アナザーアーカイブ   作:さかみち

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きっとそれは嘘じゃない

 二次試験までの間は平穏に過ぎて行った。途中でやった模擬試験でみんな合格点以上が取れて、前から言っていたモモフレンズの授与式もやった。結局受け取ったのはアズサだけだったけど、嬉しそうに迷っている姿はなんだか微笑ましかった。

 

「今日はこのくらいにしようか」

 

 外はもう日が落ちて暗くなってきていた。明日の第二次試験に万全の状態で臨んでもらおうとみんなに声をかける。みんなも特に焦っている様子もなくて、勉強道具を片付けながらみんなで雑談していた。

 

「そういえば明日の試験会場はどこでしょうか?」

 

「あっ、まだ告知を見てませんでした。……あれ?」

 

 ヒフミが自分の端末で試験の情報を見ている。ヒフミがしばらく眺めていると、だんだんと困惑が広がっているように見えた。

 

「どうしたんだ?」

 

「そ、それが……」

 

 ヒフミが見せてくれた端末には、こんなことが書いてあった。

 

「試験範囲を、既存の範囲から約三倍に拡大……? それに、合格ラインを九十点に引き上げとするって……」

 

「はぁ! なにそれ!」

 

 昨日まではこんなアナウンスはなかったはずだ。まさか今日いきなり変わったのか? 俺たちが困惑する中、ハナコだけは冷静に分析している。

 

「おそらくナギサさんの仕業でしょう。ここまで直接的な手段を取るとは思いませんでしたが」

 

 確かに、ナギサは裏切り者の排除をするために補習授業部を作ったけど……。

 

「……やっぱりそうなのか?」

 

「ねぇ、どういうことなの? ナギサって、ティーパーティーのナギサ様のことよね?」

 

 そろそろみんなに補習授業部の状況を説明しておくべきかもしれない。ここまで強引な手段を使ってくるようになった以上、隠しておくべきじゃないよな。

 

「……説明するよ」

 

 補習授業部がどうしてできたのか、試験に合格できなかったらどうなるのか……最初から説明した。

 

「た、退学なんて……。そんなことになったら正義実現委員会に復帰できない……!」

 

「コハル……」

 

 一気に状況が変わったせいで、かなり混乱している。アズサも状況を知らなかったはずだけど、あんまり取り乱している様子はない。

 

「でも、まだ不合格になったわけじゃない。……ヒフミ、試験会場に変更は?」

 

「えっと、ゲヘナ自治区に午前三時……。ゲヘナですか!?」

 

「みんな……」

 

「状況は分かった。怒るにせよ、絶望するにせよ、まずは試験を受けてからでも遅くはない。最後まであきらめずに足掻こう」

 

 俺が言おうとしたことをアズサが全部言ってくれた。言い切れなかったせいか少し恥ずかしいけど……アズサのおかげで、みんな少し落ち着いたみたいだ。

 

「時間もないし、準備をしたらすぐに行こう!」

 

 

 

 

 

 急いで準備をした後、トリニティとゲヘナの自治区の境界線まで歩いてきた。試験までもう少し時間はあるけど、できるだけ早く会場に着きたい。特にゲヘナだと何か起きる可能性が高いからな……。

 不安に駆られながらもみんなで歩いていると、ゲヘナ自治区のほうで検問が敷かれているのが見えた。

 

「おい! ここから先は立ち入り禁止だ!」

 

「ちょっと待て。もしかしてトリニティ生か?」

 

 みんな制服を着ているせいかトリニティの生徒だってことがばれてしまった。

 

「ええっと、試験を受けに来たんですけど……」

 

「どうしてトリニティ生がゲヘナに試験を受けに来るんだ!」

 

「それは、確かにそうですけど……」

 

 そこを突かれると何も言い返せないな……。このままじゃ絶対面倒なことになる確信がある。俺なら多少は風紀委員に顔が知られているし、早く割って入らないと。

 

「ちょっと待ってくれ! これには訳があるんだ」

 

「先生? なんでトリニティの奴と一緒にいるんだ」

 

「それにはちょっと事情があるんだけど……。どうしてもゲヘナに入る必要があるんだ。通してくれないか?」

 

 風紀委員の二人は顔を見合わせて少し考えた後、首を縦に振ってくれた。

 

「先生が連れているなら大丈夫かもしれないけど……。一応ヒナ委員長に報告させてくれ」

 

「ああ。助かるよ」

 

 おそらくヒナに連絡しているのだろうか、背中を向けて何かを話している。何とか場を収められてほっとしていると、風紀委員の奥側から車が走ってくるのが見えた。なんだか、ついこの間見たような……。

 既視感を覚えていると、次の瞬間、風紀委員の検問に向けて何かが飛んで行って爆発した。爆風を受けて身構えていると、奥から一台の車がゆっくりと走ってきて俺たちの前で止まった。あの車って、給食部のやつだよな? ってことは……。

 

「やっぱり先生でしたか」

 

「ハルナたちじゃないか! どうしてここに?」

 

 車から降りてきたハルナは相変わらずの笑顔だ。後ろには他のメンバーと、縛られていたフウカが車に乗っていた。……この状況、この前も見たな。

 

「私たちは温泉開発部が起こした騒ぎに乗じて逃げ出してきたところです。先生たちはどうしてここに?」

 

「俺たちはゲヘナに試験を受けに来たんだ。ちょっと説明が難しいんだけど……」

 

「いえ。先生のことですから、なにか事情があるのでしょう」

 

 ハルナが何か考え込んでいる。とりあえずフウカが不憫すぎるから拘束を解くことにした。俺が剣でフウカを縛っている縄を解いていると、ハルナがアカリたちのほうを向いてこう宣言した。

 

「皆さん、予定変更ですわ。トリニティの皆さんを目的地まで案内しましょう」

 

「いいのか? 逃げてる途中なんだろ?」

 

「ええ。先生には何かとお世話になっていますし……ここで会ったのも何かの縁でしょう」

 

 ハルナに促されるままみんなで車に乗る。車がUターンして市街地のほうに向かい始めると、隣のヒフミが控えめに俺の腕をつついてきた。

 

「あの、私たちは別に乗らなくてもよかったんじゃ……」

 

「それって……」

 

 俺が聞き返そうとしたとき、爆発音とともに車体が大きく揺れた。後ろを見てみると風紀委員の車が俺たちを追ってきている。……わざわざ追われてるハルナたちに送ってもらう方が危険じゃないか!? 

 

「ハルナ!」

 

「大丈夫です! このくらいなら振り切れますわ!」

 

「そうじゃなくて……!」

 

 俺たちの訴えも虚しく、この追いかけっこが数時間続いてしまった。

 

 

 

 

 

「ひどい目にあった……」

 

 結局途中で狙撃されてフウカの車は壊れてみんなとはぐれてしまった。俺は風紀委員の誤解を解くのに手いっぱいで結局一人で行動していた。何とか説得はできたけど、アコに、この忙しいときに面倒を増やすなと怒られてしまった。

 

「みんなはもう来てるかな?」

 

 あたりを見回しても人の気配がない。そもそも試験会場が廃墟の建物となっているのも引っかかる。人の目の届かない場所ということもあって何か仕掛けてある可能性も……。

 

「先生。無事だったか」

 

 少しあたりを警戒していると四人が到着した。みんな大きな怪我もなさそうだったことに安心していると、アズサがあたりを探り始めた。

 

「何してるんだ?」

 

「ここが試験会場なら、何か試験を行うための手段があるはずだ」

 

 確かにここは廃墟ばかりで試験用紙すら見当たらない。みんなで少しあたりを探してみると、一発の砲弾が見つかった。アズサが慣れた手つきで解体していくと、中には紙の束と通信機が一つ入っていた。

 

「紙のほうは……試験用紙みたいだな」

 

「通信機の電源を入れてみますね」

 

 ヒフミが通信機の電源を入れると、少しノイズが聞こえた後、ナギサの声が流れ始めた。

 

『これを見ているということは無事に到着されたのですね。ふふ……恨み節が聞こえてきそうですね。これは録画音声なので私には聞こえませんが』

 

 通信機からナギサの声が聞こえてくる。流れてくる声からは、ナギサが何を思っているのかを測ることが出来ない。本人に何も聞けないことにモヤモヤを抱えていたけど、どうかお気を付けて、そういってナギサの声は聞こえなくなった。

 

「ナギサ様……」

 

 ヒフミも思うところがあるんだろう、不安をにじませながらナギサの名前を呼んでいた。

 

「なんだか含みのある言い方でしたね……?」

 

「確かに気になるけど……」

 

「時間がない。早く始めよう」

 

 みんなは試験会場の廃墟に入って試験を始めた。さっきまで慌ただしかったのがウソのようにみんな集中している。

 少し経った後、静かだった会場の外から外から人の声がし始めた。気になって様子を見に行こうとした瞬間。俺の視界が光に覆われた。

 

 

 

 

 

 大きな衝撃で吹き飛ばされて少し気を失っていたのかもしれない。頭を振って意識をはっきりさせた後、状況を確認しようと周囲を見わたす。

 

「何が起きたんだ……」

 

 試験会場は完全に壊れていて、夜空と一緒にがれきの山に立ち尽くしている四人の姿だけが見えた。がれきをよけながらみんなの近くに行くと、足元で何かが燃えているのが見えた。

 

「これって……試験用紙か!?」

 

 火を消して拾い上げると、下半分が燃えてしまっていた。ヒフミの名前と数問だけ解かれた解答用紙を見て、紙を持つ手に力が入ってしまった。

 

 

 

 

 

 結局、試験用紙が燃えてしまったせいで二次試験は全員不合格。それでも、みんなは第三次試験に向けて勉強を続けた。今まで以上に負担もプレッシャーも大きかったけれど、お互いを励ましあっていた。もちろん俺もできる限り協力したけど……ここまでこれたのはやっぱりみんなの努力があったからだ。

 

「明日の試験会場に変更はないのか?」

 

「はい。第三次試験は学園の分館で行うみたいです。ただ……」

 

「もしかしてまた何か仕掛けられてるのか?」

 

「それが……先ほどシスターフッドの方々に少し会ってきたんです。そしたら、私たちが試験を受ける第十九分館はこの後正義実現委員会が建物全体を隔離するとのことで……」

 

「隔離だって?」

 

 そうなったら試験会場に入ることも出来なくなるじゃないか。第二次試験の時に試験会場ごと爆破されたこともあって、みんな動揺してしまっている。

 

「エデン条約に必要な重要書類を保護する、という名目でティーパーティーから要請があったみたいです。そのうえ本館には戒厳令まで敷かれているようで……」

 

「じゃあ、試験当日に試験を受けに行けないの?」

 

「ええ。おそらく、エデン条約が締結されるまで誰も立ち入ることはできないでしょう」

 

「ハスミたちに事情を話して協力してもらうわけにはいかないのか?」

 

 みんなならきっと事情を知ったら協力してくれるはずだ。ふとそう思って聞いてみたけど……、ハナコは首を横に振るだけだった。

 

「おそらく裏切り者や退学については知らされていないはずです。それに、もし私たちを助けてしまったら、それはティーパーティーに対する明確な離反と同義です」

 

「ううっ……」

 

 コハルもハスミたちを巻き込みたくないのか、これ以上は何も言えないみたいだ。

 

「それにしても、なんでナギサはここまでやるんだ……?」

 

 裏切り者かもしれない生徒を集めた部活だからって言うには、あまりにいろんなものを巻き込んでいるような気がする。まるで確信があるかのようにも思える。それか、なりふり構っていられないくらい追いつめられてしまったのか……。

 暗い雰囲気が部屋に漂い始めたとき、アズサが突然俺たちに向かってこう言った。

 

「……私のせいだ。話を、聞いてほしい」

 

「アズサ……? 具合でも悪いの?」

 

 アズサは青白い顔をして震えていた。まるでこれから罪の告白でもするみたいに……。

 

「ティーパーティーの探している裏切り者は・・・私だ」

 

「えっ?」

 

 みんなその一言をすぐに理解できなかった。けれどアズサは止まることなく説明を続ける。

 

「私はアリウス分校の出身。今は書類上の身分を偽ってトリニティに潜入している」

 

 それは俺も聞いた話だ。ミカがアリウスと和解するために秘密裏に転校させたはずだ。

 

「私の任務は……桐藤ナギサのヘイローを破壊すること」

 

「ちょっと待ってくれ! ミカは、アズサはアリウスとの和平の象徴だって……!」

 

「……おそらくそういう理由でだましたんだろう」

 

「ミカさんは政治に向いていないと言われていましたが……。おそらくはすべてが終わった後、その罪をミカさんに着せる。そういう流れを想定しているのでしょうか」

 

「そんな……」

 

 そんなのは……そんなのはあんまりだ。ミカはただアリウスと仲良くしたいって願っていただけなのに……。

 

「……ちょっと待ってくれ。もし、アズサが本当にナギサを襲撃するためにここに来たのなら、どうして俺たちに話したんだ?」

 

 俺は絶対にナギサを守りに行く。アズサもそれは分かっていると思うけど……。

 

「私が、ナギサを守るつもりだからだ」

 

「ちょっとまって……さっきと言っていることが真逆じゃない!」

 

「アズサちゃんは最初からナギサさんを守るために、この任務に参加した……いわば二重スパイですね。どうして、誰の命令でそんなことを?」

 

「これは私の意思で行っていることだ。ナギサがいなければエデン条約は締結されない。そうなれば、この先キヴォトスの混乱はさらに深まるだろう。その時、またどこかにアリウスのような学園が出来ないとは限らない」

 

「アズサ……」

 

 アリウス。その名前を口にするとき、アズサは少し遠くを見ているような……寂しそうに見えた。アズサの育った場所がどんなところなのか、今の俺にはわからないけれど……。きっと、すごく覚悟がいるはずだ。

 

「平和のために……。とっても甘くて、夢のような話ですね。今回の条約の名前と同じくらい、虚しい響きです」

 

「ハナコ……」

 

「アズサちゃんは裏切り者だった。トリニティでもアリウスでも本音を隠していた。ずっと周りのすべてを騙していた……そういうことで合っていますか?」

 

 ハナコはアズサを責め立てるようにそう言った。自分たちに隠し事をしていたせいでこの状況になってしまった……。そういう意味では、アズサは裏切り者だって言えてしまうのかもしれない。ハナコの気持ちも分からなくはないけど……。

 

「いつか言った通りだ。私はみんなの心も、その信頼もいつか裏切ってしまうと。……みんながこんな状況に陥ったのは私のせい。だから、私のことを恨んでほしい」

 

 アズサは表情を変えずに淡々と言っているように聞こえる。だけど、下げている手はスカートをぎゅっとつかんでいるし、俺たちと目を合わせようとしない。

 俺はアズサに、どんなことを言えばいいのだろう……。迷っていると、アズサのベッドにベロロ様のぬいぐるみが見えた。あれは二次試験前にやった模擬試験の結果が良かったご褒美にヒフミからもらったやつだ。……俺はまっすぐに、自分の気持ちを伝えよう。今までもそうしてきたように。

 

「……確かに、アズサは隠し事が多かったのかもしれない。それでも、俺はみんなで過ごした日々を否定したくない」

 

「先生……」

 

 俺はアズサのぬいぐるみを持ち上げてみんなに見せる。……手触りが良くてふかふかで、きっと大切にしてきたんだろうって伝わってくる。きっとこれは、アズサにとっての日常の象徴……そんな気がする。

 

「アズサがぬいぐるみを楽しそうに選んでいたこと。みんなのためだって、夜中に一人でトラップを仕掛けてたこと。ずっと真面目に勉強に取り組んでたこと。きっとそれは嘘じゃないって……俺はそう信じてる」

 

「先生……」

 

 アズサにぬいぐるみを渡す。アズサは戸惑いながらも受け取ってくれると、ぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。

 ハナコもそんなアズサの姿を見て、少し考えなおしてくれたのかもしれない。さっきまでの責めるような表情はすっかりなくなっていた。

 

「ナギサさんも、先生のように私たちのことを信じてくれていれば……あるいは、こんなことにはならなかったのかもしれませんね」

 

 少し落ち着いたのか、いつものように微笑みながらそうつぶやいた。アズサのほうを向くと、頭を下げてこう続けた。

 

「ごめんなさい。アズサちゃんのまっすぐな顔を見ていると、なんだか心が落ち着かなくなってしまって」

 

「……」

 

「補習授業部はその成り立ちからして、注目される部活でした。アズサちゃんにとって、補習授業部にとどまることは危険だったはずです。それでもここに居続けてくれたのは……きっと、ここでの時間があまりに楽しかったから。違いますか?」

 

「私は……うん。そうだね」

 

 アズサは少し迷いながらも、抱えているぬいぐるみを見て小さくうなずく。

 

「誰かと一緒に何かすること、知らないことを学ぶこと。その楽しい時間を、私は手放せなかった……」

 

「……私にも、わかるんです。なにせ、同じように思った人がいたんです。……その人はなぜか要領が良くて、何をしても周りからおだてられてしまうようなタイプで」

 

 ハナコはぽつりぽつりと話し始めた。もしかしてこの話って……。

 

「その人にとってトリニティ総合学園は、嘘と偽りで飾り立てられた、欺瞞に満ちた空間でした。誰にも本心を話すことが出来ず、誰にも本当の姿を見せることが出来ないまま……」

 

「その人にとって、全てのことは無意味で……学校をやめようとしていたんです。何せそのままの生活を続けることは、監獄にいるのと同じことでしたから」

 

 ハナコは一息置いて、アズサのほうを見る。

 

「……アズサちゃんは今回のことが終わったら、この学園での生活は終わってしまうんですよね?」

 

「それは、トリニティに入れたのは書類を偽装してたからってことか?」

 

 ミカはこっそりアズサを転向させたって言っていた。きっと、これがばれてしまったら……。

 

「ええ。それに、アリウスも裏切ろうとしている今、本当に帰る場所が一つも無くなってしまうことになります」

 

「あっ!」

 

 ……そうだよな。それなのにアズサはナギサを守るために、平和を壊さないために一人で戦おうとしていたんだな。

 

「それなのに、アズサちゃんはいつも一生懸命でした。全ては虚しいもの(vanitas vanitatum)のはずなのに……。けれど、いつもその後ろに言葉を付け加えていました。前に進むのだと」

 

「ハナコ……」

 

「それでその人もようやく気付いたんです。自分をさらけ出せる人たちと、そう言ったよくあることを全力でするということが、こんなにも楽しかったんだと」

 

 補習授業部でのハナコはいつも楽しそうだった。ふざけるときには目一杯ふざけて、コハルやアズサに勉強を教えるときは丁寧に根気強く教えていた……。アズサだけじゃなくて、ハナコにとっても大切な居場所になっていたんだな……。

 

「だから、これから先もみんなでいろんなことをして、たくさん思い出を作りましょう。そのために……私たちでナギサさんを守りましょう。そして無事に試験を受けて合格しましょう」

 

 ハナコが迷いの晴れた表情ではっきりと言った。俺も賛同するように大きくうなずく。……ハナコなら何か考えている、そう信じられるから。

 

「後からどんな文句も言えないように、かけておいた罠はそのままに……」

 

「でも、試験の開始時間とアリウスの襲撃は九時に始まる。物理的に不可能だ」

 

「ほ、ほかの方たちに助けを求めるとかどうでしょうか?」

 

 ハスミたちなら事情を説明すれば協力してくれるはずだ。でも同時には試験を受けられないか……。

 

「それも必要ですが、私たちから動く必要があります。大丈夫です、きっと私たちなら……トリニティくらい、半日で転覆させられますよ」

 

 ハナコは作戦を俺たちに伝えた後、笑顔でこう締めくくった。

 

「さあ、今こそ力を合わせる時です。行きましょう!」

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