不思議な人(ユウカ)
先生がキヴォトスに来てきてから数日が経った。弾丸の経費がまだ支払われていないのを確認した私はモモトークで確認してみることにした。訪ねてみると、どうやら先日使用した弾丸の経費の処理の仕方が分からないようだったのでミレニアムの請求書のひな形を持ってシャーレに向かうことにした。
「先生ってなんだか不思議な人よね」
シャーレに向かう道中に考えるのは先生のこと。なんだかお人よしそうな顔をしているのに戦闘指揮は的確。剣を2本携えていて籠手を着けている格好はキヴォトスでは見たことがない。あれではコスプレをしていると思われては仕方がないのではないだろうか。極めつけはシャーレを奪還した日に見せた指揮能力と戦闘能力の高さだ。指揮能力は連邦生徒会長が連れてきた方だから納得はできる。でもキヴォトスの外の人は銃撃戦に参加することなんてできないと思っていた。でも先生はよりにもよって戦車の前に立ち、無力化して見せたのだ。
不思議なところが多すぎて考えがまとまらない。ふと気が付くとシャーレの近くまで歩いていた。この近辺もあの日先生と一緒に制圧したことで落ち着きを取り戻していた。落ち着きという形で頑張りが実感できることにうれしく思いながらシャーレのドアをくぐる。
「こんにちは、先生。この間お話しした請求書のひな形を持ってきました。お手すきの時に確認してください」
先生のほうを見るとちょうどお昼時なこともあって先生は昼食をとっていたみたい。
「ありがとうユウカ、助かるよ」
「いえ、お食事中にお邪魔してしまいすいません」
先生はこちらを向くと優しい顔で礼を言ってくれた。先生は初めて会った時に着ていた籠手や肩当は外していて青いシャツの上に連邦生徒会のような白い上着を着ていた。しかし異質なのは部屋の壁に立てかけられている2振りの剣だ。キヴォトスでは見かけないものだからやっぱり目についてしまう。
「先生は外の世界から来たとお聞きしましたけど、どんなところだったんですか?」
「うーん、そうだなあ。やっぱり銃弾がこんなに気軽に飛び交うような世界ではなかったな。でもキヴォトスとは違って魔法も魔物もいる世界だったから戦うことには慣れてるかな」
「もしかして戦車を切るような真似は、結構な人ができたりしちゃいます?」
シャーレを奪還した日、先生は戦車に撃たれそうな私を助けるために戦車の砲塔を剣で切り落とし無力化していた。あの時の先生の剣の軌跡には虹がかかっていた気がする。ただの剣術じゃなくでどこか不思議な力を感じた気がする。
「俺より強い人はいっぱいいたし、できる人は多いだろうな」
「……すごいところに住んでいたんですね。もしかして危険な目にも結構あったりしてました?」
「冒険をしてたから、いろんな目にはあったかな。どれもいい思い出だよ」
「そういえば、この間は助けてくださってありがとうございました。でもあんまり危険なことはなさらないでくださいね。いくら強いといっても銃に撃たれたら先生でもケガはするんですよね?」
「確かに重症を負う可能性もあるな。心配かけてごめん。……でも、あの時はとっさに体が動いたんだ。たぶん、これから先も誰かが危険な目にあっているなら同じことをすると思う」
「……どうかお体に気を付けてくださいね」
まっすぐにこちらを見られてはこちらもあまり強くは言えない。いくら強いといっても絶対は無いと思う。どうにも心配になってしまってこんな提案をしてしまった。
「私にできることがあれば言ってくださいね?」
ふと気づけばそんなことを言っていた。
「はは……ありがとう、ユウカ」
屈託なく笑う先生に力が抜けた私はふと書類の積まれている机を見たら山がいくつも積みあがっていた。まだ処理が済んでいない書類みたい。まさかこれをすべて一人でやるつもりなのだろうか?
「書類仕事は苦手でさ……まだほとんど終わってないんだ」
「でしたら私が手伝いますよ」
「ほんとうか!? たすかるよ」
書類仕事が苦手なのは本当なようで、一つ手に取るごとに頭を抱えている。表情がなんだか子供っぽいなと少しほほえましく思いながら、自分に割り振られた仕事をこなす。黙々とこなし自分の仕事がひと段落したので、先生のほうを見るとまだ半分くらい残っていた。こちらに気が付くと先生は、慣れるまでにはまだ時間がかかりそうだ、といいながら書類を片付けている。どうにか残りの書類も終わり当初の予定の弾丸の経費も受理されたので、ミレニアムに帰ることにした。
「今日はこれで失礼しますけど、また手伝いに来ますね。いろいろと苦労されそうですし」
「今日は助かったよ。何かお礼をしないとな」
「でしたら、先生のいた世界のお話が聞きたいです。冒険なさっていたといっていましたし、すごく興味があります」
「なにを話すか考えておくかな」
「はい、楽しみにしておきますね」
「ああ、もちろん。今日は助かったよ」
「機会があればミレニアムに来てくださいね。先生のお話に興味を持ちそうな子もいると思いますし」
シャーレを出ると外は日が傾き始めていた。先生はやっぱり不思議な人だ。底抜けなお人よしで、きっといろいろな問題に首を突っ込んでしまうのだろう。そんな先生に感化されたのだろうか、私もついつい首を突っ込んでしまったみたい。
「だから、まずはあの人のことを良く知っていきたいな」