ザ・シェイプ・オブ・ニンジャ・トゥ・カム・イン・ゲンソウキョウ 作:毛糸ー
【これまでのあらすじ】
ゲンソウキョウに流れ着いたオモイ・ニンジャはコイシの自我を乗っ取ろうとしたが、コイシがヨーカイであることに気付き、同化するにとどめた。その際施した洗脳が己のかつての代理戦士サロウと何故か来たコンヴァージによって解かれた!
コイシは悲嘆にくれ、オモイと一体化しようとする!その時、コンヴァージが腕を持ち上げた……!
(((冷静になってよ!このままじゃコンヴァージ=サンに殺されちゃうよ!?)))
(((五月蠅い五月蠅い五月蠅い!オモイ=サンなんて嫌いだ!)))
コイシに呼び掛けても侵食を止める様子はない。何と愚かなのか!主導権を握れず歯噛みするオモイ・ニンジャであったが……「グワーッ!?」コンヴァージが突如苦悶!全身に絡みついていた鉄線がほどけ、コイシは宙に浮く!
危うく空中で姿勢を制御するオモイは、先程のコンヴァージの変調の原因を探る。すると怯えながらもこめかみに指を当てたサロウ。目から血を流すコンヴァージが、彼を詰問する。
「狂ったかサロウ=サン……!」
「……コ、コンヴァージ=サン、もうオモイ・ニンジャ=サンはあんたのニューロンを乗っ取るつもりはないんだから、そんなことする必要は、もうないだろ?」
引き攣った表情でコンヴァージの殺意を止めんとするサロウ。だが、先程のサロウとサトリの会話、そしてサロウの醜態を視界の端で見ていたコンヴァージには、この優柔不断ニンジャに似合わぬ決断的な行動をした理由に察しがついていた。
「貴様の魂胆は、分かり切っているぞ……!その餓鬼と前後*1するために更なる点数稼ぎをしようという腹だろう……!」
「…………はぁ?お姉ちゃんと、前後?本気で、やる、つもり、だったの?」
サロウの表情が引き攣る。図星だからだ。更に悪いことに、コイシは怨念漂う無表情と化し、こちらを見つめている。コイシがオモイに呼び掛ける。姉に手出しをしようとする不埒な輩を倒すために。
(((オモイ=サン、手伝って。あいつ、ぶちのめす)))
(((…………え?)))
(((オモイ=サンのあれは今どうでもいいの!とりあえず、お姉ちゃんに手を出そうとしたあいつを叩きのめさないと気がすまないの!協力、してくれるよね?)))
(((アッハイ……)))
「イヤーッ!」「ウワーッ!?」
コンヴァージがカラテ警戒するのを尻目にコイシはサロウにトビゲリ!ニューロン速度で一応の和解を済ませたコイシとオモイは、サロウの顔面を執拗に殴り続ける!事態の急速な変化について行けず呆然とするコンヴァージとサトリ。
コイシはオモイの力を借り、サロウが拳を避けることを許さない。比較的非力なサトリ・ヨーカイの拳とはいえ、幾度も殴られればサロウの顔面も膨れ上がろうというものだ。ひいては、サロウは爆発四散しかねない!
「何だこりゃあ。あの小娘、オモイ・ニンジャと揉めてたんじゃなかったのか?」
「…………はっ!?コ、コイシ!や、止めなさい!賢者から怒られますよ!?」
コンヴァージが唖然としながらつぶやくと、サトリは我に返り、コイシを止めにかかる。コイシは満面の笑みでサトリに振り向く。だが、その目は虚無……否、怒り?先程の言い争いの際に、より深くオモイと一体化したのか?否、今それはどうでもいい話か。
「お姉ちゃん、こいつと前後するなんて冗談だよね?」
「……当たり前でしょう。だから彼を放しなさい」
「ウウ…………そんなぁ…………」
「……もう帰っていいか?」
前後の話が白紙になりさめざめと泣くサロウと、状況においていかれ半眼となったコンヴァージを一切眼中に入れず、サトリはコイシを説得にかかる。だが、コイシの返事は色好いものではなかった。
「お姉ちゃんが冗談だと言ってもこいつは諦めてないみたいだけど?」
「……私が彼を誤魔化す方法を考えついていないとでも?」
「でもさ、こいつはオモイ=サンの力をどうにかする力があるんでしょ?お姉ちゃんの能力をどうにかされたらどうするの?……お姉ちゃんがこんな奴に前後させられるなんて、考えるだけで、嫌だよ」
「……!!やめなさい、コイシ!」
そう言ってコイシは手に持った包丁をサロウに振り下ろさんとす!だが、その手が掴まれる!おお、見よ!空間に謎めいた裂け目が開き、そこから腕が伸びているではないか!この異様な様にコンヴァージは即座にカラテ警戒!
(何だあれは!?気配が全く察知できなかったぞ……!?)
冷や汗を流し裂け目を睨むコンヴァージをよそに、件の裂け目からぬるりと紫の洋服を纏った女の身体が現れる。超然とした様子の長い金髪の女は裂け目から上半身を乗り出し、コイシに話しかける。
「そのニンジャを殺すのはやめて頂戴」
「何で!?こいつは、お姉ちゃんに手出ししようとする不埒な奴なのに!?」
「そこのサロウやコンヴァージは、外の世界で生じた赤黒のオリガミから流入したエテルによって生まれた存在。あのオリガミが何なのか分からないうちは、サロウやコンヴァージなどを殺すのは厳禁ですわ。……サトリ=サンにも伝えたはずだったのだけれど」
振り向くコイシと目を合わせようとしないサトリ。ペットには伝えた有力者会議での取り決めを、コイシには伝え忘れていたのだ。
「……ごめんなさい、コイシ」
「ううん、いいよお姉ちゃん。……でもさ、ユカリ*2=サン。こいつがお姉ちゃんに手を出したらどうしてくれるわけ?」
コイシは足元に転がるサロウにナイフを向ける。だが、ユカリは裂け目から取り出した扇で顔を覆い隠し、クスクスと笑う。
「あらあら、コイシ=サン。あなたと共にいる存在のことを忘れているのですか?オモイ・ニンジャはそこで無様に転がっているニンジャの元主人。奴を御せないはずが無いでしょう?それとも……オモイ・ニンジャがたかが憑依ニンジャ一匹制御できないダークカラテエンパイアの恥というなら、話は別ですけども」
「は?出来ないわけないでしょ?私をあんまり舐めないでほしいんだけど」
オモイ・ニンジャがユカリの挑発に応じ、場のアトモスフィアが歪む!コンヴァージとサトリが身構え、サロウの震えが大きくなる!だが、艶然とほほ笑むユカリ!
「フフフ……協力してくださるなら、カリュドーンの儀の会合の件は何とか致しますよ?」
「……ふーん。協力って、何すればいいの?」
「それはまた後日、伺いますわ。では皆さま、御機嫌よう」
ユカリは上半身を器用に裂け目に収め、裂け目ごとこの場から消えた。てっきり事態を大いにかき回しに来たと思っていたコンヴァージは拍子抜けだ。脱力し、座り込む。
「もう、帰っていいか……?」
「ええ、まぁ……コイシも元に戻ったことですし」
どっと疲れた様子のサトリに、コンヴァージも言葉を返さぬ。ゆっくりとチレイデンの出口に向かわんとするコンヴァージ。
「ううう……コンヴァージ=サン、俺を連れ出してくれよお……」
「外は外で人食いヨーカイ共がうろついておるぞ」
「そんなぁ……」
サロウの泣き言を一言で切り捨て、彼はずかずかとチレイデンから立ち去る。それと入れ替わるようにコイシがサトリに駆け寄る。ぴょん、と跳んで抱き着いてきたコイシをサトリは抱き留めた……。
終劇!!
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