※今回の話で喫煙を勧める描写及び喫煙描写がありますが、本作は喫煙を推奨するものではありません
てかカヨコの台詞回しムズい…ムズくない?
なんかキャラ崩壊しちゃってるような気がしなくもないような…
まぁなんか言われたらタグ付け足せばいっか!
「このお店はアラタ1人でやってるの?」
いつものようにカウンター席に座る『あの娘』…鬼方カヨコにそう聞かれる。
あれ以降、彼女は時折店の方にも顔を出してくれている。此方としては嬉しい限りだ。
「そだよ」
「ふーん…家族の人とかは?ここ、実家なんでしょ?」
彼女の言葉につい苦笑を浮かべてしまう。そういえばまだ話していなかったな。
「両親はもう他界してるんだ」
「あ…ごめん。そうとも知らずに…」
「気にしないで。話してなかった俺も悪いし、もう過ぎたことだし。それに、この店の常連さん達のおかげで寂しい思いもしてないから」
勿論カヨコちゃんもだよ。と笑ってみせるものの、彼女は下を向いてしまっている。なんだか気まずい雰囲気になってしまったぞ…
なにか気の利いた事でも言えないかと思案していると再び彼女の方から質問が飛んできた。
「…じゃあ、新しく人を増やそうとかもないの?ワンオペなのも結構大変なんじゃない?」
「うーん…」
もう気を取り直してくれたようで、普段と変わらない表情でそう問われる。
現状、確かに大変ではあるものの俺自身この仕事にはやりがいを感じているし、何より父も健在だった頃はワンオペで回していたのだ。であれば店を引き継いだ俺としては同じようにワンオペでやってやろうという、こだわりのようなものが心の中にあった。まぁ、ぶっちゃけた事を言うと新しく来た人に色々教えるのが面倒臭いというのもあるが。
「そうだね。今のとこは俺一人で回せてるし、人を増やすつもりは無いかな」
「そっか」
俺がそう答えると先程とは違い笑みを浮かべる彼女。今の会話で笑うところがあっただろうか?可愛いから別にいいけど。
彼女は時折こういう感じで、よく分からないタイミングで笑ったりすることがある。俺からしたら心底不思議で仕方ないのだが、そういう娘なんだろうということで納得している。
「ほい、いつものお待ち」
話をしながらも調理を進め、出来た料理を提供する。
最初に来た時から彼女はずっと半炒飯と餃子、杏仁豆腐の組み合わせを頼んでくるし、時間帯もいつも15時前くらいに来店してくる。店に来るようになって最初の方はお昼時に来ていたのだが…
なんでこの時間帯にしか来ないのか気になって前に聞いてみたところ
『他に人が居ないから』
と言っていた。あまり人付き合いが得意ではないのだろうか。
でもそうすると路地裏で初めて会った時に声を掛けてきたのがよく分からない。まぁ、俺がいちいち気にするようなことでも無いか。
「そういえばさ」
食事をしている様子を遠目で眺めていると、普段食事中は話しかけてこない彼女が珍しく話し掛けてくる。
「煙草、吸わないの?」
予想外の一言にドキリと心臓が跳ねる。
何故俺が喫煙者であることを知っているのだろうか?話をしたことは無い筈だし、学生である彼女の前で煙草を吸ったことは無い。臭いにも気をつけている。店でも客が居ない時にしか基本的には吸わないのだが。
「煙草の事話したことあったっけ?」
「話をされたことは無いけど、私が初めてこのお店に来た時に吸ってたでしょ?」
「あ…」
…確かに吸っていた。あのときは店に入ってくる前に火を消したので、見られていたとは微塵も思っていなかった。
「それで、吸わないの?」
真っ直ぐと、こちらを見ながら再び問う彼女の瞳には何故か期待の色が、言葉には少量の棘が含まれているように感じる。
「流石に20歳過ぎて無い…ましてや学生の目の前で煙草は吸わないよ」
いくら俺でもそこら辺は弁えている。友人と言って差し支えないような間柄とはいえ、学生の前で煙草を吸うなど言語道断である。
それに彼女が煙草嫌いだった場合目も当てられないことになってしまう。関係が悪化するようなことはしたくないのだ。
「私は気にしないよ」
どうしてか先程よりも目付きが鋭くなっているような?それに声もなんだかワントーン下がっている気もする。
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、大人としての体裁というか…喫煙者が非喫煙者に配慮するのは当然というか…その…」
当たり前のことを言っているはずなのに、言い訳のような言葉がになってしまう。視線もどんどん厳しいものになっていってるし、責められてる感が半端ない。吸って責められるのなら分かるのだが、なんで吸わないで責められているような感じになるのだろうか?解せぬ。
「気を使わなくて良いって言ってるんだけど」
「いや、気を使ってるわけでは……あるけど…」
視線だけで人を殺せてしまいそうな程に鋭い視線を向けられて、つい本音を吐いてしまう。これは無理だって。てかホントになんでこんな責められてるの俺?
怒られた後の子供みたいに縮こまっていると、彼女が席から立ち上がり厨房の中に入って来る。
「えっちょっ!?」
普段からは想像もつかない行動の連続に脳が追いつかない。
そしてカウンター席からは見えない所にある引き出しを開けると、そこから煙草とライター、それから灰皿を取り出した。なんで仕舞ってる場所まで知ってるんですか…?
「はい」
煙草を手渡される。
「吸って」
とてつもない圧力に恐怖すら覚える。
「…一つだけ、いい?」
「何?」
「なんでそんなに怒ってるの…?」
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「なんでそんなに怒ってるの…?」
そんなもの、決まっている。
「…他人みたいで嫌」
私が未成年で、学生だからというのも分かっている。
彼が大人として、喫煙者として当然のことを言っているのも分かっている。
彼の優しさも分かっている。
だからこれは、私の我儘だ。
気を使わないで欲しい。その程度の関係なんだと突きつけられているようで嫌だ。一緒に居ると落ち着けないと言われているようで嫌だ。他人だと思われているようで嫌だ。
どうしてそれが嫌なのかは分からないけれど。
色んな嫌が積み重なった。だからこんなことをしてしまった。
もしかしたら、もう話してくれなくなるかもしれない。路地裏にも来てくれなくなるかもしれない。この関係が崩れてしまうかもしれない。
そんな恐怖が心に渦巻く。
「そっか…」
ボソリと、声が聞こえる。
「カヨコちゃん、ごめんね。君の気持ちを考えてなかった」
…彼は優しい。こんな、私の癇癪みたいなことにさえ真摯に向き合って、答えを出してくれる。
「これからは気を使わないようにするよ」
「うん…ありがとう」
「あ!でも、煙草は吸うけど距離は取るからね。健康に悪いから」
「うん」
じゃあ席に戻って、と催促されて座っていたカウンター席に戻る。
私が席に戻ったのを確認すると、彼は早速煙草に火をつけた。
一口吸い、煙を吐いて。もうもうと紫煙が立ち登り、厨房の天井にあるダクトに吸い込まれていく。
煙草を吸う彼の姿はとても様になっていて、普段の彼とは違う、大人の色気とでもいうような、言葉にしづらいものがあった。
格好良いな、と思うと同時にこちらの視線に気づいた彼が少し照れながら笑う。
「なんか、まじまじと見られるのはちょっと恥ずかしいね」
そう言う彼の笑顔に、再び私は目を奪われた。
なんかさ、カヨコってさ、心許してる相手に気を使われたりするの嫌がりそうだよね。そういう時に結構強引な感じになりそうだよね。そんでもって自分の相手に向ける気持ちに気づいてない…そんな感じだと私の性癖にはあっていますね。