アナザーアーカイブ   作:さかみち

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いつの間にかアナデンが8周年!アナデンもブルアカも細々と続けていく所存です。
なんかいつもの倍ぐらいの長さになってしまいましたが、読んでくれたら嬉しいです。


セイレーンの歌声

「これって……」

 

 海底でのんびりとお散歩をしていると、里の近くに時空の穴が開いているのを見つけた。これはどこか別の時代につながっているものだし、もしかしたら何か危ないものが里に来てしまうかもしれない。だったら私が確認しようと、穴に飛び込んだ。

 

「もしかしたら、アルドちゃんのように穴の向こうで何か素敵な冒険が待っているかもしれないわね」

 

 今もどこかで誰かを助けているだろう青年の姿を思い出しながら、光の中に入っていく。ほんの少しの不安と、大きな期待を胸に。

 

 

 

 

 

 

 時空の穴を通り抜けると、そこも海底の中だった。ただ、北方の海と違って海は暖かいし、雰囲気も違うように感じる。

 

「やっぱり、別の時代に来たのかしら……」

 

 通ってきた時空の穴を見ても、しばらくは消える気配がない。帰れなくなる心配はなさそうだし、少し周りを探索してみましょう。

 

 すいすいと海面まで泳いでいくと、少し遠い場所に海岸と建物が立ち並んでいるのが見える。夜空を見上げると、大きな月が海面を優しく照らしている。見慣れない場所での不安も、この美しい光景の前では和らいでいく。いつか月に行ったときのことを思い出して、つい歌を歌ってしまいたくなった。

 

 波に揺られて少しずつ海岸に近づいていく。今ここには誰もいない。私が歌うと気を使ってくれた里の子たちも、一緒にあの子に歌を届けた仲間たちも。でも、誰かに私の歌が届くことはもう知っている。だから、今はきれいな景色を見て感じるままに歌ってみたくなってしまったの。

 

「すごくきれいな歌声……でも、一体だれが……」

 

 

 

 

 

 最近、生徒たちの間で妙な噂が広がっているようだ。夜の海岸で不思議な歌声が聞こえるという。当番に来る生徒や依頼を受けた先でも、少しずつ耳に入るようになってきた。少し気になってアロナに情報を集めてもらうと、予想以上に噂は広まっているようだった。

 

「どうやら月のきれいな夜に海岸できれいな歌声が聞こえるという噂から、どんどん尾ひれがついてしまったみたいですね。先生、これ見てください」

 

 まとめてもらった情報には、驚くほど多くの目撃情報が記録されていた。海で亡くなった少女の霊が人を海に引きずり込もうとしているとか、人魚が人を惑わそうとしているとか、様々な憶測が飛び交っている。それでも一貫しているのは、月明かりの下できれいな歌声が聞こえるということ。

 

「歌が聞こえるってことは、間違いなく誰かがいるってことだよな」

 

 ネットの噂だけではわからないことも多い。少し辺りを歩いて人から話を聞いてみようと、そう思って近くに置いていたオーガベインに手を伸ばす。剣を身につけながら立ち上がると、アロナが声をかけてきた。

 

「先生! イオリさんからメッセージが来ていますよ! どうやら歌声の噂についてみたいですね」

 

「そうか。助かるよ、アロナ」

 

「私は先生の秘書ですから!」

 

 色んな機能がありすぎる機械をうまく使えない俺に代わって、メッセージの通知から地図の見方、支払いの方法まで、いろいろとサポートしてもらっている。楽しそうに笑うアロナの姿に感謝しながら、画面に表示されたメッセージを読む。

 

『最近噂になっている海岸の歌声って知ってる? 最近風紀委員でもその噂が問題になっててこれから調査するつもりなんだけど、その海岸がちょうどゲヘナとトリニティの自治区間にあるんだ。今は微妙な時期だし、先生にも手伝ってほしいんだけど』

 

 つい先日、エデン条約をめぐる事件が起きたばかりだ。結局、今もエデン条約は結ばれておらず、ゲヘナとトリニティの確執は解消されていないままだ。こんな状況で二校の間で新たな問題が起きてしまえば、二度と関係が修復できなくなるかもしれない。

 

 .もしかしたら考えすぎなのかもしれない。それでも、今自分にできることがあるのなら、やるべきだ。

 

『もちろん俺も手伝うよ。何か大きな事件が起こる前に噂の元を突き止めないとな』

 

『ありがとう! じゃあ、すぐそっちに向かうから!』

 

 

 

 

 

「先生、来たぞー」

 

 しばらく後、イオリがシャーレにやってきた。今は夏休みの真っ最中、移動している間相当暑かったのかイオリもかなり汗をかいていた。

 

「お疲れ。お茶でも飲むか?」

 

「あ、うん。もらおうかな……」

 

 お茶を持っていくと、汗をタオルでふきながら涼んでいるイオリが目に入る。そういえば、今は夏休みだからなのか外で見る生徒は私服ばかりだけど、イオリはいつもの制服姿のままだな。

 

「今日も風紀委員の活動だったのか?」

 

「うん。夏休みだからいつもより浮かれてる奴らが多くて、いつもより忙しいな。おまけに今回の件で夜にも活動があったりするし……」

 

 疲れているのか、机に突っ伏しながら俺のほうを見ているからか。いつものようなしっかりとした雰囲気が少し薄れて見えた。

 

「もう少しゆっくりしていくか?」

 

「うーん、そうしたいけど……。今回の件、結構厄介なことになってるから早めに動きたいんだ」

 

「いろんな学校の生徒が集まってるって聞いたけど、それが原因か?」

 

「うん。特に今は夏休みで浮かれてる奴らが多いから、もうすでに喧嘩も何回か起きてるんだ」

 

「なるほど……。それで、俺は風紀委員と一緒に取り締まりに加わればいいのか?」

 

「それはほかの部員がやる。先生は私とほかの数人で噂の元を突き止めに行ってほしいんだ。真実が広まればこの噂話も収まるはずだし」

 

「もちろん協力するけど、なんで俺を誘ったんだ? 調査に行くだけなら俺が居なくてもよかったんじゃないか?」

 

「ヒナ委員長もそういってたけど……。先生っていつも騒動に巻き込まれてるから、一緒に居たら噂の元のほうからやってこないかなって」

 

「……なんだか喜びにくい理由だな」

 

「あははっ! もちろんそれ以外の理由もあるけど……。それは内緒だ!」

 

「なんだよ、変なイオリだな」

 

 なんだか楽しそうにしているイオリを少し訝しんでいると、イオリは勢いよくお茶を飲み干して立ち上がった。

 

「もうすぐ日が暮れるし、そろそろ現場に向かおう、先生。……ちょっとは涼しくなったかな?」

 

 

 

 

 

 

 夕方、噂の海岸に来てみると、すでに20人ほどの人が集まっていた。話に聞いていた通り、ゲヘナやトリニティ、他にもいろんな学校から来ているせいか、少し空気が重苦しい気がする。この雰囲気だと喧嘩が起こったというのも納得だ。肝試しに来た集団から少し離れた場所には風紀委員と、なぜか正義実現委員会の制服を着た生徒も見える。

 

「正義実現委員会もいるんだな」

 

「言い忘れてたけど、トリニティも問題視しているみたいで、問題対処のために待機しているんだよね」

 

 空気が重苦しく感じたのは多分これのせいもあるんだろうな……。思った以上に大きな問題になってしまいそうだし、早く解決しないとな。

 

「そろそろ始まる時間だ。歌が聞こえ始めたら調査開始だ。しっかり聞いておいてよ、先生」

 

「みんなが聞きに来るほどの歌なんて、どんなものなんだろうな……」

 

 辺りから話し声が消えて、波の音だけが聞こえるようになって数分がたった。しばらく周りに合わせて静かにしていると、波が音を乗せているかのように、だんだんと歌がハッキリと聞こえてきた。

 

「これが噂の歌か?」

 

「ああ。いい歌だよな……。誰かに優しく抱きしめられてるような感じがして……」

 

「確かに、きれいな声だな……」

 

 イオリが言ったように、優しく包み込んでくれるような感じがして、いつまでも聞いていたくなる。けれど、どこかで聞いたことがあるような、少し懐かしい気持ちにもなる……。

 

「行こう、先生。今日こそ捕まえないと」

 

 

 

 

 

 歌声は海岸でよく響いているのか、辺りを見わたすと誰もが歌に聞き入っていた。この様子を見ていると、シャーレで聞いたような悪い噂が本当だなんて思えないな。

 

「そういえば、こんなに歌がはっきり聞こえるんだし、姿を見た人はいないのか?」

 

「それなんだけど、見たって人はいるんだ」

 

 どうやら、歌っていると思われる人影を何人かは見たらしい。ただ、少し目を離すといつの間にか姿が消えているらしく、どんな顔や姿だったのかはわからないのだとか。

 

「しかも、消えるときに何かが海に入るような音が聞こえたって話もあるんだ。だからここで亡くなった少女の霊だとかへんな噂が立ってるんだよ」

 

 幽霊なんているわけないのに。そう言い切っているイオリの顔はほんの少しこわばっているようにも見える。幽霊か……実際に見たことあるなんて言わない方がいいよな。

 

「けど、幽霊とかじゃないなら一体誰が歌ってるんだろうな」

 

「これだけ歌が上手いんだし、歌手志望の生徒とかじゃないのか? ……とにかく、捕まえてみればわかるだろ」

 

 イオリと歌の聞こえる方向に歩いていくと、今はあまり使われてなさそうな古い感じの埠頭が見えてきた。木の板や小舟など、どれもどこか壊れている状態で放置されているものが目に入る。歌はこの近くから聞こえてくるみたいだけど、どうしてこんな場所を選んだんだろう? 

 

 満月の月明りに照らされる中を見わたしていると、イオリが俺の服を引っ張ってきた。

 

「……いたぞ、先生」

 

「本当か!?」

 

 イオリの指さす方向には確かに人影が見える。座っているのか、見えるのは上半身のシルエットだけだ。髪は長くて、時折風に揺られているように見える。

 

「行こう、先生。この噂の真相を突き止めるんだ」

 

 銃を構えたイオリが俺の返事も待たずに人影に向かって走って行ってしまった。

 

「風紀委員だ! お前がここ最近海岸で歌っている奴だな!」

 

「きゃっ!」

 

 人影はイオリの剣幕に驚いたのか、海に飛び込んでしまった。イオリも海に落ちたのは予想外だったのか、かなり慌ててしまっている。

 

「どうしよう、先生! まさか海に落ちるなんて……」

 

 ……海に落ちたというより、自分から飛び込んだように見えたような気もするが。いや、今はとにかく安全かどうかを確認しないと! 

 

「俺は溺れていないか確認する! ほかに人手がいるかもしれないから、イオリは風紀委員に連絡してくれ!」

 

「わ、分かった!」

 

 上から海面を覗いて見るけど、静かに波を立てている以外に特に変化はない。

 

「まさか溺れたんじゃ……!?」

 

 迷っている暇はない。すぐにでも助けにいかないと。そう思って服はそのままに俺は海に飛び込んだ。入った瞬間が少し冷たく感じたけど、すぐに慣れてきた。そのまま大きく息を吸い込んで海に潜って辺りを見わたす。辺りは暗くてあまり見えないけどまだ遠くに流されたりしていないはずだ。……そのはずなのに人影はどこにも見えない。

 

「くそっ、どこにいるんだ!」

 

「どうしたの?」

 

「さっきここで海に入った人がいたんだ。海から上がってこないからもしかしたら溺れたんじゃないかって……えっ?」

 

 聞きなれた声が聞こえて、いつもみたいに答えてしまったけど、本来ここで聞くはずの無い声だ。よくわからない状況に混乱しながらも隣を見ると、優しく見守るような表情でこちらを見ているピチカの姿があった。

 

「ピチカ!? なんでここに?」

 

「私もアルドちゃんがなんでここにいるのか気になるけど……。今はとにかく陸に上がりましょう?」

 

 

 

 

 

 ピチカに手を引かれながら陸に上がる。服を着たまま海に入ったせいで服が肌に張り付いて少し気持ち悪い。

 

「なあピチカ。ほかに海に入った人はいなかったか?」

 

「私とアルドちゃん以外には誰も入っていないはずよ?」

 

「そうか……良かった。でも、ピチカはどうしてここにいるんだ?」

 

「実は、里の近くの海に時空の穴が出来てて……。それで、危険がないか確かめようと思って飛び込んだらここに行きついたの」

 

「埠頭で歌ってたのはピチカだよな?」

 

「それは……。ここでみた景色がとてもきれいで、つい歌いたくなったの」

 

 嬉しそうに、少しだけ恥ずかしそうにしている。キヴォトスにきてまだそんなに時間が経ったわけではないけど、好きになってもらえたんだと思うとうれしくなる。

 

「それで、アルドちゃんはなんでここに? また旅をしてるの?」

 

「今俺はこの世界、キヴォトスで先生として働いているんだ。それで、この海岸で歌声が聞こえるって噂の調査に来たんだけど……」

 

「それで、私を探しに来たのね……。ごめんなさい、こんなに大事になってるなんて思わなかったわ……」

 

「ピチカ……。そんなに気にすることもないさ。みんな面白がって来てる人ばっかりだったし。それに……」

 

 落ち込んでいるピチカを励まそうと言葉を続けようとしたとき、イオリの声が聞こえてきた。

 

「おーい、先生! みんなを連れてきたぞ!」

 

「イオリ! こっちだ」

 

 ピチカと話していると、イオリがほかの風紀委員を連れてやってきた。中にはヒナの姿も見えるけど、海岸で見た待機組には居なかったはずだよな。

 

「海に落ちた奴はどうなっ……た……」

 

 イオリも、ほかのみんなもピチカの下半身を見て固まってしまった。キヴォトスにはいないもんなぁ……。

 

「あらあら、セイレーンが珍しいのかしら?」

 

「珍しいどころじゃないんだよなぁ……」

 

「もしかして、その人は先生の知り合いなの?」

 

 みんなが混乱する中、ヒナが冷静な声で質問してきた。こうして冷静に状況を確認してくれるのは助かるな。

 

「ああ。ピチカは俺の仲間なんだ。それで、さっき海に落ちた人影もピチカだったみたいだ」

 

「そう、なら良かったわ。その人も先生も危ない目にあわなくて」

 

「ふふふっ、優しいのね? あなた、お名前は?」

 

「……空崎ヒナ。好きに呼んで」

 

「ヒナちゃんね? ほーら。いい子、いい子」

 

 いつもピチカが里の子供を甘やかすようにヒナの頭を撫で始めた。いつも撫で慣れているからなのか、絶妙な力加減で撫でていることが見ていてわかる。

 

「……恥ずかしいのだけれど」

 

 ヒナも恥ずかしいと言っているけど、振りほどこうとする様子はない。もしかして、意外と撫でられるのが好きなのかもしれないな。

 

「……とにかく、詳しく事情を聞きたいからついてきてくれないかしら。先生もいい?」

 

 ピチカに撫で終えられた後、ヒナは少し恥ずかしそうに顔を赤くしながら髪を整えていた。……いつもの調子を取り戻そうと表情を固くしながら。

 

「ああ、もちろんだ。とりあえず、待機しているほかの風紀委員と合流しようか」

 

 

 

 

 

「おい! 喧嘩売ってんのか!?」

 

「そっちこそ! お前らが騒がしいせいでよく聞こえなかったじゃねぇか!」

 

 人の集まっている海岸に戻ると、なんだか騒がしい。どうやらそこらかしこで喧嘩が起こっているみたいで、銃声も聞こえ始めている。風紀委員会と正義実現委員会も収めようとしているけど、お互いを意識しているのか動きが悪い。

 

「まずはここを制圧しないと。イオリ、いくわよ。先生とピチカはそこで待ってて」

 

「待って! ……あの子たちは、私の歌を聞きに来てくれたのよね?」

 

「ええ。ほとんどはそのはずよ」

 

「だったら、私に任せてくれないかしら?」

 

「どうするつもりなんだ?」

 

 何も言わず、俺の目を見てうなづくと争っている集団の前に進んだ。大きく息を吸うと、いつも誰かに微笑みかけている時と同じ穏やかで優しい表情のまま、歌い始めた。

 

「なんだ……?」

 

 その声は喧嘩の音に負けずに辺りに響き渡り、みんながピチカに注目し始める。最初は戸惑っていた人たちも、ピチカの優しい声を聞いてだんだんと喧嘩をやめていき、騒ぎの声は小さくなっていった。

 

「なあ、あの歌って……」

 

「いつもここで聞いてた歌だよな?」

 

 みんな聞き覚えがあるのか、いがみ合っていた人たちがお互いに確認をし始めていた。だんだんと、みんな落ち着いてきているように見えた。そうして、いつの間にかすべての視線がピチカに集まると、歌を止めて笑いながらこう呼びかけた。

 

「せっかく歌が好きな人たちが集まってくれたんだもの。喧嘩なんてしないで、みんなで歌いましょう?」

 

 ピチカはそう言うと、もう一度歌い始めた。今度は最初よりもずっと穏やかな雰囲気が伝わってくる。ピチカの歌声が夜の海に響くと、近くにいた生徒たちが顔を見合わせてうなずき合い、少しずつ一緒に歌い始めた。輪が広がるにつれて、肩を組んだり、手をつないだりする姿も目に入る。みんなが楽しそうに歌っている様子を見ていると、まるでセイレーンの里で過ごした日々を思い出す。心まで震えるような大合唱に、気がつけば俺もその輪の中に加わりたくなっていた。

 

 

 

 

 

 そうしてお祭りのような時間が過ぎた後、みんなは満足そうな顔をしながら帰っていった。海岸に残った風紀委員会と正義実現委員会は、今回の件についての情報交換をしている。耳にはさっきまでの歌が残っているけど、聞こえてくるのは波の音と小さな話し声だけだ。祭りが終わった時の余韻を感じて、少し寂しく感じる。

 

「終わっちゃったな……」

 

「ふふふっ。寂しそうにしないで? またやりましょう?」

 

「……そうだな」

 

 寂しさを感じつつ二人で辺りを眺めていると、ピチカがぽつりと言った。

 

「ありがとう。アルドちゃん」

 

「どうしたんだ? 俺は特に何もしてないと思うけど……」

 

「ううん。そんなことないわ。またこうして誰かと一緒に歌を歌えて、聞いてもらえてすごく楽しかったの。だから、ありがとうって」

 

 ピチカは嬉しそうにそういうけど、俺が力になれたことなんてほとんどないはずだ。ピチカはみんなに争ってほしくなくて歌を届けたから、こうして平和に収められたんだと俺は思っている。

 

「俺は何もしてないよ。全部、ピチカが頑張ったからだよ」

 

「ふふっ。相変わらず、アルドちゃんはお人よしね? でもやっぱり、これはアルドちゃんが持っているもののおかげだと思うの」

 

「俺が持ってきたもの?」

 

 そのぼんやりとした言い回しに、心当たりのない俺は首をかしげてしまう。そんな俺の様子を見てか、ピチカは楽しそうにしながら続きを話す。

 

「私がこうしてここにいるのも、歌を届けられたのも、アルドちゃんが結んだ縁のおかげなのよ?」

 

「結んだ縁……。ありがとう、ピチカ」

 

 その言葉は俺の心にすっと入り込んだ。なんだか今までの旅路のすべてをほめてもらったような、そんな気がしてうれしかった。ピチカは穏やかに流れる潮風に揺れる髪を抑えながら楽し気に笑って、俺に手を差し伸べながらこういった。

 

「ふふっ、それは私の言葉よ? ……またよろしくね、アルドちゃん」




思いついてので書ききりましたが、ブルアカとのクロスオーバーというより、アナデンの話になってしまった気がします……。
今後もキャラの深堀みたいなことをしたいので、文量は増えるかもしれないです。話の分割はするかどうか迷っています。
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