アナザーアーカイブ   作:さかみち

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ゲーム開発部編のスタートです。
今回もあんまりゲーム本編から大きく話は変わらないと思いますが、よろしくお願いします。


時計仕掛けの花のパヴァーヌ編1章 レトロチック・ロマン
勇者よ 目覚めるのです


「先生。ミレニアム学園のゲーム開発部? から要請が来ています」

 

 アビドスでの一件が落ち着いて書類仕事にも少しだけ慣れ始めたころ、アロナが手紙をを見せてきた。手紙の内容は生徒会からの廃部命令が出されていて困っているから助けてほしい、ということらしい。

 

「先生はミレニアムサイエンススクールについてご存じですか?」

 

「確か、ユウカがいる学校だよな。あとは大きい学校ってことくらいしか知らないけど……」

 

「先生の言う通り、ミレニアムはトリニティ、ゲヘナと合わせてキヴォトス三大学園と呼ばれるほど大きな学校なんです」

 

 ほかの二つの学校とは違って歴史は浅いけど科学の研究に特化していて、技術の最先端を行っているらしい。もしかしたら、エルジオンみたいにすごそうなものがいっぱいある学校なのかもしれない。少し楽しみに思いながら出発の準備をしていると、アロナがニコニコしながら俺のほうを見ていた。

 

「そういえば、先生はゲームをされたことはあるんですか?」

 

「ああ。一応やったことはあるんだけど……俺のいた時代にはゲームなんてなかったし、あんまり馴染みはないな」

 

「そうなんですか? でしたら、今度一緒に遊びませんか? きっと楽しいですよ!」

 

「……そうだな。せっかくなんだし、やってみようかな」

 

「はい!」

 

 ニコニコとしているアロナをほほえましく思いながら、ミレニアムに向かって歩き出す。ゲームのことなんて全くわからない俺に何ができるのかはわからないけど、こうして助けを求められたんだし、俺なりにできることはしてあげたいよな。

 

 

 

 

 

「あ、頭が痛い……」

 

「あっ、目覚めた?」

 

 ふと気づくと頭が痛くて目が覚めた。何で寝ていたのか、まったく思い出せない……。さっきまでミレニアムの中でゲーム開発部の部室を探していたことは覚えているけど……。あたりを見渡すと小柄で金髪の生徒二人が俺のほうを見ていた。なんだか顔が似ているし、双子の姉妹とかかな? 

 

「えっと……なんで俺はここで寝てたんだ?」

 

「その……先生はお姉ちゃんが窓の外に投げたプライステーションが先生の頭に命中してしまって。ごめんなさい、先生」

 

「そ、そうか。……次からは気を付けてくれよ? ほんとに」

 

 なんで投げたのかとかいろいろ聞きたいけど、とりあえず反省しているみたいだしあまり言わないでおくか。俺もゲーム開発部に行かないといけないし。そろそろゲーム開発部を探そうかと思っていると、二人が俺のほうに近づいてきていた。

 

「それより! 先生ってシャーレから来たんですよね!」

 

「ああ。ゲーム開発部からの手紙を見てきたんだけど……その言い方だと、ここがゲーム開発部なのか?」

 

「そうだよ! 私がシナリオライターのモモイで」

 

「私がミドリ。イラストレーターで、ゲームのビジュアル全般を担当してます」

 

「あとは今ここにはいないけど、企画担当周りを担当している私たちの部長のユズの三人がミレニアムのゲーム開発部だよ!」

 

「改めて、ゲーム開発部にようこそ、先生!」

 

 

 

 

 

 その後、頭の痛みが引くまで少し休ませてもらった後、二人に今の状況を聞くことにした。廃部の危機だって聞いたけど、具体的なことはまだ聞いてないからな。

 

「どうして俺が呼ばれたのか聞いてもいいか?」

 

「それについては私から説明しましょうか?」

 

「ユウカ?」

 

 部室のドアのほうから聞きなれた声が聞こえてきた。ドアのほうには、少し不機嫌そうなユウカが立っていた。いつもはシャーレで会うことが多いから少し新鮮だな。

 

「先生、ユウカと知り合いなの?」

 

「ああ。シャーレでよく仕事を手伝ってくれているんだ」

 

「まさかこんなところで会うとは思いませんでしたが……。今は仕事の話が先ね」

 

 少しため息をつきながら事情を話してくれた。どうやらゲーム開発部には今までちゃんとした実績がなく、その上部員の数も既定の人数に達していないらしい。さらには、今までかなり問題行動を起こしてきたようでユウカからの心象もよくないみたいだ。どちらか一方の条件でも満たせば廃部はなくなるみたいだけど……。

 

「どれだけ言い訳をしても、ミレニアムでは結果がすべてよ」

 

「私たちだってゲームを開発してるんだから!」

 

「そ、そうですよ! 『テイルズ・サガ・クロニクル』はちゃんと、「あのコンテスト」で受賞も……」

 

「受賞をしているゲームがあるなら、立派な実績じゃないのか?」

 

「……先生。確かに実績ではありますが、「今年のクソゲーランキング一位」という実績なんです」

 

「ク、クソゲー?」

 

「……簡単に言うと、その年一番つまらないゲームということです」

 

「な、なんかすごそうだな……」

 

 モモイとミドリは改めて自作のゲームの評価を聞いてしまったためか、さっきまでの元気がなくなってしまった。ユウカも少し気まずくなったのか、軽く咳ばらいをすると話題を変えるようにこう呼びかけた。

 

「廃部が嫌なのなら、自分たちの活動にも意義があると証明して見せなさい」

 

「ゲーム開発の証明ってどうするんだ?」

 

「ゲームを評価するようなコンテストもいろいろありますよ。……出せば何とかなるとは思いませんけど」

 

 さっきクソゲーランキング一位って言ってたしな……。二人も自覚があるのかさっきからユウカに言い返せていないけど……。それに、ユウカの言葉は強いけど、言っていることは間違っていない気がする。

 

「……わかった。全部結果で示すよ。そのための準備ももうできてるんだから!」

 

「そうなの!?」

 

「なんでミドリが驚くの……。とにかく、その切り札を使って、今回の「ミレニアムプライス」に私たちのゲーム……『テイルズ・サガ・クロニクル2』を出すんだから!」

 

 ミレニアムプライスはミレニアム中の部活がそれぞれの成果物を競い合うミレニアムでも最大級のコンテストのことらしい。確かに、そこで実績を残せばユウカも認めるよな。

 

「わかった、そこまでは待つわ。今日から二週間、どんな結果になるのか楽しみにしているわ。……先生にはかわいく無いところを見せてしまいましたね」

 

「そんなことないさ。ユウカの言っていることは間違ってないと思う。少し言い過ぎな気もするけど……」

 

「ゲーム部には今までかなり迷惑をかけられていますから。……それより、先生はゲーム部に協力するんですか?」

 

「ああ。ゲーム開発で俺ができることがあるかはわからないけど……。俺にできることがあるなら協力したいからな」

 

「ふふっ、先生らしいですね。ミレニアムに来たのならぜひセミナーに遊びに来てほしかったですが……次はもっとゆっくり話せる場所で会いましょう」

 

 ユウカは不機嫌だった顔を少しだけほころばせながら部室から出て行った。俺たちが話している間に、モモイとミドリはこれからどうするかを話し合っていた。

 

「ミドリ、先生。廃墟に行こう!」

 

「そんなところに行ってどうするんだ?」

 

「あー……多分先生の思っているような廃墟じゃないと思うよ」

 

 モモイがいうには、その「廃墟」は連邦生徒会が出入りを制限していた領域で、そこにはキヴォトスから消えて忘れ去られたものが集まるらしい。

 

「そんな場所にいってどうするんだ?」

 

「……そこには、『G.Bible』があるの。それについては行きながら話すね。善は急げ。早速行こう!」

 

 

 

 

 

 郊外の人気の少ない場所に移動していくにつれて、ミレニアムの未来的な雰囲気も薄れていった。周囲の建物は低くなっていたり、朽ちていて建物自体が折れていたりしている。それだけなら普通の廃墟で済むんだけど……。

 

「お姉ちゃん。何でロボットが徘徊してるの!?」

 

「ここを閉鎖させていたのは連邦生徒会長らしいんだけど、この前の失踪以来生徒会の兵力も撤収しちゃったらしいの。そのおかげで私たちは入り込めたけど……」

 

「あのロボットも同じように入り込んだのかもしれないな。……そういえば、G.bibleっていうのは何なんだ?」

 

「そういえば説明がまだだったね」

 

 G.bibleというのは、昔ミレニアムにいた伝説的なクリエイターが作ったものらしい。中には「最高のゲームを作れる秘密の方法」が入っているらしい。確かに、そんなものがあるのなら絶対に手に入れたいな。

 

「そんなものがあるなら、絶対に手に入れたいな!」

 

「そうなの!だから、最高のゲームを作るためにも廃墟からG.bibleを探そう!」

 

 モモイがグッと片手を突き上げる。熱が入っているのかちょっと声が大きくなっているし、声を抑えてもらわないと……。そう注意しようと思ってモモイのほうを見ると、何か見慣れない人影が視界に映った。

 

「……」

 

「モモイ! 後ろだ!」

 

「えっ?」

 

 素早く剣を抜いてロボットを切りつける。あまり硬くはないのか一撃でたおせたけど、こいつの仲間はまだ多くいたはずだ。周囲を徘徊している奴らが仲間だとしたら援軍を呼ばれるかもしれないし、まだ警戒を解くわけにはいかない。

 

「ビ、ビックリしたぁ……。先生ってすごかったんだね!」

 

「お姉ちゃん、そんなのんきな……」

 

「……足音が聞こえる。ロボットの仲間がこっちに向かってきているな。とりあえずどこかに身を隠すぞ!」

 

「お姉ちゃん、先生! あっちのほうに工場みたいな建物があるよ!」

 

 

 

 

 

 ロボットたちに追われたけど、何とか工場まで入ることができた。中には人の気配や、さっきみたいにロボットが徘徊している様子もない。ここならロボットがこの周辺から離れるまで隠れていられそうだな。

 

「さっきまですごい勢いで追いかけてきたのに、工場に入ったとたんに来なくなったね……」

 

「とりあえず包囲されずに済んだな」

 

「見つかった時はどうなるかと思ったけど、先生がいてくれて助かりました」

 

「ズバーってロボットを倒したところはかっこよかった! コスプレか何かかと思ってたけど、腰につけてる剣は見せかけじゃなかったんだね!」

 

「ここでもコスプレって言われるのか……。俺も銃とか持ったほうがいいのか?」

 

「い、いえ! 先生は剣のほうが似合ってますから!」

 

 しばらくみんなで話しながら工場の中を歩いていると、大きな扉の前まで来た。扉の近くには扉の開閉を制御するための端末もついている。近づいてみると、画面は光っていて、まだ動いているようだ。

 

『接近を確認』

 

「いきなりなに!?」

 

『才羽モモイ、資格がありません』

 

 部屋全体に機械の声が響く。どうやら俺たちのことを何か調べているみたいだけど……。

 

『対象の身元を確認します……「アルド先生」……資格を確認しました、入室権限を付与します』

 

「えっ!?」

 

 戸惑っているうちにモモイとミドリの二人も入室できるようになったみたいだ。何で俺だけ入ることができるんだ? 連邦生徒会が管理していたっていうし、シャーレの先生であることと何か関係があるのかもしれないな。

 

『下部の扉を開放します』

 

「下部の扉? 目の前の扉じゃなくて?」

 

「……もしかして!?」

 

 気づいたときには床を踏む感覚が消えて、体の重さを感じなくなった。俺はとっさに姿勢を立て直せたけど、二人はこのままだと頭から落ちてしまう。そのままだとまずいと思って、二人を何とか自分の体のほうに引き寄せる。これなら少なくとも頭は打たないようにできるはずだ。

 

 

 

 

 

 

「いたた……二人とも、大丈夫か?」

 

「落ちるときに先生がかばってくれたので……」

 

「いきなり抱きしめられたときはびっくりしたけど……」

 

「わ、悪い。突然だったから……」

 

「い、いえ! 嫌じゃありませんでしたから……!」

 

「そうか。……しかし、どこまで落ちたんだ?」

 

「そこまで深くはなさそうだけど……。ミドリ、先生! あれ見て!」

 

 モモイの指し示す方向を見ると、陽だまりの中に誰かが座っていた。座っている少女は全く動く気配がないし、その周囲には物がなくて生活感がない。

 

「この子はいったい……」

 

「寝てるのかな?」

 

「なんていうか、電源が入ってない、みたいな感じがしない?」

 

「うーん、どれどれ……。ほんとだ、肌もしっとりしてるしやわらかい……あれ? ここに何か文字が書いてある」

 

「A、L、I,S……なんて読むんだ?」

 

「アリス?」

 

「……これってよく見るとAL-1S、じゃない?」

 

 俺たちが周囲で調べている間も少女は全く動かないし、モモイの言うように電源の入っていないロボットみたいだ……。この子が一体何者なのか調べたいけど、裸だから俺がじっと見るわけにいかないし。

 

「とりあえず裸のままなのも可哀そうだし、服を着せよっか」

 

「予備の服なんて持ってきてたの? ……あっ! 先生は向こうに行っててね!」

 

「わかった。少し周辺を調べてくるよ」

 

 

 

 

 

 

 しばらく周辺を探していると、上に上がれそうな階段を見つけた。ここからなら落ちてきた場所まで帰れそうだし、いったん二人に報告をしに戻るか。もしかしたらあの少女も起きているかもしれないし。

 

「二人とも、上に上る階段を見つけたぞ」

 

「あっ、先生! それどころじゃないよ!」

 

「……」

 

 さっきまで寝ていた少女が二人の隣に立っている。じっと俺を見る青い瞳からはあまり表情を感じられないけど、なんだか少し困惑しているようにも感じる。

 

「なぜか今までの記憶がないみたいなんです」

 

「記憶が……!? だったら、ここに放っておくわけにもいかないよな……」

 

「ねえ、二人とも。いいこと思いついたんだけど」

 

 モモイが自信ありげな表情で声をかけてきた。なんだかモモイが自信満々な時はちょっと不安になるな……。とりあえず、今はここから脱出するために二人を道案内するか。次さっきのロボットに見つかるとこの少女を守り切れるかわからないし、ちゃんと警戒しないとな。

 

 

 

 

 

 

「まさか部室まで連れてくるなんてな……」

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