ブ■ーアー■■ブ -■■■e A■ch■■e- 作:『シャーレの日誌係』
アビドス高等学校。
かつて砂漠の中に存在し、数多の生徒が在籍していたマンモス校だ。
だがその面影は既になく。
残ったのは大量の借金と数人の生徒のみ。
かつての景色を取り戻すべく、数人の生徒は奮闘していた。
──数年前までは。
鈍色の赤い空に砂に混じった白い雪。
空を見上げれば縦横無尽にかけられた線路の上を、いくつもの電車がノイズとともに走っている。
前を見れば住宅街が迷路のように広がり、辺り一面を覆い尽くしていた。
そんな中で遠くに一際大きな建物が一つ。
『学校』だけは、確かにそこに存在していた。
今日の目的地はあそこだ。
アビドス高等学校。
何一つとして変わらない、私の守るべき生徒たちのいる学校だ。
今は生徒
まぁ、彼らは生徒が守っている以上、私の守るべき存在のうちに入るのかもしれない。
何はともあれ、生徒第一だ。
例えどんな姿をしていようとも。
「……?」
しかし……今日はやけに静かだ。
誰もいない住宅街は奇妙なほど静まり返っている。
いつもならば『繧キ繝ュ繧ウ』がいるはずなのに。
唸り声すら聞こえない。
「どうした、んだろう……車輪の音も、聞こえない」
いつもなら聞こえてくるはずの音が、聞こえないことに違和感を感じる。
『いない』と考えるべきか。
だが彼女が姿を消すなど、まずありえない話だ。
少なくともアレがある限り。
「……」
学校を見つめるもいつもと変わらない。
ボロボロになりながらも、何度も補強されたような跡のある学校。
最後の『希望』だ。
「……行くか」
私は彼女がいないことに強い違和感を抱きつつも、学校へと向けて足を進めた。
学校の近くへ着くと、学校の周囲がバリケードで覆われた姿が見える。
ギリギリ保たれているが、あと何度か攻撃を加えられれば、いともたやすく崩壊してしまうだろう。
どこの学校にも似たようなものは存在するが、学校そのものを覆っているのはここだけだ。
まぁ、そもそも、残った校舎部分が少ない、というのもあるのだろうが。
何はともあれ。
ここは砦、数少ない砦だ。
世界がこうなってから、取り残されたものたちが唯一縋り付けるもの。
それが各地の学校にできた『砦』だ。
私はバリケードに触れ、透過し、中へと入る。
人の気配はしない……が、大体は多分、建物の中にいるのだろう。
この赤い空の下、出る人はいない。
たまに食料を求めて放浪する人はいるが、それでも最終的に中に籠る。
そして二度と出てこようとはしない。
特にこの辺りでは。
足を進めて、壁をすり抜け、建物の中に。
建物に入ると廊下には物資が積まれ、その中を数えるだけの人が忙しく動き回っている。
私の姿を視認し一瞬驚きの表情を浮かべるも、私だと判別した瞬間落ち着き、軽く会釈してから通り去って行く。
何も変わらない。
二階へと進めば、そこも似たような景色が広がっている。
ただ廊下で寝転がって動かなかったり、ブツブツ呟いては突然発狂したり。
そういった人たちがここにはいた。
そんな人たちの横を通り過ぎ足を先へ進めると、『廃校対策委員会』の部屋の前に辿り着く。
ドアを開けるとそこには彼女が立っていた。
「うへぇ〜……先生、急に来たねぇ」
「やぁ、ホシノ。今日も、元気そう、だね」
長かった髪を短く切り落とし、目の下に深いを隈を作った少女。
この砦のリーダー、『小鳥遊 ホシノ』がそこに立っていた。
「先生も、変わらなさそうだねぇ」
「私は、何も、変わらない、よ」
「そっかぁ」
もう昔のような笑顔はどこにもない。
「私に、何かできる、ことが、あるかな?」
「いつもの、お願いしてもいいかな……」
少し余裕のなさそうに呟く。
私はその言葉に頷いて、シッテムの箱を
■■■は作り上げた。
虚実を。
無から有を生み出すのならば、それを曖昧にしてしまえばいい。
ないのも、あるのも、同じことだ。
故に。
『
気づけば目の前には箱詰めされた食料が山のようにあった。
どれもこれも既製品にそっくりであり、一部文字化けしているところを除けば、既にあるものと大差はなかった。
「これで大丈夫、かな?」
「これでしばらくは大丈夫。ありがとう、先生〜」
……さて、いつものことは終わらせた。
本題に移ろう。
「ホシノ。繧キ繝ュ繧ウが、いない」
「っ……! 先生……冗談って、感じじゃなさそうだね〜」
とても複雑な表情を見せ、後ろを向くと窓の外を見る。
しばらくしてこちらに振り返ると、私の横を通ってドアの前に立つ。
「先生、少し出てくるね〜」
そう言って部屋を出て行った。
一人だけになった部屋の中、私は顔を懐かしむように見渡した後、他のみんなを探すべく歩き出すのだった。