キヴォトス人の『運命の人 』   作:Mr.@

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またまた遅くなってしまい申し訳無い。
ちょっとまだ忙しいので次も遅くなるかもですが…気長に待っていて貰えると嬉しいです。




EP.EX ふしぎなくすり 前編

 

 

「ねぇねぇカヨコちゃん!」

 

「どうしたの?」

 

便利屋の事務所に居たら、不意に猫撫で声を上げながらムツキが声をかけてきた。妙に上機嫌だ。こういう時は絶対に何かある。

 

「くふふ。実はね⋯今日の依頼の報酬でこんなの貰っちゃったんだ〜!」

 

そう言いながら見せてきたのは、透明な袋に入れられた錠剤が複数。

 

「大丈夫なの?それ」

 

当然の疑問だろう。私達は裏社会で仕事をしている。そこで得た報酬が薬となれば、法律的にまずい物である可能性の方が高い訳で。

私の心配を他所にムツキはニマニマと笑っていた。

 

「大丈夫だよ〜!⋯これ、山海経で作られたものらしいんだけど⋯飲んだ人が若返る薬なんだって!」

 

「そんなのある訳⋯」

 

「それがね?いっぱい入ってたから試しに一つ、やっつけた連中に飲ませたら⋯ほんとに若返ったの。身体だけで、意識とかには作用しないみたいだけどね」

 

「⋯本当?」

 

にわかには信じられない話だ。人を若返らせる薬だなんて、喉から手が出る程欲しい人が沢山居るだろう。

 

「ほんとほんと!どうせ眉唾だろうと思ってたから、私もびっくりしちゃったよ〜」

 

「⋯捨てた方が良いんじゃない?」

 

どうせ私達が持っていても使い道は無い。精々、敵に飲ませて無力化を図るくらいか。それも戦闘中であればほぼ不可能だろうし。

 

ムツキは私の言葉を聞いて、先程よりも一層笑みを深くした。やっぱり何か企んでいるらしい。

 

「えぇ〜?捨てちゃっていいの〜?」

 

「その薬の情報が漏れれば、争いの種になるかもしれないでしょ」

 

薬を飲めば若返る。それは実質的な不老不死を意味している。その薬を巡って争いが起きる可能性は、大いにある。危険な代物だ。

早急に処分するべきだろう。

 

「でもさぁ⋯」

 

「でももへったくれもーー」

 

食い下がろうとするムツキを窘めようとした、その時。

 

「⋯ちっちゃいアラタさん、見てみたくない?」

 

時間が停止したような気がした。

 

子供のアラタ。ちっちゃいアラタ。

⋯見たくないと言えば、嘘になる。というか見たい。とても見たい。多分⋯いや、絶対可愛い。

 

でも、駄目。アラタは嫌がると思う。それに、薬の効力がどれくらいなのかが分からない。

 

「どれくらい若返るのか分からないから⋯」

 

「試した人は小学生くらいになったかなぁ」

 

「元に戻らなくなるかもしれないし⋯」

 

「人によって差はあるみたいだけど、くれた人は長くても一日って言ってたよ。⋯それくらいなら良いんじゃない?ねぇ、カヨコちゃん?」

 

一日。それくらいなら⋯良いのかもしれない。お店が休みになる前の日だったら、仕事にも影響しない。

⋯丁度、今日だ。

 

「またと無いチャンスだよ?これを逃したら、もう一生薬も手に入らないかも⋯?」

 

確かにそうだ。こんな薬が市場に出回るとは思えない。その時はキヴォトスが崩壊する時だろう。これが、一度きりのチャンス。

 

⋯でも⋯。

 

「⋯じゃあ、やめとこっか!」

 

「ぁ⋯」

 

ムツキは手に持っていた錠剤が入った袋を仕舞ってしまった。

それを見て、つい声が漏れる。

 

「あれ?どうしたのカヨコちゃん?そんな惜しそうな声出して?」

 

「いや⋯その⋯」

 

「なんでもない?⋯なら、私行くね?コレ、捨てちゃわないといけないもんね?」

 

再び袋を取り出し、見せびらかすように私の眼前に突きつけられた。

ヒラヒラと、欲望が踊っている。

 

「⋯⋯ぃ⋯」

 

「ん〜?なぁに?」

 

「⋯それ、頂戴⋯」

 

欲望には勝てなかった。

さっきからずっと、子供のアラタが頭から離れない。

あまりにも魅力的。あまりにも蠱惑的。私がそれに抵抗する術など一切無かった。

 

「⋯くふふ!やっと素直になったね!じゃあ、カヨコちゃん。手、出して?」

 

袋の中から錠剤が一粒、私の手の中に零れ落ちて来た。

 

「私も使いたいから、取り敢えず一つね」

 

⋯あぁ、成程。共犯者が欲しかったのか。

そう理解した頃にはもう遅い。こうして私の手に一つ収まってしまった以上は、今更止めるなんて選択肢は無い。

 

「⋯ありがとう。⋯ムツキは誰に?」

 

「アルちゃんと『先生』だよ♪」

 

「二人の仕事に影響しない程度にね」

 

「分かってるって〜!じゃ、行ってきまーす!」

 

バタン!と勢いよく扉が閉められる。そして取り残された私と一粒の錠剤。

 

⋯うん。私も行こう。ちっちゃいアラタ⋯楽しみだ。

 

 

 

 

 

________

 

 

 

 

 

今日も店は繁盛。朝から晩まで忙しい時間が続いた。

でも、そんな時間もこれで終わり。さっきまで人で賑わっていた店内も、今はすっかりと静まり返っている。

 

「さて⋯」

 

片付けも終わったし、帰ろう。そう思った時、店の扉が開いた。

 

「あれ?カヨコちゃん?」

 

そこには俺のカノジョの姿。俯いていて、その姿は申し訳なさそうにしている子供のように見えた。

 

しかし、何故店の方に来たのだろう?

前までなら分かるが、今は彼女には合鍵を渡してある。開店中の時間ならともかく、態々こんな夜中に来る理由は全く無い筈なのだが⋯。

 

「どしたの?合鍵忘れちゃった?」

 

「⋯⋯⋯」

 

可能性としてパッと思いついたものを上げてみるが、反応は無い。

 

スタスタと無言のまま俺の目の前まで来た彼女は、俺の両頬に手を添えて⋯。

 

「んむっ!?!?」

 

キスをされた。

 

あまりにも突然の事で、身体が動いてくれない。

無抵抗な俺を、カヨコちゃんが思うがままに蹂躙していく。じっくりと、味わうようなそれ。

その中に、ふと異物が混ざっていることに気が付いた。

 

その異物は俺の口内へと押し込まれて、喉の方まで運ばれて来た。それを勢いのままに飲み込む。

 

「⋯ぷはっ⋯」

 

丁度そのタイミングで彼女は離れた。

 

まるで意図の読めない一連の行動に、ひたすら疑問が湧き出る。

 

「⋯ほんとにどうしたの⋯?」

 

「⋯ごめんね」

 

一言の謝罪。答えになっていない返事。

 

分からないことばかりだ。唐突なキスに、何かを俺に飲ませて。

確かに勢いで動くことも割とある彼女だが、ここまででは無かった。

 

ずっと俯いているから、表情すら見えない。

 

「いや⋯何で謝るの⋯ーー!?」

 

なんだろうか、突如身体の内側が物凄く熱くなった。今までにない現象だ。多分病気とかでは無い。

 

となると、原因は⋯。

 

⋯⋯まさか。

 

「⋯もしかして⋯な、なんか盛った⋯?」

 

そう問うと、ようやくカヨコちゃんは顔を上げた。

 

「⋯うん。だから、ごめんね?」

 

見惚れる程に妖しい笑顔を浮かべている。

欲をどうしても抑えきれずに、やってはいけないことをした後みたいな。そんな表情。

 

「⋯ヤバいやつじゃないよね?⋯⋯あ、あれ?」

 

何か恨まれるようなことしたかな⋯なんて思って、自分の声が高くなっていることに気が付いた。それと、声の高さに反比例して視点が段々と低くなっていく。

 

「えっ⋯??どゆこと?な、何が⋯」

 

自分の身に起きている謎現象に困惑している最中にも、変化は止まらない。視点が⋯いや、これは⋯背が低くなっていってるんだ。もう服がダボダボだ。

声も大分変わって、まるで子供みたいな感じになってしまった。

 

そしてある程度のところまで行ったところで、その変化は止まった。

 

「うぇ⋯なにこれぇ⋯」

 

「⋯か⋯⋯」

 

随分と縮んでしまった。カヨコちゃんの丁度肩の辺りに頭頂が来るくらい。年齢的には小学生低学年がこれくらいの背丈だろうか。

 

事の下手人であろう目の前の人物は、口元を手で抑えて目を大きく見開いている。

こういった表情はあんまり見ないから新鮮だ。⋯いや、そんなことよりこの状況の確認をしないと⋯。

 

「カヨコちゃん?一体何をーー」

 

「可愛い⋯!」

 

「ーーうひゃあ!?」

 

話してる途中、視界が黒に染る。カヨコちゃんに抱き締められたからだ。

 

「ちっちゃいアラタ⋯ちょっとだけ目つきが悪いけど、私が思った通り⋯」

 

「ちょっと、は、離して⋯!」

 

取り敢えず落ち着いてもらう為にも離れようとしているのだが、全然引き剥せる気がしない。

彼女、こんなに力強かったっけ?⋯あ、 背が縮んだから俺の方が力が弱くなってるのか。

 

何とか抵抗を試みるも、完全に力負けしてるせいで脱出は不可能と言っていいだろう。

 

今、位置的に胸の辺りに俺の顔が抱え込まれているような構図だと思うのだが⋯その、柔らかなモノが当たって⋯。てか良い匂いめっちゃする⋯⋯。

 

⋯⋯やばい。なんか癖になっちゃいそう。早いところ止めてもらわなければ。

 

「カヨコちゃん落ち着いて⋯!く、苦しい⋯!」

 

「⋯あっ⋯ご、ごめん⋯」

 

我に返ったのか、手を離して貰えた。

どうにもしばらくはソワソワとしていたが、少し時間をおけばいつも通りの彼女に戻ってくれた。

 

「落ち着いたみたいだね。⋯じゃあ、一からきちんと説明してね?」

 

そうしてようやくカヨコちゃんは事の経緯を話し始めたのだった。

 

「実は⋯」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「⋯ってことがあって」

 

話を聞き終えて、俺の頭の中はいっぱいっぱいになっていた。

 

「⋯子供になる薬、ねぇ⋯」

 

説明を聞いてまず引っかかったのはそこ。

子供になる薬。そんなものが存在するとは。流通はしていないみたいだけど、よくそんなものを手に入れられたものだ。

 

まぁ、それはいい。そういうものもあるのだろう。

でも、そうじゃなくて…。

 

「突然だと困るよ。せめて一言は言ってくれないと」

 

「言ったら、受け入れてくれたの…?」

 

「ん〜⋯。まぁ、そうだね。好きな娘のお願いだから、出来る限りは聞いてあげたいし」

 

カヨコちゃんはあんまり欲が無いのか、お願いだとか、頼み事とか、そういうのを俺に言ってこない。『頼り甲斐が無いと思われてるのかなぁ⋯』とか考えてしまうくらいにはね。

 

だからこそ、折角欲を出してくれるのであれば。俺はそれを叶えてあげたいのだ。

 

「⋯そっか。ありがとう」

 

「でも、今日のこれはダメだよ。次はカヨコちゃんの番だからね」

 

「え」

 

「え、じゃないよ?来週の店休日が楽しみだね」

 

ソレとコレとは話が別。悪戯っ子には罰を与えねばなるまい。

本音を言うと、俺も子供の頃のカヨコちゃんを見てみたいだけなのだが。

聞けばまだ薬はある様子だった。であれば、俺にもその権利がある筈。

 

子供のカヨコちゃんかぁ。きっと可愛いんだろうなぁ。

 

⋯今が可愛くないとかじゃなくてね?こう、子供の頃は愛くるしさが有りそうって言うか、今とはベクトルの違う可愛さが有りそうというか…言葉にすると難しいけど、そんな感じだと思うんだよね。

 

「⋯分かった。私が先にやったし、しょうがないか」

 

「分かってくれて何よりだよ」

 

さて。これでこの件は終わり⋯とは行かないのが悲しいところだ。

えっと、確か⋯。

 

「これ、長くても一日で元に戻るんだね?」

 

「うん。そう言ってた」

 

なら、一先ずは安心出来る。このまま戻らないとか言われたらどうしようかと。彼女に限ってそんなことしないとは思うけど。

 

明日が店休日だから、家から出なければ問題無いだろう。

あとは、えーと⋯。

 

色々と頭の中でこんがらがって整理がつかない。

⋯取り敢えず、煙草を吸おう。あれ吸ってると考え事が捗るんだ。

 

小さくなったせいか、妙に広く感じる店内の煙草を仕舞っている引き出しから目的の物を取り出す。そして、一本出して火をつけようとしたところで咥えていたものが口から離れていった。

 

離れていくそれを目で追っていくと、物凄い眼光でこちらを見ているカヨコちゃんと目が合った。一体どうしたのだろう。

 

「今、子供の体になってるんだから煙草は駄目」

 

そういえばそうだった。まぁ、煙草は別にいい。俺は別にヘビースモーカーでは無い。吸えないならそれはそれで別に構わないのだ。

 

⋯だが、その理屈で行くとだ。

 

「じ、じゃあ⋯」

 

「お酒も駄目だよ。当たり前でしょ」

 

なんということだ。

 

酒が飲めない。折角の休日に、酒が飲めない。可愛いカノジョが家に来てくれてるのに、酒が飲めない。

それがどれ程の絶望か、想像出来るだろうか?人によっては出来るかもしれないね。俺はめっちゃ辛い。

 

「⋯ワンチャン無い?」

 

「はぁ⋯。あると思う?」

 

「⋯ですよね」

 

これはもうどうしようも無い。大人しく明日は休肝日にするとしよう。

 

…あ。

 

「兄貴、どうするかなぁ」

 

同じ家に住む俺の兄貴。いつ帰ってくるか分からないのだ。今は仕事中だろうが、連絡も寄越さずにに突拍子も無く⋯ということが多い。

 

「シンイチロウがどうかしたの?」

 

「どうかしたというか⋯ねぇ」

 

正直に言おう。

 

見られたくない。

今日明日だけでいいから帰って来るなとでも言っておこうかな。

 

「見つかったらめんどくさい」

 

「良いじゃん、見てもらおうよ」

 

「やだ。何されるか分かんないもん」

 

絶対、新しい玩具を買ってもらった子供の様に俺で遊び倒すだろう。兄貴はそういう人だ。それだけは勘弁願いたい。

それに、下手をすれば常連さん達や東雲さんにも話が行ってしまう可能性もある。俺は見世物になんてなりたくないのだ。

 

「じゃあ、カヨコちゃんは便利屋の娘達に子供の頃の姿見られても平気?」

 

「⋯あんまり見られたくは無いかな」

 

「でしょ?」

 

そういう事だ。それ以前にそもそも見られたら恥ずかしいし。今の俺の姿を見て昔を懐かしまれるのもちょっと…。

…なんだろうか、こう…子供の頃のアルバムとか卒アルを見られるのが嫌、みたいなのに感覚は近いかな。

 

「くぁ⋯」

 

ふと、急に眠気が来た。

子供の体だからこの時間だと眠くなるのだろうか。

 

「眠い?」

 

「そうだねぇ。⋯ちょっと、眠いかも」

 

「じゃあ、今日はもう寝よっか」

 

「うん⋯」

 

先程までは何ともなかったのに自覚した途端に物凄い睡魔に襲われる。とはいえここでこのまま寝る訳にも行かないので、席を立ちフラフラとおぼつかない足取りで我が家へと向かう。

 

その最中にふと、身体が軽くなった。

不思議に思い足元を見てみると、自身が宙に浮いて脚が空回りしていることに気が付いた。

 

カヨコちゃんが俺の事を持ち上げていたのだ。

 

「あの、降ろしてくれないと歩けない…」

 

「そんなフラフラしてたら転んじゃう。このまま家まで連れて行くからアラタはそのまま寝てて良いよ」

 

身体の向きを反転させられ所謂抱っこの体勢になる。さっき抱きつかれた時よりも密着しているが、邪な感情は特に抱かなかった。

それよりも羞恥心が湧いてきて、その後にそれ以上の安心感が心を満たしていく。

 

ふわりと頭に乗せられた手の暖かさと、彼女が歩く度にゆらゆらと揺られる感覚がどうしようもなく心地良い。

段々と眠気が強くなり意識を保つのも難しくなってきた。

 

 

「おやすみ」

 

その言葉を聞いて、俺の意識はプツリと途切れた。

 

 

 






おねショタは一般性癖だ。良いね?
しかし精神的に成熟したショタというのはショタと言えるのだろうか…?

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