アナザーアーカイブ   作:さかみち

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アナデンはFF9コラボ始まりましたね。FF9は遊んだことがなかったですがみんないいキャラしててかなり好きになりました。


何を信じるのか

「……」

 

 補習授業部の教室に着いた後、とりあえずお互いのことを知るために自己紹介をすることになった。ただ、みんな学年と名前くらいで、あまり自分のことを語ろうとしないな。

 

「アルドだ。ティーパーティーから依頼を受けて補習授業部の顧問をすることになったんだ。よろしくな」

 

 軽く自己紹介を済ませると、アズサが俺のほうをじっと見ているのに気が付いた。

 

「……先生が持っているその大きな剣は?」

 

 さっきまでつけていた仮面──ガスマスクっていうらしい──を手に持ちながらアズサが質問をしてきた。

 

「オーガベインのことか? こいつとは旅を始める前からずっと一緒にいたんだ」

 

「そういえば、その大きくて立派なもの……今まで使っているところを見た人はいないって噂ですね」

 

「……なんか言い方がおかしくない?」

 

「かなり危険なものだから、普段の戦闘で使う気はないぞ?」

 

 オーガベインには今までの旅の中で何度も助けられたからこそ、その危険性もわかっているつもりだ。これから先も、生徒相手に使うつもりはない。

 

「……そうか。どんなものなのか気になっていたが、それなら仕方ないな」

 

 何とか納得してもらえたかな……。なんだか、キヴォトスでここまでオーガベインに興味を持たれたのは初めてな気がする。普段は珍しいものを持っている、くらいにしか思われてない気がするけど。そんな風に考えていると、ヒフミがみんなに声をかける。

 

「あの、そろそろ補習授業部の方針について共有しておきたいんですが……!」

 

「あっ、そうだよな。ヒフミ、頼めるか?」

 

「はい! 私たち補習授業部は放課後に活動を行います。そして特別学力試験で全員同時に合格する必要があります。試験は第三次までありますが、そのうち一回でも合格すれば補習授業も終わりとのことです! みんなで力を合わせて頑張りましょう!」

 

 試験については今初めて聞いたけど、全員同時に合格しないといけないのか? トリニティの試験のことは分からないけど、なんか気になるな……。あとでナギサに聞いてみるか。

 

「そういえば、アズサちゃんは転校してからあまり時間が経ってないんですよね?」

 

「白洲さんは転校されてきたのですか? トリニティに転校なんて珍しいですね……」

 

「……」

 

 アズサは表情が変わっていないけど、少しだけ何か言いにくそうに見えた。

 

「書類上はそう書いてあって……もしかして余計なことを……?」

 

「いや、別に隠すことじゃないから気にしないで良い。こう言われるのは慣れるべきことだし、そのための努力もする」

 

「なるほど……。では私もアズサちゃんって呼んでもいいですか?」

 

「……? 良いけど?」

 

「アズサちゃん、ヒフミちゃん、コハルちゃん……。良い響きですね! これから私たちは補習授業部の仲間ということで……」

 

 みんな和やかにしているし、これから一緒に勉強するのも問題なさそう、なんて思っていたけど、なぜかコハルがみんなのことをすごく睨んでいた。

 

「あら、そんな憎悪に満ちた目で、どうしたんですかコハルちゃん?」

 

「言っておくけど、そもそも私が試験に落ちたのは、飛び級のために二年生用の試験を受けたからだから!」

 

「飛び級? どうしてそんなことを?」

 

「どうしても何も……。私はこれから正義実現委員会を背負う立場になるわけだし……!」

 

「一度試しにチャレンジするだけなら理解できますが、なぜそれを何度も?」

 

「私が言いたいのはそういうことじゃなくて! つまり私は今まで、本当の力を隠してたってこと!」

 

「どういうことだ?」

 

「一年生用のテストを受ければ、今度はちゃんと優秀な成績を収めて終わりってわけ。わかる?」

 

「なあハナコ。そんな簡単な話なのか?」

 

「そうですね……。学年ごとに学習内容は違いますから、二年生用のテストを受けていたからといって一年生用のテストが簡単だとは限りませんが……」

 

「そこうるさい! とにかく私はこんなとこすぐにおさらばしてやるから! それじゃ精々頑張って!」

 

 そういうと、そのままコハルは教室から出て行ってしまった。コハルのいう通り一年生のテストでいい成績が収められれば不安が一つ減るけど・・・しばらくは様子を見てみるべきかな? 

 

「コハルちゃんはテンションの上下が激しくて面白いですね。アズサちゃんは対照的に一貫して全然ブレませんし」

 

 ハナコは飄々としていてつかみどころがない。……でも話している感じだとかなり頭がキレるように感じるんだけど、どうして補習授業部にきたんだろう? 

 

「これから楽しみですね、ふふふっ」

 

 

 

 

 

 それから、みんなで補習授業部として特別試験に向けて勉強を始めた。俺はみんなの手伝いをすることにした。シャーレで活動していたおかげか、スケジュールを管理とかは問題なく進められた。たまにミスをしたときはこっそりアロナがフォローを入れてくれていたし、ほかにも教材の準備とか用意した問題の解説なんかもやってくれていた。今度ちゃんとアロナにお礼しないとな。

 補習授業部のみんなも、それぞれ順調に進んでいるように見える。アズサはハナコに積極的に教わっている。数学やキヴォトスの古代語まで教えているし、やっぱりハナコはかなり頭が良いような気がする。ヒフミは試験をさぼっただけで成績に問題は無いらしいし、コハルも大丈夫だって話だ。

 

「ハナコもアズサもなんだか調子がよさそうだな」

 

「はい! コハルちゃんも実力を隠していたらしいですし……。これなら試験も余裕かもしれません!」

 

 ヒフミも部長を任されてかなり気負っていたのかもしれない。順調に勉強が進んでいるのを見て少し気が軽くなったみたいだ。

 

「実は心配だったんです。一次試験を突破できなかったら合宿をしろとティーパーティーに言われてまして……」

 

「合宿までするのか?」

 

「はい。そうなんです……。それに、もし三次試験まで全て落ちてしまったら……あうう……」

 

「何かまずいことがあるのか?」

 

「い、いえ。なんでもありません……試験は大丈夫そうですし!」

 

 

 

 

 

 試験当日。試験を行うために補習授業部の教室に集まった。ヒフミとコハルは緊張した様子で、アズサとハナコはいつも通りに見えながら席について問題を解いていた。試験が終わったあと、すぐに答案用紙は回収されていった。

 次の日、試験結果が俺の元に届いて、みんなの前で点数を発表することになった。ヒフミは明るい表情でみんなが合格していることを信じている。ハナコとアズサは相変わらずだけど、コハルはなんだか少し不安そうに見えるな。

 

「じゃあ発表するぞ」

 

 ヒフミ72点、アズサ32点、コハル11点、……ハナコは2点だ。

 

「えっ!?」

 

「ちっ。紙一重だったか」

 

「紙一重ってレベルじゃないですよ!? それにコハルちゃん! 実力隠してたんですよね!?」

 

「だってその、今回難しかったし……」

 

「すっごく簡単でしたよ!? 小テストみたいなレベルでしたよ!? それにハナコちゃん!? すっごく勉強できそうな感じでしたのに!」

 

「私そういう雰囲気あるみたいですね。まぁ、成績は別ですけど」

 

「雰囲気だけだったんですか!? ……うう」

 

「ヒフミ! 大丈夫か!?」

 

 ヒフミのストレスが限界を超えたのか、床にへたり込んでしまった。……どうすればいいんだ、これ。

 

 

 

 

 

 ヒフミが限界を迎えてしまったし、今日はみんなを帰すことにした。俺は合宿で使うための資料や問題を集めることにして、トリニティに少し残ることにした。そうしてしばらく作業していると、ナギサから話がしたいと連絡があった。おそらく今日の結果を聞いたんだろうな。すぐに向かうと返事をして、ナギサの元に向かうことにした。

 外はすっかり夜になって月がはっきりとみえる。月明りで照らされたテーブルの上にチェス盤を置き、ナギサは一人でチェス盤を見つめていた。少し見てみると、チェス盤のコマは白と黒で異なる駒しか置いていないようだ。

 

「このチェス盤が気になりますか?」

 

「ああ、いや。なんだかコマの種類が少ない気がして」

 

「少し特殊なものでして。黒はキングとクイーン、あとはポーンのみ。白はキング、ルーク、ビショップ、ナイトが三から四つほど……」

 

 チェスは遊んだことがなかったけど、ナギサがやってるやつはすごく難しそうだ。

 

「これを一人でやってたのか?」

 

「ええ、今はうるさいミカさんもいませんし」

 

 確かにミカのあの感じだと、遊んでるナギサによくちょっかいかけてたのかもしれないな。

 

「なんだか難しそうだな」

 

「そんなことありませんよ? 良ければ、いつか先生ともチェスをしたいですね」

 

「俺はあんまりこういうの得意じゃないから……お手柔らかに頼むよ」

 

「ふふっ。ええ、楽しみにしていますね」

 

 ナギサは少し楽しそうに笑ったあと、気持ちを切り替えたのか少し表情を引き締めてこちらをみてきた。

 

「それはそうと、今回の試験は残念でしたね」

 

「ごめん、力になれなくて……。せっかくシャーレを頼ってくれたのに……」

 

「いえ、気にしないでください。まだ二回あるのですから」

 

 面倒を見られないトリニティの代わりに補習授業部を任されたわけだし、もっと何か言われるかと思ってたけど……。

 

「ああ、俺ももっと頑張るよ!」

 

 気合いを入れ直してみると、この前ヒフミが言っていたことが頭によぎった。

 

「そういえば、三回とも不合格だった場合はどうなるんだ?」

 

「話の出どころはヒフミさんですか? 彼女はそういうところがありますから……それが良いところでもありますが……お話をもどしますと、落第を逃れられない、お互いを助け合うことも出来ないとなれば、退学していただくしかありません」

 

「退学だって!?」

 

 キヴォトスにおいての退学は、俺がミグランス王国を追放されるような……そのくらい重い処罰のはずだ。

 

「もちろん、トリニティでも生徒を落第、停学、退学させるための校則は存在します。ですが手続きが長く面倒でして、たくさんの確認と議論を経なければいけません」

 

「だったらなんで、今回はこんなことが出来たんだ?」

 

「先生が補習授業部の顧問を引き受けてくださった際に、シャーレの権限を組み込ませていただきました」

 

「なんだって!?」

 

 シャーレの超法規的権限・・・。アロナやリンが言っていたけど、まさかここまでの無茶ができるのか・・・。

 

「今までの先生の噂や活躍を聞く限りは、この計画を知ったら反対されるとわかっていました。ですから、今までこうして隠していたのです」

 

「……シャーレの権限を使ってまで生徒を退学させたい理由を教えてくれないか?」

 

 少し落ち着こう。ナギサにも何か理由があってこんなことをしたはずだ。何も聞かずにただ反対するのは簡単だ。だけど、俺はナギサがなんでこんなことをしたのかちゃんと知っておきたい。

 

「……あの中に、トリニティの裏切り者がいるからです」

 

「裏切り者だって!?」

 

「ええ。その裏切り者の目的はエデン条約の阻止」

 

「前にも言ってたけど、結局エデン条約っていうのはなんなんだ?」

 

「そうですね……先にエデン条約についての説明が必要ですね」

 

 エデン条約はトリニティとゲヘナの間に結ばれる不可侵条約。その核心は二つの学園の中心メンバーが全員出席する組織を設立することにある。エデン条約機構、『ETO』がトリニティとゲヘナの紛争が起きた際に介入し、解決するという。

 

「……これによって二つの学園間での全面戦争は無くなります。どちらかが踏み込んでしまえば共倒れすることになりますから」

 

「そんなことを計画してたんだな……」

 

「トリニティとゲヘナは長い間敵対関係にありました。この条約はその無意味な消耗を防ぐための唯一の方法です。……そして、連邦生徒会長が提示した方法でもあります」

 

「連邦生徒会長……」

 

 あいつのことだよな……。そういえば、旅の中でそんなことを話していたかもしれない……。話が難しくてしっかり理解出来なかったことも多かったけど。

 

「そして連邦生徒会長が行方不明になったあと、一度は空中分解しかけたものを私の元でここまで立て直したのです」

 

「ナギサ……」

 

 消えかけた条約を一からやり直したっていうのは、きっと想像以上の苦労があったんだろうな。

 

「ですが、条約が締結される直前というこのタイミングで……条約を妨害するものがいるという情報を耳にしてしまったのです」

 

「……それで怪しい生徒を補習授業部に集めたのか」

 

「それが誰なのかはわかっていないのです。そこで次善の策として、その可能性のある容疑者を一か所に集めたのです」

 

「ちょっと待ってくれ。関係のない生徒も一緒に退学させるつもりか?」

 

「……ごみを細かく選別して捨てるのが難しいときは、箱ごと捨てるのも手段の一つ……そうは思いませんか?」

 

「ナギサ……!」

 

「これはトリニティ……ひいてはキヴォトスの平和に直結します。ですから、どうか先生にも裏切り者を探してほしいのです」

 

 補習授業部のみんなと出会ってからまだ少ししか経っていないけど、そんなことをするなんて思えない。だけど……ナギサの言うようにエデン条約を阻止しようとする存在がいるのなら、止めないといけない。

 

「ナギサが言うように、補習授業部のみんなは怪しいのかもしれない。……だけど、俺はみんなを信じるよ」

 

「……そうですか。残念です」

 

 だけど、今ここで聞いていただけでも、ナギサがエデン条約に懸ける思いも分かったつもりだ。

 

「だから、俺が証明するよ。あの中に裏切り者はいないって。それが分かれば、ナギサがみんなを退学させようとする必要もなくなるだろ?」

 

「……信じた結果、本当に裏切っていたらどうするのですか?」

 

「……その時は、全力で止めるよ。俺はナギサが進めてきたエデン条約も成功させたいから」

 

「……わかりました。先生は先生なりに、私は私なりに……それぞれが信じた方法を取るとしましょう」

 

 ナギサは湯気のたたなくなった紅茶の入ったティーカップを手に取り、口につける。表情はいつものように少し微笑んでいるように見えて……ナギサがどんな気持ちでいるのか、俺にはよくわからなかった。

 

「どうかこの結末が……できるだけ、苦痛を伴わないものであることを願うだけです」

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