キヴォトスへ降り立つ方舟   作:知恵のないケダモノ

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思ってたより干からびそ〜

「うへぇ〜...せんせぇ、いっつも仕事づくしだねぇ〜...」

 

「...うん、ドクター、全然休んでない」

 

「...ちょっとこいつが厄介でな」

 

「とにかく、休憩したら〜?おじさん心配だよ〜」

 

「ドクター、ホットココア飲む?私作るよ」

 

「...えへへ、ラファエラちゃん、おじさんのも作ってもらっていい〜?」

 

「いいよぉ〜」

 

ふわっふわだ。

ふわふわすぎて私が飛びそうになっている。

ふわっふわな彼女らは本来、出会うはずのない運命にあったはずだ。

私は頭が空っぽになりそうなのを阻止しながら、どうしてこうなったのか振り返り始めた。

まず、テラに降り立ち、そこでロドスを率いて大地を駆け巡り、多くの仲間との旅やロドスとしての仕事を全うした。

...しかし、仕事を全うする中で予測されていなかった天災が我々の基地に直撃、多くの命が失われた...ように見せかけて、もうひとつの人生があったようだ。それが───キヴォトス都市での、先生としての人生。生徒と共に問題を解決し、世界を救う物語。

今、その2つの物語が絡み合って存在した世界にいる。

オペレーター達の鉱石病は治りはしなかったものの、進行はこの世界に来てピタッと止まった。ケルシーらによれば、このキヴォトスの地の「神秘」とやらが鉱石病の進行を食い止めているらしい。どうやら神秘を持つ者たちは鉱石病にも感染しないようだ。

 

そしてその神秘溢れるキヴォトスは、ゲマトリアやデカグラマトン、その他様々な災いに晒されていたが、我々のアーツと神秘の押さえ込みにより、鎮静化した。さらにゲマトリアは我々の鉱石病やアーツを研究する代わりにキヴォトスの一定の安全を確保する、という契約で一先ずの平和を取り戻した状況だ。

ロドスのオペレーター達が悩んでいる鉱石病のアンチとなる神秘。それらを持つ生徒達に、オペレーター達は戦闘面での不利を強いられるかと思ったのだが...アーミヤ率いるロドス製薬小隊とシャーレの臨時小隊で模擬戦を行ったところ、互角だったとか。彼女らの神秘はアーツまでは無効化出来ないようだ。

 

平和なキヴォトスと安全が確保された感染者達。

新鮮な空気に、皆バカンスに来たような雰囲気だった。

 

...私たちがなぜキヴォトスにやってきたのかは分からない。"気づいたらそうなっていた"としか言えない状況なのだ。天災が襲ってきて、第1波が激突しそうなタイミングで、全オペレーターがここに転移された。天災が転移するアーツを孕んだものだったというのが最も有力とされているが、そんな天災は今までに聞いたことは無い。

 

さらに、鉱石病の停止理由も明確にはわかっていない。神秘で止まっている、というのは分かるのだがどのように作用して止まっているのか、そもそも神秘とは何なのか...ゲマトリアはどうやら鉱石病とアーツの研究に苦戦しており、情報交換が難しい状態であるため、我々が研究し、導き出さなければならない。

 

様々な事象や考察をねりに練り込み、ロドスの主要人物達で考え抜き、示した答えは────

 

「鉱石病止まってるし、俺らじゃどうしようもないから、一旦ゆったりしていかね?」

 

果たしてテラの大地やキヴォトスの地を救う発言なのかは置いておく。

 

簡単に言えば「お手上げ」。なんの前例もなければ前触れもない、最早神のお遊びの一興に過ぎないこの事象は、考えるには少し脳ミソが足りない。神にでもならなきゃ完全に把握することは出来ないだろう。

 

故に示された「思考放棄」。これは至って正常の判断だと言えるだろう。さらに、転移された直後はキヴォトスも危うい状況だった。助けずして何がロドスか。救える命は救うのが当たり前だ。

 

 

「...はい、ドクター。これ、ホシノちゃんの」

 

「わぁ〜!ありがとう、ラファエラちゃん」

 

「ん〜。どういたしましてっ」

 

ふわっふわだ。

彼女らのふわっふわな言動には何か眠くなる効果があるのかもしれない。かの有名な某ホルハイヤは「私もふわふわにしてあげられるわ」と言っていた。物理的にはしてもらえそうだ。

仕事さえあれど、前世のような過酷な環境ではない、平和な日常。それは前世の我々には到底なかった代物で、気分転換としても最高な状況だったのだ。

 

私はココアを入れてくれたラプルマに頭を下げて礼を示し、その好意を飲み込んだ。

 

「...うまいな」

 

「わっ、声出た」

 

「うへ、喋ったね」

 

久しぶりに飲んだのか、普通に美味かったココアに思わず声を出してしまった。

ロドスにいる時から、ご飯についてのあまり味を評価しなかったもので、驚かせてしまったか。キヴォトスに降りたって少し立つが、どうやら感情を取り戻せてきたようだ。

 

ちらりと、ホシノがバチバチに枕にしている膝を見れば、喋った私を見てちょっとだけ驚いてる様子だった。

じゃあラプルマの方を見ると、たまたまポットを仕舞っていたのか、ポットを持ちながらこちらを見ている。口も空いてる。

 

「うへ、珍しいね。味で先生が声を漏らすって」

 

「ね〜。私心配したんだよ?舌持ってかれちゃったかって。わるーいやつに」

 

「それもはや喋れなくなるね」

 

「...」

 

なかなか物騒な発言をするラプルマだが、元の世界が元だから有り得るのが恐怖を誘う。ホシノはにへへと笑ってはいるが、冷や汗をかいているようだ。

 

「そんなに私が喋るのが珍しいのか?」

 

さすがに一言だけに対する反応では無いため、聞いておく。

 

「うへぇ、初めて出会った時は本っ当に無表情だったからね〜。どれだけ表情をほぐそうとしても無駄だからさ、おじさん参っちゃってたよ。そう見ると、君も成長したねぇ〜」

 

手をひらひらさせながら語るホシノ。

おじさんのような答えが返っているが、これは確かに正しい。

 

「ここに来て、そして私達に再会してから少しずつ変わっていったね」

 

ラプルマも同じように手をひらひらさせながら言う。まさにこの通りである。

 

最初、キヴォトスに降り立った時は1人だった。

オペレーター達はおらず、ただシャーレの奪還を目標に動き、そして何もわからないまま先生となった。

意味がわからなかった、だが悲しいことにすぐ理解してしまった。いや、勘違いが近いか。

私は死んでしまった、そして愚かにも第2の人生を歩もうとしている。

テラを救えなかった、そして醜く生き延びようとしている私にやってきた手紙。それがアビドス高等学校だった。

責務を全うするため、乗らない体にむち打ちながらアビドスに来てみれば、アビドスの彼女らと、数名のオペレーター。

 

 

「すっっごい泣いてたよね〜。まぁ、前の世界考えたらそりゃそうだよね」

 

「うん、でも泣いたあとの無表情は変わってなかったね」

 

アビドスに降り掛かった厄災をアビドスの生徒とオペレーター達、そして他学園の生徒などの力を借りて、撃退。

その後もシャーレの先生としての業務をこなした結果...キヴォトスには一応の平穏が訪れ、各学園にいたオペレーター達も来訪、ここにロドスが再集結した、というわけだ。

 

「...やめてくれ、人間の慣れはそう簡単には直らないんだ」

 

掘り返されると恥ずかしい出来事なのだが、本当に嬉しかったのだ。

 

私は恥ずかしさを払うように目の前の書類に目を向ける。

 

「でも〜、先生は無表情で声なんてなくても十分魅力あるよねぇ〜。おじさんと違って」

 

明らかにそんなことは無いと思うが。

とんでもなく可憐で愛おしい彼女に魅力以外の何を感じるのかが分からない。

褒められ待ちか???

 

「ちょっと、ドクターのこと口説かないでよ。私のだよ」

 

そういう訳でもない。私はあなたの物ではないのだが...

それは違うよというふうに、後ろのラプルマに先程の彼女と同じようにひらひらと手を振る。

 

「...うわ、大胆な告白」

 

ホシノがわりとマジに驚いている。少女達は恋愛話を好むと聞いたことがあるが、本当の事なのだろうか。

だが、このままだと間違った解釈をされてしまうので否定を口にする。

 

「...若き少女には、あまりにも不似合いだ。私のような者に付くのはやめておいた方がいい」

 

「そうやって、私は本気で言ってるのに...軽くいなすんだもん。ふんだ、次呼ばれても返事しないもん」

 

ラプルマがぷいっとそっぽを向いた。

 

「───君は、そんなに貪欲だったかね?」

 

「先生は、そんなに心配だったのかね?...むに」

 

小馬鹿にするような声で言うホシノの頬をむにむにしておしおきしながらラプルマに顔を向ける。ちなみに頬は非常に柔らかく、心地がいい。

 

最近、キヴォトスに来てからというもの、ラプルマの求愛が止まらない。以前から無垢な好意を示されているのは自覚していたが、日が進むにつれ明らかに好き好きムーヴが曲がりくねってきたというか、なんというか、彼女らしくない好意になってきている。

 

 

「んーとね。たまたまブレイズさんに恋愛のコツ?を聞いた」

 

「...」

 

「うへ、返事しちゃってるよ」

 

「...あ」

 

あのネコ。今度あったらチョンチョンつついてやる。キツツキみたいに。

ラプルマの目を見つめれば、完璧無垢な瞳だった。大したことない、ただの猫の入れ知恵だった。

 

「...先生、内心安心してる顔だねぇ。そんなにラファエラちゃんに無垢でいて欲しいの?」

 

「...」

 

「むごご」

 

膝でダラダラしているホシノのほっぺたをむにむにすることによりホシノの減らず口を止めることが出来る。最適の行動でありそしてこちらのバッテリーも充電出来る、一石二鳥だ。

...すまんホシノ。そろそろやりすぎた。

 

パッと手を離せば、まだにやにやしてる顔。

こいつ元気だな。

 

「うへ、割と気持ちいいね、ほっぺたマッサージ。暇な時やってよ先生〜」

 

好評だった。

しかも許可を得たので手持ち無沙汰な時はホシノのほっぺをモチモチできる。

随分といい特典を手にしてしまったようだ。

 

さて、とホシノを起こしコンピューターに顔を向ける。この時間は、まだ仕事中。

書類整理を、継続させよう。一時の談笑も、仕事をこなすためのやる気となる。

 

私はそう言って、再び仕事に戻るのだった。

 






ドクター:寡黙と称すが心の中は騒がしい。前世ではあまりの惨さに無感情で、心を底に落としていた。今では青春を謳歌中。

ホシノ:唐突に現れたラプルマに一瞬で懐く。献身的なラプルマにダラダラと甘えるが、あまりに無垢すぎていたたまれなくなり、ラプルマが秘書である時はホシノも手伝う関係に。膝枕が好みで、ラプルマに会った時は大体膝枕を要求する。

ラプルマ:ドクターガチ恋勢から入れ知恵を頂き、さっそく実践している。次はある黒猫の「シメリケムーブ」をやってみるらしい。

ホルハイヤ:攻撃対象が一体のみの場合、相手を4.0秒間浮遊させる。

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こんばんは。お初にお目にかかります、知恵のないケダモノと申します。
本日から何となくの思いつきで、書き始めました。不定期更新で前述の通り思いつきなので、筆が進めばいっぱいでます。
言葉遊びは不得手ですが好きなタイプでございます。
今回、世界観を定着させるために無理やり設定を詰め込みました。許してください。ほぼギャグ路線になるので、最初だけ目を瞑って欲しいです。よろしくお願い致します。
では、またお会いしましょう。

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