乱な影が現れる!うずくまったその影が首をもたげると、胡乱な笑い声を放つ!
「クキキキキキキ!あの不可思議な”力”の流れを追った果てに、このような!」
その影は、緋色の目玉と人型のシルエットを持つ、ニンジャであった。
「「「アイエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」」」
この場にいる者のうち、力なき者達が恐慌状態に陥る!そして、八雲紫ら力ある者達は臨戦態勢!だが、突如この場に現れたニンジャは、首を傾げただけだ。
「クキキキ……随分剣呑ではないか。まだ何も目的を告げてはおらぬというのに。まぁ実際……私は突如この場に現れたゆえ、驚愕するのも理解できるが。仮に我々がチャを所望しに参っただけだとすれば、これは大変なシツレイでは……」
「名乗りなさい。ニンジャ。その首を狩られたくないならね」
「……クキキ!」
この期に及んで御託を重ねる胡乱なニンジャに痺れを切らし、あえて高圧的に接する紫。彼女の狙い通り、ニンジャは一瞬凄まじい笑みを浮かべたものの、すぐに表情を人間めいたものに戻し、ゆっくりとオジギした。
「クキキキ……ドーモ、ギャラルホルンです」
ケイトー野郎、言ってることが嘘か本当か分からないので、オリジナル設定を喋らすのにこれほど丁度いい奴もいない。