ザ・シェイプ・オブ・ニンジャ・トゥ・カム・イン・ゲンソウキョウ 作:毛糸ー
スレイト・オブ・ゲンソウキョウ:オモイ・ニンジャあるいは古明地こいし
「……またぁ?」
コメイジ・コイシ(古明地こいし)*1の身体に宿ったリアルニンジャ、オモイ・ニンジャは溜息をついた。いきなりコイシの足元にスキマ*2が開き、以前も座った机に落とされたのだ。対面には、あからさまに焦燥の表情を浮かべるユカリ。
「……何かあったわけ?」
「見れば分かるわ」
オモイの問いかけに、ユカリはスキマを開く。その向こうには、ネオサイタマ。だが、普段とは明らかに空の色が違う。普段、ネオサイタマの空は畜生界のそれにも似た、スモッグによる圧倒的曇天が広がっている。だが今は、空は赤紫に染まり、雲めいて01ノイズが走り、そして天上に鎮座するは、黄金立方体。
「何か、空の色が変だね」
いみじくもオモイが言うように、カリュドーンのフェイズの深化にしては妙だ。そもそもカリュドーンはキンカク*3におわす父祖*4に狩人と獣のカラテとソウルを献じ、その力のおこぼれにあずからんとする儀式である。
カリュドーンが深化した場合には、当然父祖の力、キンカクの輝きが漏れ出て来るのだから、空は黄金色に染まるはず。それが、赤紫とは。
「この異常、何か心当たりはあるかしら?」
「……分かんないね。セトの謀略にしてはあからさますぎだし。案外、あのニンジャスレイヤーのせいなんじゃない?」
ユカリは頭を抱えた。10年前の月破砕年と言い、今回の狩人幻想入りといい、ニンジャスレイヤーはこの幻想郷に何の恨みがあるというのだ。それに、外の世界にまで異常をもたらすとは。幻想郷は外来人を”神隠し”している*5というのに、外の世界が滅んではそれも出来なくなる。
「ああ、そうそう。幻想郷に狩人が流れ込んだのはアイツのせいじゃないよ。多分」
「……何ですって?」
聞き捨てならぬオモイ・ニンジャの発言を、ユカリは聞き逃さない。その様をオモイは耳まで裂ける口で笑みを浮かべ、己の推察を話し出した……。
「まずさぁ、この幻想郷、ネザーオヒガン*6に繋がってるよね?」
「…………」
ユカリは沈黙。然り。幻想郷は新地獄や旧地獄、是非曲直庁*7のように、いわゆる地獄やそれに関連した場所とのつながりが確立されている。すなわち、外の世界ですでに忘れ去られたネザーオヒガンと現世とのつながりが存在している。
「それなら、オヒガンから力を引き込みやすいのは分かるよねぇ?」
然り。そもそも、”冥界”や”天界”のようないわゆるあの世の一つの形と言えるものが存在する幻想郷はその性質上あの世ともいえるオヒガンに近い。ゆえに、オモイの発言は正鵠を射ていた。だがそれが狩人共の幻想入りに何の関係があるのか。
オモイはニヤニヤ笑いながら言葉を続ける。
「カリュドーンの儀では、敗れた狩人の魂とカラテが父祖に献じられる……。そのエネルギーをさぁ、誰かが盗んでんだよね。……で、それをまた誰かがほんのちょっと盗んでることが分かったわけ」
「!?……カリュドーンのエネルギーが、搾取されているというのですか!?」
「カリュドーンってバレなきゃ何でもありだしね~」
オモイがのほほんというように、カリュドーンの儀はワンソー派のリアルニンジャ達にとって政争の場でもあるため、多くの参加者が反則同然の行為を取る。幻想郷の住人に『弾幕ごっこ』のルールを順守させているユカリがカリュドーンの無法ぶりに眉を顰めるのに構わず、オモイは続ける。
「で、その盗まれたエネルギーをさらに盗んだ誰かさんがエネルギーをどこに注ぎ込んだか分かる?」
「……この幻想郷ですか」
「そう!ここ、めっちゃエテル濃いからさァ、ほんのちょっとのエネルギーでもそれが疑似ソウル?みたいな核になって狩人の身体と自我が作られてった……って予想してる」
問題はその、カリュドーンのエネルギーを幻想郷に引き込んだのは誰なのか。今まで幻想郷は外の世界で行われてきたニンジャ儀式の数々の影響から逃れてきた。だが、今回のカリュドーンの儀において、狩人幻想入りという事態が起こっている。
ユカリでなくとも、何者かの作為を感じるのは当然と言えた。考え込むユカリに構わず、オモイは邪悪に笑う……
「アハハァッ!犯人探し、頑張ってねェ!アッハハハァ!」