ザ・シェイプ・オブ・ニンジャ・トゥ・カム・イン・ゲンソウキョウ 作:毛糸ー
最後にちょっとしたサプライズがあります。
スレイト・オブ・ゲンソウキョウ(コンヴァージ,ダンゴ屋台)
【コンヴァージって誰?】
・アカラニンジャ・クランのニンジャソウルを宿したニンジャ。スクラップや瓦礫を体にまとわせ、自在に操るジツを持つ。東南アジア出身であり、そこに縄張りを持つムカデ・ニンジャの配下だった。相当強い。
・ストラグル・オブ・カリュドーンの代理戦士としてネオサイタマに送り込まれたが、『狩り』が始まる前にニンジャスレイヤーから急襲され、激闘の末爆発四散した。
・爆発四散跡にできたオリガミの作用か、幻想入り。新地獄の統治者、日白残無の配下となる。
【これまでのあらすじ】
爆発四散後に幻想入りしたコンヴァージは、先日の異変解決宴会も無事に乗り切った。その後、博麗霊夢をやたら気に掛ける日白残無とともに、幾度も博麗神社に向かうこととなる。コンヴァージは霊夢に興味がないため、残無が霊夢とコミュニケーションを取る間、人里に向かうのだった……。
(((ア、アイエエエ……)))
月兎、清蘭は目の前に来た瓦礫漁りめいた男、コンヴァージを見て内心疑似NRS*1状態に陥っていた。また、コンヴァージの見るからに物騒な外見のみならず、体から発せられる穢れも、彼女を委縮させていた。
清蘭の出身は月。人間がいまだ観測していない月の裏側にある月の都にいる、月兎*2と呼ばれる一種の労働者階級であった。だが、月が半壊した*3後に訪れた襲撃者のゴタゴタで、彼女は進んで地上に居残ることになったのだ。
月の技術は凄まじく、地上を滅ぼそうと思えばすぐにでも滅ぼせる。暗黒メガコーポ?ヤクザクラン?ヨーカイ?フェアリー?取るに足らぬ。だが、そうはしない。なぜか?穢れが発生するからだ。月都の民にとって忌むべきものが。
穢れとは実際、生と死そのものである。これによって生物の寿命が生じる。月の民はこれを排除することで長寿を実現しており、穢れと、穢れに溢れた地上を忌避している。『蓬莱の薬』による不死者は特にこの穢れに溢れており、仮に月の民が『蓬莱の薬』を服用すれば、地上への追放は免れぬ。
そして実際、ニンジャは通常の生命体に比べ穢れに溢れており、加えて月の民にとっては不可解極まりない力(『カラテ』や『ジツ』など)を操る。特に『カラテ』は、月の科学者にとっても理解しがたいものであり、深入りした者は例外なく発狂している……!
ゆえに、月の民はニンジャを恐れている。仮にダイコク・ニンジャ*4が月の都に顕現したならば、99%以上の確率で月の都が破滅するという試算が出てから、その恐れは増大した。
その恐るべきニンジャが、今目の前にいる……!サンシタニンジャであれば清蘭も多少は強気に出れたであろう。だが、目の前にいるのはコンヴァージ、先の畜生地上進出異変で大暴れし、博麗の巫女をも手こずらせた化け物ニンジャである。
そのできれば関わりたくない化け物が、自分のダンゴ屋の屋台に来た……!
清蘭は助けを求めて隣のダンゴ屋台を見る。自分と同じく地上に居残った月兎、
いつも聞かれもしないのに自慢をしてくるおせっかいを発揮してくれと思いつつ横目で鈴瑚を睨む清蘭。加えて、テレパシーでも助けを乞う。
(((助けて!)))
(((やだよ!アンタの客なんだから、アンタが相手してよ!)))
しかし、その返答は無慈悲だった。鈴瑚はテレパシーで清蘭の救援要請を無下に断ったのだ。コンヴァージが他ならぬ清蘭の屋台におり、実際自分も客の相手で忙しい。だが、鈴瑚も凶悪ニンジャの相手などしたくなかったのだ。
涙を呑んで目の前の客、コンヴァージに向き合う清蘭。コンヴァージは今まで待たされていたため、実際不機嫌だ。砂漠傭兵じみた襤褸の奥で輝く眼光が、ヤブサメめいて清蘭を射すくめる!
「オイ、ダンゴはまだか?」
「アッハイ、今作りますね……」
威圧的ニンジャアトモスフィアに委縮する清蘭。だが、コンヴァージの鋭敏なニンジャ聴覚は、散々待たせておいていまだにダンゴを作ってもいない怠慢発言を聞き逃しはしなかった……!
「イディオットか貴様。注文を受けたら、サッサと作り始めろとハイスクールで習わなかったのか?愚かなのか?」
「アイ、エエエ……ッ!!」
「「「ニンジャ、ナンデ??」」」
「……!!」
明らかに不機嫌となり、暴の気を撒き散らすコンヴァージ。鈴瑚も、鈴瑚の屋台にいる客も、その気にあてられ、動けぬ。清蘭など、気絶しそうな有様である……!このままコンヴァージの暴虐が始まるかと思われたその時!
「グワーッ!?……チッ」
コンヴァージの掌が光り、彼をノロイか何かで縛る!その後、彼はニンジャアトモスフィアの一切を霧散させ、不機嫌ながらも清蘭がダンゴを作り終えるまで大人しく待っていた……。
(チッ…………忌々しいノロイめ)
コンヴァージは目の前のウサギ女がダンゴを作る間、掌に刻み込まれた印を睨んでいた。その印は、残無の加護によって歪んだロウ・ワンの印*5だ。
コンヴァージが幻想入りした際、彼は一度爆発四散していたため、ロウ・ワンの印は切れかけており、ジツの出力はかつて、あるいは現在ほどではなかった。それを残無が上書きしたのだ。これによって彼のジツは強化され、瓦礫を取り込むのみならずキョムから瓦礫を取り出すことをも可能にした。
だが、この印は彼を縛る軛にもなった。コンヴァージがニンジャ暴力性に呑まれかけた時、ノロイが発動し、コンヴァージを縛るのだ。忌々しいが、外せはしない。幻想郷で生きる上では、必要不可欠だからだ。
コンヴァージは諸事情あってデミ・ユーレイじみた体と化しており、幻想郷の外に出れば実在を否定され消えかねぬ。そしてまた、野放図に暴れ、幻想郷のバランスを崩す事態となれば、幻想郷の管理者とやらに殺されかねない。せっかく新しい力を得たというのに、すぐに死んでしまっては興醒めである。
ゆえに、ノロイのことは呑む。そう決めた彼に、ダンゴが供される。
「ド、ドーゾ……」
ゆっくりとダンゴを咀嚼するコンヴァージ。ダンゴの味はどうでもいい。屋台で座り、ダンゴを食べるという行為自体を、この幻想郷に骨をうずめるという決意表明としたのだった……。
コンヴァージが清蘭のダンゴ屋台を去った後。鈴瑚のダンゴ屋台にいた3人組はホッと息を吐いた。そのうちの一人、右目をサイバネ化した筋肉巨漢が言う。
「……まさかこんなとこに転がり込んでまでニンジャに会うとはな」
その発言に鈴瑚は反応!
「え?君ら、ニンジャに会ったことあんの?」
「……ああ。一回くたばる前にな」
筋肉巨漢が苦々しげに言うと、他二人もうなずく。頭と両腕をサイバネにしたスモトリがゼンのキマった表情で言う。
「ああ。ブッダを助けに行ったときにな」
「ブッダ……?」
「いや、まぁ……あれは50%ブッダだった」
「????」
怪訝な表情をした鈴瑚に、ハッカーめいた男がフォローに入るも、さらに彼女を混乱させる。彼ら3人はブッダ逮捕脅迫犯に政府から移送される3億円を強奪しようとしたアウトローであり……失敗して死に、幻想入りした者達なのだ。
「まぁ、良かったじゃねぇか、セキトリ=サン。ブッダに仕えることができてよ」
「彼女は確かに、ほとんどブッダだ……」
頭部両腕サイバネスモトリ、セキトリは息を吐く。実際彼が奉公している命蓮寺の住職、聖白蓮はブッダめいて寛大で、身元不明のセキトリを快く受け入れてくれた。
「ハハハ……まぁ、あそこの住職に限らず、ここの人らは実際寛大だ」
ハッカーめいた男、クウェルト555がいう。セキトリのみならず、彼もススム・コウイチも、幻想郷の人里の住人に受け入れられ、手に職をつけることができた。それはあるいは、ヨーカイに脅かされる中で、余所者を排除する余裕がないからかも知れぬが……。
ススム・コウイチはぽつりとつぶやく。それは、彼の生涯最後のハック・アンド・スラッシュで同行した違法入国サイバネ外国人のことであった。
「……ジェイク=サンはどうなったんだろうな」
「奴はラッキーだからな。上手く脱出しただろうさ」
「いいやつだからな」
3人は顔を見合わせ、笑う。一方、鈴瑚は話においていかれ膨れっ面であった……。
セキトリ、クウェルト555、ススム・コウイチの3人、本当に噛めば噛むほど味の出てくるいいキャラ。