ザ・シェイプ・オブ・ニンジャ・トゥ・カム・イン・ゲンソウキョウ 作:毛糸ー
スレイト・オブ・ゲンソウキョウ:コンヴァージ(畜生界)
ここは畜生界。ザンム*1が効率化した地獄の一角。動物霊共が日々弱肉強食の理に従い、組織だって抗争を繰り広げている。
畜生界の景観は異様だ。サップーケイそのものの新地獄、裁判所めいた是非曲直庁*2、自然あふれる幻想郷*3とは異なり、灰色の摩天楼が光無きスモッグ様の空を突く、貪婪の都ネオサイタマ*4めいた有様である。
そしてその一角。畜生共により無計画に作られ、そして捨てられる物品が最後に行きつく墓場。即ち、最終処分場。そこに、幻想郷へ流れ着いたニンジャ*5の一人が住んでいる。そのニンジャの名はコンヴァージ。
恐るべきアカラ・ジツ*6の使い手である彼は、現在新地獄の支配者ザンムの手先となり、畜生界の争いを畜生界の中で収めるためにはたらいている。その彼は今……面倒な顧客を相手に死んだ目をしていた。
「全く駄目だ!神々しさが表現出来ていない!」
コンヴァージに向かって怒鳴るのは四本腕の女ニンジャ、ベルゼブブ。彼女はコンヴァージが手慰みに細工を作っていることを聞きつけると、何やら謎めいたバックベアード存在を作るよう要求してきたのだ。コンヴァージもジツのキャリブレートに丁度いいと思い、この仕事を受けた。
それが間違いの始まりだった。ベルゼブブはコンヴァージが作った物にあれこれ文句をつけ、何度も作り直しを要求してきたのだ。殴ろうと思った回数は数え切れぬ。だが、それはそれでジツの精密操作が拙いと自分で認めるようなものであり、選びがたい。
「……そもそも、お前は俺に何を作らせる気だ?」
コンヴァージはいい加減、自分が何を作らされているのか気になっていた。ベルゼブブの出してきたデザインは完全にビボルダーめいた一つ目の怪物であり、自分が作った細工と比べて何が気に入らないのかさっぱり分からなかったのだ。
ベルゼブブは激昂しながら答える。この蛮族は自分がいかに偉大な仕事に従事しているか理解していなかっただと!?
「な!?……なんたる愚かな!貴様は己がどれほど恐れ多い仕事を仰せつかったのか理解していないのか!?」
「知らんな」
「ならば聞け!貴様が作らんとしているのは、我が王ケイムショ*7の化身、ロンドン・アイであるぞ!」
大した忠誠心だ。コンヴァージは冷めている。彼はリロン・ケミカル社*8にも、ボロブドゥール帝国*9にも、そう思い入れがあるわけではない。彼を突き動かすのは殺しと闘争。いずれもこの畜生界にはありふれているものだ。
コンヴァージには、縁の切れた上司をいつまでも想うような殊勝さは無い。よくもまぁ、リアルニンジャなどにここまで忠を誓えるものだ。
「それで、そのロンドン・アイとやらは何で出来ている?」
「無論、我が王が死体をより集めて作った物だが?」
やはりリアルニンジャというのは分からん。カラテで全てを蹂躙すれば良いものを、いちいちやることが回りくどい。コンヴァージはリアルニンジャという存在への不可解を覚えながらも、ロンドン・アイの模型を作るために、鉄線を伸ばして瓦礫を集め始めた……。