キヴォトス人の『運命の人 』   作:Mr.@

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この話は番外編では無いですが、一話完結です。

一応番外編の方に突っ込みますが、一話完結の話が増えるようなら別で章を作ろうと思います。

あと今回生えてきた男が訛ってるキャラなんですが、多分変な訛りになってます。そこら辺はご容赦を。





単話
EP.short1 叶わぬ恋、伝えられない想い


 

『あっはははは!!』

 

真っ赤に燃え盛る街と逃げ惑う住民達を見下ろして、高らかに笑う娘がいた。わいはその娘の隣で、同じように街と住民達を見下ろしている。

 

炎に照らされた彼女の顔は、大抵の人は凶悪な顔と言うだろう。

 

けど、わいにはその笑顔が。あまりにも輝かしく、それでいて美しく見えた。

 

きっと、その時だったのだと思う。いや、もしかしたらもっと前かもしれないけれど。

 

とにかく。

 

わいは、その女の子に恋をした。

 

最初は同じ目的で、偶然にも手を組んだのが始まりだった。それが段々と一緒に動くようになって、同じ隠れ家を使って共に暮らすようになって。相棒と呼べるくらいの関係になって。

 

己の欲望に従って動く彼女が。

全てを壊さんと動く彼女が。

自身がもたらした結果を前に心底楽しそうに、無邪気に笑う彼女が。

 

どうしようもなく、好きになった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「聞いてくださいコウイチさん!」

 

「おかえり。藪から棒にどったのワカモちゃん?」

 

今日も元気に破壊活動を終えたワカモちゃんが、隠れ家に帰ってくるなり興奮した様子で話し始めた。

 

いつもはもっと静かでお淑やかな娘なんやけど…よっぽど良いことでもあったんやろか?

 

「今日、たまたま『先生』に会いまして!なんとお昼を共にさせて貰ったんです!」

 

「あ、そうなん?よかったねぇ。いっぱいお喋りしてきたんや?」

 

「はい!それはもうーー」

 

嬉しそうにしているワカモちゃんを見てると、こっちも嬉しくなるなぁ。…それが他の男の話じゃなければ、満点やったんやけどねぇ。

 

わい個人としてはあの『先生』は気に食わんのやけど…ワカモちゃんが好きなんやったらどうしようもないわ。

 

あぁ、こんな事になるなら早く気持ちを伝えるべきだったかも分からんね。わいがうだうだしとる間に、最近外の世界から来た『先生』に取られてもうた。

 

あん時はびっくりしたなぁ。捕まって矯正局送りにされたワカモちゃんを助けようと計画練ってたら、いきなり帰ってきて

 

『私…好きな人が出来ました』

 

なーんて言い出したんだもの。わいの恋心はそれはもうズッタズタのグッチャグチャのぼろ雑巾。しばらく立ち直れんわコレって、思っとったんやけど…案外なんとでもなるもんやね。頑張って自分に言い聞かせまくっただけなんやけども。

 

『先生』がワカモちゃんの恋心を奪っていったもんだから、お陰様で彼女の破壊活動も、随分と規模が落ち着いたもんなぁ。わい裏方として色々サポートしよるけど、要らんのとちゃうかな?

 

「ーーそれで『先生』が…コウイチさん?聞いてます?」

 

「聞いとるよー、今度デート行く事になったんね。てか、わいがワカモちゃんの話聞かんかった事なんて無いやろ?」

 

本当は半分くらいしか聞いとらんかったけどね。だって、好きな女の子が好きな男の話しとるのなんて聞きとうないもん。

 

「それもそうですね。それでなんですが…殿方と出かけるのに良い場所等を教えて欲しいのです」

 

うひゃあ…そんなん恋敗れた男に聞くもんじゃあ無いよ…。でもワカモちゃんはそんこと知らんし、しゃーないかぁ。ほんとは気持ち伝えてしまいたいんやけどね。それは彼女にとって障害にしかならんと思うから。

 

わいにとって、ワカモちゃんの幸せがわいの幸せやねん。だからわいの想いは綺麗に包んで仕舞っといて、『先生』とワカモちゃんが結ばれるように上手く助けてやらんと。

 

……そう思わんと、正直やってられんもん。

 

それに、ちゃんとコンビ組んだ時に『なんか相談あったら言ってね』って言ったの、わいやし。あん時はまさか恋愛相談ばっかりになるとは露ほども思わんかった。

 

「そやねぇ…カフェとかが無難なんとちゃうんかな?ご飯食べるんは特別感のあるとこが良いかもなぁ。ちょいお高めのレストランにでも行けばええよ。ちゃんと予約はしてな」

 

「ふむ、カフェにレストランですか…」

 

「あとはテーマパークとかもオススメやね。普段行かんとこ行けば特別感も出るやろ」

 

「なるほど…」

 

一生懸命メモしよるわ。おもろ。

そんだけ、『先生』と出かけるのが楽しみってことなんやろなぁ。羨ましいわぁホント。…わいには、引き出せんかったワカモちゃんやから。

 

「あとな、ワカモちゃんの普段の格好はやめた方がええわ。仮にも七囚人の一人やから、周りに見られたら通報されんで?それにおめかしした方が、気合いも入るってもんやし」

 

「わかりました。ありがとうございます、コウイチさん」

 

「ええよー。帰ってきたらまた土産話聞かせてな〜」

 

「はい。…あの」

 

「んー?」

 

どったんやろか随分と不安そうな顔して。…でもそんな表情でも可愛ええなぁワカモちゃんは。こんなん好きになってまう〜。あ、もう好きになっとったわ。叶わぬ恋やけどな、くそぅ…。

 

「果たして、上手くいくでしょうか…?」

 

あー…なるほどなぁ。

 

「上手くいくかはワカモちゃん次第やろ。まぁ、どんな結果になったとしても『先生』は楽しんでくれると思うけどな?」

 

「それは、何故…?」

 

彼女の瞳には怯えの色が見えた。それは自分が『普通』とは乖離している事を知っているから。自分が異常なのだと理解しているが故の怯え。

 

『先生』と自分との間の、認識の違い。それが今回のデートで発露してしまうことへの恐怖。

 

前の彼女だったらありえない感情。普通も常識も知らんと言わんばかりに自分のやりたいという気持ちに従って、思うがままに全てを破壊していたあの頃では絶対に抱かなかったであろう、それ。

 

わいには向けてくれなかった、恋をしているからこその思い。

 

まぁでも、相手は『先生』だから。そんな心配はご無用なんやけどね。

 

「『先生』は、生徒といる時間がいっちゃん好きやねん。ワカモちゃんと二人で居て起きたことは、全部が幸せで楽しい思い出になるんよ。ワカモちゃんの方に被害が出るようなことが無ければね。あん人はそういう人やから」

 

だからどうか安心して欲しい。

だからあるがままのワカモちゃんで居てくれな。わいはいつも通りのワカモちゃんが好きやねん。

 

「そう、ですね。『先生』は、そういう方ですよね」

 

「そーそー。いつも通りのワカモちゃんでいれば平気よ。むしろ変に取り繕おうとしたら、違和感抱いて心配させてまうかもな?」

 

「わかりました。…いつも本当にありがとうございます、コウイチさん」

 

「良いってことよー。俺とワカモちゃんの仲やし、気にせんといて」

 

ようやくワカモちゃんの表情が笑顔へと変わった。そうそう、君はそうやって笑ってるのが良く似合う。

 

…ほんと、こんなに一途なええ子に好かれる『先生』が羨ましくて仕方ないわ。

 

「…コウイチさんは…私が唯一信じられる方でした。いつも親身になってくれて、私のことを助けてくれて。コウイチさん会えたことを、私は嬉しく思います」

 

「えぇ…?いきなりどったん…なんも出ぇへんよ?」

 

突然何言い出すんかと身構えてもうたわ。

 

「もう、茶化さないでください。…ただ、もし『先生』に会わなければ…きっと私は貴方に恋心を抱いていたかもしれないと、ふとそう思っただけです」

 

彼女の予想外の一言に思わず固まってしまう。

 

………そんなん今更言われても、もう遅いやんか。どうしようもないやんか。なんでそんなこと言うん。そんなこと言われたら、諦めきれんやんか。

 

「…なはは。でも、ワカモちゃんは『先生』を好きになったやろ?世の中そういう風にできてんのや。『運命はいつも突然に』ってな」

 

「それは…」

 

「わいの座右の銘やねん。ワカモちゃんと会ったんも、わいにとっては運命やったんやで」

 

そんでもって失恋するんもな。それも、きっと運命やったんや。

 

だからこれ以上、わいに期待を抱かせんでくれ。

 

「…ふふ。であれば私が貴方と出会ったのもきっと、運命だったのでしょうね。…それでは、私はそろそろお暇させていただきます」

 

「そか。ほな、またね」

 

「えぇ。……あ」

 

隠れ家の出入口の辺りでワカモちゃんが立ち止まり、くるりとわいの方を向いた。

 

「普段のお礼も兼ねて、今度食事でもどうでしょうか?」

 

「ええね。都合の良い日があったら教えてな。…楽しみにしとくわ」

 

「はい。それではまた」

 

パタリと扉が閉まる。その瞬間に物凄い喪失感に襲われた。胸の辺りがキュッとして苦しい。

 

はぁ。なんなんやろか、ほんと。

 

…嫌やわぁ。

 

玄関の前で座り込んでいると、ノックをする音がして、今度は扉が開いた。

 

ワカモちゃん忘れ物でもしたんやろかと思って顔を上げると、そこにはわいの恋敵がいた。

 

落書きを顔に貼り付けた、外の世界から来たという大人が。

 

"こんばんは。ワカモが来なかったかな?"

 

「…なんやねん、ご挨拶やな。…来たけど、どうしたん」

 

"それが彼女、忘れ物をして行ってね"

 

『先生』が見せてきたのは狐のキーホルダーだった。

わいが、いつだかにワカモちゃんにあげたもの。

 

「はは…」

 

乾いた笑いしか出なかった。

 

結局あの娘にとって、わいはその程度の存在なんだと言われたようで。

 

どうしようもなく、苦しかった。

 

「…今度また会うんやろ。そん時にでも渡しゃええんとちゃうんか」

 

つい投げやりに返してしまった。『先生』は何も悪くないのに。…でも、これくらいは許して欲しい。そうしないと、平静を装うことすらできそうに無い。

 

"ワカモがこれ、すごく大切な物だって言っていたから。出来ればすぐに返してあげたいんだけど…"

 

「そしたらあんたが呼びゃええやん。ワカモちゃんならすっ飛んで来るやろ」

 

"…でも、コウイチは良いの?"

 

…あぁ、ほんと気に食わんわ。

いきなり横から出てきて人の恋心をぶっ壊してった癖に。

ワカモちゃんや他の生徒達がどんだけアピールしても、生徒だからと言って応えようとせん癖に。

 

一丁前に遠慮なんぞしよって。

 

「知らんわ。わいには関係のない話やろ」

 

"…わかった。ワカモに連絡することにするよ"

 

そう言ったものの、『先生』は帰ろうとしない。言葉に詰まっているのか、口がもにょもにょと動いている。

…なんやねん。

 

「おうおう、用が無いなったなら早よどっか行けや。愛しの生徒達が待っとるで」

 

"…うん。突然お邪魔してごめんね…おやすみ"

 

再び、パタリと扉が閉まる。

 

ずっと、わいの心の中はズタズタに荒れていた。

 

好きな女の子が、ある日突然外の世界から来た大人に恋をして。

 

その女の子が恋をした大人にわいの恋心を知られて、負い目を感じられて。

 

そんな優しい大人に、『先生』にわいは当たることしか出来なくて。

 

自分が惨めになった。自分が嫌になった。

これすらきっと、運命なんだろう。

 

「…はぁ」

 

 

ほんと、辛いわぁ…

 

 

 





〜キャラ設定〜

狸塚コウイチ

百鬼夜行連合学院男子学部の三年生。
物を壊すのが趣味。破壊活動中にたまたまワカモと出会い、恋に落ちた。
なお、彼の破壊活動はバレておらず『先生』以外の人は皆、ワカモの単独犯だと思っている。
ワカモが『先生』に一目惚れしてしまったせいで、現在BSS状態。
それでもワカモの為に、自身の恋心を隠して彼女の相談役に徹している。
『先生』が自身に負い目を感じているのが物凄く嫌。
ワカモがもしコウイチに恋をしていた場合、『先生』とコウイチの関係はめちゃくちゃ良好になる。二人は本来、とてもウマが合う。

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