アナザーアーカイブ   作:さかみち

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奇妙な出会い

「……では、アビドス対策委員会の定例会議を始めます」

 

 アヤネの声で会議が始まった。借金対策やそのほかの問題もこの会議で話していたんだろう。なんだかいつもはあんまり進展していなかったみたいだけど。

 今回の議題は借金をどうするかについて話し合うことになった。九億もの借金をどうすればいいのかは、まだこの世界に来たばかりの俺には想像がつかないけど、どんな案が出るんだろうか。

 

「ゲルマニウム麦飯石で稼ごうよ!」

 

「セリカちゃん……」

 

 話を聞いていると、此処では結構有名な手口の詐欺みたいだ。セリカはコツコツためたお金でなんとか石を買ったみたいで、すごくへこんでいる。みんなはたまにあることみたいであんまり深刻に考えてないみたいだけど、俺にはなんだかひどく印象に残った。……セリカに俺も後でフォロー入れておこう。

 

「はい! はい!」

 

「はい、三年の小鳥遊委員長。ちょっと嫌な予感がしますが……」

 

「そもそもは生徒がいないことが問題なんだよね。だから生徒数が増えれば月のお金だけでかなりのお金になるはずー。そのために他校のスクールバスを拉致ればオッケー!」

 

「それ、興味ある。ゲヘナ? トリニティ? ミレニアム? どこにする?」

 

 ホシノの提案にシロコが乗っかって、どんどん計画を練ろうとしていた。すぐに止めないと本気でやりかねない気がしてしまう。というかさすがに見逃すことはできない。

 

「ちょっと待った! それはさすがにダメだ!」

 

「先生の言う通りですよ! そもそもそんな方法で転校させられないでしょう! それに他校の風紀委員会も黙ってないですよ……」

 

 どうやら大きい学校には治安維持組織があって、しっかりと自校の生徒を守っているみたいだな。アヤネの口ぶりからすると大人は学校の治安維持には関わってないみたいだけど。

 

「やっぱりそうだよねー」

 

「ん。いい考えがある。銀行を襲おう」

 

「えっ」

 

 どうやら今考えた訳では無くて、前々から計画を練っていたみたいだ。思いつきじゃないのがもっとやばい気がする……。ルート計算してたり覆面用意してたり、シロコはすごく真剣みたいだけどさすがに許可はできないよな。

 アヤネとセリカも同じ意見だったみたいですぐにシロコを止めてくれたけど、なんだかシロコなら成功させてしまいそうで怖い。引き下がってくれたけどまだあきらめてなさそうだし、少し気にしておいた方がいいのかな? 

 

「はあ……ほかに意見はありますか?」

 

「はーい! クリーンな方法が一つありますよ! アイドルしましょう!」

 

「アイドル?」

 

 向こうにも未来の世界でいた気がするけど、なんだか正体がとんでもなかったような……。そのせいかあまりいいイメージ無いんだよな……。

 

「アニメでみたんですけど、学校を復興する定番の方法はアイドルですよ!」

 

「今までよりはまともな方法じゃないか……?」

 

「却下で。先生も適当に肯定しちゃだめだよー」

 

「わ、悪い……みんなならいけるんじゃないかと思ったけど、軽率だったよな……」

 

「い、いきなり何言ってるのよ! それってつまり……」

 

「先生って、時々驚くくらい素直だよねー」

 

「そこが先生のいいところですよ!」

 

 なんだか場が盛り上がってきてみんなの歯止めが利かなくなってきている。結局どの案も実行できそうにないし……。ふとアヤネのほうを見ると、なんだかうつむいていて表情が見えない。少し震えている気がするし、会議が全く進んでなくて怒ってるのかもしれない。

 

「い……いい加減にしてください!」

 

「アヤネ!?」

 

 やっぱり怒ってたようで、限界を超えたのかみんなで囲んでいたちゃぶ台を一気にひっくり返してしまった。

 

「銀行強盗とかマルチ商法とか、ろくな方法が無いじゃないですか! ふざけてないでまじめにやってください!」

 

 しばらくの間、アヤネの説教が続いた。アヤネって怒ると怖いんだな……。みんな言い返せずに抑え込まれてる……。

 結局そのまま会議が終わって、だれの案も採用されなかった。気分転換するためにふくれっ面のアヤネを連れてみんなで柴関ラーメンに行くことになった。セリカはバイトのために行くみたいだけど。

 

 

 

 怒っていたアヤネもラーメンを食べてるうちに機嫌が直ってきたみたいでよかった。みんなでゆったりとラーメンを食べていると、黒い制服を着た子が店に入ってきた。なんだかオドオドしてるのが少し気になるけど、口ぶりからして数人で来ているみたいだ。なんだか気になってしまって、しばらく気にしていたら、四人で一つにラーメンを頼むみたいだ。

 

「おっと。ラーメンが伸びちゃうな……」

 

 熱いうちに食べたほうがおいしいもんな。そう思って静かにラーメンを食べていたら、いつの間にかセリカが四人組と仲良くなっていた。どうやら大将が気をきかせて一つの器に四人前以上のラーメンを盛ったみたいで、四人組はすごく喜んでいるみたいだ。……大将みたいに優しく見守ってくれたり、少しでも助けてくれる人もいることはアビドスにとってもすごくいいことだと思う。なんだかすごく元気づけられた。

 四人組もラーメンを食べ始めたけど、味に感動しているみたいだ。確かに、もっと繁盛してもいいくらいおいしいけど、あまり人が来ている感じは無いんだよな……。アビドスの借金問題を少しでも解消できれば、柴関にもいい影響が出るかもしれない。

 そう思っている間に、いつの間にかノノミ達も仲良くなってるみたいだ。ふと彼女たちはどうしてアビドス自治区にいるのかが気になってしまった。柴関ラーメンのことを知っていた風ではなかったし、安い店なら自分たちの学区で探すのが早いだろう。……まあ、あまり疑うのも失礼かな? 赤い髪の子はなんだか人の好さそうな感じがしてるし。

 

 結局かなり意気投合したみたいで、店を出た時にはみんな笑顔で挨拶をしあっていた。四人組も何か仕事のために来ていたみたいで、この後に取り組むらしい。なんだか苦労してるみたいだし、仕事が上手くいくといいな。

 

「けど、仕事って何だろうな? 店のアルバイトって感じじゃなさそうだけど……」

 

「うーん、案外迷子の猫探しとかかもねー」

 

「指名手配犯を捕まえて賞金をもらうのかも」

 

「もしかしたらアイドルかもしれませんよ!」

 

「アイドルから離れましょうよ……」

 

 みんなでワイワイと話しながらアビドスまで帰った。おいしいものを食べたこともあってみんな気分がいいみたいだ。学校に戻ってからも満腹な状態だからか部屋にはゆったりとした雰囲気が流れている。ホシノは寝ているみたいだし、他のみんなも思い思いに過ごしている。

 そんなゆったりとした時間の中で、いきなりアヤネが驚いたように声を上げた。

 

「校舎より南15㎞地点付近で大規模な兵力を確認!」

 

「まさか、ヘルメット団が?」

 

「……おそらく日雇いの傭兵です!」

 

「傭兵かあ、結構高いはずだけど」

 

「とにかく、迎え撃とう!」

 

 みんなで外に出て敵の姿を確認すると、ラーメン屋であった四人組が立っていた。一体何の仕事をするために来たのかと思ってたけど、まさかアビドスを襲うことが仕事だったなんて……。でもやっぱり、悪い子には見えないんだよな……。悪ぶってるだけというか。

 それでも、向こうも仕事としてやってきているし、説得は無理そうだな。とにかく今は、この大勢の傭兵と便利屋をどうにかするのが先決だな。

 

 

 

 戦闘は意外とこちらの有利で進んでいた。学校を利用しながら戦闘できるためか、あまり向こうも踏み込んでこれないみたいだ。ただ、敵の人数が多すぎてこちらも有効な手を打てない状態だ。このまま消耗していくと危ないのはこっちだろう。状況を変えるために何か手を打つべきだろうか。

 

「なんでこんなにしぶといのよ……」

 

 戦い始めてから何時間か経っただろうか。まだお互いに余力はあるけどやっぱり不利なのはこっちか。

 

「あ、定時だからこれであがるね。後は自分たちで何とかして」

 

「ちょっと! 帰っちゃダメ!」

 

 ……なんだか傭兵たちが一斉に帰っていく……。なんか不憫だけど、これでこっちがだいぶ有利になったな。

 

「これで勝ったと思わないことね! アビドス!」

 

 形勢が不利と思ったのか便利屋たちも撤退していったみたいだ。なんだかどこかで聞いたセリフを言いながら

 

「誰に雇われたのかとか、聞きたいことがあったんだけどな」

 

「次は捕まえて尋問しよう」

 

「それにしても、ヘルメット団以外にも狙われるなんて、いったい何が起きているのでしょうか……」

 

「まずは社長のアルって子から調べてみようか。何か出てくるかもしれないし」

 

 

 

 次の日アビドスに向かっていると登校しているアヤネに出会った。

 

「おはよう、アヤネ。そういえば、アルって子の情報は何かわかったか?」

 

「おはようございます、先生。そうですね……調べてみたらいくつか分かったことがあるので、学校でみんなが集まった時にお話しすることにしますね」

 

 どうやら何か進展があったみたいだ。この情報をたどって、アビドスが狙われる理由が分かればいいけど……。しばらくアヤネと世間話をしていると、前方に人がいることに気づいた。白い髪に小柄な体躯の子は昨日見たばかりだ。

 

「おはよー、先生! 偶然だねー」

 

「確か……ムツキだったっけ?」

 

「覚えててくれたんだー! よろしくね!」

 

「ちょ、ちょっと! なにしてるんですか!」

 

 ムツキがいきなり抱き着いてきた。ムツキの身長が低いせいか、頭の上の部分しか見えない。

 

「先生大きいねー! 抱き着きがいがあるねー」

 

「ム、ムツキ……。くすぐったいから離れてくれないか?」

 

「えー! いいじゃん!」

 

 注意してもムツキは離れてくれなさそうだ。……なんだかこうして頭をぐりぐりしてる姿を見ると村の子供とか昔のフィーネを相手にしている気分になるな。……ついつい頭をなでてしまった。髪はさらさらしていて撫で心地がいい。俺が撫でる動きに頭の動きを合わせている気がする。

 

「ん……。先生なでるの上手いね」

 

 ムツキは目を細めてくすぐったがっている。戦っているときは落ち着いている感じがあったけど、こうしてくすぐったがっている姿を見るとやっぱり年相応なんだと実感するな。

 

「先生……何してるんですか? ムツキさんも離れてください!」

 

「もー、引っ張らないでよ。先生、また撫でてね!」

 

 ムツキはしぶしぶといった感じで離れていった。アヤネはなぜだかすごく怒っているみたいでムツキに詰め寄っている。ムツキは依頼の時以外は仲良くしたいと言っていて、アヤネをのらりくらりとかわしている。

 

「先生、今度便利屋に遊びにおいでよ。みんなも、きっと喜ぶからさ」

 

「あ、ああ……」

 

 そういうとムツキはどこかに去っていった。なんだか足取りは軽そうだった。

 

「何なんですか……あの人は! 先生も先生です! なんで撫でたりしたんですか!」

 

「なんだか村の子供を思い出してさ……」

 

 その後もアヤネは怒りが収まらないみたいで、そのまま学校まで行くことになった。そのうち機嫌が直ってくれるといいけど……。

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