アナザーアーカイブ   作:さかみち

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気づけば何ヶ月か間が空いてしまいました。
書きたい話もぽつぽつあるので、また細々と投稿していきたいと思います。
楽しんでいただければ幸いです。


奪取!

 G.Bibleを手に入れた俺たちは、解析をしてもらうためにヴェリタスの部室に来ていた。

 

「これはオリジナルのG.Bibleで間違いないね」

 

「本当!?」

 

 マキが確信をもって言うと、ゲーム部のみんなは期待をあふれさせたように喜んだ。

 

「でも、パスワードの解析ができてないんだ」

 

「それじゃ結局見られないってことじゃん!? がっかりだよ!」

 

「だって私はクラッカーであって、ホワイトハッカーじゃないし……」

 

 モモイのストレートな言葉を受けて少し弱気な声で反論するマキ。

 

「何か方法はないのか?」

 

「大丈夫! ちゃんとほかの方法は考えてあるから」

 

 すぐに気を取り直したのか、その方法について話してくれた。

 どうやらヴェリタスにはパスワードを解除しなくてもデータの中身を見ることのできる『鏡』というものがあるらしい。ただ、今はセミナーに押収されているらしく、今すぐ使うことはできないのだとか。

 

「不法な用途の機器って、いったい何に使ったの?」

 

「……私はただ、先生のスマホのメッセージを確認したかっただけです。そのために『鏡』が必要で……あっ」

 

「そんなことに使おうとしてたのか!?」

 

「すみません……」

 

「それで……、結局中身は見られたの?」

 

 そう聞いているミドリの目がちょっと目が輝いてる気がする……。

 

「それが、セキュリティが固くてデータは抜き取れませんでした。そのうえ、なぜかセミナーにばれてしまって……」

 

 多分アロナが守ってくれたんだろうな。スマホまで守ってくれていたのは知らなかったけど、後でお礼を言わないとな……。

 

「コタマの話はあとで詳しく聞くとして。『鏡』をセミナーから返してもらうことはできないのか?」

 

「それができれば楽なんだけどねー。多分セミナーは許可してくれないだろうし、使いたかったら力ずくで手に入れるしかないと思うよ?」

 

「私たちも早く取り返したい。けど、一つ問題がある」

 

「問題って?」

 

 俺の質問に、表情を変えないままハレが教えてくれた。

 

「『鏡』を保管している場所はメイド部が守ってるの」

 

 メイド部、その言葉を聞いた途端場の雰囲気が重くなったのを感じた。

 

「そんなにすごい部なのか? なんだか想像つかないけど」

 

 俺の疑問に答えるようにモモイが口を開いた。その表情はいつもより真面目だ。

 

「いくつもの武装サークルとか過激派組織を壊滅させたいうのは有名な話なの」

 

「……最後には痕跡すら残さず、きれいに掃除される。有名な話だね」

 

「部活は守りたいけど、ミドリやユズやアリスのほうが圧倒的に大事! 危険すぎる!」

 

「C&Cが危険なのは私たちもわかってるって! 私たちの目的はあくまで『鏡』の奪還なんだし、正面から戦うわけじゃないって」

 

「そんなに変わらないって!」

 

 メイド部が保管室を守っている以上、どこかで対峙する可能性は高いよな。モモイがツッコミをするのもわかるけど、ここで諦めて欲しくない。

 

「モモイ、やろう」

 

「せ、先生?」

 

 モモイはゲーム部みんなの安全を考えてG.Bibleのことをあきらめようとしている。でもそれじゃ、今までの努力も全部無駄になってしまう。

 

「ここまで頑張ってきたんだ、もう一踏ん張りしてみないか? 俺も協力するからさ」

 

「お姉ちゃん、やってみよう。このまま何もしなかったら廃部になるだけだよ。私は諦めたくない」

 

「……そうだよね。弱気になってたよ。対戦ゲームで上級者相手に勝てることもあるみたいに、やってみないと分からないよね!」

 

 モモイもいつもの調子を取り戻したみたいだ。そのあとはどうやって「鏡」を手に入れるかを話し合うことになった。

 

 

 

 

 

 

「先生、お姉ちゃん、アカネ先輩を閉じ込めるのに成功したって!」

 

 作戦開始後、モモイとミドリと一緒に保管所に向かっている。アリスやヴェリタスのみんなは俺たちに注意が向かないように頑張ってくれている。

 

「これで今自由に動けるのは私たちだけ! 早くいこう!」

 

 少し緊張をにじませながら廊下を走る。みんながうまくやってくれたおかげか、あたりに人の気配はない。ウタハたちがC&Cのみんなをうまく足止めできているみたいだ。

 

「もうすぐ保管室につくはず。ようやくこれで……!」

 

「ちょっと待ってくれ。前に誰かいないか?」

 

 視線の先には、銃を抱えた少女が一人立っていた。ニコニコとしながら俺たちを見ている感じ、なんだか人懐っこいように感じる。

 

「遅かったねー、だいぶ待ってたよ~」

 

「アスナ先輩!? どうしてここに……」

 

「ん-、勘かな? ここで待ってたらあなたたちに会えるんじゃないかなーって」

 

「そんな無茶苦茶な……」

 

「ま、まぁ、そういう人もいるって……」

 

 勘がいいやつを相手にまわすとこんなに厄介だとは思わなかったけど……。とにかく、二人を何とか保管室まで行かせないと。

 

「じゃあ、始めようか!」

 

「モモイ、ミドリ、先に行ってくれ。俺が何とか足止めしてみる」

 

「でも、先生一人で相手するなんて……」

 

「いこう、ミドリ。私たちは早く保管室に行かないと」

 

 剣を抜いてアスナの前に立つ。アスナを傷つけないようにしながらどこまで足止めできるかわからない。それでもゲーム開発部を守るためにも自由にさせるわけにはいかない。

 

「先生が相手してくれるの? ふふっ。楽しみだね!」

 

 保管室のほうに走っていく二人を視界の端にとらえながらアスナに警戒していると、突然轟音と一緒にモモイに向かって銃弾が飛んで行った。

 

「あ、危なかった……。これってもしかしてカリン先輩の狙撃?」

 

「お姉ちゃん! 今ハレ先輩から連絡で、カリン先輩が抑えられなくてウタハ先輩が捕まったって!」

 

「あっ、マキからも連絡! アカネ先輩がシャッターを爆発させて脱出したみたい!」

 

「なんだか私たちが優勢って感じ?」

 

「ここまで状況が悪いのだし、そろそろ諦めてもらいたいけどね」

 

 聞き馴染みのある声が後ろから聞こえてきた。

 

「げっ、ユウカ!」

 

「まさかここまで派手に問題を起こすとは思わなかったけど。もう、悪戯じゃ済まされないわよ」

 

「モモイたちはどうなるんだ?」

 

「無条件の1週間停学か、拘禁くらいは覚悟した方がいいですね。……それと先生も。あとでたっぷりとお話を聞かせていただきますよ」

 

「1週間も停学になったらミレニアムプライスが終わっちゃう!」

 

「こうなったら、突破するしか方法は……」

 

「私たちを突破する?」

 

 ユウカが勝ち誇ったように笑みを浮かべるなか、どんどんとロボットたちが俺たちの周りを取り囲んでいた。脱出してきたアカネもいつの間にかユウカの隣に立っていた。

 

「いくら先生が強くても、この数を相手にモモイとミドリを守りながら戦うのは不可能です」

 

「くっ……」

 

 どんどんと追いつめられてきている状況に、二人はかなりまいっている。なにか、状況を少しでも動かせるようなものがあれば何とかなるかもしれないのに……。

 

「ターゲット確認」

 

「この声と機械音は……」

 

「ミドリ、先生、伏せて!」

 

 俺は近くにいたモモイとミドリをかばうように覆いかぶさりながら地面に伏せた。その瞬間、まばゆい光があたり一帯を薙ぎ払った。その凄まじい音と衝撃に吹き飛ばされそうになる。ふと顔をあげてみると、俺たちを取り囲んでいたロボットの大半が破壊されていた。

 

「アリス!」

 

「モモイ、ミドリ、今のうちです! 早く脱出しましょう!」

 

 かわす言葉のほどほどに、破壊された床や壁から出た煙で視界が悪いうちに保管室に走り出す。この状況で追いかけることができるのはきっとアスナsだけだと思うけど、さっきのアリスの攻撃がアスナに直撃したのか動き出す気配はない。ユウカやアカネもまだ状況が呑み込めていないのか、俺たちを見失っているようだ。

 

「モモイたちはどこに行ったの!?」

 

「視界が悪くて何も見えません……」

 

 幸い、逃げる中ででたらめに攻撃してくることもなかったおかげで俺たちは無事に保管室まで向かうことができた。

 

 

 

 

 

「みんな、大丈夫か?」

 

「うん。大丈夫」

 

「それよりアリス。お手柄だよ!」

 

「でも私たちと別のルートから向かわなかったんだね」

 

「保管室に向かう途中で考えていました。どんなゲームでも、主人公たちは……決して、仲間のことを諦めたりしませんでした」

 

「アリス……」

 

「なので、アリスもそうしました」

 

 初めて会った時から考えると、なんだか成長したな……なんて思ってしまう。もしかして、じいちゃんが俺たちを見て時々嬉しそうにしてた時もこんなことを思ってたのかな……? 

 

「あった! これが『鏡』だよね!」

 

 そんなことを考えているといつの間にかみんなが『鏡』を見つけていた。ちょっと浸りすぎたかもしれない……。

 

「じゃあ。早く帰ろう」

 

「ちょっと待ってください。……誰かがこちらに向かってきています。足音からして、おそらく一人」

 

「でもおかしくないか? ユウカたちはアリスがすでに『鏡』を持っていると思っているはずだよな」

 

「だったら誰が……。ちょっと待って、ハレ先輩から連絡来てる」

 

「接近対象の特徴、身長146cm、ダブルSMG、メイド服の上から龍柄のスカジャン……」

 

「早く隠れて! 先生も、ぼーっとしてないで!」

 

「どうしたんだ、そんなに焦って!?」

 

 モモイに強引に引っ張られながら机の下に隠れる。もともとそこそこの大きさの机のせいか、どうしたって体を押し込めるような状態になってしまう。状況がつかめないまま机からはみ出ないように息をひそめていると、誰かが扉を開けて部屋に入ってきた。

 

「ふうん。もうめちゃくちゃだな」

 

 悠々と部屋に入ってきたその子は、事前に知っていないとただの小さな子供にしか見えない。しかしまとう雰囲気は子供のものとは思えないほど圧倒的だ。

 

「なあモモイ、もしかしてもあの子がネルか?」

 

「もしかしなくてもそうだよ! 見つかったら今度こそ終わりだから静かに……」

 

「ん? 何か声が聞こえたような……」

 

 俺たちの会話が聞こえてしまったのか、ネルはゆっくりとこちらに近づいてくる。横にいるモモイからの抗議の目線が心に刺さる。一歩、また一歩と近づいてくる状況で俺たちは息をひそめることしかできない。

 

「あ、あの!」

 

「あん?」

 

「ネル先輩大変です!」

 

 ユズがネルに声をかけていた。ネルのほうはユズのことを知らないのか、セミナー所属という話をすっかり信じているみたいだ。そのおかげか、ほかの場所でロボットが暴れているという話を信じてくれたみたいだ。

 

「じゃあな。またどっかで会おうぜ」

 

 ネルがそういうと、俺たちの隠れている机を調べることもなく出て行ってしまった。

 

「ユズぅ! 命拾いしたよー!」

 

「すごかったよ、ユズ」

 

「み、みんなが無事でよかった……。でも、ちゃんと部室まで帰らないと」

 

「もちろん! こんなところで捕まるわけにいかないもんね。ちゃんと部室に帰らないと!」

 

「ああ、行こう!」

 

 

 

 

 

 帰り道も道中でロボット相手の戦闘をしながら、それでもC&Cやユウカ達には会うことなく無事に部室に戻ってくることができた。最初は無事に戻ってこれたことを喜んでいたみんなだったけど、今日の疲れが一気に出てしまったのかみんな眠そうにしている。

 

「何とか部室まで帰ってこれたけど……」

 

「今日はもう限界……」

 

 結局『G.Bible』を見るのは明日の朝ということになって、みんなは部室で休むことにした。

 

「俺は明日また来るよ。今日はゆっくり休めよ」

 

「うん……また明日……」

 

 みんなの眠たげな声を背中に受けながら、ゆっくりとドアを閉める。……しかし、ユウカたちには悪いことをしちゃったな。あとでちゃんと謝りにいかないとな。

 

 すっかり暗くなった校舎を少し疲れた体で歩くと、廊下に接している部屋から時折明かりが漏れているのがみえる。夜になっても活動していることに尊敬の念を覚えながら歩いていると、ふと正面に人影が見えた。

 

「ようやく見つけましたよ! 先生!」

 

「ユウカか!?」

 

 かなり怒っているのか、俺のほうに向かってずんずんと歩いてくる。まあ、あれだけの騒動を起こしたら当然怒るよな……。

 

「モモイたちが起こした騒ぎのせいで、私たちは夜通し作業する羽目になってしまって。もちろん、先生も手伝ってくれますよね?」

 

「あ、ああ……もちろん……」

 

 有無を言わせない迫力で詰めてきて、思わずうなずいてしまった。それを見ると、少しだけ怒りが引いたのか目つきが少し緩くなっていた。

 

「早く行きますよ」

 

 ユウカが俺の隣に立ってゆっくりと歩き始めた。薄暗い廊下の中で俺たちの歩く音だけが聞こえる。……今回のこと、ちゃんと謝らないとな。

 

「ユウカ、今回はごめん」

 

「……放っておけなかったっていうのは、わかってますから」

 

 少しあきれたようにため息をつきながらそう言ってくれた。そのまま、少しはにかみながらこう続けた。

 

「だから、今度は私の手伝いをしてください。それで許してあげます」

 

「ああ、もちろんだ。なんでも言ってくれ!」

 

 ユウカと一緒にゆっくりと歩き出す。セミナーの部屋につくまでの短い間、いつものように何でもないような話をして過ごしたけれど、なんだかいつもより仲良くなれたような気がした。

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