ザ・シェイプ・オブ・ニンジャ・トゥ・カム・イン・ゲンソウキョウ   作:毛糸ー

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マークスリーの次は奴……とあの御方。
割と大事な回なので長いです。

ご注意!今話は独自設定マシマシです!


スレイト:旧地獄街道

「あなたはだあれ?」

 

 第三の目を閉じた覚妖怪*1は無意識のままに問いかける。その覚妖怪は、灰色のセミロングに黄色の服、緑のスカートを纏った少女然とした姿をしていたが、緑の瞳は虚無を宿したかのように虚ろであった。

 

 この覚妖怪の名は古明地こいし。打ち捨てられた地獄の一部、旧地獄*2にそびえる地霊殿の主である覚妖怪、古明地さとりの妹にして、覚妖怪のアイデンティティである第三の目を潰した覚妖怪である。

 

 彼女はその代わりに『無意識を操る程度の能力』を手に入れ、他者の無意識を操り各地を放浪する妖怪となった。ここで重要なのは、彼女が他者の意識、即ちローカルコトダマ空間に干渉し続けているという事実である。

 

 そして各人が持ち合わせる脳内意識たるローカルコトダマ空間は、Y2K*3によりオヒガン(≒あの世)とIRCネットワークがオーバーラップしたことで生じたコトダマ空間に繋がっている。ゆえに、彼女は他の妖怪より半歩だけオヒガンに近い。

 

 そのため、この出会いは必然であったのかもしれぬ。こいしが問いかけた茫洋たる存在は呻きともノイズともつかぬ応答を返す。「001010オモイ01011101ニンジャ0100011010」

 

 ALAS!何たることか!こいしに応えたのは、サロウ*4をカリュドーンの儀に遣わし、散々横紙破り*5を繰り返した挙句にサロウの自我を乗っ取り、最後にはニンジャスレイヤーに返り討ちにあったオモイ・ニンジャというのか!?

 

 こいしはかの存在の応答を聞いていたのかいないのか、己の影に話しかける薬物中毒者めいて続ける。「私ね、寂しいんだ!私に誰も気づいてくれないの!こんなに近くにいるのに!」彼女の言う通り、旧地獄を往来する者達は道の真ん中で大声を上げるこいしに目を向けることもしない。

 

 「でもね、幽霊さん!私、あなたが私に気付いてくれてうれしいんだ!」こいしは笑顔という名の圧倒的無表情!だが、彼女は気付いているのであろうか。彼女が話しかけている相手が、幽霊などよりも遥かにおぞましい存在であることに……!

 

 オモイ・ニンジャはオヒガンに逐電し、迷い果てた末に極めて観念的な存在と化した。ゆえに、現世に在る者の人格と外殻を乗っ取ることで初めて現世に干渉することが可能となる。カリュドーンの儀にも、ある哀れなハッカーを乗っ取る事で参加していたのだ。

 

 現在のオモイ・ニンジャは外殻を纏っていない剥き出しの状態である。その己に接触する者がいるとは。朧な自我でオモイは考える。丁度いい。この者の自我と外殻を乗っ取り、カリュドーンの儀に戻るとしよう。

 

 「ンアアアーッ!?」出し抜けにこいしが悲鳴をあげる!もしコトダマ空間認識者*6が見れば、異常なプレッシャーを感じさせる何かがこいしに絡みついていることが見て取れよう。そしてその姿がこいしめいて歪んでいく様も。

 

 こいしの悲鳴を聞き届ける者はいない。このまま彼女はオモイ・ニンジャが現世に干渉するための端末に堕してしまうのか!?……いや、見よ!オモイは突然浸食を止めると、こいしを彷彿とさせる姿から元の茫洋たる姿へと戻り、離れんとしているではないか!?

 

 だが、こいしがそれを引き留め、己の内に……引き込んだ!?何故!?

 

 オモイ・ニンジャがこいしの乗っ取りを取りやめた理由は簡単だ。オモイがこいしを乗っ取ったならば、遅かれ早かれこいしの自我は使えなくなり、散逸するからだ。理由は、こいしが妖怪だからだ。

 

 覚妖怪も含め、妖怪とは精神の比重が大きい生命体だ。ゆえに、怨霊などに取りつかれ自我を乗っ取られたならば、その妖怪としての自我は消滅し、死んだに等しい状態となる。現世に干渉するのに他者の自我を乗っ取る必要があるオモイ・ニンジャにとって、妖怪のこの特徴は致命的であった。

 

 ダークカラテエンパイアの集会中にオヒガンに霧散してしまうのは不味い。ゆえに、こいしの自我乗っ取りを止め、離れんとした。だが、こいしは『無意識を操る程度の能力』を発動した己を見出したこの存在を放す気はなかった。

 

 いつでも、どんな時でも自分に気付いてくれる存在に飢えていた彼女は文字通りオモイ・ニンジャと一体にならんとした。先程の出来事から、オモイが悍ましい存在であろうことは彼女にも察しがついた。だが、己の持ち合わせていた第三の目も、随分と悍ましい代物ではなかったか。

 

 暴れ離れんとするオモイ・ニンジャを、己の内に押し込めるこいし。ここに来てオモイは状況判断した。こいしと自我を共有するしかない。その結論に達したオモイはこいしに"宿る"。それは奇しくも、ディセンション現象*7に似通っていた。

 

 こいしはそれに気づくと、しばし嬉しさに飛び跳ね、地霊殿に引きこもる姉の元へと走っていった。彼女に同化した無二の友について話すために。

 

 

 同じ頃、旧地獄の端で赤黒のオリガミが生じたかと思うと、折りたたまれたそのオリガミが開かれ、気絶したリアルタイム七色遷移極端ツーブロック・ヘアの男が現れた……。

*1
体に細い触手で繋がった第三の目を用いて相手の心を読む妖怪。

*2
幻想郷の地下に広がる、広大な洞窟空間。元々は地獄の一部であったが、効率化を図るため日白残無が口八丁を駆使して切り離した。現在は嫌われ者の妖怪が集う歓楽街めいた有様となっている。

*3
いわゆる2000年問題。ニンジャスレイヤーの世界では、2000年に突入した直後に世界各地のコンピュータが爆発し、大惨事と化した。その後電子戦争と呼ばれる大規模な戦争が起こり、多くのテクノロジーが散逸した。

*4
オモイ・ニンジャの代理戦士。他者のニューロンをハッキングするユメミル・ジツを持つが、カラテはサンシタニンジャよりも貧弱。

*5
狩人を決める神聖不可侵なオミクジの結果への介入、狩人と協同しての獣への攻撃、カリュドーンの儀のプロトコルのハッキングなど。

*6
一握りのハッカーの中には、己の意識のみをコトダマ空間に飛ばすことができる者がいる。彼らこそコトダマ空間認識者である。

*7
ニンジャソウルがモータル(≒人間)に宿り、ソウル憑依者になる事。




書きながら即落ち2コマめいているな、と思った。
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