ザ・シェイプ・オブ・ニンジャ・トゥ・カム・イン・ゲンソウキョウ 作:毛糸ー
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コンヴァージはジャンクと不機嫌を纏いながら長い石段の階段をのぼる。博麗神社*1のミコー(=巫女)、博麗霊夢(ハクレイ・レイム)に会うために。無論、コンヴァージは幻想郷に流れ着いたのだからその管理者にアイサツしようなどという殊勝な精神を持ち合わせてはいない。
全てはザンム*2の命令である。ザンムが言うには、博麗神社をしばしば訪ねていた所、ゲンソウキョウの管理者ユカリ*3にそれを見咎められたゆえ、お前が代わりに行けということであった。
「儂は奥ゆかしいゆえ、『新地獄をおざなりにしてはいけないのでは?』と面と向かって言われてしまっては、行くことは出来ん。という訳で、レイム=サンの様子を代わりに見てきてくれ」
ザンムの命令を思い返すコンヴァージは不満でいっぱいであった。そもそもザンムが本当に奥ゆかしいなら、今頃新地獄の支配者などにはなっていないはずだろうが。それに、ザンムが言うにはあの博麗のミコーとザンムは似ているそうだが、本当にそうなら奥ゆかしいはずが無い。
自らを破ったふてぶてしいミコーの面を忌々しく思い出しながら石段を登り続けるコンヴァージは、ふと、妙な視線を感じた。気のせいかとも思うが、藪が
「アイエエエ……あ、あいつ私たちに気付いたんじゃない!?」
「そ、そんなはずないよ!……気付いてないよね?」
「ひいい……こっち滅茶苦茶睨んでる!に、逃げようよ!」
コンヴァージが感じた視線は、この腰砕けの三妖精によるものであった。コンヴァージは幾度か地上に赴いた際、ちょっかいをかけてきた妖精*4や弱小妖怪を一切の手加減なしに殴り倒している。それに義憤を覚えたこの三妖精のリーダー格、オレンジ金髪のサニーミルクである。
彼女はいつもつるんでいる亜麻色金髪のルナチャイルド、黒髪ストレートのスターサファイアと共に、コンヴァージに悪戯を仕掛ける計画を練ったのだ。悪戯と言ってもそう複雑なものではない。彼が足を踏み出す時に物干し竿を突き出し、転ばせるだけだ。
だがそんな意気も、コンヴァージの恐ろし気な視線が自分達に向いた瞬間に霧散してしまった。サニーミルクの『光を屈折させる程度の能力』とルナチャイルドの『周りの音を消す程度の能力』で完全に隠れているというのに。
実際、彼女らのステルス能力は並のニンジャ程度なら騙し通せていただろう。だが、コンヴァージはリアルニンジャ*5直々に加護を授けるほどの実力の持ち主であり、ソウル憑依者*6の中でも上澄み中の上澄みであった。
そのコンヴァージが、野伏力*7の鍛えられていない小娘共のステルスを見抜けぬはずが無かった。音を鳴らさず揺れる藪という異常を見せられてはなおのことであった。光の屈折で相手の姿が見えずとも、大体の当たりはつけられる。
「イヤーッ!」
「「「アイエエエエエエ!?」」」
その結果が、三妖精のすぐ横に振り下ろされた、アスファルトや鉄屑が収束された拳であった!三妖精は悲鳴をあげる!ルナチャイルドが恐怖のあまり『周りの音を消す程度の能力』を解除してしまったので、悲鳴はコンヴァージの耳にも届いた。
だが、コンヴァージは相手が悲鳴をあげたからと言って情を見せるニンジャではない!逃げ出そうとした三妖精のうちの一匹の襟首を引っ掴むと、眼前まで持ち上げ、脅しをかける!本当なら殴り潰す所ではあるが、この後博麗のミコーと会う用事があるゆえ、脅しに止めているのだ!
「貴様ら、今度ふざけた真似をしたら……分かってるよな?」
落とされた妖精と他二人は、コクコクと頷き、脱兎のごとくその場から逃げ出した。コンヴァージは溜息をつくと、また石段を登り始めた……。