ザ・シェイプ・オブ・ニンジャ・トゥ・カム・イン・ゲンソウキョウ 作:毛糸ー
【これまでのあらすじ】
幻想入りしたニンジャ、コンヴァージは、主のニッパク・ザンムの命で、ヨーカイの山の地下にあるオールド・ジゴク*1へ赴いた。その中央にあるチレイデン*2の主、サトリに案内され、己と同じくこの幻想満ちる地に墜ちてきたニンジャ、サロウと邂逅する……!
【コメイジ・サトリ(古明地さとり)とは誰?】
・身体にコードで繋がった第三の目を持つサトリ・ヨーカイ。
・人の心を読んだり、他者のトラウマを引き摺り出したりする。
・チレイデンの主で、ヨーカイになりかけの獣・あるいはヨーカイとなった獣を多数ペットとして飼っている。
・各地を放浪するコイシという妹がいる。
「アイエエエ!?コンヴァージ=サン!?コンヴァージ=サンナンデ!?」
コンヴァージが吃驚するサロウを冷たく見下している。相変わらずのサンシタぶりだ。カリュドーンを始める際、全ての狩人が集まった時も、このニンジャは斯様なブザマを晒していた。
大して懐かしくもないことを思い出しているコンヴァージを尻目に、サトリは冷酷な眼差しを向けながら、淡々と質問する。
「サロウ=サン、あなたに答えて欲しい事があります。嘘をついたりしらばっくれたりしたらコンヴァージ=サンの拳が飛んできますよ」
「アイエッ、な、何だよ……」
「毎日毎日コイシと何を話しているのですか?」
「エッ……?誰だよ、コイシって……」
(…………!?嘘を言っている様子もない……。どういうことですか!?)
サトリはコイシを知らないというサロウの発言に目を見開く。心を読んでも、困惑で覆い尽くされている。おそらく、彼は本当にコイシのことを知らないのだろう。それを見て取ったコンヴァージは冷めた言葉をかける。
「……コイシとやら、貴様らの妄想の産物ではないのだろうなァ?」
ふざけた言葉を放ってきたコンヴァージをキッと睨むと、サトリはサロウのインタビューに戻る。コイシのことを知らぬのなら、せめて何か情報を引き出さねば……。
「サロウ=サン、コイシのことを知らないなら知らないでいいです。ですが、最近何か変わったことはありませんでしたか?」
「ああ、うん……エット……」
(あの謎の声について言えばいいのかな……でもあれは前からあるし……)
「私が聞きたいのは、その謎の声についてです。話しなさい」
「アイエッ……!?」
サロウがサトリの剣幕に小さく悲鳴をあげる。そのサロウへさらに詰問するサトリを見ながら、コンヴァージは退屈を持て余していた。結局の所、コンヴァージがこのチレイデンとやらに出向いたのは完全な徒労であったわけだ。
ニンジャ戦闘の機会があるかとも思ったが、いたのはサンシタのサロウ一匹。この分では、ニンジャスレイヤーを狩るに足ると主に判断された
「「「ねー。本当にアイツ、情けないニボシなんだから。期待外れにも程があるよね!」」」
超自然エコーのかかった幼子の声がコンヴァージの耳朶を叩く!コンヴァージは即座にカラテ警戒……したが、サロウもサトリも気づいた様子もない。気のせいか?そう思った途端!
「「「ひっどーい!私はここにいるってのに!」」」
エコーのかかった少女めいた声が響き、コンヴァージは耳鳴りめいた余韻に顔をしかめる!それにしても……声量の抑えられていないこの声にサトリもサロウもこの声に気付かぬ様子だ。どういうことだ?訝しんだコンヴァージに、さらに少女の声は続ける!
「「「うふふふ……お姉ちゃんに聞かなかった?私はコメイジ・コイシ(古明地こいし)。無意識を操るヨーカイだよっ!」」」
「ほぉ……あのガキ、嘘はついていなかったらしい。で?貴様は俺に何の用だ?」
「「「んっとねー……私の”友達”のオモイ=サンがあなたと話したいんだって!今変わるね!」」」
その言葉を境に、少女の声が無邪気なものから何か、異様な時の力を感じさせる響きに変わる!口調はそのまま故、不気味極まりない!その声を聞いたコンヴァージは何故だかシャン・ロア、即ちムカデ・ニンジャを思い出していた……!
「「「……私ねェ、今の状態じゃァ不便なんだ!」」」
「それがどうした」
コンヴァージは答えながら周囲をカラテ警戒する。ニンジャ第六感を研ぎ澄ます。声の正体の居場所を探る。不穏な気配が漂い出した。ニンジャ感覚を高めるコンヴァージには、こちらを不気味がるサロウもサトリも意識に入っていなかった。そして、不穏の正体が言葉と化した!
「「「だからね?……あなたの自我、チョーダイ!」」」
襲い掛かった少女めいた影!……だが!「イヤーッ!」「「「ンアアァーーッ!?」」」コンヴァージの打撃が、過たず少女めいた影、即ちコメイジ・コイシにクリーンヒットした!これはいかなることか!?先程まで、コンヴァージは声の正体を掴みかねていたはずではないのか!?
コイシの”友人”の誤算はコイシの『無意識を操る程度の能力』を過大評価しすぎたことだ。確かにこの能力は相手の無意識を操り、他者に全く認識されずに行動できるという、アンブッシュにうってつけの能力である。
だが、この能力は機械センサーを誤魔化すことは出来ない。読者諸氏におかれては当然のことであるが、野伏力*3に優れたニンジャは機械を誤魔化す事すらできる。そして、優れたニンジャはそれほどの手練れニンジャのステルスを看破しうるということも、当然の事実である……!
コンヴァージはその優れたニンジャに入る、カラテに秀でたニンジャであった!ゆえに、襲い掛かるコイシを捉え、拳を過たず叩き込んだのだ!CRAAAAASH!吹き飛び、壁にぶち当たるコイシ!それに気づいたサトリが心を読むより前に激昂する!
「あなた!どういうつもりですか!」
「先に奴が手を出してきたのだぞ。黙って死ねとでも言うつもりか?」
サトリはさらに抗議しようとしたが、壁に叩き付けられたコイシの異様なアトモスフィアを感じ取り、言葉を閉ざす。サロウもニボシなりに妙な雰囲気を感じ取り、そわそわしている。コンヴァージが油断なくコイシを見据える中、少女はゆっくりとオジギした。
「……うふふ。うふふふふふ。ドーモ、オモイ・ニンジャです」
オモイ・ニンジャ、良くも悪くもカラテやハッキング技能も依り代次第という印象がある。