アナザーアーカイブ   作:さかみち

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今回は美食を求めるハルナさんの視点です口調の再現が難しかったので違和感があるかもしれませんが、よろしくお願いします。


心に響いたのは(ハルナ)

 私は今、美食を求めて町を散策しています。時間は夕方ですが、あたりを見回してもめぼしい飲食店は見当たりません。新規開拓のためと、普段あまり行かない場所に来たのがいけなかったみたいですわね。最近は新たな美食に巡り合えていませんし、場所を変えれば何か発見できると考えていましたが、どうやら当てが外れたみたいですわね。仕方がありません、今日は知っている店に行きましょうか。

 

「おーい、ハルナじゃないか。どうしたんだ、こんなところで」

 

「こんばんは、先生。いつもと変わらず、食の探究をしていますわ」

 

 移動をしようとしていると、聞きなれた声の殿方がこちらに歩いてきました。シャーレのアルド先生。私たち美食研究会やほかのゲヘナの生徒が騒動を起こしたときは、時々風紀委員会に協力して指揮をしていますわ。協力しているときには風紀委員の動きが違うのですぐにわかります。さらには私たちが起こした問題の後処理にも取り組んでいるらしく、被害を受けた店の方などからも感謝されているようですわ。私たちもシャーレの調理室をお借りしたり、他校の自治区の飲食店のうわさを教えてもらったり、よくお世話になっていますわ。

 先生のほうを向くと買い物の帰りだったようで、ビニール袋を手からぶら下げていました。見てみると、野菜が袋から少し飛び出していていました。

 

「食材を買っておられますが、先生は自炊をされるのですか?」

 

「ああ・・・今日は久しぶりに料理をしようと思ってさ。昔旅をしたときに料理人からレシピを教えてもらったことがあったんだ。荷物の整理をしていたらそれが出てきたから懐かしくなって作ろうかなって」

 

「あら、気になりますわね。そのレシピに一体どんな料理が書かれているのか」

 

「ハルナは夕食はまだみたいだし。そうだな……食材は結構買ったし、もしよかったら一緒に夕食を食べないか?」

 

 先生の料理の腕はまだわかりませんが、こうして先生と一緒に食べるのもいいかもしれませんわね。先生なら食に対する冒涜を犯すようなことはないでしょうし、楽しく食べられるでしょう。

 

「喜んでお受けしますわ。どんな料理が出てくるか楽しみですわ」

 

「じゃあ、シャーレに帰ったらさっそく料理するよ。行こうか、ハルナ」

 

 先ほどまで気分は沈んでいましたが、こうして未知の料理を食べられるのはとても楽しみですね。夕日が沈みかけて薄暗くなっている町を、先生の横に並びながら歩いていきます。まっすぐ見た先の空と雲はまだ少し赤く、頭上には星がうっすらと見えていました。

 

 

 

「早速準備するよ。ハルナはしばらくくつろいでいてくれ」

 

 シャーレに戻ってきた私と先生は居住区の調理室に入りました。先生は食材を袋から出し、慣れた様子で調理に取り掛かりました。そこまで凝った料理が出てくるとは思っていませんが、先生の様子を見ると想像以上に料理の腕があるようですね。レシピもあると言っていましたし、もしかすると新たな美食に出会えるかもしれませんわ。

 

「先生はすごく料理に慣れていますわね。以前から結構料理はしていたのですか?」

 

「しっかりと料理をし始めたのは、別の世界の住人と旅をすることになったのがきっかけなんだ。旅の途中でワンダーシェフっていうやつと会ってさ。その人に料理を習ったんだ。今日作るレシピもそのシェフからもらったものなんだ」

 

 ……さらっとすごいことを言われた気がしますわ。とにかく、異世界の料理のレシピが一体どんなものなのかを楽しみにしていましょう。

 その後も先生と他愛のない話をしながら時間を過ごしていました。先生は何度も作っていたのが分かるくらい慣れた手際で料理を完成させていました。

 

「お待たせ、ハルナ。これが柔らか角煮丼だ!」

 

「……意外とこちらの世界でも存在している料理が出ましたわね。ですが、とてもおいしそうですわ。いただきます」

 

 まずは一口。……すごくおいしいですわ! お肉は的確な時間と熱で煮てあるため口の中でとろけるような柔らかさ。丼に入っている煮卵もタレの味が染みている。特に肉にかかっているこのタレはお肉のおいしさを邪魔せずに引き立てていて、ご飯との相性も最高ですわ。

 

「先生、ごちそうさまでした。とても美味しかったですわ」

 

「それならよかったよ。口に合わなかったら爆破されるのかなって、少しだけ思っちゃったけど」

 

「いつもそんなことをしているわけではありませんわ。あれは食に対する冒涜があったためです」

 

 食後に先生と楽しく食事の感想や雑談をしました。おいしい料理を食べた後にこうして和やかに話すのも楽しいですわね。

 

「でも口にあってよかったよ。今日は久々にこのレシピの料理を作ったからさ」

 

「とても美味しかったですわ。今日はお世話になりましたし、何かお礼をさせてください」

 

 美味しい料理を無料で頂いたのですから、何かお礼をしなければいけませんわね。

 

「そうだな……だったら、ハルナのおすすめの店を教えてくれないか? あんまり美味しい店を知らないんだ」

 

「そのくらいでしたら……わかりました。今度おすすめのお店を教えますわ。……それで、一つお願いしたいことがあるのですが」

 

「お願いって?」

 

「美食研究会の皆さんにも先生の料理をふるまってはいただけませんか? 先生の料理は美食でしたから、皆さんにも味わってほしくて」

 

「それは構わないよ。だけど、そうだな……作るときにはハルナも手伝ってくれないか?」

 

「私が手伝うのですか? 料理の心得はありますが、先生程は上手くありませんよ?」

 

「これも今回のお礼ってことで頼むよ」

 

「そう言われては断れませんわね。わかりました、私も手伝わせていただきます」

 

 美食研究会の皆さんにふるまっていただく料理の準備を私も手伝うことになりました。今日の先生の料理の手際を見ると手伝いは必要ない気がしますが、どうして私に手伝いをお願いしたのでしょうか。気になりますが、とにかく今はまた先生の料理を味わえることを楽しみにしておきましょう。

 

 

 

 先生の料理をいただいてから数日が経ちました。その間にも私は先生と一緒に、美食研究会の皆さんにふるまう料理の練習をしていました。先生からレシピを見せていただきながら教えていただきましたが、作り方の至る所に工夫と気遣いが感じられて、きっとこの料理もおいしいのが分かります。しかしレシピ通りに作るだけといっても、食材の切り方から火の通し具合までを上手くこなすことはとても難しいものでした。それでも、先生がしっかりとサポートしてくださったおかげで無事に習得することが出来ました。

 

「すごく上達したな、ハルナ! これなら美食研究会のみんなも喜んでくれそうだな!」

 

「先生のおかげです。レシピについても包み隠さずに教えてくださいましたし。あの味ならお店も出せると思いますわよ?」

 

「はは……今は先生で手いっぱいだから、考えてないかな」

 

「残念ですわ。お店を開いたら通いますのに」

 

 先生と練習の成果をたたえ合っていると、もうすぐ美食研究会の皆さんが来る時間になっていました。皆さんが来る前に取り掛かっておきましょう。

 料理をおおよそ作り終えると、皆さんが来る時間になっていました。

 

「ハルナ、先生、来たよー!」

 

 イズミさんの元気な声と共に、他の皆さんも部屋に入ってきました。どうやら皆さんしっかりおなかをすかせているようですね。

 

「皆さんそろったことですし、さっそく食べましょうか」

 

 先生と一緒に作った料理をよそっていきます。今回は私が作った料理もありますし、評価が気になりますね。大きなテーブルに並べていき、全部並べ終えました。

 

「今日は特性キッシュと根菜のポトフを作ったんだ。パンもあるし、いっぱい食べてくれ」

 

 先生の言葉を合図にみんなで食べ始めました。ポトフは私が作ったのですが、我ながらよくできたと思います。

 

「このキッシュもポトフも美味しい! 先生ってこんなに料理上手かったんだ」

 

「喜んでもらえてよかったよ。でもポトフはハルナが作ったんだ」

 

 先生は自分のことのように嬉しそうに私のことを話しました。

 

「会長が作ったの!? これもすごくおいしいよ!」

 

 ジュンコさんが感動したように私に感想を言ってくれています。他の方の顔をみても、皆さんとても美味しそうに食べています。こうして自分の作ったものが他の方に喜んで食べていただけるのは、自分で美食を味わうこととはまた違った喜びがありますね。先生が私に料理の手伝いをするようにおっしゃったのは、もしかしたらこのためなのでしょうか。

 

「みんな食べ終わったみたいだし、食器を片付けてくるよ。みんなはゆっくりしていてくれ」

 

「私も手伝いますわ」

 

 皆さんが食べ終わると先生は食器をまとめて、流し台に持っていきました。料理を作った立場として私も手伝うことにしました。少し先生に聞きたいこともありますし。

 

「先生は、私に料理をふるまう喜びのようなものを教えたかったのですか?」

 

 食器を洗っている先生はこちらの質問を受けると、目元を緩めて優し気な声でおっしゃいました。

 

「こうして誰かのことを考えて作った料理をその人においしいって言ってもらえるのは、すごく嬉しいことだと思うんだ。それで、ハルナにも体験してほしかったんだ。俺もハルナに美味しいって言われたときはすごくうれしかったしさ。」

 

 お節介かもしれないけどさ、と少し恥ずかしそうにおっしゃいました。……ということは、この方は私に料理をふるまった時には。私のことをよく考えて作ってくれていたということでしょうか。そのことを実感すると、確かに先生は私の好みや食材の扱いにもしっかりと注意していた気がします。そう考えてしまうと、先生と一緒に洗い物をしている私の手は水にぬれて冷たいはずなのに、どうにも体温が上がってしまっている気がします。

 確かに、こうして親しい誰かに自分の作った料理をおいしいと言ってもらえた嬉しさは、また感じたいと思っています。ですがそれ以上に、私のことだけを精一杯考えてくださった料理を出してもらえる喜びは、これまで感じたことはありませんでした。

 

「……先生。改めて今回はありがとうございました。この前のお礼のお話ですが、今度おすすめのお店に一緒に行きませんか?」

 

「手伝ってもらったし十分返してもらったと思うけど……そうだな、今度案内してもらおうかな?」

 

 この気持ちを、先生と同じように料理を作ってお返ししたいけれど、まだ先生程料理ができるわけではありません。いつか、先生と同じように、先生のことを精一杯考えて作った料理を食べてほしいですが。今はまだ、一緒に店での美食を味わうことにしましょう。

 

「先生、また料理を教えていただいてもいいでしょうか?」

 

「……! もちろん! いつでも来てくれ!」

 

 先生は嬉しそうに頷いてくださいました。もしかしたら先生は、美食研究会の皆さんにまたふるまうためと思っているのかもしれません。その気持ちも確かにあります。もし今先生のためと知ったら遠慮してしまうかもしれませんし、今はそういうことにしておきましょう。いつか先生にふるまうことを楽しみに、今はこの時間を楽しみましょうか。

 

「美食以外の目標が、一つ増えてしまいましたわね。ですが、ふるまう日が楽しみですわ」




アルドが料理をする描写はテイルズコラボであったので今回こうして話にできました。料理の腕はご都合でかなりうまいということにしています…。

料理をふるまった一件以降、ハルナさんは美食研究会のみんなに料理をふるまうようになったとか。何かおめでたいことがあった時などにたまに自分で料理をふるまって研究会で楽しんだりしているのかもしてるかもしれないです。(ふるまう喜び、ということで)
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