不定期投稿になると言ったな⋯?
それはつまり、早く投稿する事もあるという事だ!
今回の話は今後のネタバレもありますので嫌な方は見ない方がいいかもです。いつ書くかもわからんもののネタバレなので、あまり気にしなくて大丈夫ですがね。
というわけでどぞ。
『恋』
それは全ての人間が持ち得る感情。
それは人が人を愛するという気持ち。
私、東雲レンは恋というものがたまらなく好きだ。特に二十代までの男女のフレッシュな恋が。
清い恋。焦がれるような恋。爛れた恋。叶わぬ恋。
時に甘く。時に辛く。時に酸っぱく。時にほろ苦い。
そんな人の数だけある、多種多様で様々な色を見せてくれる恋が大好きだ。
「だからこそ!私はキヴォトス中の恋を見て、知り、そして記録した!」
私の声を聞くのは、総勢三十は越えようかという人々。各々が私の言葉に静かに、そして真摯に耳を傾けてくれている。
彼らは皆、恋に飢えていた。
「皆さん!私が調べた、キヴォトスに存在する恋愛を!美しい愛のドラマを!素晴らしい恋のアーカイブを!ーー知りたいか!?」
「「「「「知りたい!!!」」」」」
「よろしい!今ここに『キヴォトス恋愛観察共有会』の開催を宣言します!!!」
「「「「「ウォォォォォ!!!!」」」」」
あぁ、我が同士達。待っていてください。すぐに貴方達の求めるものを、私が語り、そして見せて差し上げましょう。
「……おい、東雲」
「シン、一体どうしましたか?」
心底呆れたような顔をして私に話しかけて来ましたが…何か不備でもあったのでしょうか。
「俺ァてめぇに『今すぐ来てください。緊急です』って言われたから、仕事のスケジュールを先延ばしにしてすっ飛んで来たんだが」
「はい」
「一体これの何処が緊急だってんだ?」
彼は何を言っているのでしょうか…?このキヴォトスに存在する、若々しい男女の織り成す輝かしき恋愛の数々を知る。これ以上に大事な事など存在しないでしょうに。
「間違いなく緊急でしょう?これは何よりも優先されるべき事項のはずですが」
「とち狂ってんのかてめぇ!?」
全く、相も変わらず口の悪い。こればかりはいつまで経っても直りませんね。
「まぁまぁ、落ち着きなよ兄貴。たまにはこういうのもいいんじゃない?」
「いいわけあるか!こちとら方々に頭下げてここまで来たんだぞ!?その結果がコレって!コレって!!そもそもアラタ、お前この馬鹿共に店占拠されてて良いのかよ!?」
「そうは言っても全員常連さんだし、東雲さんから今日は貸し切らせてもらうって言われてたから。…まさかこんな事をやり出すとは思わなかったけどね」
やはりアラタ君は話の分かる人だ。シンに爪の垢を煎じて飲ませたいくらいです。しかし、兄弟なのにどうしてこうも性格は似なかったのでしょうかねぇ?
「おい『先生』!あんたは俺と同じで巻き込まれたクチだろ!?この色ボケ野郎に何とか言ってやってくれ!」
"…いやぁ、多分話聞いてくれないんじゃないかな?大人しくしてた方がいいと思うよ。私はもう諦めたから"
流石は『先生』。聞き分けの悪いシンとは大違いです。やはり教える立場の人間というものは、人ができているのですかね。
「そういう事ですよ、シン。大人しく席に着いて清聴なさい」
「クソっ!味方が居ねぇ…!」
さぁ、訳の分からない事をのたまっているシンは放っておいて…早速我が同士たちに私の知る恋のアーカイブを伝えようじゃありませんか。
「今回は一先ず五組の紹介をさせて頂こうと思います。さぁ、それではいきますよ!!」
〜〜〜〜〜
『棗イロハと帛紗アサヒ』
まずはゲヘナの従姉弟カップル(未)からです。
おや?初手からインモラルはまずい?大丈夫です。キヴォトスにおいて近親婚は犯罪ではありませんので。というかそもそも、いとこは四親等になりますので結婚はキヴォトスでなくとも犯罪にはなりません。つまり問題なしということです。
棗イロハ嬢はゲヘナ学園の万魔殿の戦車長を務めている方で、まぁ言ってしまえばエリートですね。そしてそんな彼女に相応しい男にならんと邁進しているのが、冬口アサヒ君という訳です。
アサヒ君はゲヘナ学園のエリートたるイロハ嬢に恋心を抱いていて、イロハ嬢もアサヒ君に同じように恋心を抱いているものの、彼が納得するまで待つというスタンスをとっています。要は両思いですね。はよくっつけ。
なぜ私がこの二人を始めに選んだのかと言うと、それはズバリ距離感の近さにあります。
もうね、凄いんですよ。従姉弟だから距離が近いのは分かるんですがね、それにしたって近すぎなんですよ。ベッタベタです。もはや粘着テープです。
学校外では常にくっ付いていると言っても過言ではなく、どちらか一方の家にいる時なんてもう、胡座をかいているアサヒ君の膝の上にイロハ嬢が座るような構図なんて当たり前。他にも膝枕とか、互いに抱き合いながら寝るとか、そんなんばっかです。
へ?なんで家の中で起きていることまで知っているのか、ですか?
………黙秘権を行使させて頂きましょう。世の中には知らない方が良いこともあるのです。
ちなみにとある日に私は、この二人がショッピングモールで腕を組んで歩いているのを目撃しています。外にいようが関係ないという訳ですね。
はよくっつけって物理的な意味じゃないんですけど…(困惑)
そしてこの二人はまだ交際に至っていません。
そう!交際していないのです!ということは、晴れて結ばれた暁には……えぇ、えぇ。期待で胸が爆発してしまいそうですね。
今後の進展に期待です。
さて、それでは次に行きましょうか。
〜〜〜〜〜
『狐坂ワカモと狸塚コウイチ』
続いて二組目は百鬼夜行連合学院のお二人です。
狐坂ワカモ嬢は…皆さんご存知ですね。破壊と略奪を趣味とする七囚人の一人。『災厄の狐』として恐れられているキヴォトス屈指の犯罪者。そしてそんな彼女に恋をしたのが同じ趣味を持つ狸塚コウイチ君です。
はい、同じ趣味なんですね。世間的にはワカモ嬢の単独犯として見られていますが、殆どコウイチ君も関わっています。大体一年前くらいからですかね。
え?それを連邦生徒会にタレコめ?何を馬鹿な事を。私にとってキヴォトスが破壊されるよりもこの二人の行く末を見る方が大事なのです。それは皆さんも同じでしょう?
さて、そんな二人の関係ですが、パートナーと言ったところでしょうか。まだ恋仲には発展していない…というかこのままだとまず交際まで行かないでしょう。なにせコウイチ君の片思いですから。
ワカモ嬢はシャーレの『先生』に首ったけ。そんな彼女を見てコウイチ君は自らの恋を成就しないものとして相談役に徹する事を選びました。なんという献身さでしょうか。これではあまりにも救いがありません。
ですが、私はまだあると思っています。シャーレの『先生』は生徒との恋愛を避けています。彼が『先生』でありワカモ嬢がその生徒である以上、彼女の恋もまた実らないものなのです。
そして何よりワカモ嬢からコウイチ君に対してもまた、友人以上の好感があります。それこそ『先生』さえいなければ、恋仲に発展していたであろうという程度にはね。
であればコウイチ君にもチャンスは存在するわけです。というか見てて苦しくなって来るからくっついてくれ(懇願)
「というわけで『先生』!貴方はこの二人の恋愛について、どういった考えをお持ちでしょうか!?」
"えぇ…ここで私に振るの?"
「当然です!なにせ当事者なのですから!」
"うーん…私としてはやっぱりコウイチを応援してるよ。彼に直接伝えるのは侮辱と取られても仕方ないから言ってはいないけどね。それに、それはワカモの気持ちを軽んじる行為でもあるから"
「はい!立派な教師としての回答、誠にありがとうございました!貴方にも早く良き出会いが有りますように!!」
"あはは…ありがとう。頑張ってみるよ"
それでは次!
〜〜〜〜〜
『小鳥遊ホシノと梔子ゲン』
三組目は今は衰退してしまったアビドス高等学校のトップ二人です。
小鳥遊ホシノ嬢はアビドス生徒会副会長⋯いえ、今は廃校対策委員会の委員長ですね。そして梔子ゲン君は廃校対策委員会の副委員長。彼等が一年生の時、まだアビドス生徒会が存在していた頃はゲン君もアビドス生徒会に所属しており、その頃から二人は関わりがありました。
アビドス生徒会最後の生徒会長が失踪してしまい、取り残された二人。在校生も皆居なくなり、たった二人で最も苦しい時期を過ごしてきたのです。そうなれば当然、自然と恋心も芽生えるというもの。
しかし交際に至ったのはつい最近のこと。互いに恋心を持っていながらも、恋仲に発展させる事はしなかった⋯。それはゲン君がホシノ嬢を想うが故。これもまた美しい愛の形、その一つと言えるでしょう。
現在は六名が在籍しているアビドス高等学校。彼等にも後輩ができ、相も変わらず苦しい場面も多いでしょうが。それでも皆で助け合い、支え合いながら過ごす青春のアーカイブ。その青い春が来るまでの間、長い冬を二人で手を取り合い乗り越えた。これはもう、圧倒的ハッピーエンド以外ありえないでしょう。バッドエンドなんてノーカンです、ノーカン。
そんな彼等は互いに依存している節があり、特にホシノ嬢はそれが顕著でした。見てて心が締め付けられるくらいには依存してましたね。私はこれもまた愛だと、そう捉えてダメージを受け流していましたが⋯。
しかし最近はそれも解消された様子。とはいえ関わり方自体が変わることもまた無く、今まで通りの二人です。
依存してしまっていた理由に関しては、この場で話すような事ではありませんので割愛させてもらいます。
そしてこの二人も距離が近いです。平日休日問わず基本的には一緒にいます。学校で沢山ある空き教室に二人⋯何も起きない筈も無く。なんてことも無く、仲良くお昼寝に興じている様子。
休日はゲン君の趣味である釣りに二人で出かけたりもしているようです。交際しているので当然ではありますが、仲が良いようで大変よろしくて私も嬉しいです。
交際に至ってからは同棲も始めたようで⋯とてつもなくアツアツですね。まるで広大なアビドス砂漠のようです。
「そうか⋯暁のホルスも、救われたんだな」
「ホルス⋯?シン。貴方彼等と面識があるので?」
ホルスだなんて、そんな名前は聞いたことがありませんが⋯。ホシノ嬢かゲン君の異名とかなんですかね?彼等も中々の実力者ですから。
「いや、面識はねぇ。ただまぁ、顔馴染みがちょっかいかけたことがあってな。そん時に色々と知ったのさ」
ふむ⋯まぁ良いでしょう。気を取り直して次です、次。
〜〜〜〜〜
『桐藤ナギサと一ノ瀬シンイチロウ』
続いてはトリニティのトップ、ティーパーティーのホストたる桐藤ナギサ嬢と我らが一ノ瀬兄弟の兄、一ノ瀬シンイチロウです。
なんとシンにも春が来たのですよ皆さん!私はこれを知った時、ひっくり返りましたね。なにせあのデリカシー0でクソ生意気、傍若無人という言葉の擬人化とも言えるシンにも、恋という感情があったというのですから。
しかも相手はお嬢様学校として有名なトリニティのトップ。シンとは正しく反対の方なのですが⋯お嬢様はワイルド系に惹かれるんですかね?よく分かりませんが。まぁシンはワイルドというより粗暴なだけのような気もしますがね。良くてチンピラです。
さて、そんな二人関係ですがーー
「うぉぉい!ちょっとまてぇ!?」
「おや、シン。今度はどうしましたか?大人しく清聴なさいと言いましたよね?」
「なんでてめぇがそれを知ってやがる!?そもそもまだやってない話のネタバレをするなバカタレ!」
はぁ…。今度は何を言い出すのかと思えば、そんなくだらない事とは。
「私の情報収集力を舐めないで頂きたい。そこに恋があるのであれば、たとえ火の中水の中です。それにネタバレと言いましたがね、既に初手からネタバレしてますので。ほら、なんの問題もありません。だから早く座りなさいこのスットコドッコイ」
「なんにしたって当人の前でそんな話をするな!俺が居ない時にやれ!つーか俺の事さっきから悪く言いすぎだろ!?」
「知りません。貴方が来たのが悪いのでしょう。さ、皆さん。よろしくお願いします」
「あ゛ぁ゛ん!?てめぇが呼んだんだろうが!!舐めたこと抜かしてんじゃねぇ…っておい!クソ!離せポンコツども!ぐぅおぉあ!?」
我が同胞達の手によってあっという間に押さえつけられたシン。闇の中でどれだけ名を馳せようと、どれだけ強くなろうと。恋愛ブーストの掛かった精鋭達の前では手も足も出ないでしょう。ましてや貴方も世話になってきた方々が相手であれば、尚更のことです。
「さて、続きにいきますよ」
えーと…二人の関係からでしたね。
この二人の関係は一言で言えば婚約者と言ったところです。元々は仕事の依頼主と請負人だった二人ですが、その仕事の最中に恋に落ちた…。ある意味ベタとも言えますが、ベタということはそれだけありうるシチュエーションであるということ。やはりこういった出会いもまた良いものです。
そして何故『婚約者』なのか?両思いなのであれば交際してしまえばいいじゃん。態々『婚約者』の形を取ってる意味がわからん。という方もいるでしょう。しかし、これは他ならぬシンの意向なのです。
曰く『二十歳を過ぎるまではそういった関係になるつもりは無い』との事でして…。ぶっちゃけ婚約者だろうと彼女だろうとそんな変わらないと思いますし、歳の差なんて気にしなくても良いと私は思いますがね。まぁ、こればかりは当人達の問題なので口出しはしませんが。
とはいえ裏を返せば『二十歳を過ぎたら手を出す』と言っている訳で。互いに交際関係にならずにナギサ嬢が二十歳になるまでの時間を過ごす…こうして長い時間焦らされた二人の恋愛は、そりゃあもうきっと凄いのでしょうね。今から楽しみで仕方がありません。
ちなみにナギサ嬢は何時でもウェルカムみたいですよ。シンがチキってるせいで待たされて非常に可哀想です。
私としてもシンが二十代のうちにくっついて欲しいんですがね。ナギサ嬢が二十歳になる頃にはシンは三十一歳ですから、そうなると二人の恋愛は私の求めるものではなくなってしまうんですよ。
シン、だから早く責任を取りなさい。貴方以外の人達の為に。え?さっき口出ししないって言ってたって?なんの事ですかね。私にはさっぱりです。
「はよくっつけ!」
「さっさと結婚しろ!」
「元気な赤ん坊見せろ!」
「おしめ変えさせろ!」
「っるせぇボケジジイどもが!俺ァガキにゃ手を出さねぇよ!!」
皆さんも嬉しいみたいですね。さて、それでは次に行くとしましょうか。
〜〜〜〜〜
『鬼方カヨコと一ノ瀬アラタ』
今回の『キヴォトス恋愛観察共有会』、そのラストを飾るのはやはりこの二人を除いて他にないでしょう。なにせこの場に居る皆がこの店『猫吉飯店』の常連なんですから。
我らが一ノ瀬兄弟の弟にして『猫吉飯店』の現店主である一ノ瀬アラタ君と、便利屋68の課長である鬼方カヨコ嬢のカップルです。
この二人の出会いは雨が降る夕暮れ時、路地裏にて。そこで暮らす猫が彼等を巡り合わせたのです。素晴らしい。これぞ『運命』と言った所でしょうか。
さて、そんな二人ですが⋯。実は既に交際しています。互いに名前も知らない状態から数ヶ月のうちに恋仲まで行くとは。この私の目を持ってしても見抜けませんでした。それだけ互いに惹かれるものがあったのでしょう。
その恋愛は王道そのもの。奇を衒うことも無く、歪んでいるわけでもなく、過激なこともなく。清く正しく美しく。私はこういうのが一番好きです。
…しかし皆さん。実は二人、私が知りうる中で最も進んでいると言っても過言ではありません。なにせアラタ君はカヨコ嬢にーー
「ちょちょちょ!待って、ストップ東雲さん!」
「今度はアラタ君ですか。一体どうされました?」
「それ以上は駄目だ!ライン超えてるって!」
「良いじゃありませんか。この場の皆がこの店の常連⋯言ってしまえば顔馴染みです。私も含め猫吉さんの頃から来ていて、アラタ君の事を幼い頃から知っている人も多いわけですし」
我々からすればシンもアラタ君も弟、ないし息子の様なもの。そんな彼等の成長を一番実感出来るのは、やはり交際相手の有無でしょう。それらの仔細を知り、『あぁ、一人前の男になったんだなぁ⋯』としみじみ思うのです。ましてや、この事はその極地とも言えます。私とて知った時は、人目もはばからずに涙してしまった程なのですから。
「⋯ソレは、兄貴にもまだ言ってないんだ」
「あぁ?俺にも言ってねぇって⋯?お前が嬢ちゃんと付き合い出したのは既に聞いてるが」
ふふ、違うのですよシン。多分彼は誰にもまだ言っていない筈。『先生』にも、私にも、貴方にもね。私が知っているのもカヨコ嬢からたまたま聞いたからですし。彼女はその辺は大分オープンですから、聞けばすぐ教えてくれるとは思いますが。目の前で泣いてしまったのは申し訳ないです。
「なるほど。であれば、そうですね。⋯この場で知ってもらいましょうか」
「今のは言うの止める場面だったよね!?」
「こういうのは早い方が良いのですよアラタ君。別に減るもんじゃないんですし、パッと言って皆から祝福してもらいましょう。皆喜んでクレジット包み始めますよ」
そうして続きを話そうとした時、アラタ君が私の方に人差し指を突きつけてきました。
「⋯東雲さん。貴方がどうしても話そうって言うなら、その前に一つ俺からも言わしてくれ」
「構いませんよ。なんでも言ってください」
「言質は取ったよ。もう言い逃れ聞かないからな。
⋯俺の話を最後って言ってたけどさ、自分の話をまだしてないよね?」
それを聞いた瞬間、私の左耳に付けてあるイヤリングを手で覆って隠したのですが⋯どうやら遅かった様子。
「そのイヤリングは一体誰から貰ったのかな?ピアスだとかイヤリングだとか、そういう物を邪道だって切り捨ててた貴方が今付けているそれは。しかも付いてるのは左耳だけだ。右はどこにやったのかな?ねぇ、東雲さん?」
「いえ、あの、こ、これはですね⋯」
「随分と焦ってるね。自分の話はしたくない?⋯俺、その宝石の類じゃない綺麗な石のイヤリング、市販で売られてるの見た事ないんだよね。調べても出てこないし、石の種類も分からない。つまりはオーダーメイドだ」
まさか彼がそこまで知っているとは⋯完全に予想外です。とはいえ知られているのはオーダーメイドであるという事実のみ。まだどうにでもひっくり返せる範疇。最近考えが変わったとでも言っておけばーー
「その上でなんだけど。東雲さん以外にも一人だけ付けてる人、知ってるんだ。女の子で、右耳に付けてる娘をね」
ーーまずい。非常にまずい。先程までアラタ君に向いていたギラギラとした皆さんの目が私に向いている。彼等は私と違い恋愛であればなんでも良しとする者達。当然、私も対象になりうるわけで⋯。
その時、チリン、と店の扉が開く音が。本来貸切であるこの場において客が入ることは無いのですが、私にとってそんなことはもはやどうでも良い。この窮地を脱することが出来れば、それで良い!
「やっほー☆レンさん居るかな?」
店に入ってきたのは、私が付けているイヤリングと同様の物を右耳に付けた女性。これの元となった石⋯いえ、隕石を私にプレゼントしてくれた女の子。
今、この場においては一番来て欲しくなかった人。
彼女のことを視認した全員が今度は此方を見る。その目はギラギラを通り越したなにかへと変貌を遂げており、私の全身はその身が出した危険視号で鳥肌が立ちまくっていました。
「さぁ、おっちゃん達。⋯狩りの時間だ。とっ捕まえて根掘り葉掘り全部吐かせろ!!」
「「「「「うぉぉぉぉ!!!」」」」」
「聖園さん、逃げますよ!」
彼女の手を取って走り出す。今の私にはこうする以外に道が無いのです。
「レンさん。⋯⋯ミカって呼んでって前に言ったよね?」
「今はそれどころじゃないです!後でいくらでも呼びますから!!」
そうして『キヴォトス恋愛観察共有会』は幕を閉じたのでした。まだまだ語り足りませんので、次回の都合も付けておかないといけませんね。
ふふ、今から楽しみです。
〜おまけ〜
この話の少し前、前回の番外編よりしばらく後の話。
「おや、カヨコさん。お久しぶりですね」
「あ、えっと⋯東雲さん、でしたよね」
「はい、東雲です。あれからアラタ君とはどうです?上手くいっているでしょうか?」
「それが⋯これ」
「それは⋯ま、まさか⋯!?」
「『この先一生、傍に居させて欲しい』って⋯」
「⋯⋯⋯うぅ⋯」
「!?し、東雲さん?なんでいきなり泣いて⋯?」
「いえ、その、私、アラタ君の事を、赤ん坊の頃から、知っていまして、それで、ちょっと、感無量になってしまって⋯。すいません、でも、嬉しくて、涙が、止まらなくて⋯っ!」
その後レンは、カヨコとどこからともなくすっ飛んできたミカに落ち着くまでの間、道のど真ん中で背中をさすられていたとか。