ザ・シェイプ・オブ・ニンジャ・トゥ・カム・イン・ゲンソウキョウ   作:毛糸ー

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レボリューション・コード:#1

 ここは畜生界。幻想郷*1に繋がるネザー領域の一つ、新地獄の一部である。ここにはネオサイタマめいた灰色の近代的ビル群と圧倒的曇天が広がり、日夜動物霊共が組織だって抗争を繰り広げている。その緩衝地帯にあるジャンクヤードに、奇妙な人影がある。

 

 その人影は、積みあがったジャンクの山に寝ころび、まるで原っぱに寝ころぶ青少年めいていた。だが、その目は青少年ではありえないほどに鋭く、暴力性を強く感じさせる目つきであった。この男の名はコンヴァージ。この畜生界に流れ着いたニンジャの一人。

 

 退屈気にしていた彼が、ふと右掌を見る。そこに刻まれた印が熱を持ち、何かを主張している。博麗神社*2に行け、などのくだらん命令でなければよいが。そう考えながら現在の印を刻んだ張本人、現在のコンヴァージの主、ニッパク・ザンム*3に応答するコンヴァージ。

 

「……ドーモ。コンヴァージです」

『おお、コンヴァージ=サン!儂だ、ザンムだ』

「何の用だ?またぞろ、博麗のミコーの様子を見に行けと言うんじゃないだろうな」

『くくく、酷い言い草じゃなぁ……。喜べ。貴様の知り合いが来ておるぞ』

「……何?」

 

 怪訝な様子となったコンヴァージをクスクスと笑いながら、ザンムは幻想郷に新たにやって来た狩人の名を告げる。

 

『ブラックティアーズ。……お前と同じ狩人よ』

「……ホォ!あの審判気取り、くたばったのか!」

 

 ブラックティアーズ。コンヴァージも参加したカリュドーンの儀*4において、代理戦士たちのまとめ役を務めていたニンジャ。コンヴァージは奴を一目見た時から、その一歩引いたそぶりが気に入らなかった。

 

 あの審判気取りはどうせ、儀式の最後まで残るだろうと思っていたが、儀式の最中に爆発四散したとは!ザマを見よと言わんばかりにほくそ笑むコンヴァージ。それを知ってか知らずか、ザンムは言葉を続ける。

 

『ブラックティアーズはな、冥界*5におる。会ってこい』

「……分かった」

 

 コンヴァージの不穏な雰囲気を察し、ザンムは釘を刺す。

 

『……変な真似はするなよ。絶対にするなよ!いいな!』

 

 コンヴァージは鼻を鳴らす。と同時に、ザンムの声が途切れる。しばらくして、コンヴァージはあることに気付く。

 

「冥界かよ……博麗神社より行くのが面倒だな、全く」

 

 コンヴァージは舌打ちしながらも、ジツを発動させる。右掌の印が輝くのに応じ、ジャンクヤードのスクラップ共がコンヴァージの元に集う。一回り、否二回り以上膨れたコンヴァージは、ゆっくりと歩きだした……。

 

◆瓦◆礫◆纏◆

 

 ……コンヴァージが辿り着いたのは三途の川、あるいはサンズ・リバー。幻想郷においては、あの世とこの世を分ける境目とも言うべき場所である。

 

「相変わらず先が見えんな、この川は」

 

 プロゴ川*6よりなお長い川に呆れると、コンヴァージはやおら腕を地面に突き刺す!そして、チャント(≒呪文)を唱える。馴染み深く、胡散臭いチャントを。

 

「ヨギスミカテ……ソルナガバレ……」

 

 するとどうだろう、チャントに応じるように右掌の印が光り、彼の纏うジャンクがサンズ・リバーにかかる橋を形作り始めたではないか!生前ムカデが刻み、一度死んだことで消えかけたロウ・ワンの印*7にザンムが手を加え、ジツを強化しているのだ。

 

「ざっとこんなものか」

 

 慣れた動きを終わらせると、コンヴァージは歩き出す。偉そうな事を言っておきながら儀式の途上でくたばった審判気取りを思う存分コケにするために。

 

◆儀◆式◆審◆判◆

 

 ここは白玉楼(ハクギョクロウ)。冥界にある大きな和風建築であり、冥界の主、西行寺幽々子(サイギョウジ・ユユコ)が住む。今この館の中には、見慣れない男がいた。

 

「大丈夫ですか、ブラックティアーズ=サン」

「ああ。ありがとう、ヨウム=サン。だいぶ良くなった」

 

 ボブカットの銀髪と緑スカートの少女、コンパク・ヨウム(魂魄妖夢)は古代エジプト風の着物を着た男に食事を給していた。ヨウムは白玉楼の庭師であり、ユユコの世話をする執事であり、二刀流を扱う検死でもある。

 

 而して、このエジプト剣士めいた男は何者なのか?……そう、彼こそがカリュドーンの儀の狩人長たるブラックティアーズである!彼はニンジャスレイヤーに敗れ爆発四散した後、この白玉楼に流れ着いた。

 

 ヨウムは白玉楼の見事なカレサンスイ(枯山水)のど真ん中に倒れたブラックティアーズを侵入者と見定めた。しかし、頭をしたたかにかち割られた彼を見て慌てて医者に駆け込み、今はこうして面倒を見ているのだ。

 

「ブラックティアーズ=サン、あなたにお客さんよ~」

 

 障子が開くと、水色の着物と頭にユーレイめいた三角布をつけた女が現れた。彼女はサイギョウジ・ユユコ。この白玉楼の主である。

 

「私に……客?」

「野蛮そうな、瓦礫を身体中につけた薄汚い男だったわねぇ……コンヴァージ、とか名乗ってたわよ」

「……!?」

 

 ユユコの口からつむがれた名を聞き、目を見開くブラックティアーズ。儀式が始まる前に早急に爆発四散した輩がなぜここに?その疑問に答えが与えられる間もなく、ユユコが開いたのとは反対側の障子が荒々しく開かれた!

*1
ゲンソウキョウ。神やヨーカイなど、『外の世界』で忘れられたものが集う楽園。博麗大結界によって現世から隔てられている。

*2
ハクレイ・シュライン(神社)。幻想郷の内と外とを隔てる博麗大結界の要。現在は博麗霊夢(ハクレイ・レイム)がミコー(巫女)を務めている。

*3
日白残無。新地獄の主。元々人間だったが、オニになった女。

*4
ニンジャの祖、カツ・ワンソーに与するニンジャ達が代理戦士を派遣し、『獣』の首を獲り合う儀式。コンヴァージはこの儀式の代理戦士の一人であったが、『獣』のニンジャスレイヤーに敗れ、幻想郷に流れ着いた。

*5
幻想郷に繋がる、新地獄とは別の異界。罪のない霊魂が集う亜オヒガン的空間だが、最近現世との行き来が容易になった。

*6
コンヴァージの元主人、ムカデ・ニンジャが治めるボロブドゥール帝国の首都、ヨグヤカルタに流れる川。

*7
ムカデ・ニンジャがコンヴァージに授けた呪印。ジツやカラテを強化する代わりに、ムカデ・ニンジャへの永久の従属を強いる。




コンヴァージとブラックティアーズ、相性が悪い。これは間違いない。
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