キヴォトスへ降り立つ方舟 作:知恵のないケダモノ
「せ〜ん〜せ〜い〜!もはやテンプレートじゃないですかこの領収書!長すぎる!」
「...すまない」
「これ!これも、これも!娯楽にお金使いすぎじゃないですか!?」
「...それは私にとって必需品であって」
「ち・が・い・ま・す!」
失敗した。
たまたまちょっと長いレシートがゴミ箱に入っていたせいで目をつけられ、いろいろと掘り出されてしまった。
見ろ。泣いている、レシートが。あんなに長いレシートが大量に積み上げられて、ミルフィーユのように。
私に苦言をこれでもかと呈している彼女は早瀬ユウカ。ミレニアムの生徒で、シャーレのお手伝いをして頂いている。当番としてくる日もあるが、ときたま彼女は当番じゃない時でもやってくる。
全然助かるし、私のような寡黙によく話しかけてくる珍しい生徒であり、気持ちも上振れやすい、非常に話しやすい生徒だ。
1度、トリニティの方に出張に向かったのだが、挨拶してくれたのは放課後スイーツとティーパーティー、そして補習授業のメンツくらいだった。その他はみんな目を逸らすか逃げるかの二択。
...おそらく、私の後ろ盾となっているロドスオペレーターの圧のおかげだろう。トリニティの暴動を止めていたのはラテラーノ組だったのだが、偶然通りがかったホルハイヤにこれでもかとぐらいに痛めつけられたトリニティ生が多かったらしい。それ以降彼女らは噂に噂を重ねて流され、皆私に関わらまいと距離を取られているのだ。あっ、涙が。ミルフィーユレシートにもらい泣きしたか。
ちなみにかの有名なホルハイヤは彼女らを「温室育ちのダメ天使」と呼んでいた。似たようなことをミュルジスにも言っていたような気がする。
「まっっっったく...ほら、もう無駄ですから全部レシート出してください。隠しても無限に探し出しますよ」
「...うう」
あまりに醜いうめき声が出たが、モウマンタイ。これは日常茶飯事だ、全く気にすることでは無い。
「ハハハ、ドクター、こっぴどくやられてるねぇ...今んとこ、君結構滑稽だよ」
そうだった、こいつがいるんだった。
「ラップ...いつもはあまり気にしなかったんだが、今、君の言動は刺さった...謝ってくれ」
外から見ればこれは本当に滑稽なものだ、子供にレシートの整理をさせる大人などもう大人では無い。あまりにもな光景に当たり前の言葉を返したラップランドに、荒唐無稽な要求をする。
「普通に無理だね」
「...なんか先生が可哀想に見えてきました」
ユウカが喉の奥から絞り出したフォローの言葉は哀れみの言葉となったようだ。
...キヴォトスに降り立ったラップランドは、どうなったかと言うと、つまり、まぁ、こうなった。この平和な世界での戦闘狂っぷりは鳴りを潜め、他人に対する癖のある言動はエスカレートした。今の彼女は、あまりにも奔放すぎる。初対面のユウカの太もものサイズを自分の両腕で測って「届かない!腕届かない!」とか言って普通に反射で蹴られていた。全然届いていたのに。普通に届いていたのにわざと届かせていなかった。そりゃユウカも女子だ、さすがに蹴る。とはいえ、さすがに初対面だったユウカも青ざめてすごい謝っていたのだが、その後普通に起きて早々に私に向かって「何cmあると思う?君は」とか言ってきた。ユウカはその時点で我々の扱いを完璧に理解した。ラップランド、コイツはちゃんとイかれてる。平和ボケしたこの世界のバフでよりイかれ始めている。あまり言いたくないがネタに振りきれている。ステータスポイントをネタに全振りしている可能性すらある。
「...そういえば、"先生"のためにミルフィーユを作ってきたんだった...食べるかい?」
レシートを整理し始めたユウカを横目に、わざとらしく先生という言葉を強調し言うラップランド。ミルフィーユとあったが、少し訝しげに聞く。
「...そのミルフィーユ、肉片で出来てないよな?」
「???」
この狂人は敵を蹴散らした後、積み上げた死体もしくは気絶体をミルフィーユと称する。そんなのはさすがに食えない。ユウカに関しては理解すらできてない。
「まっさか!別に死体なんて入れるつもり無いよ、入れるとしても恐魚のキチン質の嘴みたいなのくらい」
「8割くらいフォークを避けそうだな」
「ハカリさんなら可能かもね、やってみる?」
「?????」
ユウカが完全に困惑しているが、ラップランドは私だけに凶暴すぎる語句と共に強烈なジョークを飛ばしてくる。ここにいる生徒たちにはイケてるジョークが飛び、印象も良いものなのだが。いざ私が関わると暴走したかのように口からボロボロと常識外れた言葉が漏れ出てくる。精神破壊、とまでは行かないが、最初に見た、笑顔を含むその顔面。その友好的で爽やかそうという第一印象は完璧に破壊する。
「...あなた達の前世、あまりにも恐怖に満ちてませんか」
「私はラップに恐怖しているまである」
「あはは、じゃあ言ってあげるよ。そこの机の引き出し、かなり長いレシートあり」
「!?」
やられた。お前はいつもこうだ。何かと別の事で意識を逸らさせて急に核心をつくそのやり口。
いつどこで見ていたかは分からないが、趣向品のレシートがバレている。自分でも覚えていなかったのに。ラップランドは観察力がすこぶる良い。本当によく見ている。戦闘技術においてもそれは卓越しており、指揮官とするならば完璧な状況判断力で活躍してくれるだろう。しかし、そのあまりある残虐性と自己の強さによりその動きは断念、代わりにその観察眼で効率的に弱点を理解、そこを破壊...というよりかは虐殺、必要以上に痛めつけ、無惨にも弱点から引き裂くアタッカーへ。これがラップランドの最も得意な動きなのだ。
「うわぁほんとに出てきました...全く学ばないですね」
ユウカが呆れた顔で引き出しからレシートを引き抜く。あれは私の推しのフィギュアの注文履歴がしっっかりと残っている。領収書など発行しなければよかった。
「恐怖というより畏怖の方が近いな」
「で、ミルフィーユいる?」
恐怖の対象とされている彼女が狂人と称されるのも、この情緒にある。緩急がまるでジェットコースターなのだが、どうなってるのだろうか。1度脳内を覗いてみたいものだ。
ともあれ、ラップランドの真面目ミルフィーユは非常に美味なものである。私はよく無言で食糧を摂取するため、生徒達から味覚がないやら感情がないやらと言われるがそんな事はなく、ただ単純に前世の環境による慣れ。あっちでは食糧さえ取れないような人も。ただご飯でテンションが上がっていては生き残ることが出来るか?そう言われるとその反応も引っ込み、ほぼ無感情で摂取し始めるBOTになる。まぁこうなったのは大体ケルシー構文のおかげであり、ご飯は美味しく頂いているし、むしろ人一倍グルメではあるのだ。
「頂こう。ユウカも食べるか?」
「いいんですか!?お言葉に甘えて...」
「ハヤセさんは大きいのにしとくよ、太ももが欲しがってる」
「ラップさん〜?その尻尾モフり倒しますよ」
「それは嫌だね」
狂人とはいえ、普通に気さくに接する陽気な少女だ。生徒たちにもよく馴染み、ラップランドも満足気に生活している。
我々の前世に足りなかった娯楽、ラップランドは十分に摂取しようとしているようだ。
彼女の過去を知っている私からすれば、彼女のこういう面での成長が見られて、嬉しいものだ。
隣で思ったより多いレシートに苦戦しているユウカもミルフィーユを頼み、ラップランドはちょっと嬉しそうに部屋を出ていった。
そうして運ばれてきたミルフィーユ、ユウカは非常に美味しそうなミルフィーユだったが私のミルフィーユは赤い恐魚の嘴が挟まっていた。
1回だけ、ミルフィーユを切ってくれないかラップ。5+1秒で完食する。
そう頼んだ私だったが、そんな願いも届かず。
1割の命中を頼りに、フォークで狙いを定めるのだった。
ドクター:寡黙とかいいように言っているが、今回のネタ枠。仕事は得意だが自分の物事の整理は苦手であり、ユウカやノア、なんならコユキにまで手伝わせている。最近ある黒猫のfigmaを買った。
ラップランド:戦闘がほぼ無くなり、行き場のない殺意が全てネタへと昇華した。何かと前世の記憶でジョークを言いたがり、特に特殊能力無効が重宝されていた過去、それのジョークをかましてくる。彼女曰く、「キヴォトス人には苗字呼びが今アツい」らしい。アハハ。
ユウカ:ラップランドとは初めて会った時から仲が良く、ラップの根本の観察力や頭の良さに少し感心している面がある。さらに彼女のミルフィーユに懐柔されており、割と好んでラップランドと接している。彼女を取り巻く環境が環境であるため、それに対する耐性によるものか、ラップランドの狂人っぷりには返されない。あとレシートは見逃さない。
ホルハイヤ:あまりに好奇心が強く、歴史に関してちょっとお偉いさんだったため、現在トリニティのシスターフッドでお仕事中。どうやらキヴォトスの歴史が気に入ったらしい。
アツコ:痛いのは慣れてる(回避7割強)
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ありがとうございました。
皆さんの好きな子たちは誰ですか?
小生、ミヅキくんとカズサ様が最大の推しでございます。
よろしくお願いします。
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