ザ・シェイプ・オブ・ニンジャ・トゥ・カム・イン・ゲンソウキョウ   作:毛糸ー

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サロウは一見弱々しく見えるから厄介なニンジャなんですよね……
あからさまな強者である他の狩人にはない味がある。

ただまぁ、さとり様には通用しなかったようで。


ケイジ・オブ・イモータリティ:#2

【これまでのあらすじ】

 幻想入りしたニンジャ、コンヴァージはザンムの命で旧地獄へ赴く。わざわざ迎えに来たサトリに従い彼女の住処、地霊殿(チレイデン)に向かう道中で、彼は己と同じ狩人であったニンジャ、サロウが幻想入りしたことを聞かされる。彼が胸騒ぎを覚える中、二人は地霊殿へと到着した……。

 

【旧地獄とは?】

 ヨーカイの山にある大穴から行くことができる地下空間。元々はここに地獄が存在したが、地獄のスリム化と言う名目でうち捨てられた地獄の跡地。現在はオニやツチグモなど、嫌われ者のヨーカイが集い、歓楽街めいた街を形作っている。

 

 その中央にあるのが地霊殿であり、サトリ・ヨーカイのコメイジ・サトリとそのペットたちが住んでいる。

 

【サロウとは何者?】

 コンヴァージと同じく、ストラグル・オブ・カリュドーンの狩人。オヒガンに逐電せしオモイ・ニンジャの代理戦士。他者のニューロンを思うがままに蹂躙する強力なユニーク・ジツ*1、ユメミル・ジツの使い手だが、カラテは貧弱そのもの。

 

 軽佻浮薄で臆病だが、そこに他者を利用して一切顧みないサイコパス性が合わさった危険なニンジャ。ニンジャスレイヤーと四番目に戦い、敗れ、旧地獄へ流れ着いた。

 

◆瓦◆礫◆纏◆

 

 地霊殿に足を踏み入れた二人を出迎えたのは、黒を基調とする服に身を包んだ、赤毛の猫耳少女であった。彼当初、彼女は何かを探すようにキョロキョロしていたが、サトリを目にとらえると一直線に走ってきた。

 

「さ、サトリ様!コイシ様が消えて……!?」

 

 だが、それも彼女の後ろにいる異様なニンジャに目線を写すまでの話であった。猫耳少女、カエン・ビョウリン(火焔猫燐)、通称『お燐』はこのニンジャを知っている。彼女もあの畜生霊共が地上に溢れ出した異変*2の中、動き回っていたものの一人であるゆえに。

 

 遠目から見ていただけだが、あのニンジャ、コンヴァージの暴れっぷりは目に焼き付いている。テングの部隊を向こうに回し、その他突っかかってきた者をのべつ幕なしに殴り倒し、挙句の果てには瓦礫を取り込んで巨大化し、博麗のミコーともやり合った化け物。

 

 性格も極めて粗暴であり、宴会時には博麗のミコーと睨み合い、異変後も時折地上に出てきてはサンシタヨーカイやフェアリーを血祭りに上げているらしい……。そんな輩が己の主の後ろに立っているゆえ、彼女が実際ネコめいて警戒心をあらわにするのも当然と言えた。

 

「……サトリ様。そいつ、何ですか?」

「お燐、お客さんをそいつ、呼ばわりは無いでしょう?彼はコンヴァージ。ザンム=サンから送られてきたエージェントよ」

「……あいつの件ですか?あたしにはあいつがそんなに危険なようには見えないんですけど……」

 

 お燐にとって、サロウはニンジャではあっても弱々しい存在であった。何なら、眼前にいるコンヴァージの方が危険に見える。だが、心を読めるサトリはサロウの抱える恐るべき二面性を見抜いていた。

 

 お燐の言う通り、サロウは弱々しいニンジャだ。自分に自信がなく、臆病。そして落ち着きがない。傲岸不遜なコンヴァージとは全く似ても似つかぬ。だが、残虐性はコンヴァージにも劣らぬ。無辜の不特定多数を利用し、破滅させることを何とも思っていない。

 

 厄介なのはサロウの弱々しさは残虐な本性を覆い隠すための偽装ではなく、残虐性と裏表であることだ。そのため、お燐や他のペット達も奴の本性を見誤っている。

 

 サトリは隠された(本人は隠しているとは思っていないだろうが)サロウの本性を見て取ると、ペットの犠牲を防ぐため、サロウのトラウマを引き摺り出し、()()()()()。彼が危険なユメミル・ジツを行使しようとするたびに、恐るべき影が頭をもたげるほどに。

 

 その彼は現在、トラウマを引き摺り出した時に七転八倒しケガをしたため、療養中だ。本当ならすぐにでも殺したいが、有力者会議で決まったように、彼を軽率に殺せはしない。それに、コイシの変調とあのニンジャの関係も気になる。

 

「それで、どうしたんです?お燐」

「あのですね、コイシ様が消えちゃったんですよ!ちょっと目を放した隙に」

 

 コンヴァージが明らかに”ただの餓鬼ならさっさと見つけろ”と言わんばかりの目つきになったため、サトリはコイシの特異性について補足しておく。

 

「あの子は無意識を操ります。ゆえに一度見失ったあの子を見つけるのは困難です。……お燐。私はサロウに会ってきます。あなたや他のペットでコイシを探してください」

「わ、わかりましたサトリ様。……そいつに何かされたら、大声で知らせてくださいね」

「……妙な事は考えないように。行きますよ」

 

 お燐に剣呑な一瞥をくれたコンヴァージを牽制し、サトリはサロウの部屋に向かう……。

 

◆夢◆歩◆

 

「はぁ……毎日つらい」

 

 サロウは部屋の中で溜息をついた。彼の外見は、この幻想郷においては異様なものだった。斑色のブルゾンとスキニーパンツに身を包み、極端なツーブロック・ヘアーはリアルタイム七色遷移処理が施されている。そしてまた、右眉はリングピアスに置き換わっている。

 

 彼が嘆いているのは、この地、ゲンソウキョウに足を踏み入れてから、碌な目に会っていないからだ。

 

 目覚めて美少女達に囲まれていると思ったらそいつらは恐ろし気なヨーカイだった。

 

 咄嗟にそいつらのニューロンを弄って殺そうとしたが、ニューロンがウキヨ*3よりも人間離れしていたため、どうしようもできなかった。

 

 館の主だという少女にあったら、いきなりオモイ・ニンジャにゲコクジョしようとした際*4に味わった恐怖をリコール(思い出し)させられた。

 

 恐怖で七転八倒した際に出来た怪我への謝罪もなく、この部屋に閉じ込められた。外はデカいトカゲに見張られており、出れない。

 

「俺が何したっていうんだ……」

 

 彼にとって唯一の癒しは、姿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のみ。だが、それですら彼の心を完全に休めることは無い。正体がさっぱり分からぬからだ。

 

 ()()()()と同じく、恐ろしいヨーカイかもしれぬ。あるいはこの地に彷徨うというユーレイかもしれぬ。万が一のことだが、発狂した己が作り出した幻覚であるかもしれぬ。様々な可能性がサロウのニューロンに閃いては消えて行く。

 

 サロウの精神は緩やかに追い詰められていた。彼は閉塞の中で、精神の均衡を崩しかけていた。だが、ノックと共に扉が開かれた時、彼の精神状態はそれどころではなくなった。

 

「入りますよ」「…………」

 

 扉が開いてまず現れたのは、少女然としたこの館の主にして、サロウにトラウマの楔をはめた忌々しきサトリ・ヨーカイ、コメイジ・サトリ。そしてその後ろから現れたのは……

 

「アイエエエ!?コンヴァージ=サン!?コンヴァージ=サンナンデ!?」

*1
ニンジャが持っていることがある特殊能力のこと。火を出すカトン・ジツや氷を生み出すコリ・ジツなどがある。

*2
詳細は『東方獣王園』参照。

*3
自我を持ったオイランドロイド(セクサロイドのようなもの)。

*4
サロウは狩りの終盤時、オモイ・ニンジャから役立たず呼ばわりされ、彼の存在の新たな外殻として利用されそうになった。その際彼はオモイを逆に取り込もうとした。当然失敗し、サロウはオモイの端末と化した。だが、サロウを端末としたオモイもニンジャスレイヤーに返り討ちにあった。

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