ザ・シェイプ・オブ・ニンジャ・トゥ・カム・イン・ゲンソウキョウ 作:毛糸ー
※未来の展開のネタバレと思われる個所があるが、これは現時点での構想であり、未来の展開を完全に予言するものではない。いいね?
【これまでのあらすじ】
ゲンソウキョウ全体を巻き込んだ緑化異変は首謀者のアヴァリス(+クロヤギ・ニンジャ)と協力者の比那名居天子(ヒナナイ・テンシ)と依神紫苑(ヨリガミ・シオン)が博麗のミコー、博麗霊夢(ハクレイ・レイム)やその仲間と幻想入りしたニンジャ達にぶちのめされたことで終結した。
そして異変終結後には定番となっている博麗神社での宴会が開かれ、ニンジャや人妖達が一堂に集った……。
瓦礫を纏ったニンジャ、コンヴァージは宴会でバカ騒ぎする者達から距離を取り、一人でオーガニック・スシをつまんでいた。その横にやってきたのは日白残無(ニッパク・ザンム)。モータルからオニとなった女オニで、コンヴァージの主だ。
「あっちに混ざらんのか?」
「……奴らは五月蠅い」
「サケはいらんか?」
「いらん」
「スシは?」
「……寄越せ」
彼とザンムとの間で交わされる会話は少ない。心地良い沈黙がコンヴァージ達を覆った所で、ザンムが口を開く。
「……今回のこと、よくやった。儂は、全くサップーケイだった新地獄が緑に溢れかえってパニックになっておったゴースト共をなだめるので精一杯で、地上まで手が回らなんだ」
「礼なんぞ要らん。俺はあのクソ緑が鬱陶しかった。それだけだ」
「それでもだ。よくやった。コンヴァージ」
「……フン」
ザンムからの礼としての酌のサケを不器用に受け取ったコンヴァージは、食事に戻る。オーガニック・スシは幾度食べてもその美味さに飽きることはない。再び沈黙のトバリが彼らを覆おうとしていた時、闖入者が現れた。
「ざ~ん~む~さ~ま~!!そんな奴放っておいて、私とお酒を飲みませんかぁ~!!」
ロベリアめいた仮面で顔の上半分を覆い、ヤマブドウの模様が施された深い紫のチャイナドレスを纏う長身の女は豫母都日狭美(ヨモツ・ヒサミ)。ザンムの同僚で、彼女に非常に執着しているため、彼女の部下であるコンヴァージへの当たりは厳しい。
だが、この女ともそれなりの付き合いである。コンヴァージはこの女の注意をそらす方法を知っていた。
「ヒサミ=サン、普通にザンム=サンに擦り寄ってサケを呑めばいいだろうが。俺は邪魔をせんゆえにな」
「あら、気が利きますねぇ!」
コンヴァージがアトモスフィアを弱めたのを見て取ると、ヒサミはいそいそとザンムの横に座り、彼女の杯にお酌をする。ザンムはしぶしぶそれを受けると、一気に飲み干す。
「……プハァッ!やはり、宴会で飲むサケは上手いな!格別だ!」
サケを飲み干し、爽やかに笑うザンム。ヒサミは微笑み、コンヴァージはかすかに頷く。
◆◆◆
蠅使いのニンジャにして畜生界の闇組織の代表、ベルゼブブは畜生界のヤクザクランのオヤブン二人とサケを呑んでいた。彼女の周囲には配下のカメレオン・ゴーストやモンキー・ゴーストが漂い、サケを呑み交わしている。
「……今回の緑化異変を消し止めたことには礼を言いましょう。ベルゼブブ殿」
「フン。貴様に礼を言われるまでもないわ。キッチョウ=サン。我はあの緑でブザマに狼狽えておった貴様らより先んじたことを忘れるなよ」
キケツ・ヤクザクラン(鬼傑組)の長、吉弔八千慧(キッチョウ・ヤチエ)の慇懃な礼に鼻を鳴らして答えるベルゼブブ。睨み合う彼女らをよそに、ケイガ・ヤクザクラン(勁牙組)のオヤブンであるクロコマ・サキ(驪駒早鬼)はお気楽なものだった。
「オイオイ、お前ら、今日はあの緑が消えたのを祝う嬉しい宴会だぞ?何睨み合ってるんだよ!飲め飲め!」
「ンアーッ!?止め、止めろ!黒駒!ンアーッ……!?」
「ヤ、ヤチエ様ーッ!?」
「だ、大丈夫ですか!?おのれクロコマ=サン!」
いがみ合う両者を見かねたらしき彼女は、両者の口にイッショビンを突っ込む。キッチョウは突っ込まれたイッショビンをもろに食らい、サケを臓腑に流し込まれ気絶!キッチョウの部下、孫美天(ソン・ビテン)やカワウソ・ゴーストに介抱されることとなった。
わあんわあんわあん……ビシャビシャビシャビシャ!
「アッ!?アイツ、逃げたな!私のサケが飲めないってのか!?」
一方、ベルゼブブは自らの体を蠅の群れとして霧散させ、サケを流し込まれる危機を回避していた。飲ませ損ねたサケが、地面に飲まれる。こんなときにイッショビンを横取りする饕餮尤魔(トウテツ・ユウマ)はアヴァリスに勝負を仕掛けに行って不在だ。
組長たちから離れた場所で実体化したベルゼブブは、青筋を浮かべながら毒づく。
「……貴様らのペースにつき合っておったら色々な意味で潰されるわ!我は一人で飲む!」
その言葉通り、ベルゼブブは肩を怒らせながら配下の動物霊を引き連れ、一人ザケの体勢に入ってしまった。クロコマがその後姿を見送りながら言う。
「あーあ。みんなで飲むサケの美味さを知らないなんて、アイツ人生損してるなぁ~」
「ゲホッ、ゴホッ……うう……あんな飲み方、お前くらいしかしませんよ……それに、あちらの方にいったなら、すぐに戻ってくると思いますよ」
部下による献身的な介護もあってか、起き上がったキッチョウが示唆的なことを言い出した。残念ながらクロコマの頭ではあまり理解できなかったが、ベルゼブブが先程よりも肩を怒らせてこちらを戻ってきたのを見て、朧気にその理由を悟った。
サケを頭からかぶったベルゼブブが元居た場所に腰かけ、サケをハイペースで飲み始めたのを見て、クロコマは笑い、キッチョウも笑みを見せる。
◆◆◆
ニューロンハックを得意としていたニンジャ、サロウはサケを呑んでバカ騒ぎする旧地獄の面々から距離を取り、一人チビチビツマミを食べていた。
(うう……いまだに慣れないなァ、このアトモスフィア……)
サロウはスキニーパンツとブルゾン、極端な虹色遷移ツーブロックをキメていたが、心はいまだにナード同然であった。加えて今は諸事情により、恐るべきニューロンハックを行うジツ(術)、ユメミル・ジツも機能制限を受けているため、万能感もない……!
それゆえ、ジョックめいた飲み会は大の苦手であった。特に旧地獄にいるオニ達は、サロウを臆病者扱いしてバカにしてくる上、旧地獄の宴会もオニが音頭をとることが多い。ゆえに、サロウは彼らも、宴会も嫌いだ。だが、以前のように殺すことは出来ない……。
それゆえ、悶々とツマミを食べていた彼の横に、腰かける者がいた。それは実際少女であった。だが、胸元からは複数のコードでつながっている、目玉の付いた玉を手に持っていた。彼女の名は古明地さとり。サトリヨーカイであり、彼の能力を制限した張本人でもある。
「ヒッ……!?」
サロウは当然、そんな彼女が急に自分の隣に座ってきたことに恐怖する。だが、彼女の口から紡ぎだされたのは、緑化異変を解決したことへのねぎらいだった。
「よく頑張りました。宴会を楽しみなさい」
「それ、俺が宴会嫌いな事知ってて言ってる?」
……だが、彼女と彼の関係が良好になるには、まだまだ時間がかかるようだ。
◆◆◆
「ザッケンナコラーッ!あの手ミエネッカコラーッ!」
子羊めいた少女、トウテツは激昂する!アヴァリス(貪欲)などという思い上がった名前のニンジャを分からせるために大食い対決を挑んだのは良いが、奴は明らかに不正を働いている。わんこそばの皿を出す腕に、女めいた白腕が混じっているのだ!アヴァリスの腕は、黒緑だというのに!
トウテツはその反則を幾度も審判に報告している。だが、審判は訳の分からん理屈をこね、反則を咎めようとしない。もはや、観客もこの言い逃れがどこまで続くのか興味津々に見定めている……!
「疑わしいのは間違いないが、クロヤギ・ブンシンによる分け身によるものである可能性も捨てきれぬ。状況を注視していく」
「ザッケンナコラーッ!シバックレルナコラーッ!」
「あらあら饕餮ちゃん、そんな抗議をしている余裕はあるのかしら~?」
「チッ……ドクサレッガー……オボエテヤガッレ!!」
さらに腹立だしいのは、この審判の主でもあり、この大食い勝負に飛び入り参加してきたユーレイ、西行寺幽々子(サイギョウジ・ユユコ)が茶々を入れてくることである。さらに、このユーレイ、細身の少女の姿をしているくせして、トウテツと同様、恐るべき大食いと見える……!
トウテツは
◆◆◆
「だから言ったじゃないですか、霊夢さん!師匠に審判をさせちゃいけないって!!」
幽々子の従者、魂魄妖夢(コンパク・ヨウム)は博麗霊夢(ハクレイ・レイム)に抗議していた。自分の師匠、ブラックティアーズを眼下で繰り広げられている大食い対決の審判にしたことに対して、である。
ブラックティアーズはふらりと彼女らの住処である冥界に現れ、そのまま居付いている
審判をやらせると、途端にポンコツになるのである。
敵味方問わず明らかな反則をしていても「状況を注視する」「疑わしい状況だが、確証はない」など、胡乱な語彙を用い、咎めるのをギリギリまで先延ばしにしようとするのだ。幽々子の友人である八雲紫(ヤクモ・ユカリ)が言うには、記憶喪失前の言動がフィードバックめいて出てきているせいだというのだが……。
妖夢の抗議を聞いていた霊夢の顔も、あまりのブラックティアーズの節穴ぶりに口の端が引きつっていた。
「ええ……ちょっと、酷すぎるわね……というわけで妖夢、ちょっとアイツ等しばきにいかない?」
「はい。師匠にはもう少し目を鍛えてもらう必要がありますからね」
そして少女達は、節穴なエジプト剣士と現在進行形で反則をしている美丈夫をしばきに行くことにした。
◆◆◆
蛇の目を持つ逞しく美しい女ニンジャ、メイヘムと、吸血鬼が主を務める館の門番、紅美鈴(ホン・メイリン)は実際緊迫感溢れるカラテ演舞(紅魔館主催)の真っ最中であった。
「イヤーッ!」「イヤーッ!」
両者のケリ・キックが衝突し、火花が散る。それを眺めるのは、メイリンが務める紅魔館の面々と、メイヘムが居候している神霊廟の面々。そして……
「オオオォォォォ……ッ!!我がメイヘムのカラテは、あの時よりも更に……!!」
男泣きに泣くアイアンコブラの擬人像……!?恐るべきダークカラテエンパイアのニンジャが、何故ここに!?
……これは実際、ふとした偶然でアイアンコブラの友人となったヘカーティアの無責任かつ短絡極まる発言に後押しされて、彼はゲンソウキョウを訪れ……紆余曲折の末、この地に居付くことになったのだ。
「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」
メイヘムとメイリンの見事なカラテ応酬が始まるが、紅魔館と神霊廟の面々はそれどころではない。紅魔館の長、幼き吸血鬼、レミリア・スカーレットが神霊廟の長、豊聡耳神子(トヨサミミ・ミコ)(またの名を聖徳太子)を呼ばわる!
(ねぇ、アレ、何とかしなさいよ!アンタ一応、伝説のブティズム聖人なんでしょ!?)
(無茶言うな!あれは正真正銘神話級リアルニンジャだぞ!?平安時代の堕落していた連中とはわけが違う……!あれを”調服”できたのだって奇跡みたいなものだ……!)
(アンタは一回アレをやっつけた!私はゼロ回!アンタがあの号泣してる蛇のニンジャを何とかしなさいよ!)
「おい」
話し合う、あるいは責任を押し付け合っているレミリアと太子の方に、やけに冷えた手が置かれる。アイアンコブラ擬人像のエントリーだ!娘に等しきメイヘムの恐るべきワザマエを見逃す慮外者を優しく諭す構えだ!
「我がメイヘムの晴れ舞台であろうが。我がメイヘムの素晴らしきワザマエ、余すことなく目に焼き付けよ」
「「アッハイ」」
その間にも、カラテ演舞はつつがなく進み、最後のラストスパート!メイヘムは体を床に擦り付けるほどに身をかがめ、コブラの一撃めいたサマーソルトキックをメイリンに放つ!
「イィィィ……イヤァァァァァァーーーーッ!!!」
「イヤーッ!」
そしてメイリンはそれに合わせるようにブリッジ回避!メイヘムの蹴りが腹のすれすれを通り過ぎる!蹴りが終わった所で、メイヘムとメイリンは立ち上がり、オジギする。カラテ演舞が終わったのだ。
「我が!メイヘム!!今回も素晴らしかったぞ!!」
「勿体なきお言葉です。総帥」
メイヘムの演舞を褒めちぎるアイアンコブラ総帥を見て、ほっと息をつくレミリアと聖徳太子。だがその時!宴会の会場になっている博麗神社の地面から、巨大な木が生えだしたのだ……!
◆◆◆
その、少し前!
(ちょっと、大丈夫なの!?)
(ひえぇぇ……)
大食い大会中のアヴァリスは、窮地に陥っていた。机の下に潜り込ませたテンシとシオンが博麗のミコーに感づかれたのだ。アヴァリスはブラックティアーズがやっていたように胡乱語彙で誤魔化そうとしたが、ミコーは引かぬ。
「あんたが何にもやってないってんなら、その机の下、見せても構わないはずよね?あ、拒否したら反則してたとみなしてぶっ飛ばすから」
((ゲェーッ!?))
テンシもシオンも、ミコーの滅茶苦茶な物言いに悲鳴をあげている。だが、アヴァリスには秘策があった。問答無用で机を吹き飛ばされたらまずかったが、のぞかれるだけならやりようがある……!
「ははは。構わんぞ。いくらでも見るといい……!!」
「あっそ。じゃ、遠慮なく」
そういって博麗のミコー、レイムは机の下を覗き込むが……。
「ミイイィィ……ミーィィーッ!」「ンアーッ!?」
そこにいたのは大量の黒山羊!その一匹が博麗のミコーの顔面に飛び掛かる!アヴァリスの脚を見れば、黒く輪郭が捉えがたいオハギめいた有様!そこから黒山羊が湧きだしているのだ!これでミコーを撹乱し、反則を有耶無耶にしようとするアヴァリスであったが……!
「そのクロヤギ全員どかせコルァァァッ!!」「ミィッ!?」「チッ……」
何たることか!レイムは黒仔山羊を無理やり顔面から引きはがし、アヴァリスに黒山羊の退去を迫る!こうなっては致し方なし!アヴァリスは机の下から黒山羊をどかす!そこには、テンシとシオンの姿が!激昂しながら2人を引きずり出すレイム!
「やっぱりかァッ!お前ら出てこい!」
「「アイエェェェ!?」」
「ハハァッ!ザマーミロ!!」
哀れ二人は引き摺り出され、晒し者に!トウテツがそれを見て笑う!さらに審判席でも波乱が!
「やっぱりあの人反則してたじゃないですか!師匠!」
「い、いや、だがな、ヨウム=サン……」
「師匠には審判は任せられません!ここからは私が審判をします!アヴァリスさんは反則負け!」
「ヨッシャァッ!」
審判をしていたブラックティアーズがヨウムの剣幕に負け、審判を交代したのだ。当然、生真面目な彼女はアヴァリスの反則を見逃さぬ!哀れアヴァリスは反則負けと相成った!これにはトウテツもガッツポーズ!
「あらあら~随分余裕ね~」
「フン!今に追いつくから待っていろ!」
目下、反則野郎を排除したトウテツは、今の今までずっとわんこそばを食べ続けていたユユコに啖呵を切り、わんこそばを一息に掻っ込む……!
◆◆◆
「す、すみません、アヴァリスさん……」
「謝んなくてもいいわよ、紫苑。悪いのはあの博麗の巫女よ!」
委縮した様子で頭を下げるシオンに対し、盗人猛々しい物言いをするテンシ。大食い大会で反則負けをしたアヴァリスとその友人二人は、博麗神社のはずれに来ていた。アヴァリスはやおら立ち止まり、地面に手を当てる。
「面白いものを見せてやろう。あのミコーに意趣返しをしてやりたいところだしな。イヤーッ!」
そう言ってアヴァリスがキアイを込めると、博麗神社の近くの地面から、蔦が芽吹き、常識を超えた速さで絡まり伸びる!そして、参道を挟んで反対側の地面からも、蔦が伸び始める!捻じれ伸び、互いに絡まる蔦は、そのまま延々と柱めいて天へ向かって伸びていくかと思われた!
「コルァァァッ!!アンタら何してんのよォ!!」
異常事態に気付いたレイムは、鬼巫女めいた形相でアヴァリスに迫る!だが、アヴァリスは鷹揚とした態度でいる。
「この神社に新たな名物を作ろうというのに、随分と不機嫌じゃないか、ははは」
「そうよ霊夢!黙って見てなさい!コイツが名物っていうくらいだから、相当なものが出来るわよ!」
「あ、あわわわ……天人様も、アヴァリスさんも、強気に出すぎじゃないですかぁ!?」
奇しくもアヴァリスの言うとおり、このまま果て無く伸びていくかと思われた蔦群は、途中で伸びるのをやめ、奇妙に広がりを見せ始める。様子を見るうちに、二つの蔦柱が上方で融合し、そのうちに、トリイめいた形をとった。
「これがハクレイ・シュラインの新名物、ツタ・トリイだ。ちなみに、時期がくればブドウも実るぞ」
「…………」
アヴァリスの言葉に、俯いていたレイムであったが、そのうちにオハライ・ボーでアヴァリスたちをしばきに向かった。それをサケの肴にしながら、宴会は過ぎて行った……。