ザ・シェイプ・オブ・ニンジャ・トゥ・カム・イン・ゲンソウキョウ   作:毛糸ー

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先に言っておきます。さとりファンの皆さん、ごめんなさい。


ケイジ・オブ・イモータリティ:#5

【これまでのあらすじ】

 幻想入りしたニンジャ、コンヴァージは己の主の命で旧地獄へと向かう。そこで相まみえたのは、コイシの自我を間借りするリアルニンジャ、オモイ・ニンジャであった!このニンジャは不便な現状を脱すべく、コンヴァージの自我を狙う!コンヴァージは当然、迎え撃った……!

 

◆瓦◆礫◆纏◆

 

 コンヴァージとオモイが格闘する横で、サトリは考え込む。彼女の妹、コイシの不可解な発言について。コイシの無意識を操る能力は、彼女自身で制御できない。ゆえに、時折能力が暴発し、無意識に放浪する。コイシはその無意識の日々の中で、夢も希望もない日々を過ごしていたはずだ。

 

 コイシはその、誰にも認識されない状態に倦んでいた。ゆえに、無意識の海で漂う彼女を見つけ出したオモイを友としたのであろう。だが……。

 

 「イヤーッ!」「ンアーッ!」……コンヴァージがコイシを殴り飛ばす。コイシの持つナイフは瓦礫の鎧を貫通し得ぬ!ジリー・プアー!だが、サトリはそれには目も向けぬ。コイシの言動の不可解を探るため、思考の海に沈んでいる!

 

「あの……エット……」

(コンヴァージ=サンを止めた方がいいんじゃないかな……?)

 

 だが、その彼女に話しかける者がいた。サロウである。妹がコンヴァージに殴られているというのに、止めようとしないサトリに焦れたのだ。この危険サイコパスニンジャは、世の道徳を理解できないわけではない。むしろ、それを自分の行為に適用しようとしない所が問題なのだ。

 

 ちらりと第三の目を向けたサトリは、その心を読み取ると溜息をつく。今の所コイシ、否、オモイはジリー・プア―に追い込まれてこそいるものの、 よく持ちこたえている。ゲンソウキョウに住まうイモータルならば当然持っている飛行能力でコンヴァージを翻弄している。

 

「……あれを見て助けが必要に見えます?あれが強大なニンジャとしても、宙に浮くコイシに攻撃を当てる手段は乏しいでしょう?」

「いやでも、一応コンヴァージ=サンも代理戦士に選ばれているわけだし……うーん」

 

 サロウが考え込んだすきに、サトリは思考を深める。コイシが、無意識を操っている自分を見つけられる存在を、みすみす手放すはずがない。然るに、コイシは現在オモイがコンヴァージの人格を奪うのに協力している。

 

 サロウの記憶を読んだ限り、オモイは同時に一つの自我と外殻しかまとえぬ。ゆえに、かの存在がコンヴァージの自我を乗っ取ってしまえば、オモイはコイシと離れることになる。オモイと自我を共有しているらしきコイシがそれに気づかぬはずが無いが……?

 

(あるいは……オモイに洗脳されているのやも。それとも、コイシは気付いていない?よし……)

 

 浮かれるあまりオモイと離れる可能性にコイシが思い当たっていないことに賭け、サトリは大声で呼ばわる。

 

「コイシ!オモイとやらがコンヴァージ=サンを乗っ取れば、あなたとオモイは離れ離れになりますよ!」

 

 それを聞いてコイシの身体の主体がオモイ・ニンジャからコイシへと切り替わる。だが、コイシからは思いもよらぬ一言が飛び出した……!

 

「……それは寂しいけど、オモイ=サンがそれを望むならしょうがないよ!」

「…………!?」

 

 寂しい?まさか。自分の心に住まわせるほどに執着している相手が己から離れることを、「寂しい」の一言で割り切れるほど、コイシは達観していない。とすれば、考えられるのは洗脳か。確かサロウもオモイに『愛』を注ぎ込まれ、なかば操り人形に変えていたはずだ。

 

 洗脳を解くにはどうしたらよいのか……。そう考えたサトリの目の端に、おろおろするサロウが映った。そうか。サロウはニューロンをいじくるジツを持つ。それを持ってすれば、あるいは……!

 

(いや……オモイにニューロンアタックをかけても返り討ちでしょう。コイシが表出する時を狙わなければ……)

 

 そう思いながらサトリは、腕からケーブルや鉄線を伸ばしながらコイシを捕えんとするコンヴァージと、宙を舞いそれを避けるコイシとの危うい均衡を見る。そしてサロウに話しかける。

 

「サロウ=サン」

「ヒッ……!?何!?」

「コイシにニューロンアタックを仕掛けてもらえませんか?」

「え……い、嫌なんだけど」

 

 サロウは即断る。当然だ。サトリのせいでユメミル・ジツを使う時に恐ろしいオモイの幻覚がよぎるうえ、オモイとハッキング勝負をしても勝ち目はないからだ。そのうえ、ヨーカイのニューロンは人間のニューロンとは勝手が違うと来ている。

 

「……あなたに刻み付けたトラウマは取り除きます。あなたがジツを用いる時には私も手助けをしましょう。ですので、どうか、どうか……!」

 

 サトリは頭を下げる。それを見ても、サロウの表情は変わらない。彼にとって、サトリは能力に制限をかけてきた嫌な女であり、コイシはその身内でしかない。宙を舞う少女を捕らえようと苦心しながら、コンヴァージがその様を嗤う。

 

「サロウのようなサンシタに期待する方が酷だろうよ!イヤーッ!」

 

 伸ばされるワイヤーや鉄線をナイフで危うく切り落としながらコイシ、否その身体を借りるオモイもサトリのブザマを嘲笑する。

 

「そんなのに期待するだけ無駄だよ、オネーチャン!ちゃぁんと説得して聞いてもらったし!アハハハッ!」

 

 二人が嘲笑っても、サトリの顔色は変わらない。元よりサロウが容易に首を縦に振るとは思っていない。

 

(これだけは嫌でしたが……)

 

 サトリは覚悟を決めると、上目遣いでサロウの方を見る。彼はあからさまに顔を赤らめ、狼狽する!そこに、サトリは必殺の一撃を放つ!

 

「コイシにニューロハックを仕掛けて上手くいったなら、前後*1してあげますよ?」

「エエッ!?」

 

 サロウは目を見開き、挙動不審に陥った!サトリは眼前のニンジャが女好きであることに気付いていた。心を読み、トラウマを叩き付けられる前は、お燐*2やお空*3この男の鼻の下は相当伸びていたのだ。

 

 そしてさらに、彼女の前後宣言はコイシの自我をも揺り動かした。オモイを押しのけるようにして、コイシの自我が表出したのだ!

 

「お、お姉ちゃん!?何言ってんの!?」

「今です!」

「イヤーッ!」

 

 サロウは意気揚々とこめかみに手を当てる!同時にコンヴァージの腕から伸びた鉄線がコイシの脚に巻き付く!

 

「ンアアアーッ!?アッ……!アッ……!!アアッ……!?」

「イヤーッ!」

「ンアアーッ!?」

 

 背中を痛烈に叩き付けられ、悲鳴をあげるコイシ!コンヴァージは、ワイヤーが繋がった腕を持ち上げ、再び叩き付けんとした!……だが奇妙だ。コイシが、一人芝居めいて話し出したのだ。

 

「……ねぇオモイ=サン。どういうこと?どうして私から離れようとしたの?」

「こ、コイシ=サン、あのね、これは」

「言い訳なんか聞きたくないよ!!」

 

 コイシの身体をコイシとオモイが取り合い、喧嘩めいた有様となっている。先程のニューロハックとコンヴァージの叩き付けにより、コイシのニューロンが揺さぶられた。その結果、オモイが施した『洗脳』に気付き、解除したのだ。

 

 普通、リアルニンジャが施した洗脳をただのヨーカイ風情が解除することは出来ない。だが、コイシはオモイ・ニンジャと自我を共有していたのだ。少々の()()があれば、己のものでもある自我についた余計な付着物を取り除くことなど訳なかった。

 

「オモイ=サンと私が一緒になっちゃえば、もう離れられないね……」

 

 そして『洗脳』に気付いたコイシは、悍ましさすら感じさせる顔つきでオモイを二度と自分から離れないよう結びつけんとす。オモイは下手に手を出せばコイシの自我が雲散霧消し、まとうべき外殻を失うため、手をこまねく他ない!

 

(((何とか、何とかしないと……!)))

 

 周囲を見渡すも、味方はいない。コンヴァージは相変わらず殺意の籠った目線を向けているし、サロウはサトリに前後を迫り、あっけなく返り討ちにあっている。この間にもコイシはオモイを侵食し、一体にならんとしている!

 

 暗澹たる気持ちとなったその時、オモイは己の身体(つまりコイシの身体)がゆっくりと持ち上がっていることに気付いた。だが、それは錯覚である。気付いて駆け寄るサトリの姿が異常なスローモーション映像と化しているのだ!

 

 コンヴァージが凄まじい勢いでコイシの身体を持ち上げ、叩き付けんとしている。視界が万華鏡めいて回転している。”この身体”のソーマト・リコールか。コイシの身体や能力を扱い慣れていないのに加え、今はコイシの”侵食”を防ぐのでリソースが精一杯だ。まずい……!

*1
性交を意味する隠語。

*2
地霊殿に住まうサトリのペットの一人、火焔猫燐(カエン・ビョウリン)のあだ名。

*3
地霊殿に住まうサトリのペットの一人、霊烏路空(レイクウジ・ウツホ)のあだ名。




か、書いたぞ……!見た限りでは設定に齟齬もないはず……!
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