俺の取り柄は顔しかない。〜キモオタがイケメン転生したら、ハーレムハッピーエンドを目指せるか〜   作:來馬らんぶ

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第41話 ”奇遇だね”

 

 

 

「あーこれですか? 発信機です」

 

 なんでスマホにクロロンさんの位置情報が表示されてんのかと問えば、事もなげに言ってのける麻倉さんにドン引きする。一体、いつつけたんだよ……クロロンさん、あなたの個人情報流出してますよ!

 

「ふむふむ、ただ今絶賛移動中ですね……おそらく蔵橋に向かってるかな。まぁいいや、いったん我々も向かいますか」

「向かうって、……何するんですか?」

「ルール8、打席に立ちまくれ。イコール、ガンガンコミュニケイション」

 

 いぇーいとVサインを繰り出す麻倉さんを尻目に、偉いものですぐにノートに書き留める俺がいた。ちょっと待って、これなんかのプレイみたいじゃない。お手って言われたらワンって手の平乗せながら返すやつ。

 

「野球と違ってスタメンを選ぶ監督なんていませんから、とにかく自分で動いて打席に立たないといけません。まぁまだ我々学生ですし? 毎日、打席に立つ機会はあるものの、それでも自分で打席に立つ機会(チャンス)を作り出すべきです」

「ちょ、ちょちょ、ちょっと待ってください、あ、これはでもでもだってじゃなくて、単純になんでクロロンさんなんすか!?」

「え、ヤなんですか、あんな美少女ですよ? ……ってかクロロンさんて誰?」

 

 全然嫌じゃないです。今度は嘘じゃないっす。じゃなくて、なんでまた最初のターゲット扱いされているのがクロロンさんなんだという話だ。ちなみに思わずクロロンさんと口にしてしまったのは全米が後悔中。

 

「まぁ先に質問に答えますと、んー、女の勘?」

 

 どう見ても根拠ゼロということですね、本当にありがとうございました。女の勘ってなんだよ、まだガチャのSレア出現率1%の方が信じられるわ。

 

「ってかクロロンさんて?」

「え、あ、いやぁ……」

 

 大魔王からは逃げられませんでした。

 

 目をそらせば、ため息をつかれ、いかん、これ俺見捨てられるんじゃないだろうか。

 

「ルール9、女の子のことはちゃんと名前で呼ぶこと」

 

 いたたまれなさを覚えつつ、俺はそれを書き取る。ことここに至り、名誉返上し汚名挽回できるとしたら——

 

「了解です。えと……あ、葵さん」

「あ、私は例外でお願いします」

 

 しゅたっと手を挙げられた。

 

 あぶね、一瞬感情が死にかけた。えぇ……そんなんあり? 俺のなけなしの勇気を返せよう!

 

「名前で呼ぶってことは一歩関係を踏み込むってことですからね。で、その積み重ねですよ、とどのつまり関係を深めていくってことは。はい、じゃあルール10、他人に踏み込む覚悟を持つ」

 

 メモメモ。すげぇ速度でルール増えてくんですけど、大丈夫なんでしょうかね……、

 

 まぁでもこれは俺的にも課題感があるのでぐうの音も出ない。本当は女の子に限った話じゃなくて、野郎に関しても、俺は結局誰に対しても踏み込めていないのだろう。

 

 もちろん踏み込まないことが悪だとは思わない。

 

 ただ踏み込まない限りは浅い付き合いに留まることになるのは間違いないのだ。だって踏み込めていれば、きっともっと友達がたくさんいたはずなんだ。親友やマブダチと呼べるような存在がいたはずなんだ。

 

 なんか麻倉さんに今更ながらコミュニケーションの基本を教わってる気になってきた。素直に礼を述べれば、

 

「勘違いしてほしくありませんから言いますけど、先ほどペナルティの話はしましたが、基本的に私は真条さんの味方ですよ」

 

 何を今更と言わんばかりの表情で腕を組むと、

 

「ただ結果を出さない限りは、この関係性もあえなくおシャカになります。私もまた担当変えられるのは(シャク)ですからね」

 

 おそらくシャカとシャクをかけていることに対して若干ドヤ顔を見せているがそんなことより、

 

 ……なんというか、この関係性が終わる。それはストレートに嫌だな。そう思った。そして、

 

「担当って、変わるんですか?」

「はい。真条のようなアダムス——プログラムの対象の方のことをそう呼んでるんですけど、アダムスには私みたく、担当のサポーターがそれぞれついてますんで。まぁよほどの事がない限りは変わらないですけどね」

「マジすか……」

 

 改めて言われてみればな気もするが、たしかに同じ空の下で今こうしている間も頑張っている人間たちがいるのか。

 

 そういえば名前忘れたけど、どっかのイケメンを俺と同じ立場みたいなことを麻倉さんが言っていた気がする。そうか、俺は、俺は……、一人じゃないんだ……などと感動に震える——わけがねぇって。そいつらどうでもいいわ。会ったこともないし。

 

 にしても、クロロ……黒木さんか。いや名前呼びはさすがにまだ早い。踏み込むにしてもある程度関係性が築けてないとただの失礼だ。いや合ってる……よね? 俺間違ってない、よね?

 

「ではでは、改めましてレッツラゴーです!」

 

 今日って元々デートだったんだよなと思い出したのは、電車に乗ってからだった。はたして言い出しっぺの麻倉さんは何を思っているのやら、だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はい、はるばるやってまいりましたのは、蔵橋の駅前という超一等地に泰然と構える丸久(まるきゅう)百貨店でございます。

 

 マップ上のクロロンさんは我々がこの地を踏む10分前くらいから微動だにしていなかった。場所柄、とりあえずショッピング的な何かをしているんじゃないかと思われるが問題は、

 

「どのフロアか、まではさすがにわからないですよね?」

 

 地下三階、地上八階+屋上という全館フロアマップを眺めながら麻倉さんに問えば、

 

「ご明察です。いったん手分けして探しますか。スマホ持ってますよね?」

 

 ふ、あまり無礼(ナメ)ないでいただきたい。

 

 ケツポケットから取り出したるは、スマートフォンである。紋所のように麻倉さんに突き出せば、

 

「……や、シスコンなのは理解してますが、とりあえずロック画面は変えておきましょうか」

 

 オゥフ、やっべ、我がリトルブレイブシスターズのベストショットをロックとホーム画面の壁紙に設定していたのを忘れていたZE☆。顔から火が出そうというのはこのことですね。ガハハッ。

 

 速攻で適当に『オシャレなスマホ壁紙』で検索した結果の夜景っぽいやつに変更する。

 

「真条さんは上の階から探してもらえますか。私は下から探していきますんで。そんで先に黒木さんを見つけた方が連絡しましょう」

 

 ぶ、ラジャーと言って……いや『ぶ』は本当に言ってないですよ? やーねーもーデリカシーのない男子って。

 

「では後ほど」

 

 俺の心中をお察ししてくれないまま、麻倉さんは地下の階へとエスカレーターで降りていった。

 

 クロロンさんと入れ違いにならないことだけ祈りつつ、エレベーターの前に向かう。休日の百貨店らしく混んでいるが、やはり居心地が悪かった。

 

 今いる一階はコスメ売り場となっており、正直雲の上の存在である読み方のよくわからないアルファベットの並ぶ海外ブランドのブースが(のき)を連ねている。入り口も兼ねているため、老若男女を問わず人間はいるものの、それでも対象が対象だけに女性率が高い。

 

 チラチラヒソヒソとこちらへ注がれる視線と交わされる会話に憂鬱な気持ちを抱える。

 

 ——慣れたいのに、いつまで経っても慣れないのはどうにかしたいんだけどな。

 

 独りごちてようやく到着したエレベーターに乗り込む。屋上へは直通じゃないため、いったん最上階である8階のボタンを押して鉄のカゴにしばし身を任せた。

 

 8階はレストランフロアの様子で、おのぼりさんっぽくなってしまうのを自覚しつつ見覚えのある黒髪ロングがいないか見回す。レストランの奥で昼食を取っていたらさすがにわからないが、外から見る限りはどの店にもいないようだった。

 

 家族連れの間を縫って、屋上へと向かう。

 

 人口芝の広場を中心に、サイドに飲み物や軽食を買える売店とペットショップとガーデニングショップが客を吸い込んでは吐き出していた。

 

 太陽燦々(さんさん)とばかりに降り注ぐ光に目を細め、同様に黒髪ロングがいないかを探す。茶髪セミロングや派手髪はいたが、やはり、 

 

「いねぇよな……」

 

 一通り視線をめぐらして、(きびす)を返す。

 

 再びレストランフロアへと戻り、念のためもう一度いないかを確認してから7階へと降りるエスカレーターへと乗る。

 

 まだ麻倉さんからの連絡はきていないが、頭を掻きつつ、

 

「そう簡単に、出くわすわけが——」

 

 1フロアぶち抜きで大型書店がテナントとして入っている7階に立ち、背の高い本棚の隙間隙間にいる人間たちの顔を足早に歩きつつ眺める。ジャンルのプレートが視界を過ぎていく。

 

 コンピュータ、理工、看護・福祉、人文、社会、雑誌、実用、文庫・新書——

 

 

 ——うん、やっぱフラグって大事だわ。

 

 スマホを取り出して、打ち込む。

 

『発見。7階小説』

 

 送信ボタンを押して、見上げた俺の視線の先には、

 

 

 

 見覚えのある黒髪ロングが真剣な顔で文庫を立ち読みしていた。

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