キヴォトス人の『運命の人 』   作:Mr.@

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フリーな時間が多くなって、その分こっちに集中できるの助かる〜!
あ、今回長くなったんでぶった切りました。
書けば書くほど文字数が多くなっていく…なにゆえ?



EP.6

 

 

兄貴に小っ恥ずかしい宣言をしてから早いことに2週間程度が経過した。

 

あれからというもの、なんだかカヨコちゃんの距離がやたらと近い。

そう、距離が近いのだ。物理的に。

店に来た時は必ず隣に座らせられるし、いつもの路地裏に行った時も近すぎやろって言いたくなるくらいには近い。

前は店で話す時は大抵カウンター越しだった。路地裏だってだいたい一歩分空いた距離だったのに、今は少し身じろぎしただけで体が触れ合うくらいだ。

 

もうねぇ!ホント毎度毎度ドキドキなのよ!カノジョが出来たことないチェリーボーイには刺激が強すぎるって!やっぱり顔が良すぎるし!いつもだけどなんかいい匂いするし!

 

結局あの時の事も聞けずじまいだし。

 

本当は聞くつもりだったんだ。なんせ週一は必ず会ってるわけだし、店にも来てくれるからね。話す機会なんて幾らでもある。

でも、そこに関しては兄貴から釘を刺されてしまった。曰く

 

『お前なぁ、気になるからってなんでも聞いていい訳じゃねぇだろ。人には隠したいことの一つや二つあるもんだ。お前も同じだろ?それと、こっからは朴念仁なお前にアドバイスだが。ありゃ、あえてああいうふうに言ってんだ。だがそれは聞かれたくてじゃねぇ、気付かれたくてだ。その意味をよーく考えるこったな』

 

との事だった。俺にはさっぱり分からないが、兄貴がそこまで言うのであれば間違いないだろう。その後兄貴は『俺を間に挟むな!口から砂糖が溢れ出ちまう!』とブラックコーヒーを一気飲みしていた。なんかムカついたからしこたま酒を飲まして二日酔いにしてやった。

 

まぁ要は、俺の方からは彼女に対してなんのアクションも起こせていないということだ。

 

このままではいけない。なにか行動に移さなければ。俺としてはとりあえず距離を縮めていく方針でいるのだが、そも距離を縮めるって一体どうしたら良いんだろうか?食事でも誘ってみるか?

 

うんうんと唸っていると店に兄貴が入ってきた。随分と荷物を持っている。これはいつものあれだ。

 

「またしばらく出かけるからよ」

 

「行ってらっしゃい。次はどこに?」

 

「トリニティだ」

 

珍しいことに、前回と同じ場所だ。いつも同じ所に連続していくことは絶対に無いというのに。

 

「連続で同じ所行くのは初めてじゃない?」

 

「事情があってな…まぁ、大したことじゃねぇさ。それより、何を悩んでたんだ?まさか今更芋引いたわけでもあるめぇ?」

 

「それが…距離を縮めるにはどうしたらいいのかよく分からんくて」

 

「かーっ!俺ァんな女々しいヤツに育てた覚えはねぇぞ!どっか二人きりで出かけでもすりゃいいんじゃねぇか!?砂糖吐く前に行ってくるわ!元気でな!」

 

吐き捨てるようにそう言った後に、勢いよく扉を閉めて出ていってしまった。

 

しかし、ふむ。二人きりで出かける、か。

普段から二人きりの場合しかないので、あんまり特別感は無さそうだが。そんなもんで良いのだろうか。

 

だが、確かに考えてみるといつものは出かけてるのではなく決まった場所で会っているだけだ。よし、採用。

 

出かけるとなると無難なのは…ショッピングモールとかが良いんじゃないだろうか。そしたら出かけるついでに兄貴になにか買っておこう。看病してくれたし、色々アドバイスもくれたし。

 

前に交換したモモトークでメッセージを送る。向こうも丁度暇をしてたのか、すぐに返信が帰ってきた。

 

『カヨコちゃん』

 

『どうしたの?』

 

『今度の店休日暇?ショッピングモールに行こうと思ってるんだけど、一緒にどう?』

 

ピタリと返信が止まる。一体どうしたのだろうか?

 

『カヨコちゃん?』

 

『ごめん』

『突然だったから』

『ちょっと驚いちゃって』

『今度の店休日は空いてるよ』

 

どうやら驚いていたらしい。しかし、そんなに驚くことだろうか。行く場所が違うだけで他は普段とそう変わらないと思うのだが。

 

『了解。そしたらショッピングモールの入口で待ち合わせようか』

 

『わかった』

『11時くらいでいい?』

 

『その時間で大丈夫だよ。じゃあ俺仕事あるから、またね』

 

『うん』

『またね』

『…楽しみにしてるから』

 

そこでメッセージは終わった。我ながら、なかなかいい感じに話せたのでは?というか、出かけるのが決まったのはいいけどなんだか緊張してきた。

 

約束の日は…四日後か。

 

うーん、楽しみだ。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

約束の日がやってきた。今俺はショッピングモールの入口にいる。

腕時計を見ると現在時刻は10時半。ちょっと早く来すぎたかな。かといって特段やることもないので、そのまま待つことにする。

 

「おまたせ」

 

携帯を弄っているとよく知った声が聞こえてくる。顔を上げるとそこにはカヨコちゃんが居た。まだ約束の時間より全然早いのだが…

 

「早かったね。そんなに急がなくても良かったのに」

 

「そういうアラタの方が早いけどね」

 

「俺は暇だったから」

 

「そうなんだ。私は、楽しみだったからかな。こういうの、初めてでしょ?」

 

楽しみだったと、カヨコちゃんもそう思っていてくれたのか。それはなんとも嬉しいことだ。

 

「実は、俺も楽しみだったんだ」

 

「そっか。じゃあ、一緒だね」

 

微笑む彼女に視線が釘付けになってしまう。なぜだか、その笑顔は今までの何倍も可愛く見える。

 

「じ、じゃあ、行こうか」

 

「そうだね」

 

二人で並んでショッピングモールの中に入る。ウチは店休日だが世間的には平日なので、思っていたよりも人は少ない。

 

「そういえばさ」

 

「うん?」

 

「今日はなんでショッピングモールに?」

 

そういえばショッピングモールに行こう、とは言ったものの目的までは伝えてなかった。

 

「兄貴になにかプレゼントでもと思って。こないだ世話かけちゃったし、普段のお礼も兼ねてね」

 

「そっか。何を買うかはもう決めてあるの?」

 

「一応、サングラスを買うつもりだよ」

 

兄貴はいつも長いこと出かけるときは、必ずサングラスをかけている。仕事の都合とか言っていたが、サングラスをかける都合のある仕事ってなんなのだろう。SPとか?

今使ってるのはもう四年くらいは使ってる筈なので、そろそろ新しいのが欲しい頃合だろうと思いサングラスを買うことにした。

 

「サングラスね。確かに似合いそう」

 

「兄貴、厳つい見た目してるからね」

 

話をしながら歩いていると、男女二人組とすれ違った。腕を組んでいるところを見るにカップルだろうか。こんな時間からお熱いものだ。

 

突然、カヨコちゃんが歩みを止める。どうやらすれ違ったカップルを見ているようだが、どうかしたのだろうか。

 

「カヨコちゃん?どしたの?」

 

「…ごめん、なんでもない」

 

「知り合いでもいた?」

 

「ううん、知らない人。気にしないで」

 

再び歩き出す。どうにもカヨコちゃんは先程と比べてソワソワとしているように感じる。やっぱり知り合いだったのだろうか?まぁ、本人が話さない以上は俺もこれ以上は触れないが。

 

それから少し歩いて目的の店に辿り着いた。キヴォトスでも有数のメガネのブランド店だ。ここには結構な数のサングラスも置いているし、丁度いいだろう。

 

「このお店って…」

 

「カヨコちゃんも知ってる?」

 

「知ってるも何も、結構高いので有名な所じゃ…」

 

「値は張るけど、品質は確かだからね。お金には余裕があるし」

 

いっつも兄貴が帰ってくる度に大金を置いていくものだから、ウチがお金に困ることはまず無い。まぁそれを加味しなくても店の収入だけで十分すぎるくらいなのだが…

 

店に入ると、店員さんがそそくさと寄ってくる。

 

「いらっしゃいませお客様。本日はどのような品をご所望で?」

 

「東雲さん居ます?一ノ瀬って言ったらわかると思うんですけど」

 

「店長ですね。少々お待ちください」

 

店の裏手に店員さんが入っていくと同時に、カヨコちゃんが驚いたような表情で話しかけてきた。

 

「店長さんと知り合いなの?」

 

「ウチの常連さんなんだよね。それも親父の代からの。その縁で昔は俺もこの店には結構お世話になってたんだ」

 

しばらく待っていると、東雲さんが姿を現した。スタイリッシュなイケメンとでも言ったらいいのか、相も変わらず女の人に人気そうな見た目だ。

 

「ようこそいらっしゃいました、一ノ瀬さん。ウチに来られるのはコンタクトに変えられて以来でしょうか」

 

「どうも東雲さん。仕事柄どうにも眼鏡だと不便でして…」

 

「えぇ、存じております。『中華は火力が命』とお父様もよく仰っておられましたし、鍋を振ったり等、大きく動く事も多いでしょうから。眼鏡では不便でしょう。ところで…」

 

東雲さんがちらりと俺の隣にいたカヨコちゃんを見やる。

 

「隣の方は、彼女さんですかな?」

 

その言葉についつい苦笑を浮かべてしまう。歳の近い男女二人で並んでいると、そう見られてしまうものなのだろうか。

 

「いやこの娘は」

 

友人だと伝えるよりも前に、俺の発言はカヨコちゃんに遮られてしまった。

 

「今はまだ、友達です」

 

カヨコちゃんの発言を聞いた東雲さんは、眼鏡をキラリと輝かせて何かに納得したかのようにウンウンと頷いている。

 

「今はまだ、ですか。そうですか…先は明るいですねぇ」

 

「あの…」

 

「おっと、すみません。幼い頃からの一ノ瀬さんを知っている身としましては、少々感慨深かったものでして。それでは、本日の希望をお聞きしましょうか」

 

色々と言いたいことはあるけど…まぁ、気にしたら負けか。

 

「今日は兄貴にサングラスを買おうと思ってて」

 

「お兄様へのプレゼントですか。予算の程は?」

 

「特には」

 

「こちらで見繕いますか?それとも、ご自身でお選びになられますか?」

 

「折角のプレゼントですし、自分で選ぼうと思います」

 

「かしこまりました。どうぞこちらへ」

 

東雲さんに案内されて店の裏手に入り、その中のサングラスがある場所に連れていかれた。相も変わらず品数が多いもので、どこもかしこもサングラスまみれだ。

 

「ここにあるものが、当店にある在庫の全てでございます。それでは、ごゆるりとどうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

東雲さんが退出し、再びカヨコちゃんと二人きりになる。

 

「ここ、バックヤードだよね?」

 

「そうだよ。東雲さん、普通のお客さんには売らないものも置いてるから。知り合いとかお得意さん相手にはこっちまで案内するんだって」

 

東雲さんは拘りが強いようで、自分が気に入ったものが知らない人の手に渡るのが嫌なんだとか。

 

「これとかどう?」

 

カヨコちゃんが手に持っているのは丸型のサングラスだった。確かに似合うかもしれないが…

 

「兄貴がかけたらマフィアみたいになっちゃいそうだね」

 

「…ふふっ」

 

なんというか、映画とかで中華料理屋にたむろしているマフィアが連想されるようなデザインだ。兄貴のような人がかけたら、きっともうそれにしか見えないだろう。

 

「これとかいいかも」

 

「確かに。それ、良さそうだね」

 

良さそうなデザインのものがあったので、手に取って見てみる。オーソドックスな感じのサングラスだが、フレームに入っている金の装飾がいい味を出している。

…うん、これがいい。これにしよう。

 

「アラタ」

 

「なに?」

 

振り向くと同時に視界が薄暗くなる。どうやらカヨコちゃんにサングラスをかけられたようだ。

サングラスをかけた俺を見て彼女は少し笑っていた。

 

「ふふっ。サングラス、似合わないね」

 

「そうかな?個人的には好きなんだけど」

 

すっとサングラスが外される。視界がクリアになって、カヨコちゃんの顔がはっきりと見える。うぉ、近。可愛い。

 

「…うん、アラタはこっちの方がいいよ」

 

「ありがとう?」

 

これは褒められているのだろうか。いや、きっと褒められているのだろう。だってそうじゃなかったら悲しいもの。

 

俺が見ていたサングラスの横に、パーティーとかで使われていそうな感じの星型のサングラスを見つけた。

 

…これは、仕返ししちゃおうかな?

 

そのサングラスを手に取って、カヨコちゃんにかける。俺の時とは違い不意打ちでは無いものの、彼女に抵抗する様子はない。

 

「…なにこれ」

 

「…ふっ、よく似合ってるよ…ブフッ」

 

彼女に似つかわしくないサングラスをかけている姿は、なにかの勢いではっちゃけてしまったように見えて面白い。カヨコちゃんがそういう感じの娘じゃないというのがそれに拍車をかけている。サングラスなので目元は見えないが、ムスッとした顔をしているのは分かる。

 

このままだとそのうち怒られてしまいそうなので、カヨコちゃんにかけたサングラスを外した。

 

「うん、カヨコちゃんもこっちの方がいいね」

 

「…ありがとう」

 

少し照れ臭そうにしながら顔を逸らされてしまった。なんとも言えない雰囲気が場を包む。

 

っと、あんまり東雲さんを待たせるのも悪いな。

 

「東雲さーん」

 

「お決まりになられましたか?」

 

「これでお願いします」

 

「かしこまりました」

 

バックヤードから出てサングラスを精算する。会計は…9万クレジットか。財布からクレジットを出して会計を済ませる。すると東雲さんが小声で話しかけてきた。

 

「一ノ瀬さん。ご友人に当ててなにか買われてみるのはいかがでしょう?貴方からの贈り物であれば、きっとお喜びになられると思いますが…」

 

「大丈夫です。実は…」

 

東雲さんにショルダーバッグの中を見せる。

 

「おや…それは」

 

「カヨコちゃん、音楽が好きらしくて」

 

「あぁ、なるほど。余計なお世話でしたか」

 

ニヨニヨとこちらを見る東雲さん。その生暖かい目線は、店の出入口で会計を待ってくれているカヨコちゃんの方にも向けられた。

 

「一ノ瀬さんも隅に置けませんねぇ」

 

「揶揄わないでくださいよ…あんまり待たせるのも悪いので、これで」

 

「本日はありがとうございました。…そうそう、これは独り言なのですが」

 

店の出入り口の方に向かって歩き出す前に、東雲さんが再び口を開く。独り言とは言っているが、恐らくこれは俺に向かって言っているのだろう。

 

「そちらは、直接首にかけて差し上げるのがよろしいかと」

 

…どうやら、見せるつもりのなかったものまで見られてしまったらしい。上手く見えないように隠したつもりだったけど…この人、こういうのに本当に目ざといんだよなぁ。

 

 

「…それこそ、余計なお世話ですよ」

 

 

 

 





〜おまけ〜

「お…おぉ!いいですよ彼女さん!その調子で!あぁー良い!良い!初々しい感じが特に良い!コレで付き合ってないとか、付き合いだしたらどうなるんです!?あぁ、やはり恋とは、愛とは素晴らしいものだ!!」

「ちょっと店長…覗きは良くないですよ…」

「シャラップ!!!お黙りなさいこのスットコドッコイ!今いい所なんですから!…ほ!?まさか一ノ瀬さんも!?…お゛ぉほぉう!!あーあー!たまりません!たまりませんよォ、これはァ!!」

「……ハァ。店長、貴方も人のこと言えないでしょうに」

「私のことはどうでも良いのですよ!それに、あの娘にそういった感情は抱いていませんし、三十路男の色恋沙汰なんてフレッシュじゃ無いでしょう!?私が見たいのは瑞々しい、歳相応の恋愛なのです!」

「お相手は高校生じゃないですか。しかもトリニティのお嬢様な訳ですし」

「素手で壁を破壊するお嬢様が一体何処にいるというのですか!?何度言ってもこっちの話は聞かないし、かと思えば突然しおらしくなるし!本当にもう……。大丈夫かなぁ…?あぁ、思い出したら心配になってきました。元気な方が彼女は似合いますからね…」

「…店長はもう少し素直になった方がいいと思いますけどね…」



〜あとがき〜

カヨコとショッピングしてぇ〜。
不意にサングラスかけられてぇ〜。
そんでかけられたサングラスを外されてクリアになった視界いっぱいにカヨコの顔を映してぇ〜。
結婚してくれ。

次話は一週間空けます。ストックが尽きるぅ〜。

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