話の流れは基本原作沿いですが、少しでもひねりを入れられるように頑張りたいと思います。
アルたちと別れた後、急いでアビドスまで戻った。いつもの部屋に戻ると、みんなはすでに手に入れた書類を読んでいるようだった。
「あ、先生。戻ってたんだねー」
「ああ。ただいま」
いつもと変わらない様子でホシノが出迎えてくれた。他のメンバーは険しい顔をしているし、どうやら書類の内容は良くない内容みたいだな。
「それで、その書類には何が書いてあったんだ? あんまりいいことじゃなさそうだけど……」
「それが……」
アヤネによると、アビドスが返済していたお金がヘルメット団に流されているらしい。ヘルメット団はアビドスを襲っていた、つまりはカイザーローン―がアビドスを廃校にしようとしていることになる。もし学校が廃校になってしまえば、借金の回収はできなくなってしまう。それなのにヘルメット団にアビドスを襲わせていたことに、どんな狙いがあるのか全くわからない。……思った以上に自体は複雑で深刻なようだ。だけど、今はこれ以上の情報もないし方針は決められそうにないか。
しばらく経った後、トリニティに帰るヒフミを見送ることになった。思えば、今日あったばかりの俺たちに付き合って銀行強盗までしてくれたんだよな。こうしてアビドスの事情にも大きく巻き込んでしまったし……。
「ヒフミ、今日はありがとうな。危ないことに巻き込んでしまったし……」
「いえ……、私の意思でここまで一緒に来ましたから。それに、やっぱり放っておけません」
こっちをまっすぐ見据えて言い放ったヒフミの姿は、今日一番印象に残ったかもしれない。成り行きで流されて行動していたと思っていたけど、しっかりとした芯のある子だったみたいだ。
「今日の情報は、カイザーコーポレーションが違法行為をしているという事実上の証拠になり得ます。この情報と、アビドスの皆さんの現状をティーパーティーに報告すれば、何か力になってくれるかもしれません!」
「……それは難しいんじゃないかなー。きっともう情報は把握してると思うんだよねー」
ひどく落ち着いた声色で話すホシノからは、なんだか実感がこもっているように感じる。今までどこの学校にも手を貸してもらえなかったのだろうか。
「ヒフミちゃんの気持ちはありがたいけど、知らせてもらってもこれといった打開策が出てくるわけじゃないと思うし」
「そ、そうですか……?」
「それに、今のアビドスには他の学校からのアクションをコントロールする力がないからねー。逆に状況が悪くなっちゃうかもしれないし」
キヴォトスでは学校が自治区を持ち、生徒が治めている。ホシノが警戒しているのは、他校に干渉されて悪影響が出ることなのだろう。もし悪さをされても今のアビドスでは止められる力がないからと。
「ですが、少し悲観的に考えすぎなのではないでしょうか? もしかしたら本当に助けてくれるかもしれませんし……」
「確かに、もしかしたらヒフミみたいに手を貸してくれるかもしれないぞ?」
「……先生はトリニティのトップを見たことある?」
「いや……まだ会ったことないな」
「どんな人なのかもわからないのに、当てにするわけにはいかないでしょ? それで万が一が起きたら悲惨だよー。そんな万が一をスルーしてたせいでこの有様になっちゃったんだし」
「……ごめん。うかつだったよ」
万が一を語るホシノの表情は、ただの警戒以上になにか後悔のようなものを感じる。他のみんなもホシノの雰囲気に少し驚いているのか、静まり返ってしまった。
「その……えーっと……今日はいろいろありましたね……」
重くなった雰囲気を変えるように、ヒフミが声をかけてきた。気を使わせちゃったけど、感謝しないとな……。その後はもとの雰囲気に戻ってみんなで和やかに話し始めた。
「それでは……皆さん、またお会いしましょう」
「ああ。気をつけてな」
しばらく話した後、あいさつをしてヒフミは帰っていった。すごく世話になっちゃったし、そのうちお礼をしないとな。
「今日はいろいろありましたし、ゆっくり休んで明日また集まりましょう」
その後はすぐに解散して、それぞれ家に帰っていった。最近いろいろあったから疲れがたまってるだろうし、みんなにはしっかり休んでほしいな。
……それよりも、さっきのホシノはいつもとは少し様子が違ったな。昔何があったんだろうけど、気軽に聞いていいことじゃないよな。いつか話してくれるまで待つことにしよう。アビドスのこと以外でも、ホシノの力になれればいいんだけど……。
次の日、朝からアビドスに行ってみると、ノノミが部屋にいた。ホシノはノノミの膝に頭をのせてくつろいでいる。窓から入る朝日がちょうど当たる位置で寝そべっているせいか、なんだかすごく気持ちよさそうに見えて少し羨ましい。
「おはよう、ノノミ、ホシノ。他のみんなはまだ来てないのか?」
「おはよー、先生。みんなはそれぞれやりたいことやってるよー」
「のんびりできるのは久しぶりですから。それぞれゆっくりしてると思いますよ」
「確かに、もう襲撃もないだろうしな」
「そーそー。だから先生も一緒にダラダラしようよ。あ、ノノミちゃんの膝枕は貸さないよー」
「私は構いませんよ? 先生もどうですか?」
「い、いや……恥ずかしいからいいよ……」
ノノミはなんだか楽しそうに膝枕に誘ってくる。ホシノを膝にのせている今も優しい表情をしているし、そういうことが好きなのかもしれないな。
「そういえば、他のみんなは何をしてるんだ?」
「シロコちゃんはサイクリング、アヤネちゃんは図書室で勉強をしてると思いますよ」
「ノノミちゃんは部屋の掃除をしてくれてたねー」
「みんな熱心だな。ホシノは何をしてたんだ?」
「おじさんはここでダラダラしてたよー。もう無理の聞かない年齢になっちゃったもんでねー」
「歳は私とほぼ変わらないですよ?」
ホシノはいつもと同じ様子だな。昨日の分かれる前の様子を見てから、少し気になってたんだけど……。考えすぎだったかな?
「そろそろみんなも来るだろうし、わたしはここらでドロンするよ」
「どこ行くんだ?」
「今日はオフだからねー。しばらくサボってるから、何かあったら連絡ちょーだい、ノノミちゃん。先生、みんなのこと頼むねー」
そういうとホシノはどこかに行ってしまった。どこに行くのかは気になるけど、ホシノに頼まれてるし今はみんなと一緒に居ることにしよう。
「行っちゃいましたね。会議はアヤネちゃんが進行してくれるので大丈夫だと思いますけど……」
「それに、きっと大変な時にはすぐに駆け付けてくれるよ。……ホシノのあの感じを見てると、なんだか旅の仲間を思い出すよ。眠そうなところとか、仲間重いなところとか」
「ふふ……良い仲間の方がいたんですね。……実は、昔のホシノ先輩は違う感じだったんですよ。常に何かに追われているような感じで……」
ノノミはそのころのことを思い出しているのだろうか、少し眉が下がっている。あまりいい思い出ではないのかもしれないな。
「以前とある先輩がいたそうで……。アビドス最後の生徒会長だったらしいんですが、その人が去ってからはホシノ先輩がすべてを引き受けることになったそうです」
「ホシノの先輩か……どんな人だったんだろうな」
「私も話を聞いただけなので、詳しくは……。ホシノ先輩が1年生の時の話ですから」
つまりホシノは1年生の時からアビドスを守ってきたってことなのか。今までの様子から見ると、仲間以外に対して警戒が少し強いのもそのせいなのかもしれないな。
「でも今は他の学園の生徒と交流できてますし……。以前だったら、他の学園と関わること自体嫌がっていたはずですから。きっと先生のおかげですね!」
「ああ。そうだったら嬉しいな」
ホシノの警戒心はアビドスを守るために必死に作ってきたものなのかもしれない。ノノミの言うように、他の学園に対して心を開いていっているならきっとその方がいいはずだ。俺が少しでもホシノの負担を肩代わりできればいいんだけど……。
その後しばらくは砂で汚れた部屋の掃除や対策委員会の会議、軽い雑談をしてゆったりとした時間を過ごしていた。昼下がりを過ぎた時間帯で少しうつらうつらしていると、いきなり何かが爆発するような音と煙がそう遠くない場所から聞こえてきた。
「うわっ! な、なにが起きたんだ!?」
「半径10㎞以内で爆発が起きたようです!」
「10㎞って言うと、市街地のある地点!?」
「正確な位置は……柴関ラーメンです!」
「なんであの店が狙われるのよ!」
いきなり起きたせいで、みんな焦ってしまっている。特にセリカはバイト先なこともあってか、特に取り乱している。大将のことも心配だし、すぐに向かうべきだな。
「みんな、落ち着いてくれ! 今はとにかく何があったかを確認しに行こう」
「ホシノ先輩には私から連絡します! そちらはお願いします!」
学校から近かったおかげで、現場にはすぐについた。煙の臭いがやけに鼻をつく。あたりを見回してみると柴関ラーメンのあたりだけ不自然に何もなく、焼けた後と建物の破片だけがその店が存在していたことを教えてくれた。
「なんでこんなことに……」
唖然としてるセリカも心配だけど、まずはこんなことをした犯人を捕まえないと……。あたりを見回してみても特に怪しい人影は見当たらない。すぐに来たつもりだけど、もう逃げられてしまったのか?
「とっ、当然でしょう! 冷徹無比! 情け無用! 金さえもらえればなんでもオッケー! それがうちのモットーよ!」
……声のする方を見てみると、なんだか見たことのある姿が声を震わせながらとんでもないことを言っていた。なんだか今までの印象と違うし様子がおかしい気がするし、何か事情があるのかもしれないけど……。とにかく、アルたちがやったのは間違いないだろうし捕まえないと。
「あんたたち! よくもこんなことを!」
セリカは見逃すつもりも全く無いようで、すでに銃を構えて戦闘態勢に入っている。他のみんなも無言で銃を構えているし、ここは話し合うより制圧する方が早いかな。そういえば、大将の姿が見えないけど……。
「アヤネ! 大将は無事なのか!?」
「はい! 幸い軽傷なようなので、すでに近くのシェルターに案内しています!」
「わかった、ありがとう」
周囲の確認をしてみると、アルたちが呼んだのだろう傭兵が俺たちを囲んでいた。ホシノもいないし、ここは俺も戦闘に参加した方がいいな。剣を抜いてみんなの前に立つ。
「先生戦うんだ? ケガしても知らないよー?」
ムツキがからかうような口調で、少し心配そうな雰囲気も漂わせながら声をかけてきた。
「俺はアビドスのみんなの味方だ。ここで引くわけにはいかないよ」
「……わかったわ。いざ勝負! かかってきなさい!」
アルの言葉を合図に、一斉に動き出した。前回と違って地の利のある場所じゃないから、追い込まれる前に相手の戦力の一角を崩したい。
「シロコ、セリカ! 俺が前に出るから援護を頼む!」
「わかった!」
剣を構えて傭兵の集団のほうに向かって走る。遮蔽物に身を隠しながらこちらを狙っている傭兵に対してはシロコやセリカが妨害してくれている。別方向から向かってくる集団には、ノノミがけん制して近づかないようにしてくれている。銃で俺を狙えないと感じたのか、遮蔽物の向こう側から手りゅう弾が投げられてきた。直後、地面に落ちた手りゅう弾がでかい音と共に爆発した。
「先生!」
「大丈夫! かすり傷だ!」
走る足は止めずに傭兵のすぐそばまで近寄る。相手は足止めできたと思ったのか、俺が近づいてきているのを見てから銃を構え始めた。
「遅い!」
無力化するために銃を片っ端から切っていく。……さすがに体に攻撃するわけにはいかないし、こうして無力化するのがいいだろう。飛んでくる銃弾は剣ではじきつつ無力化した傭兵のいる遮蔽物に身を隠してやり過ごす。そうして少しづつ敵の数を減らしていく。周辺の敵を無力化をした後にあたりを見回してみると、シロコが容赦なく銃を打ち込んでいる姿が見えてしまった。
「シ、シロコ……。そこまでする必要はあるのか……?」
「先生は甘い。ちゃんと仕留めないと後が面倒だよ」
なんだかこの前も似たような光景を見た気がするな・・・。思いもよらないところでキヴォトスの洗礼を受けた気がするけど、今は気を取り直して他の集団も無力化していこう。
「これで後はあんたたちだけよ!」
「こ、こいつら……。なんでこんなに強いのよ」
「ここまで追いつめられるなんて……。やっぱり先生が一番厄介だね」
残りはアルたちだけになったけど、やっぱりあの子たちは強いな。さっきまでと違って、うかつに近づくと痛い目にあいそうで踏み込めない。さっきまでの騒がしさが一変して静かになってしまった。
「行こう先生! 早くあいつらを捕まえないと!」
そういってセリカが近づこうとした瞬間、アルたちのほうに何かが降ってきて大きな爆発が起こった。さっきまでとは威力が全く違うそれに、みんな固まってしまった。
「砲撃です! 3㎞の距離に多数の擲弾兵を確認!」
「いったいどこが!?」
「所属判明しました! ゲヘナの風紀委員会です!」
ゲヘナって言えば、シャーレ奪還の時に会ったチナツも風紀委員って言ってたな。どうしてそんな組織がアビドスに……?
長くなってしまいそうなので区切りが悪いですがここでいったん切らせていただきます。
多人数のキャラをかき分けるのは難しいですが、頑張っていきたいと思います。