アビドスへ
キヴォトスに来てからしばらくたった。揉め事ですぐ銃を撃つ習慣にはまだ慣れるにはしばらくかかりそうだし、不慣れなことは多いけれど、何とかやっていけそうだと思う。
「おはようございます、先生。最近は困った人や問題にどんどん相談に乗っていて大活躍ですね!」
「おはようアロナ。俺はできることをやっただけだよ」
揉め事も多かったし、見ないふりはできなかった。そうやって奔走したことで、少しでも解決できてよかった。
「私も鼻が高いです! 最近は少しづつ評判も広まっていて、相談をよせる人も増えていますよ!」
「アロナがいっぱい助けてくれたからだよ。いつも助かってるし、これからもよろしく頼むよ」
アロナは嬉しそうに報告している。来た当初は分からない事が多くてよくアロナに聞いていたし、今まではほぼ二人三脚でやってきている。だから一緒に得た成果として実感しているのだろう。この小さな相棒を頼もしく思いながら、アロナと会話を交わしていく。
少し話し込んだ後に、アロナが真剣な表情で話しかけてきた。
「先生。少し不穏な手紙がありまして、少し読んでもらえませんか?」
その手紙には、アビドスでの問題と、弾薬などの補給の要請が書いてあった。補給の要請はシャーレの権限でどうにかなるだろう。気になるのは暴力組織に襲われていることと、襲われている事情だ。気になることは多いけど、とにかく行ってみるべきだろう。
「アロナ。準備が出来たらアビドスに向かおう」
「はい! 先生ならそういうと思ってました!」
補給のための準備をしながら、アロナにアビドスのことも聞いておこう。一体どんなところなのか、知っておく必要もあるだろうし。
「以前は大きい自治区でしたが気候の変化で町の状況が厳しくなってしまったみたいです。町の中で遭難したって話があるくらい大きいみたいですよ!」
「ちょっと信じられないけど……用心しておくべきなのかな?」
「そうですね。大きい以外にも暴力組織がいるみたいですし、警戒はしておきましょう」
補給の準備が出来たし、あとは俺の準備をしたら出発しよう。剣を二本差し、シャーレの身分証を身に着ける。
「よし、行こう」
「迷った……」
警戒はしていたけど、アビドス自治区は思いのほか広かった。市街地に入ってから数時間は歩いている。それでもまだアビドス高等学校は見えてこない。大まかな位置はアロナに教えてもらっているけど、市街地に入ってからは方向が狂いがちで、今がどのあたりにいるのかの把握が難しい。それに、誰かに道を聞きたくてあたりを見渡しても誰も歩いていない。町の状況が厳しいということを改めて実感したし、アビドスの助けが切実なことも分かった。だから早くアビドスに着きたいけど、やみくもに移動しても遠ざかるかもしれない。
どうしようかと考えていると、人気のないこの場所からかすかに音が聞こえた。だんだんと音は近づいて、少しの後に自転車に乗った少女が見えた。彼女は俺に気づいたようで近づいてきてきて自転車から降りた。
「あなたは……?」
マフラーを付けた銀髪の少女はこちらを見ると少し不思議そうに尋ねてきた。この辺りを移動していたのならアビドスの場所を知っているかもしてないし、とにかく聞いてみよう。
「俺はシャーレで先生をしているんだ。アビドスに用があるんだけど、自治区が広くて迷ってしまったんだ。アビドスの場所を知っていたら教えてくれないか?」
「シャーレの先生……アビドスに行くの? 私はアビドスの生徒だから案内できるよ」
「本当か!? アビドスまでの案内を頼むよ」
「わかった。……久しぶりのお客様だ」
少女は少し嬉しそうにつぶやいた。彼女は自転車から降りて俺の横に並んでくれた。このまま自転車を押しながらアビドスまで案内してくれるみたいだ。
「そういえば自己紹介がまだだった。私は砂狼シロコ、先生の名前は?」
「俺はアルド。よろしくな」
「ん。……そういえば先生は運動するの? 見た感じ運動できそうな感じだし」
「まあ……今はなまらない程度にしかできてないけど、運動はする方かな」
「そうなんだ」
俺がそう答えると輝いた眼でこっちを見てきた。なんだか一緒に運動できる人を探しているみたいだった。
シロコといろいろと話し込んでいる間にアビドスが見えてきた。アビドスに着くまでに思ったより時間がかかってしまったけど、頑張らないといけないのはここからだ。俺はシロコについていき、そのままアビドスの校舎の中に入っていった。