ゲームのストーリー更新が思ってたより早かったから、テンション上がった勢いで書き上げました。
楽しみだぁ。
最近、ふと思ったことがある。
『こんにちは、聖園さん。この間はどうもありがとうございました』
いつも彼と話していると、それがいつも引っかかる。
『む、聖園さんですか…。すいません、今は少々立て込んでおりまして。もう少し待っていて貰えれば、時間を作れますので』
会う度にそれは強く感じられるようになっていく。
『聖園さん。今日も来たのですか。…よくもまぁ、飽きないものですねぇ』
前にレンさんがトリニティに来た日から、それなりの日が経って。
彼は、前よりも柔らかい雰囲気になった気がする。
以前のように、つっけんどんな対応をされることも無くなって。
お店に行っても帰るようにと促されることも無くなって。
バックヤードに入っても、小言の一つも言われない。それどころか、お茶や茶菓子まで用意してくれる。
仕事が忙しい時でも『少し待って欲しい』と言って、その後は必ず時間を作ってくれる。
それはそれで嬉しいし、色々と考えるところもあるんだけどね。
だって、突然これだけ態度が軟化するというのも不思議なことで、レンさんの中で何か心境の変化があったのだとは思うんだけど。
でも、最近私が思ってるのはそういうことじゃなくて。
『私は断然、コーヒー派でしたが…意外と紅茶も良いものですね。聖園さんはコーヒーはあまり飲まないと言っていましたけど、どうでしょう。口に合いますか?』
『丁度良いタイミングですね。これから猫吉飯店に行く予定なのですが、聖園さんも一緒にどうです?』
『聖園さん』
ーー彼は私のことを、必ず苗字で呼ぶ。
それに気付いたら、どうにも気になって仕方なくなっちゃった。
今までもそうだったし、別におかしなことでもないんだけど…レンさんって、私以外の人のことは名前で呼ぶんだよね。
アラタさんとか、そのお兄さんとか。ナギちゃんの話になった時も、会ったこと無いのに『ナギサ嬢』って言ってたし。他にも、知り合い…なのかな。そういった人達も皆、名前で呼んでいた。
お客さん相手だと知り合いでも苗字で呼んでるみたいだけどね。
とにかく、私のことだけは苗字で呼ぶ。名前で呼ばれたことは今までに一度も無い。
そうなってくると、どうして私だけが名前で呼ばれないのかが気になってくる。
彼なりの線引きなのかな。
もしかして照れ隠しとか?
それで慣れちゃったからってだけだったりして。
私のことを特別扱いしてくれてるのかも。
それとも、あくまでも私はお客さんとしてしか見られてない?…でも、レンさんのところで何か買ったこと無いし…。
…彼にとって私は、名前で呼ぶ程の存在じゃ無いのかな。
モヤモヤとしたものが心に溜まっていく。
うだうだ考えていないで本人に聞いてみればいいのは分かってる。分かってるんだけどね。いざ聞いてみようと思うと、言葉が出なくなる。
レンさんにとって、私がそう大した存在じゃないことが露呈するのが怖くて。必ずしもそうとは限らないけど…もしかしたら、なんて考えてしまう。それなら今のままでも良いのかもしれないと思ってしまう。
でもやっぱり気になるものは気になるし…。
だから、遠回しに確認できる方法とか無いかなって、色々考えても全然思いつかなくて困ってるのが現状で。
「アラタさんはその辺どう思う?」
「うぇ…それ俺に聞くの?」
「レンさん以外で一番話しやすい男の人だからね」
丁度お昼時っていうのもあって、私はアラタさんのところに足を運んでいた。彼はレンさんと旧知の仲だし、もう成人してるからそういったことにも明るいかなって思って相談しに来た。それに私はあんまり男性との交友が無いのもある。
「…前に話してた、俺と似てるっていう友達は?」
「ナギちゃんは女の子だよ」
「あ、女の子なんだ。……女の子なのに俺と似てるの…?」
「うん。目元とか特に」
「うっそだろ…」
なんだかショックを受けたような感じになっちゃってるけど…そんなに気にすることかな。私のイメージだと、ナギちゃんを男にして表情をふにゃふにゃさせたような人がアラタさんになる。
あと黒髪で、短髪にしてって感じかな?
他にも細部で違いはあるけど、だいたいそんな感じ。
ナギちゃんはナギちゃんで可愛いし、アラタさんはアラタさんでかっこいいと思うから、そんなにショックを受けることも無いと思うんだけどなー。
まぁいいや。このままだと話が脱線しちゃう。
「何か良い案ないかなー?」
「…んー…そうだなぁ。俺が聞いてみようか?」
「…それは違うと思う。人に頼らなくても出来ることがいいな」
これは私のことだから、そこまでおんぶに抱っこって訳にもいかない。
「そうだよねぇ。…あ、ミカちゃんも東雲さんのこと苗字で呼んでみたら?」
「私がレンさんのことを苗字で?」
「そうそう。よく言うじゃん、『押してダメなら引いてみろ』ってさ」
…どうなんだろ?なんかレンさんは普通に接してきそうだけど…。でも、確かに上手くいけば、私の疑問も解決するかもしれない。
知り合いに普段と違う呼ばれ方をしたら、普通はなんかしらの反応がある筈。
取り乱したりとかすれば、少なくとも彼の中で私がそれなりの所に居る証明に。普段通りならそう大した存在じゃないってことの証明になる。
「…良いかも。それ、やってみる」
「…でもまぁ、そう大層に構えなくても平気だと思うよ」
「なんで?」
「東雲さんがウチに人連れて来たの、ミカちゃんが初めてだから。その時点で一定の信頼?みたいのがあると思うし…少なくとも、あの人の中で親しい相柄には入ってるんじゃないかな」
…そうだったんだ。全然知らなかった。レンさんって交友関係広いから、結構色んな人と来てるものだとばっかり。
「さて、そしたら今度は俺の相談も聞いてよ」
「…良いけど、力になれるかは分かんないよ?」
「その辺は大丈夫。…んでなんだけど、君くらいの娘が貰ったら嬉しい物って何かある?なんでも良いからさ」
…貰ったら嬉しいもの?プレゼントってことかな?
うーん…貰ったら嬉しいもの…。私だったら…どうだろう…?
好きな人から貰えるのであれば、正直なところなんでも嬉しいんだけど。多分、そういうことじゃないだろうし…。
「…アクセサリーとか?」
「アクセサリーか…」
やっぱりそういうものが嬉しいのかなって思う。身に付ける系のものは残るしね。その娘個人の嗜好もあるからリスキーだし、一概にそうとは言えないけど。
あとは…。
「ゴテゴテしてないものが良いんじゃないかな。できるだけシンプルなデザインの方が、色んな服装に合わせやすいから」
「なるほどね…了解。ありがとう、ミカちゃん」
「どういたしまして…もしかしてアラタさんも?」
私の質問に、彼は恥ずかしそうな、困ったような表情を浮かべる。
「まぁ、そんなところだよ。初めてのことだから、如何せん勝手が分からなくてね」
「へぇー、意外だね。そういう経験も結構豊富なものだとばっかり思ってた」
「…残念なことに、この歳までそういったことは全く無かったんだ」
「そうなんだ。…上手くいくといいね」
「そっちもね」
そうだった。人のことを言える程、私も余裕ぶってられない。
レンさんに次に会った時に、早速試してみよう。
でも、今日の明日…ってのも、ちょっと怖いかも。何日か空けて、それからにしようかな。
…良い方に転べばいいけどなぁ。
________
最近、自分がおかしくなっていると思うことがあります。
聖園ミカさん。彼女についてです。
前にトリニティにて彼女と偶然会った時の、その一幕。
彼女は私が他の人に取られるかもしれないと思ったと、そう言っていました。
『今後も含めて、私が誰かに取られるということはありませんよ』
ですから私は、誰のものになるつもりも無いと。そう聖園さんに伝えました。
それは、私が愛する女性は生涯に一人のみだと考えるが故で。
それが叶わぬ恋であったとしても。その人が、今は亡き人であったとしても。
それでも私は、あの人だけを一生、好きでいる。
それほどの愛だったのです。それだけの恋だったのです。これ以上は無いと思えるくらいの気持ちだったのです。
しかし、だからこそ。
『それってさ…私も?』
『……さぁ?どうでしょうかね』
あの時。彼女からの問いに対して、私は何故『はい』と答えられなかったのでしょうか。
ただの一言、肯定すれば良いだけなのに。その言葉は喉に詰まって出ていかなくて。ようやく口に出来たのは、肯定でも否定でもない誤魔化しの言葉。
一体私は何を躊躇ったのでしょう。
はっきり言うのがお互いの為の筈なのに。
彼女の想いは、幼い頃の記憶に引っ張られているもの。
これから先、遠いか近いかも分からない未来に。本当の『運命』が彼女に訪れる筈。
だから、今で決めつけるのではなく。いつか必ず来る、素敵な出会いへと想いを馳せて欲しい。
過去に塗り固められた気持ちを捨て去って。彼女にとって最高で、最幸ないつかを待っていて欲しい。
かつて私がそんな出会いをしたから。
聖園ミカという少女にも、それが必ずある筈なのだから。
だというのに。
態々はぐらかすような言葉を選んで、その後に話をすり替えて。
そこになんの意味があるというのか。
あんなの、ただ今の関係のままでいる為だけの、苦し紛れの捨て台詞でしかない。
私の為にも、彼女の為にもならないのに。
それなのに、あの時。
このままでいられることに。前進することも、後退することも無いまま時が過ぎることに。
ーー確かに私は安堵したのです。
心底困惑しました。自身の考えとはかすりもしない選択をして、それに対して胸を撫で下ろす。その意味の分からなさに。そして、次に湧き出てくるのは疑問の数々。
何故、肯定することが出来なかったのか。
何故、停滞することに安堵を覚えたのか。
どれだけ考えても。どれだけ思い返しても。
その理由が分からない。
私には、何一つとして。
「…シン。貴方はどう思いますかぁ…?」
「んなもん俺に聞かれても知らん」
このキヴォトスに生を受けて、初めてのことでした。
だからこそ、私の中で最も信頼のおける人物に相談しに来たのですがぁ…。
「そう言わないでくださいよぉ…私だって分からないんですから…だから貴方を頼ったのに…」
「勢いに任せて飲みすぎだ。今何を言ったところで、明日にゃ覚えちゃいねぇだろ」
そんなことはぁ…ありませんよぅ。確かに酒は入ってますが…記憶を飛ばしたことは無いのですから…。
「…まぁ、取り敢えずだな。聖園ミカっつったか。そいつはてめぇにとってどんな奴だ」
私にとっての聖園さんが…どんな人か…?そんなの、決まってるでしょう…。
「いつも明るくて…見てる私が元気を貰えるような…。でも、時折暗い部分が見え隠れしたりして…放っておけないような…そんな…」
「違う。俺が聞いてるのは見え方じゃねえ。どう思ってるかだよ」
どう、思うか…。
「……大事な…人、ですかねぇ…」
そう。彼女は大事な人。今の私の中で、恐らく一番。彼女の存在はそれくらい大きいのです…。
少し…違和感がありますが。酩酊した今の状態では…その正体すら捉えられません…。飲みすぎと言われるのも…少し納得してしまいます…。
「大事な人、か。なら、簡単な話じゃねぇか」
「簡単…?…簡単なのですか…?」
あの娘が私にとって大事だからって、何がそんなに分かるのでしょう…?
…まぁ、シンは頭がいいですからねぇ。きっと、私には分からないようなことも彼には分かるのでしょう…。
「もう一つだ。思い浮かべるだけで良い。…てめぇにとって聖園ミカは、一ノ瀬アイカよりも大事か?」
スっと、酔いが引いていくような感覚がありました。
「…シン。貴方、母君のことをーー」
「黙ってやれ。後でなんとでも言われてやる」
アイカさん。私の愛した人。私にとっての『運命』。今も好きでいます。愛する気持ちは確かに不滅。私が抱える、一生の恋。あの人と出会ってから、一日たりとも忘れたことはありません。それほどまでに馳せた想いが、確かに今も続いているのですから。
あの人と、聖園さん。どちらが大事かなどと。そんなの決まって…。
「………」
決まっ、て…。
「…それが答えだ。あとは一人でゆっくり考えるこったな」
シンの言葉に続いて、バタン。と、後ろで扉が閉まる音が聞こえる。しかし、そんなものはどうでもいい。
聖園さん。彼女には色々と世話をしたり、されたり。最初の方こそ鬱陶しいと思うこともありましたが。それも既に消えていて。
共にいるとそれだけで退屈しない。不安そうにしていると助けたくなる。笑顔でいると一緒に笑いたくなる。そんな、今は大事な人だと大声で言えるくらいの存在。
そこで、違和感の正体が分かりました。
……?…大事な人?聖園さんが?
…何故?いつから?きっかけは?
自分でも、分からない。
彼女はただの知り合いで、大きく見積っても友人程度…。
だった、筈。なのに。
どうして私はこんなにも、彼女のことを大切に思っているのでしょうか。
どうして、彼女の存在が。私の中で。
ーーアイカさんよりも、大きくなっているのか。
一生好きでいると思えるほどの女性よりも。私の中で最も大事な人よりも。私の『運命』よりも。
何故、聖園ミカという、少女の方が…。
…シン。何が『それが答えだ』ですか。ただ疑問が増えただけではありませんか。
「…恨みますよ」
そういえば、今更なんですが…感想、評価、お気に入り登録はしっかり見させてもらってます。大変励みになっています。
これからも軽い気持ちでどんどんお願いします。
感想に対してGoodしかやってないのは許して…。