ザ・シェイプ・オブ・ニンジャ・トゥ・カム・イン・ゲンソウキョウ 作:毛糸ー
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※2023/04/08 本文修正
【これまでのあらすじ】
恐るべき蠅使いニンジャ、ベルゼブブと戦うことになったコンヴァージ一行。ベルゼブブは己の体内で繁殖した蠅を差し向け、コンヴァージらを追い詰めるが、チヤリが放った火の玉により、形勢逆転。チヤリは、カラテ近接戦闘を行うコンヴァージらごと火の玉で炙る……!
「「「グワーッ!!」」」
チヤリの巨大火の玉に呑まれた三人は、三者三様に次の行動に移っていた!ベルゼブブは焼かれながらこの場から離れんとするが、コンヴァージが放さぬ!半ば溶けた瓦礫のヨロイに身を包みしコンヴァージは、彼自身も熱に苛まれているにも拘らず、哄笑しながらベルゼブブに殴りかかる!
「グワーッ……!?グワーッ……!?」
「ここは!俺の!フーリンカザンだ!イヤーッ!」
「グワーッ……!?」
「……ザッケンナコラーッ!」トウテツは持ち前の耐久力で獄炎をものともせずにベルゼブブに巨大先割れスプーンで殴りかかる!「ヌウーッ!」ベルゼブブはかろうじて防御!だが、コンヴァージの返す刀の一撃!「イヤーッ!」「グワーッ!」
ベルゼブブは四本腕であり、近接戦においては実際二倍のイニシアチブがある。だが、炎で体が焼かれ、深手を負った状況ではそのイニシアチブも消え去ってしまっていた!
コンヴァージが、殴る!「イヤーッ!」「グワーッ!」そして、トウテツも得物の先割れスプーンで攻撃!「スッゾコラーッ!」「グワーッ!」そして、もう一撃!「スッッッゾ…………………コラァァァーーーッッッ!」「グワアアァァァーーーーッッッ!」
ベルゼブブの胸にクロス傷!たたらを踏む!……だが追撃は来ない!ベルゼブブは訝しむ。コンヴァージがゆっくりと口を開いた!「ベルゼブブ=サン。この畜生界の外に蠅を出さんと確約するなら生かしてやろう」「き、貴様ァーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」
コンヴァージの居丈高な言葉に反抗するも、即座に殴られ転がるベルゼブブ。周囲を見渡すと、心配そうにベルゼブブを見る部下達。彼女は即座に状況判断した。「……分かった。地上から蠅を引き揚げさせる」「嘘なら今度こそ始末するぞ」「分かっている。貴様らをたばかる真似はせん」
ベルゼブブの答えを聞き、コンヴァージは鼻を鳴らして”闇組織”の根城から立ち去らんとする。「お、おい!?」トウテツが慌てながら引き留めるが、彼は取り合わぬ。「……ザンム=サンは俺に、地上進出の黒幕に釘を刺せと指示した。文句あるのか」
ここにいたのがクロコマかキッチョウなら、今の発言を聞いたら即座にコンヴァージを従えんとしただろう。その手段が暴力であれ、搦め手であれ。ただ、ここにいたのはトウテツであった。楽して全てを頂くという信条を持つ彼女にとって、ここでコンヴァージとは対立したくなかった。
そもそも、ここの地下アジトに潜り込んだのとて、チヤリからのしつこい要請があったからだ。そのチヤリが満足そうに佇む今、もはやトウテツに戦う理由は存在しなかった。トウテツは憔悴したベルゼブブを一瞥し、地上へと帰っていった。
ベルゼブブは困惑していた。今現在の状況に。あの激闘から僅か数時間後、不機嫌極まるコンヴァージに顔面を殴られ、この畜生界の酒場へ有無を言わさず連れてこられたのだ。
「おい……何だこれは」
「祝勝会、だと」
コンヴァージは苦虫を嚙み潰したような顔でベルゼブブの困惑に応じる。それ以上の質問は受け付けない、断固たる姿勢であった。彼としても、今行われている祝勝会は不本意なものであった。
あの激戦の後、コンヴァージはザンムに連絡を入れた。当然、それで終わりだと思った。ところが、何をトチ狂ったのか残無は件のベルゼブブも呼んで畜生界のはずれにあるバー(無論剛欲同盟の傘下だ)で祝勝会を開こうと言い出したのだ。
こんな時に反対しそうなヒサミもなぜか一切反対意見を出さず、コンヴァージは反対しても右腕の印のせいで逆らうことはできず、こうして祝勝会と相成ったのだ。
「……貴様の主は余程の能天気なのか?」
「知らん!俺に、聞くな……!」
ショットグラスを握り締めるコンヴァージ。ピシリ、と罅が入る。
「……残無様、よろしかったのですか?奴にあの一件を伝えずにおいて」
日狭美は酌をしながら残無に問う。疲弊した様子の残無は、先程から酒をハイピッチで飲んでいる。何十杯目の酒を喉に流し込み、彼女は言う。
「言わんさ。冗談交じりにでも賢者を殺すように言ったりすれば、奴は賢者共の首を取りに行くじゃろう。死ぬと分かっておってもな。そんな無惨な末路は、儂の望む所ではない」
土地の所有者が消える異変の際、コンヴァージは妖怪の山近辺で大暴れした。当然、天狗の威信をひどく傷つけ、多くの妖怪の住処を脅かしたこの蛮行が見逃されるはずも無し。当然、かのニンジャの主であった残無は幻想郷の賢者らからひどく責められた。
だが残無もさるもの。得意の弁舌を駆使して、コンヴァージの殺害だけは取り止めさせた。だが代わりに、ニンジャ案件については残無がその一切を引き受けることとなった。
こんなことをコンヴァージに話せば、残無は賢者共に対する殺意を漏らさないでいる自信はない。それを察せば、コンヴァージは即座に賢者共に挑みに行くだろう。死ぬと分かっていても。コンヴァージは不遜なニンジャではあるが、主には忠実だ。ボスの命令には絶対服従であり、それが当然だと純に信じている。
残無としてはその姿勢は好ましく思ってはいないが、それはひとまず置いておくことにした。今回祝勝会を開いたのは、コンヴァージを労うとともに、件の女ニンジャ、ベルゼブブの性根を見定めたかったからだ。
もっとも、コンヴァージもベルゼブブも、この祝勝会の裏の意図には気づいていないようで、尚且つ本来の目的も果たせなさそうであるが。困惑するばかりで本性が見える様子の無いベルゼブブと、労われていることも知らず不機嫌なコンヴァージを見て、残無は深いため息をついた……。
コンヴァージ=サン、ボスから労われた経験とかなさそう……。