対戦よろしくお願いします
困って立ち尽くしていた彼女と出会ったのは随分前のことに感じる。いつものように人助けをしていた時に偶然出会った彼女は、キヴォトスという世界から来たらしい。そんな彼女をキヴォトスに送り届けるために時空を超えていろいろな場所を冒険した。時にはキヴォトスの常識で動く彼女に驚いたり、逆に彼女がこちらの世界で起こる出来事に驚いたり、いろいろな思い出を作った。
彼女と旅をしていると時折今までにあったことのないような不思議な出来事にあうことがあった。見たこともないような魔物だったり、彼女と同じようにキヴォトスから流されて来た人であったり。その出来事を追っていくことでキヴォトスへの手がかりを集め、ついに帰り道である時空の穴を見つけることができた。
「やっと元の世界に帰れるな!」
長い間一緒に旅をしたから寂しい気持ちもあるけれど、笑顔で送り出したくて元気よく声をかけた。
「……」
すごく帰りたがっていたし喜ぶと思っていたけど、どうしたのだろうか。とにかく元気づけようと考えていると突然彼女が声をかけてきた。
「どうかキヴォトスに来ていただけませんか? アルドさん」
「それってどういう……」
旅の中でキヴォトスの話はいくつか聞いていたけど、彼女がこちらに来る前に大変なことでも起こっていたのだろうか。
「旅の最中は余計な心配をかけたくなくて話していませんでしたが、今キヴォトスでは多くの問題を抱えています。アルドさんにはどうか、先生として来てほしいのです」
「先生なんてやったことないけど・・・」
彼女は静かにこちらを見据え、頭を下げた。
「私が信じられる仲間であるあなたに頼みたいのです」
いつもまっすぐとこちらを見据えていた彼女の眼が揺れている。彼女がここまで困っているのなら、俺の答えは一つだ。
「もちろん。俺でよければ力になるよ」
「ありがとうございます!」
彼女に促されるままにキヴォトスへの帰り道である時空の穴の前に立つ。
「私はきっと同じ場所にはいないと思いますが、どうか迷うことなく進んでください」
「それはどういう……」
彼女に真意を聞こうとするが、「時空の穴」に吸い込まれてしまう。浮遊感を感じた後に目の前が真っ暗になり意識を失ってしまった。
「起きてください! アルド先生! お日様はすっかりペカリの樹の上ですよ!」
キヴォトスに来てからいつも世話になっている声が聞こえる。もう少し寝ていたんだけど・・・。
「もう少し寝かせてくれないか……」
「ダメです! 今日も予定があるんですから!」
「……最近なんだかフィーネに似てきてないか?」
アロナにはよく妹のフィーネや仲間のことを話していたからか、よくこうして俺を起こしてくれる。
「じゃあお兄ちゃんって呼んでもいいですか? って、そうじゃないですよ!」
そろそろ本当に怒られてしまいそうだし起きてしまおう。ベッドから抜け出し大きく伸びをする。連邦生徒会長から託されたシッテムの箱のほうを向く。
「おはようアロナ。今日もよろしく頼むよ」
「はい!先生!」
一緒に冒険をした彼女のお願いでキヴォトスに来て少し経った。今も行方が分からず、探し回っているけど全く足取りはつかめていない。彼女の言っていた「大変なこと」が何なのか、それはまだわからない。とりあえず今はシャーレに来ている依頼をこなしながら、ここで何をするべきなのかを考えていこう。
「・・・まずは書類仕事に慣れないとな」