ついでに、勢いで始めたこの小説に色がついたこともすごく嬉しいです。応援してくださった皆様、ありがとうございました!これからも自分なりに頑張って書いていくつもりなので、応援よろしくお願いします!
ヒナについての話にするつもりでしたが、思ったより他の生徒の話も入ってしまいました。どうぞよろしくお願いします。
巨大なマグロに占拠され狭くなった荷台で、フウカ達は身を寄せ合いながらみんなで熱心に話し合っている。話題は当然、ゴールドマグロをどうやって食べるかについてだ。
「やっぱりここは刺身でいただきましょう!」
「これだけの大きさなんだし、いろいろな料理を作ってみたいけど……」
他のみんなもそれぞれ食べたいものを好き放題言っている。こうして賑やかに話しているところを見ると、一緒に釣ることが出来てよかったと思う。しばらくはみんなと話しをしながらゆっくりと過ごそうかな。
みんなの話を聞きながらのんびりしていると、ゲヘナの自治区が見えてきた。いつ見てもでかい学校だと思う。生徒がそれぞれ自由に活動する校風は、個人的にはいいと思っている。ただ、騒動を起こす子が多いから大体の場合、取り締まる側になってしまうけれど。
「私は車を車庫に戻してから厨房のほうに向かいますね」
「わかった。じゃあ、魚は厨房に運んでおくよ」
無事に給食部に着いた俺たちは、魚をさばくために厨房に運ぶことにした。ゴールドマグロを大きな荷車に乗せて、美食研究会のみんなと押していく。……そういえば、魚を運んでいたせいで、ここに来るまでにもかなり注目されていたな。俺も魚は食べたいし、誰かに襲われるようなことにならなければいいけど……。
少したって、無事に食堂に魚を運ぶことが出来た。後はフウカを待ってから調理を始めようかな。それまでに騒動が起きなければいいけど……。
「動くな! 美食研究会がここにいるのは分かっているぞ!」
「イ、イオリ!?」
嫌な予感が当たってしまった。声のする方を見るとイオリやほかの風紀委員が押しかけてきていた。
「あら、ばれてしまいましたか」
「あれだけ大きな魚を運んでたらこうなるよなあ……」
「なんで先生が一緒に居るんだ? もしかして美食研究会を捕まえてくれたのか!?」
「違うんだ。実は、ハルナたちはシャーレの依頼を手伝ってくれてたんだ」
ハルナたちがフウカをさらったのは事実だけど、フウカも無事だし騒動を起こさずに帰ってきている。このまま捕まってしまうとマグロは没収されてしまうだろうし、何とか説得してみよう。
「イオリ。フウカも無事だし、今回は見逃してくれないか?」
「確かに今回はフウカ以外に被害は出ていないけど……。肝心のフウカは?」
「今は車を車庫に戻しに行っているはずだけど……」
「先生、戻りました! 早速マグロをさばきましょう!」
少し緊張している雰囲気の中、フウカの元気な声が聞こえてきた。ずっと調理するのを楽しみにしていたし、すごく元気そうだ。
「あれ、どうして風紀委員もいるの?」
「フウカが連れ去られたから助けに来たんだと思うけど……」
「そういえば、私捕まってましたね」
カラっと言い放ったフウカはイオリたち風紀委員会のほうに歩いていった。今回のことは気にしていないようだし、美食研究会を捕まえないでほしいと言いに行ったのだろうか。ここで戦闘が起こるとマグロも巻き添えをくらいそうだしな……。
「被害者本人がそういうなら、今回は拘束しないけど……」
「助かるよ。そうだ! イオリたちも食べていかないか? 珍しいマグロなんだけど……」
「誘ってくれるのは嬉しいんだけど……、まだ見回りがあるんだ」
「だったら、俺も手伝うよ! フウカ、調理のほうは手伝えなくて悪い」
「あはは、先生らしいですね。こちらは私たちでやっておきますので、見回りが終わったら来てくださいね」
そういうとフウカはハルナたちを連れて厨房のほうに向かっていった。背中を見ても気合が入っているみたいだし、みんな忙しくなりそうだな……。
「よしいこう、先生。今日はいろんなところで事件が起こってるから、来てくれて助かったよ」
「イオリたちが困っているならいつでも力を貸すよ。なんでも言ってくれ!」
「な、なんでもって……。いつも手伝ってもらってるし、そこまでは頼れないって!」
「そうか。でも、いつでも頼ってくれていいからな!」
「……やっぱり、何か頼めばよかったかな」
なんだかイオリの顔が少し赤いし、なんだか少し残念そうに見えるけど……。少しするとイオリの機嫌も戻ったようで、しっかりとした足取りで見回りをし始めた。今からは危険なことも起きるだろうし、しっかりと気を付けて行動しないとな。
しばらく時間が経って、一通りの見回りが終了した。イオリの言っていた通り、なんだか今日は騒ぎが多かったな。
「ようやく見回りが終わったな……。いつも思うけど、これをずっとやってるイオリたちはすごいな」
「大変な時には委員長にも出てもらってるし……。とにかく、今日はありがとう先生。おかげでかなり早く見回りが終わった」
「イオリたちが頑張ったからだよ。お疲れ」
隣を歩くイオリは少し照れ臭そうにはにかんでいる。初めて会った時から考えると、こうしてイオリと隣り合って歩けるように何なんて思わなかったな。そう思いながらふと横を向くと、少し上目になりながらこちらを見ているイオリと目が合った。少し驚いたように目を泳がせた後、イオリは何かを決心したような表情で声をかけてきた。
「先生。少し相談があるんだけど」
「ん? どうしたんだ?」
「さっきは、私たちで解決できないことは委員長に助けてもらってるって言ったけど……。それだけじゃだめだって、ずっと思ってたんだ」
「イオリ……」
「先生が来てからの委員長は前よりも雰囲気が柔らかくなったし、少しだけど笑うようになった。なんだか楽しそうなんだ。だから……その……、もっと力になれるようになりたいって思ったんだ」
「……ヒナが聞いたらきっと喜ぶと思うよ」
「来年には委員長も卒業だし、もっとしっかりしないといけないっていうのもあるんだけど……」
イオリは少し目線をそらし、顔を赤くしながらそう付け加えた。なんだかその言葉は照れ隠しに聞こえるけど、これは言わないほうがいいんだろうな。
「だから、先生にも力を貸してほしい。まだ具体的にどうするかは決まってないけど……、一緒ならできる気がするから」
「……もちろん、喜んで手を貸すよ!」
「うん。頼りにしてる」
イオリは柔らかく笑いながら、少し前を歩きだした。足取りは軽やかで、さっきまでの悩んでいた雰囲気は感じない。前にいるイオリの背中を見ていると、真っ赤な夕日が目に入った。……なんだかいつもより背中が大きく見えるな。ふとした時に感じる成長を、なんだかすごくうれしく感じてしまう。
「先生、行こう。マグロが待ってる」
「ははは、やっぱり楽しみだったんだな」
給食部に着くと、テーブルにはゴールドマグロの刺身や魚料理がたくさん並んでいた。風紀委員や、どこかでうわさを聞いたのだろう生徒たちもそれぞれ席に座っている。賑やかになった食堂を見渡していると、フウカやジュリがあわただしく準備をしていた。
「かなり人が多くなってるな……。フウカ、何か手伝おうか?」
「あ、お帰りなさい先生。今はハルナたちも手伝ってくれているので、席でゆっくりしていてください」
そういうとフウカはまた慌ただしそうに準備をしにもどった。準備はフウカ達に任せて俺は少し休もうかな。
「先生。良ければこちらに座りませんか?」
声のする方を向くと、チナツがこっちに向かって小さく手を振っていた。どうやらイオリたち以外の風紀委員も遊びに来ていたようだ。チナツのほうに歩いていくと、他の委員の子も手を振ってくれた。
「チナツたちも来てたんだな」
「ええ、先生やイオリたちのおかげで少し余裕ができましたので。先生が釣った魚、楽しみにしていますね」
「ああ、楽しみにしていてくれ」
ふとあたりを見回してみると、ヒナの姿がいないことに気づいた。今日連絡を取った時にも元気がなさそうだったし、できればここにきて気分転換でもしてほしかったけど……。
「なあ、チナツ。ヒナはここには来てないんだな」
「ええ……。委員長はまだ仕事があると言って、執務室にいます。私のことはいいから楽しんできて、とも」
「そうなのか……。ヒナにも楽しんでほしかったけど……」
「……先生。もしよろしければ、後で委員長のもとに食事を届けていただいてもよろしいですか?」
「ん? もちろん構わないけど……。チナツはいかないのか?」
「ええ。先生が来た方が委員長も嬉しいでしょうから」
チナツはなんだか少し楽しそうに笑っている。なんだかわからないけど、後で少し様子を見に行ってみようかな。
フウカ達はいろいろと料理をしてくれたみたいで、魚料理以外にもご飯やパンなども用意してくれていた。ずらりと料理が並んでいるテーブルを見ると、なんだか宴会の様だな。
美味しい料理を味わっていると、ハルナたちがこっちに来ていた。
「さすが幻の魚。まさに美食ですわね。フウカさんの腕がいいのもありますが」
「ああ。すごくおいしい。フウカはすごいよな」
「その言葉、ぜひフウカさんに言ってあげてくださいね。ところで、こちらの料理は食べましたか? よろしければどうぞ」
そういいながらハルナは料理を差し出してきた。箸同士で料理をつかむのはいけないんだったよな……。ハルナに持ってもらって、そのままいただこうかな。……うん、美味しいな。
「ありがとうハルナ。これもすごくおいしいよ。なんだか丁寧に味付けがされていて、料理に対する情熱を感じるよ」
「あ、ありがとうございます……。実はその料理は私が手伝ったものでして……。お気に召していただけて嬉しいですわ」
「へえ……! すごいじゃないか!」
ハルナの顔はなんだか赤いけれど、すごくいい笑顔をしている。もしかしたら上手く料理できたのが嬉しかったのかもしれないな。
その後もみんなでそれぞれ好きな料理を食べたり、それぞれのおすすめを教え合ったり、みんなで賑やかな時間を過ごした。一通りの料理を食べた後、フウカに会いに調理場に向かった。
「先生。料理はどうでしたか? 今日はハルナも手伝ってくれたんですよ」
「もちろん美味しかったよ。ハルナもすごく上達したんだな」
「ハルナは最近よく料理を教わりに来ていますから。それを聞いたら、きっと喜びますよ」
「ああ、また改めてお礼を言わないとな。フウカも、今日はありがとうな」
「こちらこそ、今日は貴重な体験をさせてもらいましたから。その……もしよければ、今日みたいに料理を食べてほしいのですが……。今度はシャーレに料理を作りに行ってもいいですか?」
明るい笑顔を見せていたフウカが顔を赤くして少し恥ずかしそうに質問をしてきた。
「ああ。もちろん構わないけど……。いいのか?」
「先生はとても美味しそうに食べてくださいますから。私としても作り甲斐があるんです! ……もちろん、それだけじゃないですけど……」
「えっ? なんて言ったんだ?」
「い、今のは忘れてください! ……と、ところで、他に何か用があったんじゃないですか?」
「ああ。今日の料理をヒナにも食べてほしくてさ。いくつかもらっていってもいいか?」
「もちろんです! 張り切って作りすぎちゃいましたから。いっぱい持って行ってください!」
そういうと、料理を素早く包んでくれた。ちゃんときれいに盛り付けてあって、食べる人への気配りが感じられる。これならヒナも喜んでくれそうだ。
「どうぞ! ヒナさんも喜んでくれるといいんですが……」
「ありがとう! フウカの料理はおいしいから、きっと喜んでくれるよ」
「えへへ……。ありがとうございます」
料理を受け取った後、いつもヒナが仕事をしている執務室まで移動をすることにした。結構な時間が経っていたのか、外に出るとあたりはすっかりと暗くなっていて、月がはっきりと見えていた。執務室をノックしてみると、やけに大きく音が響いた気がした。
「ヒナ。少しいいか?」
「せ、先生!? ちょっと待って!」
中から慌ただしく物音がした。少しの間待っていると、扉が少し開いてヒナの顔が少しだけ覗いてきた。
「どうしたの、先生? イオリやチナツ達と食事をしているんじゃなかったの?」
「すごくおいしかったからヒナにも食べてほしくてさ。持ってきたんだ」
そのままヒナに扉を開けてもらって、部屋の中に入ることにした。部屋の中は机のほかにめぼしいものは無くて、寂しい印象を受けてしまう。
「ごめんなさい。書類が散らかってて……」
「これ全部ヒナが片付けるのか……。なにか手伝えればいいんだけど」
「先生にはイオリたちをいつも手伝ってもらってるし、それだけでもすごく助かってる」
ヒナの表情は確かに少し明るい。それでもこうして夜になるまで仕事をしているわけだし、心配になってしまう。
「とりあえず、料理を置くか。どれも美味しいから楽しみにしていてくれ」
「うん。ありがとう」
ヒナは黙々と料理を食べ始めた。俺も今はやることが無いので、とりあえずヒナのほうを見ていた。
「せ、先生……。そんなにみられると恥ずかしい……」
「あっ、ごめん。なんだか食べてるヒナが可愛くてさ」
「……先生はすぐそういうこと言うんだから」
ヒナは恥ずかしそうに顔を少しそらしている。……なんだか小さい動物がご飯を食べてるような愛嬌があって、ついついじっと見てしまった。ずっと見てるのは失礼だったな。
ふと、今朝連絡したときのことを思い出した。今朝あった時にも顔色が悪く感じたけど、今はもっと悪そうに見える。また自分で仕事を抱え込んでいるのかもしれない。
「なんだか体調が悪そうだし、仕事を手伝ってもいいか?」
「気持ちは嬉しいんだけど……。残っている書類は私がやらないといけないものだし……。それに、今日は先生にイオリたちを手伝ってもらったから、これでも少ない方」
ヒナの表情は少し気楽そうに見えるし、本当に今日は少ないのだろう。
「それに……。実は最近、風紀委員のみんなが少しだけど手伝ってくれてるの。そのおかげもあって、ほんの少しだけど仕事が減っているの」
「へえ……! いいことじゃないか。何がきっかけなんだろうな?」
「それは……多分先生のおかげだと思う。先生は初めて会った時から、よく私のことを心配してくれてたでしょ?」
「まあ、ヒナはいつも忙しそうだし……。よく無理をしているから、心配になることが多いな」
「みんなもそんな先生をみて、少しづつ私のことを気にしてくれるようになったみたい。イオリなんて特に、最近は張り切って活動しているみたいだし……。だから、その……ありがとう」
ヒナは少し言いよどみながらも、まっすぐとこちらを見てお礼を言ってくれた。少しでもヒナの力になれていたみたいで、すごく嬉しいな。そう思っていると、ヒナは小さな拳を俺の目の前に突き出してこう言った。
「先生は今までずっと心配してくれていたけど、これでも少しづついい方向に向かっているの。だから、これからは信じて見守っていてくれない? 」
自信ありげに拳を突き出す姿は、なんだか年頃の子供のようにも、頼りがいのある大人のようにも見えた。ヒナの白い髪も月明りに照らされてすごく神秘的で、大人の様な雰囲気をまとっている。……イオリの時もそうだけど、ふとした瞬間に成長を感じると、こうして先生をしていてよかったと心の底から思う。
「ああ。約束だな……!」
「それで、少し時間ができたら……。どこかで一緒に遊ばない? 今日美食研究会と釣りに行ったって聞いた時、少し羨ましかったから……」
「もちろん! せっかくだし、一緒に釣りでも行こうか」
「うん……! 楽しみにしてる……!」
しばらくの間、ヒナと二人で料理を食べながら何をするかを話し合っていた。気づけば夢中になっていて、仕事のことを思い出すころには他の風紀委員の子たちも帰ってきていた。委員長が仕事を終わらせていないなんで珍しい、となんだかほほえましい表情でこちらを見ている子が多かったな。そんな子たちもヒナの仕事を手伝っていて、改めていい方向に向かっていることを実感した。ヒナの表情も、なんだか豊かになってる気もする。今のヒナは楽しそうに見えるし、これからもヒナの成長を見守っていけたらいいな。
「ありがとう……。先生」
最初はヒナにあーんする話にするはずだったのに気づいたらなんか別の話になってしまいました。あーんで大物(ヒナ)を釣る。みたいな感じで。
アルドはお酒を飲めない年齢ということは原作内で判明しているため、大人とは言えないかもしれません。そのため、原作先生のような導く立場の人として書いてはいません。どちらかというとアルドの行動によって感化された生徒が成長していく、生徒と近い目線で一緒に悩んで進んでいく、といった描写のほうが自分の中ではしっくり来ています。そのためイオリやヒナがアルドをきっかけに自分なりの道を歩いていく、という風な話を意識して書いています。自分の力不足もあってしっかりと描写できているかは不安なのですが、楽しんで読んでくださったら嬉しいです。