アナザーアーカイブ   作:さかみち

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釣りや魚に関する描写は勉強不足のため違和感が多いかもしれませんが、よろしくお願いします。
美食研究会によるトリニティのアクアリウムの襲撃はメインストーリー内でのことでしたが、話を少し膨らませられそうなので書いてしまいました。


狙いは大物 前半(美食研究会・フウカ)

「なかなか見つからないな……」

 

 横を見ると真っ青な海が目に入る。浜辺では水着の生徒が多くいてみんなが楽しそうに遊んでいるし、空は真っ青で吸い込まれそうに感じるほど高い。活気に満ち溢れているけれど何処かのどかで、夏の雰囲気ってこんな感じなんだなと、また一つキヴォトスの違う顔を知ったかもしれないな。

 

「トリニティ自治区にいる漁師から依頼が来るなんてなぁ……」

 

 シャーレに寄せられた依頼文のことを思い出しながら、太陽に照り付けられているアスファルトを歩いていく。依頼文には、最近厄介な奴が現れて魚が取れなくなってきているとだけ書かれていた。最近不良たちがトリニティで問題を起こしているって話はあまり聞かなかったはずなんだけどな……。

 

「アロナ。確かこの辺りに漁港があるんだよな」

 

『はい、先生。もう少し移動すれば漁港があるはずなんですが……。徒歩だともう少し時間がかかるかもしれません。車で移動できればいいのですが……』

 

「車なんて今まで触ったことが無いからなぁ……。いっそ今から免許でも取るべきかな?」

 

『いいですね! 免許が取れたらいろんなところにデー……、遊びに行きましょう!』

 

 鉄道だどすぐに向かえない場所があることだし、車をつかえるようにするのはいいかもしれない。そう思いながら、アロナとどこに出かけようかなんてことを話しながらしばらく歩いていると、電話に着信があった。

 

『ヒナさんからの着信のようですね。今おつなぎしますね!』

 

 少しの間のあと、ヒナの姿が映し出された。いつもと変わらないしっかりとした佇まいを感じるけど、少しやつれているようにも見える。また徹夜でもしたのだろうか? 

 

『先生、今大丈夫? イオリから今トリニティにいるって聞いたから、ちょっと聞きたいことがあるんだけど……』

 

「どうしたんだ? 確かに今はトリニティにいるけど……」

 

『実は……。美食研究会がフウカと給食部の車をさらっていったと報告があって。ジュリが言うにはトリニティのほうに向かったらしいのだけど……』

 

「今のところ騒ぎは聞いていないけど……。俺も依頼の合間に探してみるよ」

 

『ありがとう先生。いつも協力してもらって……』

 

「ヒナが困っているならいつでも力になるよ。なんだか疲れているみたいだし、そっちに行くときには何かお土産持っていくよ」

 

『うん。楽しみにしてる』

 

 ヒナは少し微笑みながらそう言うと、通信を切った。また無理をしているみたいだし、少しでもヒナの気が軽くなればいいけど……。とにかく今は依頼をこなすためにも、早く港に向かわないとな。そうしてしばらく海沿いの変わらない景色を見ながら歩いていると、車の音が聞こえてきた。歩くともう少し時間がかかるかもしれないし、港の近くまで乗せて行ってもらえないか頼んでみようかな。

 

「おーい! すまないが乗せて行ってくれないかー!」

 

 大きく手を振って運転手にアピールすると、スピードを落としてくれている。どうやら乗せて行ってくれるみたいだ。ゆっくりとこちらに近寄ってくる車には運転手以外にも数人乗っているみたいだけど……。近づいてくると、見慣れた顔が見えてきた。

 

「先生じゃん! どうしたのこんなところで?」

 

 イズミが元気そうにこちらに手を振っている。人懐こそうな笑顔にこちらも笑顔になりながらこちらも手を振り返す。

 

「シャーレに依頼が来ていてな。今から向かうところなんだけど……。もしよかったら途中まで乗せて行ってくれないか?」

 

「先生の頼みでしたら喜んで。少し狭いですが荷台にどうぞ」

 

 ハルナに促されるままに荷台に乗り込むと、美食研究会のほかのメンバーも乗っていた。そういえば、ヒナの話だとフウカは車と一緒に連れ去られたって話だったけど……。

 

「先生……」

 

 力のない声のする方を見ると、フウカが縄で簀巻きにされていた。なんだか目が虚ろだし元気がないぞ……。

 

「フ、フウカ!? 大丈夫か? 今ほどくからな!」

 

「ふふ、見つかってしまいましたね」

 

 楽しそうに笑っているアカリを傍目にフウカの縄を解く。結構しっかり結んであって手でほどくのは結構時間がかかりそうだな。車が動き出すとさらに難しくなりそうだし、剣で切ってしまうか。

 

「フウカ。動かないでくれよ……」

 

「せ、先生……。ありがとうございます……」

 

 縄はすぐに切れてフウカの拘束もちゃんと解けた。簀巻きにされていたのは結構辛かったのか今は少しリラックスした表情になっていた。

 

「ヒナから聞いてはいたけど、フウカをさらって何をするつもりだったんだ?」

 

「最近、トリニティのアクアリウムに幻の魚が展示されているってニュースになってたでしょ?」

 

 ジュンコが団子を食べながら話しかけてきた。つい最近聞いた気がするな……。

 

「確かゴールドマグロだったか? すごく貴重な魚だって聞いたけど」

 

「ええ。美食の探究者として、貴重な食材を観賞用として扱うなんて許せませんわ。ですからこれからそのアクアリウムに行こうかと思っていまして」

 

「まさかゴールドマグロを盗むつもりだったのか!? そうだったら、悪いけど止めさせてもらうぞ」

 

「そのつもりでしたが、こうして先生と出会ってしまいましたし今回はあきらめますわ」

 

「いや……。これからもしないでくれよ……」

 

「先生に会った時は毎回つかまってるし、しょうがないか・・・」

 

 ゲヘナにいるときはよく風紀委員会と協力しているから、騒ぎを起こしたハルナたちを捕まえたこともある。そのせいか美食研究会のみんなは俺が近くにいるときは比較的おとなしいことが多い気がする。先生がいるといつもより平和で助かる、とはヒナの談だ。……俺のいない時でも問題を起こさないでほしいけど、ハルナたちほどの熱意があると難しいのかなあ。

 

「そういえば、どこに向かうの?」

 

「この先の漁港の漁師から依頼を受けていてさ。近くまで頼むよ」

 

「でしたら、近くといわず漁港まで直接送りますわ。何か美味しい魚が食べられるかもしれませんし」

 

「いいのか? だったら俺も、漁港で魚を分けてもらえないか聞いてみるよ。・・・ところで、フウカはどうするんだ? ゲヘナに戻るなら風紀委員会に掛け合ってみるけど」

 

「いえ。ここまで来たことですし、お付き合いします。それに、今乗っている車は給食部のものですし……」

 

「そ、そうだったのか……。悪いけど少し車を借りさせてくれ」

 

 給食部の車で漁港まで移動することになった。考えてみると、こうして車で移動することなんてあまりなかったから新鮮で楽しいな。トラックの荷台にいるせいか、移動していると風が当たるのも気持ちがいい。

 

「車で移動するのも結構楽しいな。免許を取って自分で運転するのもいいかもしれないな」

 

「でしたらその時は、一緒に美食探索に行きませんか?」

 

「ああ。その時は案内してもらおうかな」

 

「私もお願いしますね?先生と一緒に行きたい場所はいっぱいありますから」

 

「結構楽しみにしてくれているみたいだし、頑張ってみるよ」

 

 

 

 しばらく移動していると漁港が見えてきた。あまり大きい場所じゃないのは知っていたけど、なんだか活気が無いように見える。

 

「おお! シャーレの先生か!」

 

「あんたが依頼してきた漁師の人か?」

 

 中に入っていくと漁師の人が出迎えてくれた。やっぱりどこか元気のない感がしているし、魚が取れなくて困っているみたいだな。

 

「早速だけど……。最近厄介な奴が現れて魚が取れないってことだけど、いったいどんな奴なんだ? ここ最近はトリニティで不良が暴れているって話は聞かないけど」

 

「ん? 厄介な奴っていうのは魚のことだったんだけどな」

 

「えっ?」

 

「奴は漁に出た時によく魚影を見るんだ。姿を見たことはないが、かなりでかいのは分かっているんだ」

 

 てっきり誰かが暴れているせいで漁に出られないとか、そういう理由だと思っていたけど……。それだとなんで俺が呼ばれたのか、わからないな。

 

「漁の場所を他に移すのはダメなのか?」

 

「それが、奴がいるせいで他の場所も魚もあんまり寄ってこなくてな……。そのせいで最近はめっきり不漁なんだ」

 

 これは思ったよりも深刻な問題かもしれない。まさか魚に漁を妨害されているとは思わなかったけど、不良たちが悪さをしているのとはまた違った厄介さがあるな。

 

「海にいるのが厄介だよな……。俺はどうしたらいいんだ?」

 

「先生には、やつを釣ってほしいんだ。奴は警戒心が強くて生半可な腕だと竿に引っかかってくれないんだよ。それにかかっても力が強すぎて俺たちだと全く勝てねぇ。それで、シャーレの先生は釣りの腕もかなりいいって聞いたから依頼を出したんだ」

 

「漁師が釣れない魚を俺が釣れるかはわからないけど……。すごく困っているみたいだし、できる限り力になるよ!」

 

「でしたら私たちも手伝いますわ。その魚に興味がありますし」

 

「ゴールドマグロの代わりに何か食べないと、ここまで来た意味がないもんね!」

 

「みんなが手伝ってくれるなら心強いよ」

 

「じゃあ、船まで案内するから乗ってくれ」

 

 漁師に案内されて船まで移動する。俺たちが乗る船はあまり大きくはないようで、俺たち七人でちょうどいい人数のようだ。

 

「漁船に乗るなんて初めて! この船で魚を捕るんだねー!」

 

「ちょっと楽しみかも……」

 

 イズミやジュンコも初めての体験で少し楽しそうにしている。依頼で船に乗ってはいるけど、この経験がみんなにとって良いものになるようにサポートしないとな。

 

「それじゃあ船を出すぞ」

 

 漁師の声と共に船が出る。潮風が体を通り抜ける感覚が気持ちいい。こうしていると、船にのって旅をしたときのことも思い出すな。景色を眺めながら少し昔のことを思い出していると、体に何かが当たる感覚があった。

 

「わわっ! すいません、先生。思ったより揺れが大きくて……」

 

「フウカだったか。大丈夫か? 慣れるまでは俺の腕をつかんでいていいぞ」

 

「あ……ありがとうございます」

 

 フウカは遠慮がちに俺の腕をつかむと、体も少し寄せてきた。なんだか顔が赤くなってるけど、どうしたんだろうか? 

 

「あー! フウカだけずるい! 私も抱き着く!」

 

「イ、イズミ! 急に飛びついてくると危ないだろ!」

 

 勢いよく抱き着いてくるイズミを何とか受け止める。危うく船から落ちるところだった……。やっぱり初めての体験ではしゃいでいるのかな? 

 

「そろそろつくぞ! 先生は準備してくれ!」

 

 漁師の声で緩んでいた意識が引き締まる。魚がどれだけ手強いかは想像がつかないけど、また魚がとれるようにここで頑張らないとな! 

 用意してあった釣り竿を海面に垂らすと、船の周辺に大きな魚影が現れた。船の底からはみ出て見えて、とにかく大きいようだ。

 

「確かにこれはでかいな……」

 

「どうやらこれが例の魚みたいですわね」

 

 しばらく周囲を泳いでいるが、なかなか針にかかってくれない。これは少し我慢比べになりそうだ。過去の旅でも手ごわい相手は多かったが、今回も同じくらい難しい勝負になりそうだ。少し楽しみになってきたと、竿を握る手に少し力が入る。

 

「ところで、もし魚を釣ったらどうするんですか?」

 

「釣った魚は持って行ってくれて構わないぞ」

 

「ちょうどフウカさんもいますし、さばいてもらいましょうか」

 

「食べられる魚ならいいんだけどね……」

 

 俺が釣り竿に集中している間、他のみんなは暇なようであれこれと話をしている。ずっと気を張ってても仕方ないし、ゆっくりと待つことにするか。

 眼に入るのはあたり一面の海と波。どこを見ても穏やかで、こうしているといつもキヴォトスで起きている騒動もなんだか遠い出来事のように感じてしまう。ぼんやりと考えていると、竿に強い力を感じた。

 

「……! 来たか!」

 

 強い引きに対抗するためにこちらも竿を引っ張る。引きは強いがこれなら何とか行けそうだ! 

 

「これなら……! って、うわっ!」

 

「先生!」

 

 向こうの力が強くなって海に落ちそうになってしまったけど、どうやらフウカが支えてくれたみたいだ。

 

「助かるよ! フウカ、そのまま支えててくれ!」

 

「は、はい!」

 

「私たちも力を貸しますわ!」

 

 みんなが支えてくれて、ようやくこちらの姿勢も安定してきた。これならこいつを釣り上げられる! 

 

「もう少しだ……! みんな、踏ん張ってくれ……!」

 

 魚影はすぐそこまで近づいているけど、奴の巨体に竿も糸も長くは耐えられそうにない。このチャンスを逃さないために、最後の力を振り絞って竿を振り上げる。

 

「うおおおお──ー!」

 

 水しぶきと一緒に戦っていた相手の姿が浮かび上がってくる。一瞬の間の後、その魚は勢いよく船の床に落ちてきた。着地の瞬間船が大きく揺れてしまうほどの巨体と重さだったみたいだ。今だ力強く動いている魚に一瞬あっけにとられた後、張りつめていた空気がはじけた。

 

「「「やった────!」」」

 

「やりましたわね!」

 

「これは大漁ですね!」

 

「……俺たちが束になってもかなわなかったこいつを釣っちまうとはな。さすがはシャーレの先生、うわさの通りだったな」

 

「はは。ありがとう。でも俺一人じゃ無理だったよ。みんなのおかげだ。……ところでこいつはどうするんだ?」

 

「約束通りこいつは持って行ってくれて構わないぞ。今まで見たことないような魚だが、マグロみたいだし、こいつは美味いだろうな」

 

 漁師の人も釣れたこと自体に満足そうで、これで漁を再開できる、とつぶやいていた。船の床からはみ出るような大きさの魚だし、運ぶにしてもフウカの車を借りないといけなさそうだな。まだみんなと喜びあっているフウカたちのほうを見ると、なんだかハルナが不思議そうな顔をしていた。

 

「どうしたんだハルナ。不思議そうな顔をして」

 

「……先生。今日私たちがトリニティまで来た目的を覚えていますか?」

 

「ん? 確かゴールドマグロを盗みに来たとか言ってたよな」

 

「ええ。ですから事前にどのような魚か調べていたのですが……。なんだかこの魚はそのマグロと瓜二つでして……」

 

「えっ! ってことはハルナたちの当初の目的も達成できたってことか!?」

 

「みなさんにも聞いてみたほうがいいでしょうが、ここまで似ている魚はほかに知りませんし、まず間違いと思いますわ」

 

 なんだかハルナもすごくうれしそうだな。いつも騒ぎを起こしたときは捕まえてしまっているけど、これからも今回みたいに一緒に喜び会えたらいいな。

 その後船で港まで引き返した後、魚を船から運び出した。みんなの表情も達成感と期待に満ちているみたいだ。

 

「魚をここで捌くわけにもいかないけど、どこに持って行こうか……」

 

「それでしたら食堂までもっていってもいいですか? あそこなら設備も整っていますし」

 

 そういえばハルナたちはフウカをさらってきたって話だったけど、このまま帰ったらつかまったりしないか……? みんな浮かれてて気づいていないみたいだけど……。




思ったより長くなったため前半後半という感じで分けます。
キャラの描写に違和感があるかもしれませんが、ご都合展開ということでお願いします。(ハルナたちがアルドがいるだけで襲撃をやめてしまうことなど)
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