今回、主人公の能力が発現するかも。
学園都市に入って数週間ほど経ったあと、俺が連れて行かれたのは研究所だった。
その時俺は、やっぱりここは科学の街なのだなと、呑気なことを考えていた。
今思えば、そんな思考は全く的外れであったのだが。
案内されたのは、いろいろな機械の置いてある、手術室のようなところだった。何の機械なのかはわからない。
そこには、数人の研究者たちがいた。
何をするのかとドキドキしていたら、俺をここまで連れてきた男はその研究者と何事かを話した後、俺を置いて部屋から出ていった。
「さあ、坊や。こっちにおいで。」
研究者は俺にそう話しかけた。
前世も合わせると、俺はもう20歳を過ぎていたので、坊やという呼ばれ方に違和感があったが、この世界の人からすれば完全に子供だ。言われたとおりそちらに歩いていった。
もしここで、拒否していれば、何かが変わっただろうか。
ーーーいや、きっと何も変わらなかった。彼らは俺が拒否すれば、力尽くで捕まえていただろう。彼らはそういう人間だ。
学園都市が科学の街であることは事実だ。
だが、世間一般での“科学”と、学園都市での“科学”は違った。
その日、人間としての神楽坂焔は、“死んだ”。
◆◆◆
これが2年前の出来事。
学園都市の本質に初めて触れた日。
ーーー能力開発。
学園都市で行われているのはそれだ。
まあつまり、俺は能力開発を受けた、ということである。
能力にはランクがあり、それによって待遇が違うらしく、
1番上のランクがLevel5。
そこから下にさがっていき、
1番下のランクがLevel0。
能力を持たない者たちだ。
ここまではいい。
問題はこの後だった。
なんでも、あの研究者たちが言うには、俺の能力は希少かつ強力で、前代未聞だったそうだ。
同じ能力を持つ者がいない、ということだった。
所謂、Level5と呼ばれる部類である。
それからは地獄だった。
能力で何ができるのか。どのようなものなのか。それを調べるために、実験に次ぐ実験。
物を壊すことなど日常茶飯事で、時には人を殺してしまったこともある。
そして2年間実験をしてわかったのは、
ーーー理解不能。それだけだった。
俺の能力は、やっていることはわかるのだが、肝心の原理が全くわからないらしい。別に俺にとってはどうでもいいが。
俺にとって興味があったのは、特典のことである。
そう、Level5 第一位というやつだ。
これは開発の時に聞いた話だが、Level5は現在、俺を含めて6人という少人数のため、序列というものがあるらしい。
これを聞いた時、俺は、
(特典はこれのことか。最初は何のことかわからなかったが、やっと理解できた。)
としか思わなかった。
そういう経緯があり、今は俺が序列第一位である。
そういえば研究者たちに、確か統括理事長が俺の能力を秘匿したいとか言っているとか言われたが、別に俺は自己顕示欲が強いわけでもないので、そうしておいてもらった。
さて、長々と話をしたが、実は今俺はある場所に向かっている。
といっても、自分の家なのだが。
先日、2年にわたる実験がやっと終わったため、Level5に与えられる多額の金で、高級マンションの一室を借りたのだ。まあ今日は外観を見に行くだけだが。
中学に入ったらここを使おうかと考えているが、今はまだあの孤児院で暮らすことにしている。
あそこなかなか居心地いいんだよな。
だがその日は疲れて眠ってしまったため、今こうして向かっているのである。
5歳の子供がマンション買えるのかとは思ったが、どうやら根回しはしてくれていたらしい。それは素直に受け取ろう。将来に向けて準備をするのは必要なことだ。
学園都市は23学区までに分かれている。俺が借りたマンションは第8学区にあり、実験施設は第2学区にある。そのため、そこに向かうには第7学区を通らなければならず、歩いて向かうにはなかなか辛いものがあった。ちなみに俺の住んでいる孤児院、”科学の園”は第13学区だ。
俺は一旦休憩するため、近くの公園に寄った。
「ふぅ…」
俺は5歳児には似つかわしくないため息を吐き、ベンチに座った。
「ああ、いい天気だな…暑いが。」
今は夏。いくら施設内が涼しくとも、外はやはり暑い。そのことも、俺が体力を削られているひとつの要因だった。
「あ〜暑い。子供はこんな中よく遊べるな…俺は無理だ…30秒で倒れる。」
公園では、小学校低学年ほどの子供たちが2〜3人、元気に走り回っていた。
子供は元気である。自分も子供だが、精神は大人という某名探偵のようなかんじなのでセーフだ。何がかは知らないが。
「ん…?なんだあいつ。汗をかいてない?」
俺の視線の先には、ブランコにのって子供たちを眺めている、白い髪に赤い目の中性的な子供がいた。
汗をかいていないことから、おそらく能力者だろう。
俺は少し興味を惹かれたため、その子供に近づいていった。
「おい。」
「あァ?」
俺が声をかけると、その子供は驚いたように、そしてめんどくさそうに返事をした。つーかやっぱ細いな。簡単に折れてしまいそうだ。
「いや、お前1人でここにいたから、何してんのかなって思ってな。」
「…そォかよ。ン?てめえあンまここら辺じゃァ見ねえなァ。どっから来たんだ?」
「第2学区だよ。ん?いやこの場合第13学区か?」
「へェ…そォかい。」
なんと言うか、コミュ力の無いやつだな。これが有名なコミュ症ってやつか。なるほどな。
「お前はここら辺なのか?」
「あァ?あァ。」
「へえ。そういや、名前聞いてなかったな。お前の名前は?」
「…一方通行(アクセラレータ)だ。」
あれ?なんか聞き覚えが…ああ、研究者の会話か。
「それって能力名だよな。本名は?」
「あァ…忘れた。」
「え〜…まあいいや。それより聞きたいことがある。」
「…何だよ?」
「お前ってーーー
女?男?どっち?」
「……はァ?ンなモン見りゃァわかんだろォ。」
いや、見てもわかんないから聞いたんだが…?
まあいいか。世間にはいろんな奴がいるしな。
「そ、それもそうだな。じゃあ、俺はもう行くよ。
ーーーあ、そうだ。名前言ってなかったな。」
「別に聞きたかねェ。」
「俺が言いたいんだよ。俺の名前は、神楽坂焔だ!よろしくな!」
「………」
一方通行は俺の名乗りを無視して子供たちを眺めている。
俺はなんとも言えない気持ちになったため、それ以上何も言わずに自宅に帰った。
これが俺と一方通行の、出会いだった。
その後、無事マンションについたのだが、外はかなり暗くなっていたため院長に迎えに来てもらった。いや~いい人だね。
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