ザ・シェイプ・オブ・ニンジャ・トゥ・カム・イン・ゲンソウキョウ 作:毛糸ー
「私に……客?」
「野蛮そうな、瓦礫を身体中につけた薄汚い男だったわねぇ……コンヴァージ、とか名乗ってたわよ」
「……!?」
ユユコの口からつむがれた名を聞き、目を見開くブラックティアーズ。儀式が始まる前に早急に爆発四散した輩がなぜここに?その疑問に答えが与えられる間もなく、ユユコが開いたのとは反対側の障子が荒々しく開かれた!
……その先にいたのは、やはり瓦礫を纏ったニンジャ、コンヴァージである。
「ドーモ、ブラックティアーズ=サン。コンヴァージです。審判を気取っておった貴様が”外”でくたばって流れてくるとはなぁ……」
「ドーモ、コンヴァージ=サン。ブラックティアーズです。貴様がなぜここに……!?」
「貴様と同じだ。ニンジャスレイヤー=サンに殺された後、この箱庭に流れ着いたのよ。貴様が死んだということは、あのつまらん儀式は打ち止めか?」
「……儀式は私が亡くなってもつつがなく進行する。我が主、セトがそのように取り計らっている」
「ハッ……どうせここから”外”に出られやせんのだ。儀式の進行なんざどうでもよかろう。貴様らが何を企んでおったのか白状してもいいと思うんだがなぁ?」
コンヴァージの発言を聞き、考え込むブラックティアーズ。……そして、顔を上げる。
「申し訳ない、ユユコ=サン、ヨウム=サン。しばし、二人きりにしてはもらえないか」
「……ヨウム、行きましょう」
「ユユコ様!?」
野蛮さを漂わせるコンヴァージを睨んでいたヨウムは、驚愕の視線を主人に向ける。こんな野蛮なニンジャと、病み上がりの病人を二人きりにするなど!だが、己の主人が粛々と退出しようとするのに、ヨウムは従う他なかった。
「初めに聞かせてもらおう。貴様以外に、狩人達は来ているのか?」
初めに口を開いたのはブラックティアーズ。気勢をくじかれたコンヴァージは鼻を鳴らす。
「フン。俺以外にも来ておるわ。二人もな」
「……二人?」
ブラックティアーズは訝しんだ。自分を抜くと今までに敗退した狩人は四名。コンヴァージ、ベルゼブブ、サロウ、マークスリー。だが、コンヴァージの発言からすると敗退した狩人のうち、一名はこの幻想郷にきていないことになる。
(誰だ……誰が来ていない?)
「……参考までに聞いておこう。貴様と私以外に誰が来ている?」
「貴様、痴呆か?ん?負けた代理戦士には興味がないのか?」
コンヴァージに煽られるも、我慢するブラックティアーズ。挑発しても乗ってこないブラックティアーズに興が冷めたのか、コンヴァージも素直に話し出した。
「フン……ベルゼブブ=サンとサロウが来ている。これで満足か?」
「マークスリー=サンが来ていないのか」
「……何?」
コンヴァージが片眉を上げる。ブラックティアーズは続ける。
「私がここに来るまでに敗退した狩人は、貴様を合わせて”四名”。貴様が言及したベルゼブブ=サン、サロウ=サン、そしてマークスリー=サンだ」
目を見開くコンヴァージ。彼もここに来て、ブラックティアーズの言葉の意味を理解する。おそらくマークスリーは狩りの儀式に敗退した。しかし、ベルゼブブ・サロウと異なり、この幻想郷には来ていない。つまり……
「ハッ、あの貴族気取りの勘違い小僧が。スットロい真似して時間切れになったか?」
「いや」
早合点したコンヴァージだったが、ブラックティアーズは否定する。
「我々が観測した限りでは、マークスリー=サンはニンジャスレイヤーと戦い、そして爆発四散した……筈だ」
「フン……どうだかな。まぁ、今となってはどうでもいい」
コンヴァージはマークスリーの進退について執着してはいない。他の狩人とは即ち、ニンジャスレイヤー狩りのライバルでしかない。それに、己は二度と狩りには介入できぬ。ゆえに、他の狩人共がこの幻想郷に来ようが来なかろうが、今の彼にとっては些細な事である。
しかし、そう割り切れぬ狩人もいる。ブラックティアーズもその一人。
「コンヴァージ=サン、どうして貴様はそう割り切れる?マークスリー=サンは儀式において重大な不正を働いた懸念があるというのに!」
しかしコンヴァージはどこ吹く風。そもそも彼は己の主であったムカデ・ニンジャに微塵も忠誠心など持っていない。
「くだらんな。俺達はカリュドーンに敗退した身。もうリアルニンジャ共とも、あのニンジャスレイヤー=サンとも、儀式とも、何ら関係はない。……逆に、貴様は何故、リアルニンジャなんぞにいまだ義理立てをするような真似を続けておるのだ、ブラックティアーズ=サン?」
「……貴様」
ブラックティアーズにとって、神話級リアルニンジャとは畏敬の対象。斯様な地に流れ着いたとしても彼はセト神*1への忠誠を捨ててはいない。ゆえに、一度はリアルニンジャに仕えていながら、こうも易々と鞍替えできるコンヴァージの心性が信じられなかった。
明らかに気分を害し、敵意を向けてきているブラックティアーズに対し、コンヴァージはどこ吹く風。
「下らん真似はやめて、サッサと迎合した方が楽だぞ?ブラックティアーズ=サン」
「ヨーカイ共に絆されたか、コンヴァージ=サン。その分ではカラテもなまったのではないか?」
「……あ?」
今コイツは何といった?己のカラテが鈍っているだと?先程と逆に、コンヴァージがブラックティアーズを睨みつける!
「……カラテが鈍っているというなら、試してみるか?ブラックティアーズ=サン」
「図星か?コンヴァージ=サン。もしそうだとすれば、無様に死ぬだけだ。やめておいた方がいい」
「無様に死ぬのはどちらだろうなァ……!」
二人のニンジャは互いに殺意をぶつけ合い、今にもカラテ衝突に発展しかねない有様。凄腕のガンマン同士がピストルを抜く前めいた緊張感が白玉楼に漂う……!その時!
ターン!
障子戸が開いたかと思うと、ユユコが姿を現した!ブラックティアーズは驚きを、コンヴァージは怪訝を顔に浮かべ、彼女を見やる。
「カラテを振るうなら、うってつけの場所があるわよ!!」
この対戦カードが見たくてこの話書いてるまである。